フリマアプリ「メルカリ」は個人間で売買ができることが人気となり、価格の安いものから高いものまで出品されている。不用品をできるだけ高く買い取りしてほしい出品者と中古品で良いからできるだけ安く買いたい購入者の利害が一致すれば良い売買ができるだろう。
しかし、家電のような精密機械をメルカリで売ったり買ったりする際は、注意しなければならない点がいくつかある。今回はメルカリで洗濯機を売買したときのトラブルと対処法を紹介したい。(※本文中の金額は2018年10月現在のもの)
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送料が高い
洗濯機のような大型家電となると、送り先によっても送料が大きく変わる。「大型らくらくメルカリ便」を利用してヤマト運輸で配送できるが、その場合は基本的に7,398円の送料が発生し、送り先による差額は購入者の負担だ。
つまり、「送料込み」で売値を設定する場合、リサイクル家電を扱う実店舗より安い料金を付けるのが難しいことが多い。購入者にとっては「結局、購入価格とは別に送料がかかる」ことによって「お得に買うことができる」という印象を持ちにくくなるだろう。
よって、「中古品を買取してもらって利益を得る」「不用品を安く買える」というメルカリのメリットは、洗濯機の売買においては享受しにくいといえる。
ただし、場合によってはメルカリで洗濯機を売買するメリットがあるケースもないわけではない。洗濯機を出品するのが個人の場合、理由として「新品に買い替えるため古い洗濯機を処分したい」「引っ越しのため洗濯機が不要になったので処分したい」というものが多いだろう。
洗濯機を処分する際は、メーカーによって2,484~3,202円のリサイクル料金が発生するため、「リサイクル料金を払わずに済ませたい」人が送料分のみを売値にして出品することもある。それなら、配送先が近ければ7,398円で洗濯機の売買が成立する場合もあるだろう。
せっかく出品しても購入されなければ意味がないので、売値を付ける際は「送料分程度」を心がけたほうが良さそうだ。
取り外しや取り付け
「らくらくメルカリ便」や他の配送方法では、洗濯機の取り外しや取り付けは出品者・購入者が自分で行うことが前提である。メルカリの「大型らくらくメルカリ便」のガイドを見ると「設置もおまかせ」と記載されているが、これが誤解の原因となるようだ。
「設置」とは「その場所に置く」ことを意味し、使用できるように配線や配管を行う「取り付け」作業は送料に含まれていない。購入者が配送先にて受取時にオプション料金を払えば取り付け作業も配送スタッフにしてもらえるが、「全自動洗濯機取付」の場合は3,240円かかる。
購入者の目的が「安く買う」ことである以上、この金額を支払ってまで取り付け作業を依頼するのは本末転倒といえるだろう。
自分で取り付けを問題なくできるなら良いが、1人暮らしの女性などでは難しいかもしれない。業者に取り付けを依頼するくらいなら、家電量販店で新品を購入し、サービスで取り付けまでしてもらうほうが結果的に良いこともあり得るだろう。
出品者が取れる対策としては、購入前や発送前にメッセージで「取り付けを希望する場合は別料金3,240円が発生する」旨を、購入者にしっかりと伝えることだ。
購入者は、「メルカリのようなフリマアプリで中古品を買う場合と家電量販店で新品を買う場合とでは含まれるサービス内容が異なる」ことを認識する必要がある。自分で取り付けができるかどうかを検討し、オプション料金も確認してから購入するようにしたい。
配送に関するトラブル
メルカリは配送についてのトラブルも多く発生している。主にどのようなものがあるのか紹介していこう。
配送中の事故で破損することがある
洗濯機は精密機械である上に重いため、配送中の衝撃や転倒によって破損することがある。その場合、購入者が「受取評価」をする前であれば、取引をキャンセルして払い戻しを受けることが可能だ。
配送中に家電が破損するおそれのある衝撃や転倒などが発生した場合、原則として配送業者は送り主もしくは受取人に連絡し、荷物の賠償責任を負う。
メルカリと「大型らくらくメルカリ便」で提携しているヤマト運輸の場合、小さな事故の場合でもきちんと報告してくれると評価されている。しかし、「配送中に破損したかもしれない」と言われたら、落札者は取引をキャンセルする可能性が高い。
出品者にとっては、送料が返金されるとはいえ、出品から発送までの時間と手間がロスになる他、返品された洗濯機を置くスペースの問題も生じるかもしれない。落札者にとっても時間と手間、また必要だから購入した洗濯機をすぐに使えない不便を被ることになる。
また、「届いた直後に動作確認し、問題ないと判断して受け取った」場合も、数カ月使用してから故障する可能性がないとはいえない。故障の原因は配送中の事故とは限らないものの、「やはり配送中に内部が破損したせいで早く壊れたのかもしれない」と後悔することになりかねないだろう。
