今日にいたってスマートフォンの普及率が急増しているのは、皆さんもご存知であると思う。スマートフォンの普及率が上がった背景には、そのモダンなデザインと多様な機能性が挙げられるだろう。そんなスマートフォンだが、実は2008年以前、つまりスマートフォンが発売される前から日本では似たような商品があったのをご存知だろうか。それがPDAだ。スマートフォンの最新情報をお伝えするのも良いが、今回は一回足を止めて、当時の商品を振り返ってみよう。
Willcom W-ZERO3[es] / yoppy
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PDA、携帯情報端末とは
2008年、AndroidであればXperiaなど初めて今の概念のスマートフォンが誕生したのだが、これ以前に似たような物があったのである。 それがPDA、携帯情報端末である。このPDAの代表として 2006年に発売されたW-ZERO3という機種がある。これはSHARP、WILLCOM(今のワイモバイル)、Microsoftが三社共同開発し、当時無料通話で話題となったWILLCOM向けに製造された端末である。
その当時、かなりの人気で、予約のために数百人の行列をつくるヒット商品であり、国民全体に広がる商品では無かったものの、ネット上でも話題となった。内臓のキーボードで文字入力できる点が当時のガラケーと大きく異なっていた。
PDAの機能とは何かといえば、インターネット、静止画像検索、TODO、カレンダーなどを閲覧することができること。もちろん、電話、メールも可能で、WiFi、カメラも使える。基本的な機能性は今のスマートフォンと変わらないのである。
では今のスマートフォンとPDAの大きな違いとは
IS02 vs W-ZERO3 / masatsu
では、実際に現行スマートフォンとPDA、何が違うのか説明していこう。
基本性能のレベルが違う
それは基本的な端末のスペックの高さ。実はPDAはスケジュールの表示などがとても高速であった。しかし、別にPDAの性能が良かったからではない。あらかじめソフトウェアの動作がPDA上で軽くなるようにシステムを最適化していたのである。PDAは今のスマートフォンのように基本スペックと呼ばれる部分は優れていなかった。
アプリプラットフォームが存在しない
App Store on Smartphone / IntelFreePress
もう一つ違いがあるといえば、スマートフォン特有のアプリプラットフォームである。当時のPDAはゲームは出来たものの、今のスマートフォンようにアプリを通じてプレイは出来ない。
まず一つ目にPDA用のゲームを開発する人がそんなに多くなかったという点である。今はスマートフォンは老若男女いろんな人が所持しているスマートフォンだが、PDAは訳が違う。従来の携帯に多様な機能を搭載した最新機種はとても高価な物であったため、一部のビジネスマンが多く使っていた。
今はゲームなどのアプリが開発されているためビジネスマンもツムツムなどプレイするようになったが、当時はiPhoneでいうApp Store、AndroidでいうGoogle Playのようなアプリプラットフォームがなかったため、アプリ開発がさほど進まなかった。
ディスプレイ表示のクオリティが違う
W-ZERO3 booting... / matsumur
もうひとつの違いとしてはグラフィックアクセラレータの搭載である。聞いたことのない単語かもしれないが、わかりやすく説明していこう。前にも書いたが基本スペックについて、PDAにおいてはCPUやメモリ(RAMとも言う)が技術がさほど発展していなかったため高性能ではなかった。なので画像処理がうまく行かなかった。
そこでスマートフォンにて搭載されたのがラフィックアクセラレータ。要は画像や動画を表示するための補助機能である。これがあるのとないのでは、ディスプレイ表示のクオリティに大きな差が出てしまう。CPUは様々な処理を実行できるが、万能ではない。特に画像処理はCPUの苦手分野であり、かなり負荷がかかってしまう。
皆さんもゲーム中はスマートフォンが熱くなったことはないだろうか。そんな時に手助けしてくれるのがグラフィックアクセラレータである。これによって今のゲームは大きな負荷がかかること無くプレイ出来るようになったので、続々とアプリ開発が進められている。大きな違いだ。
PDAはスマートフォンと言えるか
W-ZERO3 / jetalone
じつはPDAはスマートフォンであるとも言える。正式にはスマートフォンという概念にPDAが吸収されたと言う感じである。もともとPDAという領域があったが、iPhoneやAndroidの登場により吸収されてしまったのである。しかし、基本機能は似たようなものなので意識して区別する必要はないのかもしれない。
そもそもガラケーと言われた日本の携帯電話はガラパゴスケータイの略であるように、多様な機能をまとめあげた携帯電話であった。その機能性自体はスマートフォンに劣るものの、海外の携帯に比べると高機能だったのだ。となると端末それ自体としては画面内のキーボードや液晶ディスプレイの大きさが異なっていた程度と言えるかもしれない。
しかしながら、その高機能性に加え、内臓キーボードを備え、大きなディスプレイを持ったPDAは広まらなかった。結局、iPhoneのようにアプリプラットフォームとセットでマスに訴えかけていったわかりやすい商品でなければ、普及は難しかったのだろうか。