遺産相続となると、いくら今まで良好な親戚関係を築いていた親族同士でもトラブルになることは十分に考えられる。実際に、遺産相続が引き金となり親族との縁を切ったという話はどこでも聞く話であり、「お金の切れ目が縁の切れ目」なんて言葉に妙に納得してしまうほどだ。こういったトラブルを起こさないためにも、「生前贈与」や「遺言書」などを用いて話し合いをしておくべきなのだが、実際はそうもいかず被相続人が亡くなってから遺産相続と向き合う人が多いのも事実なのだ。そんな遺産相続でありがちなパターンと、実際にそれが起きてしまった時の対処法など、これから遺産相続に関わる可能性のある人に、ぜひとも抑えておいてほしいポイントを説明したいと思う。
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遺産相続に関するトラブルは年々増えている
遺産相続に関するトラブルはここ10年あまりで約30%も増えていると言われている。 少し古い数字になるのだが、
- 昭和60年:5,141件に対し、
- 平成25年:12,263件
約2.39倍にも数字が跳ね上がっているのだ(※平成25年度司法統計)
確かに、遺産相続というフレーズは一般的に聞くフレーズになりつつあるし、それだけトラブルになることが増えているという結果なのだろう。
そもそも遺産相続のトラブルが起こる場合というのは、どのようなケースが該当するのか詳しくみていきたいと思う。これに該当する人は、遺産についてどうするべきか早い段階から検討することが重要になる。遺産を放棄するつもりであればトラブルになることもないかもしれないが、いざとなってからでは取り返しが付かない場合も多いことを頭に入れておく必要があるのだ。
兄弟姉妹の遺産分配の割合によるトラブルの場合
このパターンが遺産相続のトラブルでは一番多いものになる。複数人の兄弟がいると誰がどのぐらいの配分で遺産を分配するのかについてトラブルなく決まることの方が少ない。
- ・兄弟のいずれかが家を買う時に頭金を出してもらった
- ・両親と一緒に住んでいて生活費の援助を受けていた
- ・両親の介護をしていたから「寄与分」が欲しい
- ・両親にかかる費用をすべて賄っていた
- ・被相続人の遺言で長男にすべての遺産を譲り渡すと書いてあった
- ・被相続人の持っている物件に兄弟のいずれかが住んでいる
- ・そもそも兄弟の仲が悪い、話し合いにならない
- ・兄弟の中に養子や認知した子どもがいるなど事情がある
など、兄弟間における遺産相続のトラブルはいくらでも事例がでてくる。 今まではお正月になると親戚一同で集まっていた間柄でも、遺産相続のトラブルになり、絶縁状態になることも十分にあるのだ。特に、兄弟姉妹の関係でも両親の遺産相続の問題が浮き彫りになる時期にはそれぞれに家族があり、お金が必要になるのだ。
こういった兄弟姉妹の遺産相続のトラブルは、本来であれば被相続人だって望んでいた結果ではないだろう。せっかく兄弟姉妹として生を受けたのだから生涯仲良くしてくれた方が嬉しいと思うものだ。
遺産相続のトラブルを防ぐためにも生きている間に、「誰にどのぐらい遺産を分配するのか」を話し合い、公正証書を作り保管することをおすすめする。。被相続人の想いや希望が尊重されるので、兄弟姉妹間でトラブルにならないように事前に準備をしておきたいものだ。
特に両親が認知症になってしまうと、遺産に関する管理能力がないとみなされ、余計に手続きが大変になってしまうこともあり、希望通りの分配にならないケースもある。認知症の場合、進行度においては遺言書の意味もなくなってしまうので、両親が元気なうちに準備をしておこう。
兄弟姉妹の一人が遺産を独占している場合
本来であればこういったトラブルが一番嫌なものになるのだが、遺産相続の昔の法律や、自身が親の世話をしていたことで勘違いを起こしてトラブルになるケースがある。
昭和20年頃まで「家督相続」と呼ばれているものがあり、被相続人である戸主が亡くなった場合、兄弟の代表である長男がすべての遺産を相続、継承することが決まりとされていた。しかし、今ではその法律はなくなり、長男が遺産をすべて独占することはできない。万が一、長男が遺産を独り占めしようとしている場合「遺留分減殺請求」といった方法を訴えることができるようになっているのだ。
長男夫婦の場合、両親の面倒を見ている場合が多いだろう。それでも、法律上では遺産を独り占めすることはできない。一定の条件を満たす「法定相続人」に対して最低限の相続分を保証することが決まっており、これは遺言書の有無に関わらずおこなう必要があるのだ。
「配偶者」「子(代襲相続人)」「直系卑属」に該当する場合は遺留分を請求することができる。ただし、被相続人の兄弟姉妹関係に関しては遺留分の請求はできないので注意したいところである。
