種類が豊富！ボトムブラケット(BB)の規格の違いを徹底解説

本稿は、規格が乱立するボトムブラケット(BB)について、その変遷を振り返ることを目的とする。また、各社の現行モデルがが採用しているBBも確認する。

Miyata Century bottom bracket housing / ragnar1984

ボトムブラケット(BB)

まず、ボトムブラケット(BB)とは、クランクセット－フレーム、フレームの前三角－後ろ三角の結節点である。BBは筒のような形状をしており、フレームの受け口に収まる。この受け口のことをBBシェルと呼ぶ。左右のクランクを繋ぐ軸をBBに通すことで、クランクをフレームに取り付けることができる。

BBは、クランクから伝わってきた力をフレームに伝えるポイントでもあり、さらにはクランク軸が回転した時に摩擦が発生する部分でもある。そのため、強度と剛性、回転の滑らかさ、耐久性が求められるパーツでもある。自転車の推進力を生む上でのインパクトや安全性を考えた時、強度・剛性・回転の滑らかさが優先される。近年登場しているセラミック製BBなどは、前の2つがある程度行き着いた結果として生まれてきたものであろう。

BBの変遷と新規格

従来、BBといえばスレッド(ねじ切り)方式が一般的であった。これは、フレーム側の受け口であるBBシェルとBBの外側にネジが切ってあるものであり、BBを回しながら押しこむことで装着が可能なものだった。後に登場する圧入(プレスフィット)式BBと比較して剛性は低いものの、着脱時にフレームに負担がかからない、構造上不具合が出にくい、耐久性が高いなどのメリットがあった。

フレームの素材の主流がカーボンのなるにつれ、BBにも軽量化と高剛性化が求められるようになった。そういった風潮の中、BBの新規格が次々に登場していくことになる。

BB30

BB30 Bottom Bracket / Glory Cycles

発端は、キャノンデール(Cannondale)が発案したBB30だった。それまでのネジ切り式BBの概念を覆し、ベアリングをそのままBBシェルに押し込んでしまう構造を提案した。BB86(後述)と比較して、太く短い形になっている(長さ68mmクランク軸系30mm)。この規格に適合したクランクセットを提供しているのは、スラム(SRAM)、キャノンデール(Cannnondale)、FSAなど数社である。

高い剛性を期待された一方、この規格を採用した自転車に乗る選手から、異音が出るという報告が相次いだ。構造上、0.1mmほどの遊びができてしまい、防塵・防水性に問題がある。長期間使用した際には構造内に水や砂などの異物が侵入してしまったり、遊びの影響からフレームの一部が削れてしまうことが原因であった。また、異音が出てしまう他にも、着脱の際にフレームに大きな負担がかかってしまうことが問題である。この規格のBBを外す時は、ハンマーで叩きださなくてはいけないのである。逆にこの規格のメリットとしては、軽量で剛性が高いことがあげられる。耐久性が低いが短時間の走行にはメリットが大きい、という点でプロ選手向きの規格であると解釈できる。スペシャライズド社が採用しているOSBBはこの亜種である。

PF30

Chris King PF30 Bottom Bracket / Glory Cycles

ベアリングを直接入れてしまう点を改善したのがPF30規格であった。この規格はスラム(SRAM)によって提唱された。ベアリングにスリーブを装着することで、異音の発生を防ぎ、防水・防塵性を向上させる構造だった。長さ、軸径などはBB30と同様であった。異音の問題は改善された一方、やはりフレームへの負荷という点でホビーライダーからの支持が得られなかった。

BB86

Breezer Venturi - Ultegra Build / Glory Cycles

ジャイアントやシマノが提唱した規格。PF30比較して、より長く細い構造となっている(長さ86mm軸系24mm)。

専用の圧入ツールを使って着脱を行う。ベアリングが入ったカップを、BBシェルに挿入する仕組みである。現在、「プレスフィットBB」といえばこの規格を指す。構造としては従来のスレッド式とほぼ同様のものを、ネジではなく圧入によって装着するものであるが、スレッド式と比べてフレームのBBシェルを拡大する構造になっており、より高い剛性が期待できる。

BB90

トレック(TREK)が提唱する独自規格。シェルの幅が90mmに広がっているため、より高い剛性が期待できる。BB30と同様の構造をしているが、内径を変えることでシマノのクランクにも対応している。トレックの上位モデルに採用される。BB86と比較すると、パーツ数の減少などの影響でより軽量である。一方、防水・防塵性に関してはBB86に劣る。

BBright

スペインのローター(ROTOR)が提唱する規格。スラム、FSAなどのコンポーネントメーカーが対応している。フレームメーカーとしてはサーベロ(cervélo)が採用している。右クランクにはチェーンリングが付随するため、負荷を左右均等にするためには、BBを左右非対称構造にしなくてはいけないという点に着目した。高い剛性を実現するために、BBシェルの幅を広くしている。

BB386

BBの長さはBB86、内径はBB30という規格。そのため互換性に長けているのがこの規格の特徴。ただし、BB30/PF30対応のクランクは長さが足りないため使用することができない。

従来はねじ切り式であったBBは、圧入式BBの登場により、このように規格が乱立している状態となった。各社とも様々な規格を提唱するがどの規格も決定的な存在とならず、このような状況に陥ったと考えられる。近年では、ライダーからのフィードバックや、構造上の信頼性、整備上の簡便さからねじ切り式に回帰する傾向も見られる。今後の動向に注意したい。

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現行ロードバイクの採用BB一覧

最後に、各社最新モデルのフレームがどの規格のBBに対応しているのかを表形式でまとめるので、参考にしてほしい。