日本の現代美術界を牽引する杉本博司は、コンセプチュアルアートの影響を受ける話題の写真家だ。写真を使った新たな現代アートに挑戦し続ける彼は、日本人写真家の中で最も高値が狙える存在とも言われている。また、杉本博司の活動は建築や美術館の設計といった領域にも及んでいるため、写真に触れる機会の少ない日本人にも意外な分野から影響をもたらすアーティストと捉えて良いだろう。
今回は、現在も活躍し続ける杉本博司の魅力や特徴などを見ながら、現代写真と呼ばれるカテゴリの作品を高価買取に繋げる査定ポイントなどを導き出していきたい。
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杉本博司とは?
写真を通してコンセプチュアルアートの可能性を広げる杉本博司は、東京及びニューヨークを活動の拠点とする話題の美術作家だ。厳密な哲学とコンセプトにもとづき作られる彼の作品は、個人の存在を超えた時間の流れや積み重なりといった、さまざまなことを鑑賞者に投げかけている。また、8×10の大判カメラを用いる杉本博司の作品は、技術的側面でも世界的な評価を受けているため、鑑賞者だけでなく写真家を志すアーティストにとっても素晴らしい影響を与える存在と言える。
コンセプチュアルアートとは?
杉本博司が影響を受けているコンセプチュアルアートというのは、1960年代~1970年代にかけて世界的に行われていた前衛芸術運動の総称だ。この運動のルーツと呼ばれるマルセル・デュシャンは、自身の仕事を通して彫刻や絵画といった形式に当てはまらない芸術のスタイルを提起している。杉本博司も、ジオラマ撮影や建築といった幅広い領域への挑戦を行っているため、従来の写真にとらわれないコンセプチュアルアートに似た彼の姿勢が、世界的な価値や高評価に繋がっているとも言えるだろう。
杉本博司が写真で高評価を得るまで
杉本博司が写真との関わりを持ったのは、鉄道模型や鉄道写真に熱中していた立教中学時代のことだ。大学の広告研究会でポスターデザインの制作を行っていた彼は、本格的に写真を学ぶために大学卒業後、ロサンゼルスに渡っている。1975年に写真作家として生きる道を選んだ彼は、翌年ニューヨーク近代美術館にジオラマシリーズの1枚を持ち込み、その時初めて高評価により写真が買い取られるという栄誉を得たそうだ。
こうした形で写真家としての第一歩を踏み出した杉本博司は、さまざまな奨学金などを得ながら写真作品の制作を行っていた時期もあったようだ。
コンセプト
ポストモダニズムが勃興した時期に渡米した彼の写真作品には、杉本博司ならではとも言える独特のコンセプトがある。まず写真技法においては、計算された照明や構図によって絵画的な画面を実現するピクトリアリスムに接近する形をとっている。しかし、一方では「写真には嘘をつかせない」といったモダニズムの倫理を守る立場を守ろうとしているため、こういった想いを叶える取り組みとして、明らかに人為的と判断できる蝋人形やジオラマなどを使った撮影が多くなっているようだ。
国内外での受賞実績
自身の哲学により時間を超えた存在を写し出す杉本博司には、ハッセルブラッド国際写真賞やフランス芸術文化勲章オフィシェ、高松宮殿下記念世界文化賞、紫綬褒章といった多くの受賞実績がある。また、1東京南画廊で初個展を行った1977年以降は、欧米を中心とした世界各地の美術館で個展を開催しているため、こうした彼のグローバルな活動も国内外のコレクターから高い注目を集める理由である。
現代写真におけるセカンダリーマーケット
杉本博司が牽引する現代写真のカテゴリは、絵画やポスター、版画などが中心となる現代アート市場と比べて高価買取に繋がりにくい特徴がある。
写真カテゴリのセカンダリーは敷居が高い
写真の買取市場について理解を深めるなら、まずこのマーケットが写真家自身にとっても敷居の高い存在であることを頭に入れておけなければならない。今回紹介している杉本博司のように、1枚の写真に100万円を超える高額査定が付くのは、限られた一部の作家のみとなる。
また、制作した写真が現代美術として認められるのは、デュッセルドルフ・スクールや杉本博司といった更に限られた写真家のみとなるため、彼の作品に世界的な注目が集まるこの状況自体が、現代アート業界に大きな影響をもたらしていると捉えて良いだろう。
絵画作品よりも買取相場が安い
