世界の時計産業の中心地と言えばスイスだろう。しかし、彼の地に勝るとも劣らない技術力と商品開発力を誇るのが、日本である。そして、その日本の時計産業界の先頭を走ってきたのが、セイコー(SEIKO)だ。
セイコーは、日本で初めて腕時計を作った企業であり、世界で初めてクォーツ腕時計を開発した企業である。2004年には、やはり世界で初めて「スプリングドライブ」の時計を開発するなど、セイコーは時計の技術開発において目覚ましい実績を持つ企業である。また、機械式時計の分野においても、ひげゼンマイを含む全ての部品を自社で一貫生産可能な、世界的にも稀有なマニュファクチュールの1つでもある。
ここでは、日本が世界に誇るべき時計ブランドであるセイコーの型番とモデル名との関係、型番の特徴などについて説明していく。なお、セイコーの腕時計の型番については、セイコーウォッチ株式会社の公式サイトと、同社が運営するグランドセイコーの専用サイトを参照している。
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セイコーの型番について
ひと口にセイコーと言っても、運営するブランドだけでも多岐にわたり、商品点数も膨大である。その全容を把握するのも容易ではないので、ここでは主要なブランドをピックアップして、その型番について調べていく。
グランドセイコーの型番
ブランドとしての誕生は1960年である。「世界に挑戦する国産最高級の腕時計を作る」という志のもとに発足した、文字どおりセイコーの最高峰ブランドが「グランドセイコー(Grand Seiko)」だった。
しかし、2017年には通常のセイコー製品とは別建てになり、文字盤からもSEIKOの文字が外されることも発表された(ただしブランド名の一部としては残らざるえない)。そうなると、当記事内で説明してしまうことに若干の齟齬が生じてしまうが、セイコーのブランドの1つということでご容赦いただきたい。
- ①SBGR307:SS/cal.9S68(自動巻)/日付表示/パワーリザーブ最大72時間
- ②SBGC221:チタン+セラミック/cal.9R86(スプリングドライブ)/クロノグラフ
- ③SBGD001:プラチナ/クロコダイル/cal.9R01(スプリングドライブ)/パワーリザーブ約192時間(約8日間)
- ④SBGX283:SS/cal.9F62(クオーツ)/日付表示
- ⑤SBGH255:チタン/cal.9S85(自動巻)/回転ベゼル付きダイバーズ
SS=ステンレススチールで、素材の記載が他にないモデルは同素材のブレスレットのモデルである。③は驚異のパワーリザーブ約8日間を実現したスプリングドライブムーブメントを搭載。型番001ということは、その最初のモデルということか。④はクオーツムーブメントの最高峰と呼ばれる9Fキャリバーを搭載。⑤は本格的なダイバーズウォッチである。
ムーブメントによって決まるグランドセイコーの型番
ブランドとしてはセイコーから独立したが、冒頭4文字のアルファベットと3ケタの数字という組み合わせ自体は、他のセイコーブランドと変更はない。グランドセイコーの型番の例を5つ出したが、まず冒頭文字が「S」であることは他のセイコーの製品とも共通している。
さらに、グランドセイコーの型番の冒頭4字のアルファベットは、ムーブメントによって決まってくると思われる。その例を挙げるとと以下のようになる。
- キャリバー9S61:STGR,SBGR
- キャリバー9S68:SBGR
- キャリバー9R01:SBGD
- キャリバー9R86,9R96:SBGC
- キャリバー9F61,9F62:SBGX
時計の素材や形態、特徴、機能に関わらず、同じムーブメントを使用していると、ほぼ冒頭4文字のアルファベットは同一となる。また、キャリバー9F61と9F62の違いは、日付表示があるかないかのみのため、同じ型番4文字となっていると考えられる。
ムーブメントへの強いこだわりがあるグランドセイコーらしい型番の構成と言えるが、アルファベット1文字1文字がそれぞれどんな意味を持つかどうかは判別がつかなかった。グランドセイコー独自のスプリングドライブ、9Rムーブメントで駆動する時計の型番は、他に「SBGA」と「SBGE」がある。
また、女性向けモデルは「STGF」がクオーツ駆動で、「STGR」が機械式で統一されていた。
クレドールの型番
クレドールはフランス語で「黄金の頂き」の名を持つ、セイコーの中の最高峰ブランドである。金、プラチナなどの貴金属や、厳選された素材だけを使用していて、日本の美意識を凝縮させた時計デザインを目指しているという。このブランドにもSEIKOの文字は入らない。
- ①GCAZ061:SS/クオーツ
- ②GBAQ961:WG/クロコダイル/cal.6870(手巻)/エナメル文字盤
- ③GCLP995:SS/cal.7R87(スプリングドライブ)/パワーリザーブ表示
- ④GBAR013:WG/クオーツ/縦36.8mm×横26.3mmのスクエアモデル
