ディオール パナレアは2009年に発表されたトートバッグだ。アイコンバッグのレディ ディオールと同じカナージュステッチが用いられ、一目でディオールとわかるデザインとなっている。機能性にも配慮され、言わば日常使いのレディ ディオールといったおもむきだ。
カナージュステッチが初めて用いられたのは1953年のこと。香水のパッケージ用だった。その後、クリスチャン・ディオールの後継者たちがさまざまなアイテムに利用し、ディオールブランドのアイコン的モチーフとなっていく。今回はディオールの歴史をヒモときながらディオール パナレアについて解説し、相場を見ていくことにする。
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クリスチャン・ディオールの業績
クリスチャン・ディオールが自身のオートクチュール・メゾンを持ったのは41歳のときで、遅咲きと言えるが、以後の約10年間というものはパリのファッションシーンを席巻するほどの活躍を見せる。
彼のデザインはニュールックと称されて熱い注目を浴び続けた。彼のデザインのどこが、ニューだったのか。そして、実はどこがニューではなかったのかについて考えてみる。
戦後に咲いた華・ニュールック
クリスチャン・ディオールのファーストコレクションが発表されたのは1947年。世間がまだ、戦後の窮乏であくせくしていた時代だ。戦時中は配給制によりクチュリエたちが1着に使える布の面積までが厳格に規定されており、そのせいもあってオートクチュールのデザインですら簡素になり、直線からなる角張ったボックス型が主流だった。
それに対し、ディオールは女性のくびれを強調するように曲線を多用し、シルクなどの高級素材をふんだんに重ねたコレクションを発表。女っぽさと豪華さを前面に押し出したデザインにより、人々に待ち望んでいたものを数倍に拡大して提供したのだ。
女性をコルセットへ戻す
だが、人々が待ち望んでいたくらいだから、それはみんながすでに知っているものだった。要するに以前のあの華やかさだ。いかにも女性らしい華やかさは戦時中の物資不足によってだけ妨げられていたわけではない。
女性をコルセットから解放したココ・シャネルに代表されるように、エレガンスと機能性を合わせ持つものこそが当時の新しいデザインだった。戦時責任を問われて亡命したシャネルと入れ替わるように登場したディオールは、女性らしさを強調するデザインにより女性をコルセットのなかへと引き戻す。
表面の優美さは複雑怪奇な骨組みによって支えられており、比較的シンプルなドレスですらメイドに手伝わせないと身につけられないものだった。女性らしさあるいは女っぽさはディオールの特徴として現在まで続いているといえる。
ディオールの新しさ
もちろんディオールのデザインが、単に昔の再現だったわけではない。華やかな頃の上流女性の面影を芯に残しながらも、斬新なシルエットやこれまでにないバランスを示していた。しかも年ごとに造形ががらりと変化する。
10年という活動期間にわたって、彼は10の独創的なラインを生み出し、その多くが後のデザイナーに影響を与えている。彼はコレクションごとにコンセプトを設定し、新しさをわかりやすく演出した。マスメディアの動向を計算に入れ、自身のブランドがひときわ映えるように誘導していった。
1年ごとにがらりとスタイルが変わるというのは今ではあたり前のことになっている。ディオールが次々と変わったスタイルを生み出したのは才能のなせる技でもあるが、常に新しいもの提供して話題性と消費を引き出すのが彼のビジネス戦略でもあったのだ。現代の傾向を彼はいち早く先取りしていたといえる。
ディオール パナレアの特徴
パナレアにはディオールの顔とも言えるカナージュステッチが全面にあしらわれている。カナージュステッチのバッグといえばレディー ディオールが最も有名だ。ここではカナージュステッチの由来などを解説しながらディオール パナレアの特徴を見ていこう。
カナージュステッチとは?
カナージュとは籐(トウ)の茎を編んで家具などを作る技法で、19世紀のナポレオン3世の時代に流行したものだ。ディオールはこれを気に入り、ファーストコレクションの会場にカナージュを用いたアンティークの椅子をずらりと配置した。
そして1953年にはカナージュを参考にしたモチーフを香水のパッケージに採用する。のちに後継者によってこれをモチーフにしたバッグが作られた際には、ステッチによってカナージュが表現された。これがカナージュステッチだ。
カナージュがディオールの顔に
クリスチャン・ディオール自身はこのモチーフを多用したわけではないが、ディオールを引き継いだデザイナーたちが服やバッグに用いることでディオールを象徴するモチーフの1つとなった。
マルク・ボアンは1960年代にツイードなどにカナージュのモチーフを織り込み、1980年代にはジャン・フランコ・フェレがこのモチーフを前面に押し出したドレスやコートを作った。そして1995年にはディオールの代名詞となるレティ ディオールが誕生。
カナージュステッチを用いたこのバッグは当初カナージュ キュイールという名称だったが、ダイアナ妃が結婚前からこのバッグを愛用し、テレビ映えのする彼女の姿とともに全世界に宣伝されることになったため、レディ ディオールと改められた。2012年にはジュエリーに採用されるなど、カナージュモチーフはさまざまな展開を見せている。
ディオール パナレア
パナレアは2009年に発表された。レディ ディオールと同じくカナージュステッチが施され、D・i・o・rの4つの文字のチャームがついている。カラーはブラック・ピンク・ライトブルー・グレーなどがある。
横型のトートバッグだが、スナップボタンで形を変えることができ、ころんとしたハンドバッグ状にもなる。比較的軽量で内側のライニングにはナイロンが使われており、物を出し入れしやすい。女っぽさと機能性を兼ね備えたバッグといえる。
ディオール パナレアの相場
買取業者、ヤフオク、メルカリの順に相場を見ていこう。以下の価格情報は2019年5月28日現在で得られたものであることをお断りしておく。
業者の買取価格
複数の業者の買取実績・参考買取価格を比較すると次のような相場が浮かぶ。
- ・美品…45,000~60,000円
- ・多少使用感あり…20,000~30,000円
ヤフオクの落札価格
2018年3月から2019年4月の1年間の取り引きを参照する。安すぎるものは除外した。正確な落札価格ではなくおおよその価格を示す。
- ・未使用品…110,000円
- ・美品…50,000~60,000円
- ・多少使用感あり…30,000~40,000円
- ・難あり…15,000~20,000円
メルカリの売却価格
ここでも安すぎるものは除外し、おおよその価格を示す
- ・未使用品…47,000~68,000円
- ・美品…27,000~59,000円
- ・多少使用感あり…15,000円~30,000円
- ・難あり…9,000~14,000円
ディオール パナレアをどこで売るか
ヤフオクでは出品の多くが業者によるもので、個人出品の例は少ない。個人が出品するとしたら保存袋やカードなどの付属品がそろっていないと怪しまれるだろう。的確な画像を用意した上で美品を出品すれば高額落札も望める。
メルカリでは個人間売買が盛んで、さまざまな状態のものが出品されている。個人出品はヤフオクよりもやりやすいだろう。ただし過去の取引実績がないと難しいかもしれない。買取業者も比較的高い相場で買取をおこなっているから、手間をかけたくない人にはおすすめだ。
まとめ
ディオール パナレアは、ディオールを象徴するカナージュステッチを使っていることもあって人気が高く、相場は高めだ。未使用品や美品であればかなりの高額が期待できる。ただし本体の素材が革ではないので傷みやすく、へたりやすい。
いずれ売ろうと思っている人は使用や保管には十分注意することだ。使わなくなったディオール パナレアがあるという方は今すぐ状態をチェックし、適切な保管方法を考えていただきたい。
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