古物商の資格申請は年々増加している。平成24年には、古物商許可件数が古物商726,085件、古物市場主1,584件であったのに対し、平成28年時点では、古物商774,157件、個物市場主1,566件に増加している。毎年おおむね10,000件ずつ登録が増えているようだ。
このように、古物を取り扱うには、古物商の登録が必要不可欠だ。もし仮に無許可で営業をしようものなら、「3年以上の懲役」または、「100万円以下の罰金」もしくはその両方の罰が科せられてしまう。
今回は古物商資格申請に必要な資料と手順を確認していきたい。
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古物商の登録に必要な資料
古物を扱うにあたり、営業所を管轄する都道府県公安委員会の許可を得る必要がある。ここで必要となる手順を確認しておこう。
そろえるべき書類は個人と法人で異なる
届け出をするにあたって、必要書類をそろえる必要がある。この書類は個人と法人で異なるようだ。
個人の場合に必要な書類
個人の場合に、以下の許可申請書を記述する必要がある。
- ・別記様式第1号その1〔ア〕
- ・別記様式第1号その2
- ・別記様式第1号その3
また、添付資料は以下のものをそろえる必要がある。
- ・住民票
- ・身分証明書
- ・登記されていないことの証明書
- ・略歴書
- ・誓約書
- ・(営業所の賃貸借契約書のコピー)
- ・(駐車場など保管場所の賃貸借契約書のコピー)
- ・(URLを届ける場合にはプロバイダーなどからの資料のコピー)
これらは、申請日から3か月以内のものである必要がある。
法人の場合に必要な書類
一方法人の場合に、個人に必要な上記の書類に加えて許可申請書として、別記様式第1号その1〔イ〕が加わるの書類は法務局でしか入手することができない。以下のリンクからも飛ぶことができる。また、添付資料は個人に加えて、法人の場合には「法人の定款」を用意する必要がある。
つまり、許可申請として以下のものを全てそろえる必要があることになる。
- ・別記様式第1号その1〔ア〕
- ・別記様式第1号その1〔イ〕
- ・別記様式第1号その2
- ・別記様式第1号その3
また、添付資料は同様に申請日から3か月以内の以下のものをそろえる必要がある。
- ・法人の定款
- ・住民票
- ・身分証明書
- ・登記されていないことの証明書
- ・略歴書
- ・誓約書
- ・(営業所の賃貸借契約書のコピー)
- ・(駐車場など保管場所の賃貸借契約書のコピー)
- ・(URLの使用権原疎明資料)
このように、そろえるべき書類は非常に多い。早くから準備をおこなう必要があるだろう。
各書類の提出意図
古物商の許可にあたって提出する書類は、許可を受けられる人物であるかどうか審査するために必要である。 各書類の内容と意図を確認していきたい。
別途取りに行く必要がある「登記されていないことの証明」とは?
この書類は、成年被後見人または被保佐人でないことを証明するものだ。
「登記されていないことの証明」で何を確認している?
古物営業法第4条1では、以下の者に対して、古物商の許可を受けられないことになっている。
“成年被後見人もしくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの”(古物営業法4条1)
具体的に、「成年被後見人もしくは被保佐人」とは、精神障害などで判断能力に欠けるとみなされる人のことを指している。また、「破産者で復権を得ないもの」というのは、破産して免責を受けていない人のことを指している。最近は、破産宣告をすると、それと同時に免責許可が下りることが多いようだ。
入手方法は法務局のみである
証明申請ができる対象者は、本人もしくは本人の四親等内の親族およびそれらの方から委任を受けた代理人などに限られている。また、この書類は法務局でしか入手することができない。法務局のサイトからダウンロードすることができる。
また、近くに法務局がない場合には、郵送で申請する方法がある。この場合に、長形3号の返信用封筒に、82円切手を貼ったものを用意する必要がある。さらに、提出し、証明書を取り寄せるにあたっては、戸籍謄本・抄本、住民票などの写しを添付する必要があるため、「登記されていないことの証明」を準備するよりさらに前に、住民票などを取得しておかなければならない。
なお、現地に行く場合には、証明書の発行可能時間が、平日の8時30分から17時15分までと決まっているため、余裕を持って行く必要がある。料金は300円の収入印紙となっている。所要時間は10〜20分程度らしい。
略歴書とは?
これは履歴書のようなものであり、許可申請からさかのぼって氏名、住所、生年月日、本籍地のほか、直近5年分の職歴や学歴を書くものである。
略歴書で何を確認している?
賞罰の欄があり、犯罪履歴がある場合に記載する必要がある。これは、古物商の許可を与える要件を満たしているか確認するために存在する。しかし、届出先が警察である以上、虚偽を報告することは不可能だ。犯罪歴があるからといって、必ずしも許可が取れないわけではないため、素直に記載しよう。古物商の許可が得られないのは、古物営業法4条2において、以下のように定められている。
“禁錮以上の刑に処せられ、又は第31条に規定する罪もしくは刑法(明治40年法律第45号)第235条、第247条、第254条もしくは第256条第2項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者”(古物営業法4条2)
つまり、以下の者は許可を受けられないことになる。
- ・「死刑」「懲役刑」「禁固刑」の刑を受けて5年以上が経過していない者
- ・「背任罪」「遺失物横領罪」「盗品など有償譲渡受け罪など」「占有離脱物横領罪」「窃盗罪」のいずれかの犯罪で、「罰金刑」を受けてから5年以上が経過していない者
- ・執行猶予中の者
窃盗罪に対して欠落要因としたのは、2018年の古物営業法改正以降である。古い情報で記載されていないからといって、許可が通るわけではないため注意したい。また、古物営業法第4条7では以下のように定められている。
“第24条の規定による許可の取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該取消しをする日又は当該取消しをしないことを決定する日までの間に第8条第1項第1号の規定による許可証の返納をした者(その古物営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの”(古物営業法第4条7)
つまり、過去に一定の「古物営業法違反」で許可を取り消されてから、5年以上が経過していない者も許可を受けられない。
入手方法は警察署のサイトである
申請者が法人の場合に、監査役を含む役員全員分を提出する必要がある。書類は、各警察署のサイトで入手が可能だ。
仮に5年以上同じところで勤務している場合には、5年前の日付ではなく、勤務した年を記載する。仮に無職・休職である場合にも、その旨を記載する必要がある。
誓約書とは?