油画などの絵画作品と比べて、複製可能な写真は買取額が安い傾向がある。実際に写真のオークション落札をしているコレクターによると、このカテゴリの場合は人気の高い作品であっても1,000,000円~1,500,000円ほどが上限額となる実態があるようだ。
また、美術品オークションでは、少なくとも数千ドルぐらいにならないと作品の扱いができないハウス側の事情もあるため、出品する写真家にとってもセカンダリーマーケットの利用は難しいと言えそうだ。写真ならではとも言えるこの状況を回避しようと考える人気作家の中には、美術館などに直接写真を売る人も多く見受けられる。
オークションがギャラリーの店頭価格を上げる
売る側・買う側の両方にとって利用の難しい写真のセカンダリーマーケットも、場合によっては作家の知名度を高める役割を担うこともある。例えば、美術品オークション出品によって1,000,000円以上の落札額に繋がれば、その作家の写真を販売するギャラリーの店頭価格も上げることができる。
また、ネットが普及する今の時代は、オークションの落札額がニュースメディアで紹介されるケースも多いため、上手くその流れに乗ることができれば、セカンダリーマーケットは世界的な知名度も高められるシステムと言えるだろう。
杉本博司の写真作品における買取相場
続いて、日本で最も高値が付くと言われる写真家・杉本博司の作品における買取実績や買取相場を見ていこう。
The Origins of Love
かなり個性的なジオラマを使った「The Origins of Love」という写真作品には、国内の美術品オークションで1,897,500円もの高額で落札された実績がある。また1991年に制作された「St. James theatre New Zealand」についても、同じオークションハウスで1,782,500円もの高額落札となっているため、1,000,000円~1,500,000円が買取相場と言われる写真のセカンダリーマーケットにおいて、杉本博司の評価は群を抜いている。
ちなみに、この回のオークションには荒木経惟、森山大道、蜷川実花といった日本人写真家の作品も出品されており、その中でも杉本博司の写真は最も高い落札額を記録している。
歴史の歴史ポスター
2008年に金沢21世紀美術館や国立国際美術館などで開催された個展「歴史の歴史」のポスターについても、美術品オークション市場で276,000円もの落札額がついている。こうした実績を見ていると、杉本博司ならではとも言える世界観に魅せられたコレクターたちは、彼の写真作品以外についても高い関心を示すだろう。
Caribbean Sea, Jamaica, 1980
ヤフオクには、限定300枚のオフセットリトグラフ「Caribbean Sea, Jamaica, 1980」に250,000円の落札額が付いた実績がある。ここまで紹介した写真作品と比べると、出品先がインターネットオークションということもあり、若干落札額が低い印象を感じるかもしれない。しかし、この作品がオフセットプリント作品集の一部であると考えれば、250,000円という価格は高い方だと判断して良いかもしれない。
杉本博司の現代写真を高価買取に繋げる査定ポイント
杉本博司の特徴や、写真カテゴリにおけるセカンダリーマーケットの実態がわかったところで、所有している写真作品を高額査定に繋げるためのポイントをご紹介しておこう。
現代美術に強い買取店に問い合わせをする
現代美術家でもある杉本博司の作品を売るなら、現代アートやコンセプチュアルアート買取に積極的な専門店に問い合わせをしてみよう。こうしたカテゴリを強化買取に並べるショップでは、資金力の高さや販売ルートの豊富さによって、依頼主を満足させる買取価格を提示できる可能性が高いと考えられる。
また、流通量の少ない杉本博司などのアーティストであれば、「どうしても買い取りたい!」という査定士の想いにより価格交渉ができる場合もあるため、現代美術やコンセプチュアルアートといったキーワードをもとに買取店探しをするメリットは非常に大きいと言えそうだ。
無料出張買取サービスなら売却コストもかからない
無駄な手間やコストをかけず楽に写真や絵画作品を売りたいと考えるなら、出張買取を全国無料対応している業者のお世話になるのがいちばんだ。こうした専門店に査定依頼をすれば、自宅に眠っている他の現代アート作品も一緒に売却することもできる。また、絵画や写真などの作品は大変デリケートなため、扱いに慣れない場合は、買取査定だけでなく自宅からの持ち出しも査定士にお願いするのがおすすめだ。