コロナウイルスは現在リユースビジネスにどのような影響を与えているのだろうか。最新のニュースをお届けしていきたい。まず、基本的に不況と言われる世の中で起きることとして、不用品を処分したいというニーズの高まりがある。他方で、仕入れた商品を売りやすいかという視点で見た時に「出口」にネガティブな影響が起こるという経営視点で見ればマイナスの要因もある。なのでこのバランスがコロナの影響でどのように崩れているのかというこを分析することがリユースビジネスの先行きを見る上で重要である。
本日は上場企業の決算情報からニュースをお届けしたい。坂上忍を起用したテレビCM「着物はバイセル!878787(ハナハナハナ)」で有名なバイセルテクノロジーズである。
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このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
バイセルのビジネスモデル
バイセルは電話問い合わせをメインとして出張買取をコールセンターが受け付け、日本各地にいる出張査定員が出張に出向き、そこから買取カテゴリー横断で、貴金属や美術品、お酒、腕時計などラグジュアリー商材(高級品)のクロスに査定を行い、出張査定辺り収益を最大化するというビジネスモデルである。バイセルの経営の肝はこの問い合わせをいかに安くたくさん獲得するか、1回の出張からどれだけの売上総利益を出せるか(出張訪問当たり変動利益=売上総利益-広告宣伝費)、という変数の改善である。
コロナウイルスの影響は大きく二つ
今回コロナウイルスが大きく影響を与えているのは、まず一つにこの「出張訪問あたり売上総利益」という部分。実はコロナの影響で査定員と買取希望顧客の接客時間が減少しているという。今まではAを高額査定、そしてBを安く査定しながら成約、C、Dというようにたくさんの商品を「長い接客時間」から買取成約へと導くことが成功していたが、コロナウイルスの影響でこの出張の接客時間が減少している。その結果、「出張訪問あたり売上総利益」について、2019年12月期1Qは35,077円であった数値が、2020年12月期2Qは32,943円となっており6%ポイントダウンしている。買取点数が減少し、出張査定あたり収益が減少していることがわかる。
もう一つコロナウイルスが影響を与えているのはブランドなどラグジュアリー商材の出口(販売時の売りやすさ)の部分である。百貨店催事の中止や国内外オークションの開催延期や一部商材販売価格の下落、ブランド品等のEC販売の不調等が発生しているとの記載が決算報告資料にもあり、仕入れた商品が売りにくくなっているという現象が発生している。このような影響は買取額を引き下げる方向や買取の数を減らす方向にも影響としては出ることとなり、最終的な利益を圧迫していく。
バイセルの対策
これを受けて、バイセルは訪問数自体を20~40%減らすことを発表しており、査定の稼働人員の休業や取締役、執行役員の報酬の一部返上などの経営縮小を行うことを発表している。また、以前に買収しているCASH事業を中心として宅配買取を強化するとの方針を掲げている。
考察
出張買取でクロスカテゴリーの買取を行っていくというモデルこそがバイセルの強みであり、集客単価に対して高い収益性を担保することでプロモーション拡大していく成長のスパイラルに足止めがかかっている。出張の強みはたくさんの商品を買い取ることが出来る点だけでなく、比較的安い相場でも買取成約する点にある。これらの強みが発揮できないのは痛い。
そして、もう一つ出口への影響も大きい。これはやはり買取の数自体を落としていくしかないという結論を招く。
現状やっていくとすれば確かに宅配買取の強化などにはなってしまうのであろうが、宅配買取については査定額の比較競争が激しい市場であり、収益性は圧迫される。逆に言えば鍛えられた査定員などの現在持っているアセットが活きにくいマーケットなのである。コロナが落ち着くまでは現在の縮小運営の方針は変えにくいのではないか、と考察する。
やるとすれば宅配買取の方で徹底的に使いやすく、便利で査定額もしっかりとつける形で仕入れ、販売していくようなモデルであろう。商材としてラグジュアリー商材を手放す人は現在多いと思うので、キャッシュポジションの許す限り、たくさん買い取っておくという経営の仕方もあるかもしれない。但し、その場合も相場変動リスクを被ることにはなるが。
参考: https://buysell-technologies.com/ir/library/