- ⑤GBCC996:PG/クロコダイル/cal.6830(手巻)/彫金装飾のトゥールビヨン
- ⑥GSAW989:SS/クオーツ/「ギメル」コラボモデル
上記中WG=18Kホワイトゴールド、PG=18Kピンクゴールド。素材名が1つのモデルは同素材のブレスレットのものである。①は20万円台、⑤は1000万円を超えるバラエティ溢れるラインナップで、商品点数も200点以上ある。
クレドールは型番そのものを商品名として記載しており、その特徴としてはグランドセイコー同様にアルファベット4字+3ケタ数字で統一されている。冒頭4字のアルファベットの組み合わせの意味はグランドセイコーほど厳密にムーブメント毎の統一感はない。ただし、冒頭に「G」が入ることは共通している。
アストロンの型番
世界初のクオーツウォッチ、「クオーツ アストロン」の流れを汲む「アストロン」シリーズは、腕時計の最新ハイテク機能とも言えるGPSソーラーウォッチの専用ブランドである。
- ①SBXB123:チタン+セラミック
- ②SBXB143:SS(黒)/シリコン/ノバク・ジョコビッチエディション限定5000本
- ③SBXB101:チタン+セラミック
- ④SBXB003:チタン+セラミック/クロノグラフ
アストロンシリーズの型番は、基本的に「SBXB」で始まる。3ケタの数字はモデル毎に任意に振られている。①は「エグゼクティブライン」、②が限定モデルである。③と④はムーブメントが小型化した「8Xシリーズ」のモデルで、④はクロノグラフである。
その他のシリーズの4字の型番
以下ではここまで紹介してきた以外のセイコーのウォッチシリーズの型番冒頭アルファベットを、ランダムに紹介していこう。
- ①プレサージュ:SARX/SARY/SARK/SARW
- ②ガランテ:SBLM(機械式自動巻ムーブメント)/SBLA(スプリングドライブ)
- ③ブライツ:SAGA/SAGZ
- ④メカニカル:SARB
- ⑤ルキア:SSVM/SSVW/SSVH/SSQV/SSQW/SSVS/SSVR/SSVV/SSVN
- ⑥ドルチェ&エクセリーヌ:SADL/SWCQ/SWCW/SADM/SWCP/SADZ/SWDL/SACK/SACM
- ⑦プロスペックス:SBDJ/SBDC/SBDL/SBED/SBDN/SBEE/SBEM/SBEX/SBEK/SBEL/SBEH/SBDX/SBBN /SBEF/SBDH/SBEB
- ⑧セイコー プルミエ:SCJL/SRJB
- ⑨セイコー セレクション:SBTM/SWFA/SSDY/SWFH/SBPX/STPX/SBPJ/SSDY/SBPJ/SBPY/SBTB/STTC/SBTM/SCDC/SCDP/SSDA
上記のうち、ルキアシリーズは全て女性仕様のモデルで、シリーズ発足時からSSで始まる型番が振られているという特徴を持つ。全体としても冒頭がSSとSWの型番は女性向けと見られる。
セイコー腕時計の型番の特徴
前章で紹介してきたように、ブランド体系としては別枠となったグランドセイコーも含めて、セイコー腕時計の型番には明確な統一感はあるものの、型番からモデル名を類推したり、アルファベットや数字自体に意味が見いだせるような型番ではないようである。
グランドセイコーはムーブメントから選ぶ感覚で
クオーツ駆動の腕時計も含めて、全てのモデルが国内の2つの時計工房から生み出されるグランドセイコーは、そのムーブメントによって型番が決まってくるという分かりやすさがあった。
スイスの腕時計メーカーでさえ出すことをためらう厳しさで知られるスイス・クロノメーター規格(COSC)よりも、さらに厳しい独自規格の「グランドセイコースペシャル(GSS)規格」を持つ「9Sメカニカル」か、先進の「ツインパルス制御モーター」搭載の「9Fクオーツ」か、世界初「スプリングドライブ」機構の「9Rスプリングドライブ」の、どれを選ぶかで、おのずから型番が決まってくる。メカ好きの多い日本人にもうってつけのブランドと言えるだろう。
それぞれのムーブメントについての解説と搭載モデルは、グランドセイコー公式サイトに詳しく掲載している。
「G」から始まるクレドール
セイコーの一連の製品群からは別枠となったのは「グランドセイコー」だが、「クレドール」も当初よりSEIKOの文字は出さず、「G」から始まる型番も他のセイコー製品とは一線を画している。シリーズの発端は貴金属を素材とする「特選腕時計」だけに、「クレドール」は時計の機能よりも、デザインや装飾性、芸術性で選ぶべき製品群と言えよう。
スプリングドライブのミニッツリピーター「GBLS998」(3500万円)、同じくスプリングドライブのソヌリ「GBLQ998」(1600万円)、さらにはトゥールビヨン彫金限定モデル「FUGAKU」の「GBCC999」(5000万円)など、技術と工芸の粋を集めた作品群(マスターピース)は、一見の価値がある。
1つの型番で統一されているシリーズもある
セイコーには冒頭4文字の型番が統一されているシリーズもある。中でも、ソーラーGPSウォッチの「アストロン」シリーズは、全ての製品が「SBXB」で統一されている。そのため、その点ではわかりやすいと言えるだろう。