しかし、受取評価をした後は「取引完了」となるため、原則として出品者もメルカリも対応してくれない。フリマアプリで精密機械を購入する際のデメリットとして、保証期間がないことも覚えておく必要がある。
洗濯機をメルカリで出品する側は、自分の手を離れた後の事故によって取引がキャンセルになるリスクもあることを頭に入れておこう。また、購入する側は、受取評価をする前に洗濯機の状態や動作確認をしっかりと行い、少しでも不安な点があれば受取評価を保留して出品者やメルカリ事務局に相談したほうが良い。
設置場所の定義があいまい
「大型らくらくメルカリ便」を利用した場合、「搬入・設置・資材回収までやってもらえる」とメルカリに記載されている。この表現を見ると、洗濯機を使用する場所まで運んでもらえると解釈する人が多いだろうし、実際にもそこまでをヤマト運輸の配送スタッフが行うケースがほとんどだ。他の配送方法を選んだ場合でも同様である。
中には「軒先か玄関までだ」と配送スタッフに言われたというトラブルが発生している。しかも「大型らくらくメルカリ便」を利用したケースで、配送業者はメルカリと提携しているヤマト運輸である。
これは洗濯機に限らず起こり得るケースで、宅配業者が提供するサービスの質に問題があるといえるだろう。宅配ドライバー不足が社会問題化しているため、新人ドライバーや下請けドライバーが増えていることが推測される。その場合、社員教育が徹底していない可能性もあり、サービスの質にばらつきが生じるのではないだろうか。
対策としては、出品者は発送を依頼する際に「設置場所まで運ぶこと」を送り状などに記入しておくと良いだろう。また、購入者はあらかじめ「どこまで運んでもらえるのか」を、出品者に確認しておこう。
そうすれば、万が一、配送ドライバーが「設置場所まで運ぶのはサービス外」と言った場合でも「そういうものか」と引き下がらずに済むだろう。その場で配送業者の営業所に電話して確認すれば、まず解決するはずだ。
カビや臭い
メルカリは個人が売買取引をする場であるだけに、取引相手によって良くもなれば悪くもなるといえる。良心的な出品者であればできる限り良い状態で出品・出荷するだろうが、中にはいいかげんな出品者も存在するのが実情だ。また、故意ではないにせよ、出品物の状態に関する説明が不足している場合もある。
洗濯機の売買でよくあるトラブルとしては、届いた洗濯機に「カビが生えていた」「カビの臭いがした」というケースがあるのだ。出品する側としても、「掃除をしてから出荷しているので問題ない」と考える人もいれば、「掃除したのにカビの臭いが取れない」と悩む人もいる。
使用年数や頻度にもよるが、洗濯機は水と洗剤を使用する家電であるだけに、目に見えない部分に汚れやカビが付着している可能性は高い。洗濯機をきれいにする方法としては、「重曹を入れたぬるま湯に漬け込む」「洗濯機清掃用の専用洗剤を使う」「カビキラーを使う」などがある。
しかし、素人ができる清掃方法では汚れを落としきれないことも起こり得るだろう。その場合に、状態をどのように説明するかは個人の基準によるため、購入者に正しく伝わっていない場合もあるようだ。
出品者が取れる対策としては、「出品前や出荷前に何度も念入りに清掃を行う」「専門のクリーニング業者に依頼する」などがあるが、手間とコストがかさむ点がデメリットだろう。
やはり、洗濯機の状態を詳しく伝えることが重要といえる。自分では慣れてしたっていてカビ臭に気付いていないおそれもあるため、意識して臭いをチェックすることも大切だろう。
購入者は、洗濯槽や洗剤投入口の写真提示を要求したり、傷や汚れ、カビ臭の有無について細かく問い合わせたりしてから購入するようにしたい。また、出品者がどれほど「状態が良い」と言っても、「他人が使用した中古品」であることを念頭に置いた上で購入するかどうかを検討したほうが良いだろう。
まとめ
洗濯機はリサイクル料金が発生する家電であり、精密機械のため壊れやすい性質がある。また、重くかさばることや、カビが発生しやすく掃除を徹底するのが難しいことも、洗濯機の特徴といえるだろう。メルカリで洗濯機を売買する際に発生するトラブルの多くは、このような特徴に起因するものである。
そして、洗濯機の売買に関するトラブルは「送料・配送に関するトラブル」と「洗濯機の動作や衛生状態に関するトラブル」の2種類に大別される。
出品する側は、洗濯機を買取してもらう手段をメルカリに限定せず、家電専門のリサイクル業者などに見積もり依頼するなど、他の方法と合わせて検討するのが良いかもしれない。
購入する側もメルカリで買うことにこだわらずに、リサイクルショップや家電量販店の実店舗・ネットショップなどと合わせて検討したほうが良いだろう。メルカリで洗濯機を売買する際のリスクを双方が承知した上で合意できるなら良いが、お互いに説明不足や確認不足がないように注意してほしい。