遺産相続は親族同士が納得して分配する必要がある。しかし、兄弟姉妹間で考え方に違いが生じるなどと言ったことがトラブルの原因となってしまうことも十分にある。
さらに、遺産相続に関して司法書士や弁護士に相談に来る人の多くは「こんなはずではなかった」と思う人も多いだろう。しかし、それだけお金というものはトラブルの引き金になってしまう要因であるということを覚えておきたいものだ。
遺産相続に関して親族で話し合いの場を設けること「遺産分割協議」という。それでも解決しない場合、そもそも話を聞く耳を持たない場合「調停」が必要になる。
このような遺産相続に関しての手続を行うことがはじめての人は結構多いだろう。実際に自分がこういった遺産相続でトラブルになり、「遺産分割協議」や「調停」をおこなうようになった時はどのような点に注意すればいいのだろうか。
当コラムでは、こう言った際にどのようなことに気をつければいいかなど疑問の多いポイントについての回答をまとめて紹介していく。いつか必ず必要となると言っても過言ではない情報なので、ぜひ気をつけて確認して行って見てほしい。
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1. 「遺産分割協議」について詳しく説明して欲しい
本来であれば、被相続人が「誰にどの程度遺産を残すか?」という詳細を遺言書や公正証書などの書面を用いて残し、その内容に従い遺産を分配するといったことが原則となる。
そういった遺言書や公正証書がない場合、「法定相続人」が遺産を受け取る権利を得ることになる。ただし「法定相続人」といっても一人とは限らず、大抵が複数人の該当者がいる。そこで生じてくるのが「誰にどの程度遺産を分配するのか」といったトラブルだ。
このようなトラブルが発生した際にに行うのが、「遺産分割協議」である。遺産分割協議は相続人全員が参加しないといけないという条件があり、相続人の一人でも参加していないと話は進まなく、最悪のケースでは破談となってしまうので注意する必要がある。
その後、「遺産分割協議」を用いてその結果をまとめた「遺産分割協議書」を作成する。そして、法定相続人の数だけ資料を作り、全員の印鑑を捺印した上で正式な書類と認められるなどと言った手続が必要になる。
2. 遺産分割協議書ってなに?
次に、上記で少し触れた「遺産分割協議書」について説明して行こう。
「遺産分割協議書」においては遺産分割協議をしたからといった必ずしも作らなくてはいけないものではない。「遺産分割協議書」とは、どのようなケースでも必要になるものではなく、特定の条件があった場合にのみ必要となる書類なのだ。
例えば、遺産として不動産があった場合、その不動産の登記を別の人に変える必要があるため、「遺産分割協議書」を提出しなくてはならなくなる。
そのため、被相続人の残した遺産の中に不動産などがあり、兄弟姉妹で分配することになっている、または譲り受けるなど、現状の被相続人の名義を変更する可能性があるケースである場合には、この手続が必要になるのでよく覚えておこう。
「遺産分割協議書」は、全員の捺印がないと書類として提出することができない。万が一全員の捺印が集まらず、偽造するなどと言った不正な方法を行ってしまうと全員が遺産相続すらできなくなってしまう。そのため、こういった書類は準備こそ面倒なものだがきちんとおこなうようにしておこう。
「遺産分割協議書」には正しい作り方があり、この方法を知り正しい段階をふんで作成しないと「遺産分割協議書」として成立しなくなってしまうこともある。そのため、まずは手順をしっかりと知る必要がある。
下記に渡り、「遺産分割協議書」の正しい書き方の手順を説明していくので、よく確認してほしい。
ステップ1. 相続人を確定する
「遺産分割協議書」を作るにあたり、誰が法定相続人になるのかどうかということはとても重要なことだ。話し合いに参加してもらう必要もあるし、捺印を押してもらわないといけないので「遺産分割協議書」を作るとなればまずは相続人を決めることからはじめよう。
ステップ2. 除籍謄本と改製原戸籍と言った書類を手に入れる