この書類は、申請者または申請者の役員が、人的欠落事由に該当しないことを制約するためのものである。
誓約書で何を確認している?
古物商における人的欠落事由は、上記のように「成年被後見人もしくは被保佐人」でないことと、所定の犯罪歴があること、古物営業の許可の取り下げから5年を経過していないものに加え、以下のように定められている。
- ・住所の定まらないもの “住居の定まらない者”(古物営業法4条5)
- ・営業に関して、成年者と同一の能力を有しない未成年(例外として相続人は許可が降りる場合がある) “営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人であって、その法定代理人が前各号及び第10号のいずれにも該当しない場合を除くものとする”(古物営業法第4条8)
- ・集団で暴力的な不法行為をおこなう恐れのある者もしくは暴力的不法行為を常習でおこなう可能性のある者 “集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものをおこなうおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者”(古物営業法4条3)
- ・“暴力団員による不当な行為の防止などに関する法律(平成3年法律第77号)第12条もしくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの”(古物営業法4条4)
警察署のサイトで入手可能
この書類は、略歴書と同様の場で入手することができる。申請者と法人役員で誓約書が異なるため注意が必要だ。欠落事由に当てはまっていないことを確認した上で、サインをすれば完了する。
URLの使用権原疎明資料とは?
ホームページなどで古物を販売する場合には、URLの登録が必要となる。その際の証明書となるのが、URLの使用権原疎明資料である。
URLの使用権原疎明資料で何を確認している?
これは、インターネット上の売買をするに当たって、申請者がURLを使用する権利があることを明らかにすることを目的としている。そのため、各自で証拠となるものを集めなければならない。
入手方法は複数存在する
URLの使用権原疎明資料は、以下のいずれかを用意する必要がある。
- ・プロバイダなどが発行したドメイン割当通知書などの写し
- ・WHOIS検索したもののプリントアウト
- ・URLのスクリーンショットと理由書
ここでドメイン名もしくはIPアドレスを確認すると、登録者名、登録年月日、有効期限、状態、最終更新の情報が表示される。 また、URLのスクリーンショットと理由書は、原則としてドメイン割当通知書などの写しが見つからない場合で、なおかつ「WHIOS検索」で事業者名しか出てこなかった場合のみである。
スクリーンショットのみでは証明として効力が薄いため、プロバイダの割当通知書が提出できない理由として、所有者の使用承諾書や契約書といった理由書の提出が必要となる。
届け出をしたあとにしなければならないこと
URLの使用権原疎明資料を提出したあとは、トップページに以下の3つを記載しなければならない。
- ・許可を受けた人の名前、名称
- ・許可を受けた公安委員会の名称
- ・許可番号
あるいは、上記の情報に飛べるようにトップに「古物営業法に基づく表記」として、リンクを設定する方法でも良い。
代行業者に依頼する場合の費用
古物許可申請書は、注意事項をよく読んでその通りに記載すれば自分でも出すことが可能だ。しかし、書類を取り寄せるにあたって営業時間に懸念があったり、開業までに時間がない場合に失敗リスクがあったりすることもあるだろう。
また、すでに他の人が営業所として登録している場所に、新たに営業所として登録しようとしている場合など、複雑な事情が絡む可能性がある場合には、個人では時間がかかってしまったり、適切な対応がわからなかったりする可能性がある。
こういった際には、代行業者へ依頼することも可能だ。ネット上で検索をかけると、数千円から依頼できる業者が見つかる。しかし、多くの場合に悪徳業者であったり、一部だけを代行していたり、追加料金がかかることで結果的に高くなったりする。
古物許可申請書の手続きは、行政書士が専門としていることから、専門家に任せるのが最も安全だと言えるだろう。行政書士も一部代行をおこなうサービスから、フルサポートで誓約書など個人が必ず書かなければならない部分以外の全てを代行してくれるサービスもある。
相場は4〜5万円と言われており、調べた限り3万円代を切る業者は見当たらなそうだ。安いことが必ずしも良いとは限らないが、多くの場合に無料相談をおこなっているため、いくつかの業者を比較しながら、自分に合う業者に依頼すると良いだろう。
まとめ
古物商の書類は非常に多いが、古物営業法に基づいて、許可を受けうるに値する人物かどうか判断するために必要なものである。そのため、嘘偽りなく記載していく必要がある。
各書類には注意事項があり、複雑に感じる人も多いであろうが、基本的にはきちんと書き方に従って記載すれば難しくない。しかし、取り寄せなどの時間的な問題やイレギュラーの発生によって、許可申請が困難を極める場合もあるだろう。
こういった場合には、行政書士に依頼するのも1つの選択だ。費用はおおむね4〜5万円と高価になるが、開業までに時間がない場合なども、許可申請がないと開業できない事態に陥るため、確実に1発で許可申請を必要とする場合なども合わせて検討すると良いと考えられる。
この記事を監修した専門家