被相続人の資産が多い場合
被相続人の資産が、「現金」「土地」「建物」「有価証券」などのいくつにも分類されている場合は、トラブルになる場合が多い。というのも、「土地」や「建物」のようにどのぐらいの資産価値があるのか不明瞭なものはどのように分配すべきか揉めることになるからだ。
相続人の中には、こういった現物の資産はいらないから売って現金にしたいと考える人もいれば、ここに住みたいと思う人もいるだろう。「土地」や「建物」を相続する場合、高額な税金がかかること、または有利になるなど、さまざまな法律が引っかかってしまうのだ。
しかも、こういったトラブルは被相続人が亡くなってからになると、どうにも解決しずらい問題になり、結局調停や裁判を起こすようになる。
被相続人の資産が多い場合、「どの資産をどのように分配するのか」やはり事前に話し合いをすることでトラブルを回避することに繋がる。遺言書には具体的に「地番」などの記載もおこない、被相続人の死後、どのように分配するのか決めておこう。
土地や建物を分配する方法としては以下のようなものがある。
- ・土地をそのまま分ける「現物分割」
- ・土地を売ることでお金にする「換価分割」
- ・建物を相続した人が他の相続人にお金を支払う「代償分割」
などの方法があり、覚えておきたいものである。
また、建物をそのまま残し相続人全員で共有する「共有分割」などもある。住居というよりは別荘などにこの方法を用いることが多いといえるだろう。
両親のお世話をしていたことによる寄与分の場合
長男夫婦など、両親のお世話を長期間行っていた場合、「寄与分」として請求することができる。ただし、これは「法定相続分」に該当する金額が他の兄弟と同じ金額の場合、納得できないと調停などを通し相手に請求することができるというもの。
この寄与分に関しては基本的に「法定相続人」が訴えることができるもので、「法定相続人」の妻がお世話をしていた場合は認められないケースもある。被相続人に対してどのぐらいの貢献度があったのかどうかでこの寄与分が請求できるかどうかが決まるので、老人ホームに入っていてたまに洗濯を取りに行った、必要なものを届けに行ったなどの主張は寄与分としては認められないケースが多い。
一緒に住んでいて献身的なお世話をしていたこと、それに対して周りも認めているという事実があってはじめて寄与分が成立することになるのだ。具体的に例をあげるとすると、
- ・被相続人の介護が必要になり、相続人の妻が仕事を辞めてお世話をしていた
- ・被相続人の事業を長男が手伝っていた、資金の貸し出しがあった
などの条件が揃うことが必須条件となる。寄与分に関してはどんなに訴えたところで認められない場合も多いので、そこは頭に入れておく必要がある。
こういったトラブルは自分たちで解決できる?
遺産相続に関するトラブルは多く、自分たち親族による話し合いで解決できるケースと、すでにこじれてしまい専門家の仲裁がないと話し合いが困難になるケースがある。
例えば、長男が遺産を独り占めしてしまい話し合いに応じてくれない場合、どんなに周りが説得しても聞く耳を持たないだろう。むしろ、長男からすれば周りのことを無視していれば遺産が手に入るのだから粘るに決まっているのだ。
話し合いに応じてくれない、絶縁宣言されたなど、すでに関係性がこじれている場合は、無理に一人で立ち向かうことをせずに専門家の力を借りるようにしよう。そうしないと余計なトラブルを引き起こすことになりかねないのだ。
いくら兄弟姉妹であってもお金に関するトラブルは大きくなるものなので、こういったトラブルが起きた場合は一人で解決することが難しいのは心得ておく必要がある。
また、弁護士に相談する場合、市区町村で「無料相談」などを行なっているので、一度相談してみるといいだろう。一人で悩むよりはこういったことは専門家の力を借りて、解決方法を導いて貰う方が賢明だ。ただし、市区町村の「無料相談」の場合、輪番制になり相続に強い弁護士がまわってこない可能性もあるので十分に注意したい。
遺産相続に関するトラブルは一見たくさんの事例があるように見えて、ほとんどがここに紹介したようなトラブルに該当する場合が多い。すべて、被相続人と生前に話し合いや分配ができていればこういったトラブルが起こらないことなのだ。
兄弟姉妹なのであれば、「亡くなった時にどうするのか」話し合い、いざという時にトラブルにならないような対策を行っておくことも重要だろう。ほとんど疎遠で会うことがない場合は両親にお願いして、公正証書などの遺言書を作成してもらい、死後、余計なトラブルが起こらないように協力してもらうようにしよう。
兄弟姉妹の遺産相続トラブルほど、両親の心が痛むものはない。事前の話し合いや準備がとても重要になることを改めて実感してもらえたらいいのではないだろうか。