個性的なデザインが特徴のガランテも、機械式自動巻ムーブメントの「SBLM」とスプリングドライブの「SBLA」で統一されている。また、ケースが小さめの女性向け仕様のモデルの型番は、「SS」あるいは「SW」で始まるという特徴も見られた。
セイコーの型番の確認方法
では、セイコーの型番の規則性などについて説明してきたが、どこでその型番を確認することができるのか紹介しよう。
セイコーの型番は基本的に時計の裏側で確認ができるはずである。また、保証書にても確認ができるかと思われるのでわからなければ保証書を見るのも一つの手だろう。
セイコーの型番を知っておくことの利点
セイコーの型番について本記事で紹介してきたが、この型番の知識は一体どこで役立つのだろうか。意外と型番を知っているか知っていないかは重要になってくるので是非以下を参考に今後役に立てて欲しい。
修理に出すときに便利
まず、修理に出すときに便利だと言えるだろう。修理業者によっては型番を求められることもある。そうなったときに型番がどこに記載されているか知らない、わからないとなってしまった場合非常に困ってしまう。そうならないためにも型番を把握しておこう。
たくさんの情報を得ることができる
型番を把握しているとセイコーホームページの情報だけでなく他から様々な口コミ情報なども得ることができる。もちろんGoogleやYahooなどの検索エンジンから出てくるブログなどの口コミも参考になるが、近年流行しているSNSでの口コミも参考にすることができる。
また、SNSはブログよりもより生に近い声と言えるだろう。簡単につぶやくことができ、多くの人が使っているため意外と情報収集には便利である。ブログとなると、その商品の紹介などの営業の可能性も考えられる。SNSでもあり得るが、より多くの人の投稿を参考にできるので人々の感想を比較することもできるだろう。
もし、SNSで口コミを見てみたい場合、instagramやtwitter、facebookであれば「♯」、いわゆる「ハッシュタグ」を検索したい言葉の前にをつけることで検索することが可能である。型番の前に♯をつけると検索しやすいだろう。
中古で買うときに便利
新品でセイコーの時計を買う人もいれば、「新品は手に届かないから」「ビンテージのセイコーの時計を購入したいから」、などの理由で中古での購入を好む人もいるだろう。
もし中古で購入をしたいのであれば、新品で購入するよりもさらにこの型番の重要性は高い。なぜなら、中古で購入するということは新品とは違い、売り手、一つ一つの時計そのものによりその値段や品質が異なってくるからである。それだけその商品について詳しく、知識を持っていることが賢い買い物をするのに重要である。
その情報収集にまず型番が必要不可欠と言えるだろう。価格相場を調べたいとき、売っている業者探しでまず必要になってくる。また、個人での売買となるフリマアプリやネットオークションを検討している場合は型番で商品検索をすることで簡単に商品を見つけることができるだろう。
しかし、ここで一点注意点がある。もし個人での売買となる方法で中古のセイコーの腕時計の購入を検討しているのであれば、必ず型番やその他最低条件と考えられる情報(使用年数、購入年月、商品状態など)の記載がある売り手から買うことが大事な点である。情報が少ない場合、動作しない、思っていた商品と違った、偽物であったという可能性もある。必ず型番が正しいものかも写真などで確認をあらかじめしておいた方が良いだろう。
しかし、フリマアプリやネットオークションなどは個人でのやり取りで全て自分の責任となり、保証や企業が助けてはくれないので危険が伴う。このような方法での購入を検討している場合は十分にそのことを考慮して購入するようにしよう。
中古で売る場合に必要不可欠
中古で買う側の場合知っておくことが重要なのはもちろん、売る側でも必要不可欠と言える。中古買取業者に出すときには型番を確認されることが多いだろう。また、ネットオークションやフリマアプリで売る場合も必ず型番含む必要な情報は投稿に含むようにしよう。自分が買い手だった場合に知りたいことを記載するのがおすすめだ。
日本にはSEIKOがある
手軽に購入できる価格の時計から、そのメカニズムを追求した時計、そして贅を尽くした超高級時計まで、あらゆるニーズに対応できるラインナップをそろえているセイコーの腕時計。同じメーカーの中にこれだけのバラエティに富んだ製品があるかと思うと、改めて驚かされるものだ。
上記にて見ていくと、メカニズムやハイテクで選ぶなら、「グランドセイコー」や「アストロン」。デザインや使い勝手で選ぶなら「クレドール」や「ルキア」といった選択になるだろうか。ブランド(シリーズ)は様々あるが、「S」あるいは「G」で始まるアルファベット4文字の型番は、他のメーカーの型番にはあまりない形式でもあり、覚えやすくもある。
スイス製の高級腕時計も素晴らしいが、日本のメーカーも負けず劣らず高度な技術力を持っていることを忘れないでおきたいものだ。