その為には被相続人の出生から死亡までの「除籍謄本」と「改製原戸籍」などと言った書類が必要になる。
この準備が意外と厄介になるのだが、被相続人が産まれてから亡くなるまでの間に一度でも住んだことがある場所から「除籍謄本」をもらう必要があるのだ。
その際は、実際に請求する人間が被相続人の親族だと証明できる「戸籍謄本」を持ち最寄りの区役所から順番にはじめよう。遠方の場合は郵送にて送ってもらうこともできる。しかし、すべてを一括で請求することはできず、すべての市区町村に送ってもらい抜けがないようにしよう。
この「除籍謄本」は調停の申立の時にも必要になるので、被相続人が亡くなったらまずはこの手続の準備を進めるようにしておくと、無駄な時間がかかる心配もない。
これから請求するとなるとすべて揃うのに1ヶ月ほどの時間はかかると見ておかないと慌てることになってしまうので十分に余裕を持って行動するように心がけよう。
ただし、この手続を取ることで、「法定相続人」の抜けがないか確認することにも繋がる。後になって会ったこともない親戚がいて「遺産分割協議」がやり直しになってしまうと何度もこの作業を行わなければいけなくなりとても大変なので、しっかりと確認しておこう。
ステップ3. 遺産の調査
次に、被相続人が持っていた遺産に関しての詳細を明確にする必要がある。
土地や建物を所有していた場合は登記簿などの書類が必要となる。それに加えて、銀行の預金口座、保険金、年金、有価証券など、どの程度資産があったのかをも詳しく調べる必要がある。
これもそれぞれに連絡をし、被相続人の遺産相続があるので開示してほしい旨を伝えて送ってもらうようにしよう。
周りが把握していなかっただけで実は存在していたかもしれないと言った借金などの負債もないのかどうか確認して置くようにしよう。そうしないと、後になってからトラブルのもとになるので慎重に事細かに確認を取ることが大切だ。
ここまでの準備が全てできてはじめて「遺産分割協議」を行うための条件が整うのだ。もちろん、その際には「法定相続人」の予定を合わせ、全員が参加していることを条件としての上で話し合いを行う。
「遺産分割協議」で「法定相続人」全の話をまとめることができたら「遺産分割協議書」を作り所定の手続に進むことになる。しかし、親族関係でトラブルになってしまい思うように話がまとまらなかった場合は次のステップである「調停」で話し合いを継続する必要が出てくるのだ。
「調停」の場合でも、別途さまざまな手続が必要になるので、こちらも準備を徐々にはじめるようにしよう。
遺産分割調停を行う目的とは?
調停とは、正式な名前を「遺産分割調停」という。
「調停」を行うのは、話し合いが決裂してしまった時、また独り占めしてしまい話し合いの場すらとってくれないなどと言った場合だ。遺産相続に関してどうにもならず行き詰まってしまった時、「調停」をおこなうことで「遺産相続」の話し合いをすることができる。
そんな「調停」でも話がまとまらず決裂してしまった場合は、「裁判」へと進むことになる。「調停」は1回のみではなく数回に渡って行うことになるので半年から1年の時間をかけて何度も話し合うことになる。
そもそもそんな「遺産分割調停」で何を確認するのかというと大きく分けて目的は2つあるので覚えておいて欲しい。
- 1. 当事者から話を聞くこと
- 2. 必要書類を提出してもらうこと
この2つを目的としている。
調停はあくまでも話し合いの場になるので、必ずしも司法書士や弁護士が必要になるわけではない。法定相続人である当人同士が話し合いができればいいので弁護士をつけるのかどうかは、相手の出方を見た上で検討してみるといいのではないだろうか。
相手が弁護士を立てている場合、こちらも立てないと不利になることもあるので相手の様子を伺ってから、もしくは1回目の「調停」が終わってから依頼をしてもいいのではないだろうか。
多くの人が「調停」=弁護士が必要と勘違いしているので、この点はしっかりと覚えておいて損はないだろう。
遺産分割調停の手続、準備とはどのようなものが必要なのか?
「調停」をおこなうためには、最寄りの家庭裁判所(※被相続人の住んでいた場所に近い所)に行き、手続を行う必要がある。
そのためには、家庭裁判所の公式ホームページより「遺産分割調停申立書」を印刷し、必要事項を記入しなくてはならないのだ。さらに、除籍謄本の提出も必要になるのでぜひ覚えておこう。
家庭裁判所に行ったらまずは事情を説明し、「調停」を行いたいという旨を伝える。その上で必要書類に記入したり、捺印したりして手続が済めば数千円の費用を支払い手続が完了となるのだ。
家庭裁判所の手続なのだが、一番厄介なのは被相続人が亡くなっているが、まだ配偶者は生きているものの痴呆症を患い日常生活程度の知能はあっても、自分が発言した内容を覚えておけないなどの状態にある場合だ。
被相続人の一番の法定相続人は配偶者になり、自分たちの子どもになる。上記で何度も念を押してお伝えしているが、「遺産分割調停」を行うためには「法定相続人」の全員が必ず参加する必要がある。
しかし、一部の親族だけで話し合い、もめていても、その他の「法定相続人」が「調停」になっても出向くのが難しいなどの状態になっている場合が難しい。
このような場合では、参加できていない「法定相続人」が存在しているため、この「調停」は成立しないということになってしまうのだ。
そうすると、その配偶者をどちら側につけるのか決めなくてはいけなくなる。相手方につけるのか、自分側につけるのかを話し合わなければいけないのだ。さらに、どちらにつけるのかによって手続の内容も異なるのを覚えておこう。
こういった家庭裁判所に出向いてから発覚することも多く、手続をおこない何度も足を運ぶ必要もある。そのため、「調停」と言葉では簡単に言えるが、実際に行おうとするとかなり時間と手間がかかるのだ。
無事手続が済めば3週間~1ヶ月以内に裁判の1回目の期日を確定し、「申立人」、「相手」に通知が郵便で届くので、指定された日付に従い家庭裁判所に出向くことになる。
この時に裁判官もしくは、裁判所が選定した調停委員を間に入れた状態で話し合いを行う。1回の「調停」で話がつかなければ、2回目以降も何度も調整しおこなうようになる。
また、この「調停」に参加できるのは基本的に「法定相続人同士」になるので、その他の参加は認められていない。その他が参加する場合とは、何か証言が必要になる場合や、相手に許可を取って「調停」に参加することになる。
基本的には「法定相続人同士」が話し合いをおこなうので自分が伝えたいこと、決めなくてはいけないことなどがある場合は、自分で証言ができる状態にしておく必要がある。
遺産分割方法ってどんなものがあるの?
遺産の分割方法についても少しだけ説明を加えて行こうと思う。遺産の分割方法は大きく分けて三種類あるため、ぜひ把握して置いて損はないだろう。
- 1. 現物分割
- 2. 換価分割
- 3. 代償分割
1. 現物分割
まずこの現物分割とは、最もシンプルかつ、わかりやすい分割方法だろう。この現物分割とは、元々存在する遺産をそのままの形で分割するという遺産分割方法だ。
不動産は不動産のまま、株は株のまま、現金は現金のまま「法定相続人」に相続してもらうという方法だ。そのため、相続分割を完了させてから何かしらの手続きが必要ないと言ったメリットがある。
2. 換価分割
換価分割を行うためには、少し手間がかかる。この換価分割では、元々遺産として存在した不動産や株を現金に換金しその現金を方相続人全員で分割するという相続分割方法だ。
しかし、この分割方法を行うためには現金化するための手続きが必要となること、さらに、それまで時間を要されるというデメリットがある。しかし、全ての法相続人に平等に現金を相続できるため、それだけのメリットはあるのではないだろうか。
3. 代償分割
代償分割とは、遺産をそのままの形で相続するが分配が平等にならなくなってしまう。そのため、その分を現金で支払い、結果的に全ての法相続人が同じ分だけ遺産を受けもらうことができると言った分割方法だ。
不平等になってしまった部分の現金をどのような形で支払うかなどと揉め事が生じることもあるので、できるだけ避けた方がいい分割方法といえるかもしれない。法相続人のうちの一人が海外にいるなど、不動産を持つことが困難などと言った場合には利用してもいいかもしれない。
遺産分割協議・調停の注意点をまとめてみた
このように「遺産分割協議」や「遺産分割調停」などの手続は想像しているよりもやらなくてはいけないことも多く時間がかかる。また、一つでも書類などに抜けがあると手続自体が進まなくなってしまうこともあるので手順をしっかりとふんだ上で行うようにしてほしい。
専門家に依頼するのか、それとも自分達で解決するのかなどその状況に応じて選択する必要もあるので、状況の確認も忘れずに行うようにしておこう。
これだけ手間と時間がかかるものであるとわかると、できるだけこういったトラブルを防げるように、生前に話し合いを行っておくのがどれだけ重要なことかがわかるだろう。
あなたの家は大丈夫だろうか?遺産相続の準備は思い立った時にはじめることが重要になるので、まずは家の状況や、実際に遺産相続が起きたら?を考え今から行動しておいてみよう。