新しく古物店を開業をするときに必要なのが、古物商許可証だ。しかし、開業するには色々と手間や時間がかかり、この古物商許可申請を忘れてしまったり、書類作成が面倒で後回しにしてしまい、いざ開店というときに間に合わないという事も少なからず起こりうるのだ。
このような状況に陥った場合、どうしたらいいのか分からない方も多い、さらに混乱してパニックになってしまうなんて場合も考えられる。そうならないように開業を考えている方は、この記事は要チェックだ。
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古物許可申請はすぐにおりる?
開業をするときには、どんなところで営業しよう、どんな品物を扱おう、どこから仕入れようなど、店舗準備の構想を膨らませることは楽しいと感じる人が多いだろう。一方で、古物商を営業するにあたって必要となる書類手続きは面倒に感じる人が多いはずだ。
その上、書類が多く複雑で注意事項も多いため、馴染みのない難しい文章を読まなければならないことも多い。こういった作業がとても楽しい作業であるとは思えない人も多いだろう。結果、楽しいところから手をつけて、書類手続きを後回しにしてしまう人もいるかもしれない。
しかし、想定外に書類のどこから手をつけたらよいかわからず、集める書類も多いため、書類を収集するまでに時間を要することが考えられる。仮に、なんとか営業日までに申請することができたとしても、古物商許可の場合、書類を出してしまえば、すぐに許可が下りる訳ではない。
許可申請が降りるまでには約40日
古物商許可申請は警察署でおこなわれる。書類が提出されると適切な書類が提出されているか、書類に不備はないか確認されるとともに、古物を扱うに値する人であるか審査がなされる。
そのため、古物商許可申請は、おおむね40日の時間を要すると考えられる。たとえ、開業届を出して営業日までに申請することができたとしても、古物商許可申請が営業開始日に間に合わない場合、開業することができないのである。
こうしたミスによって、開業が40日ほど先延ばしになったとする。すると、その間、古物営業をするにあたって借りたテナントや倉庫は、許可が下りるまで営業を開始することができなくなるため、その期間の賃料や倉庫の料金が無駄になってしまう。必ず許可申請までにかかる時間を想定して、余裕を持って古物許可申請を提出したい。
無許可で営業した場合の罰則
古物商は古物営業法という法律の適用を受ける。また、無許可で営業した場合にも古物営業法に抵触し、古物営業法違反とみなされる。具体的には、古物営業法第31条1項に引っかかる。
第31条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
- 1:第3条の規定に違反して許可を受けないで第2条第2項第1号又は第2号に掲げる営業を営んだ者
無許可のまま営業を開始した場合に、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性がある。業開始日に間に合わなかったからといって無許可で営業を開始しないように十分に注意したい。
古物許可申請がそもそもできない人の条件
古物許可申請をするにあたり、そもそも許可を得られない要件というのが存在する。開業準備から進めて、許可を得ることができる人に該当しない場合に開業にかけた資金や時間を無駄にしてしまうこともあるだろう。そこで古物許可申請が下りない欠落事由について確認をしていきたい。具体的には、古物営業法第4条に記載されているが具体的には以下のような人が該当する。
- ・未成年(結婚している人や古物商を相続する人は除く)
- ・精神障がい・認知症などの、有効な契約行為をすることができないとされている人
- ・破産して、免責許可が決定していない人
- ・禁固刑以上の刑に処されて5年以上が経過していない人
- ・背任、遺失物・占有離脱物横領、盗品など有償譲受けなどの罪で罰金刑に処されて5年以上が経過していない人
- ・無許可で古物営業をしたり、許可の不正取得、名義貸し、営業停止命令などで罰金刑に処されたりして、5年以上が経過していない人
- ・古物営業許可を取り消されてから5年以上が経過していない人
- ・集団的にもしくは常習的に、暴力的不当行為やそのほか罪に当たる違法な行為をおこない、公安委員会規定で定める行為をおこなうと認めるに足りる理由がある人
- ・暴力団やその関係者、窃盗罪で罰金刑を受けたもの
- ・住所の定まらない人
- ・営業所または古物市場ごとに業務を適正に実施するための責任者を選任することを認められない相応の理由がある人など
確実に申請が通る場合でも営業してはいけない?
欠格事由にも該当せず不許可になる可能性はないから、まだ許可は下りてないけど申請を出した後に営業したいと思う方もいるかもしれない。しかし、こういった場合であっても、許可なく営業をおこなった場合には、無許可で営業をおこなったとみなされ、例外なく古物営業法違反とみなされる。
きちんと許可が必要な理由
そもそも、なぜ古物を売買するための許可が必要なのか確認をしていきたい。リサイクルショップや美術品を扱うお店に行って中古品を買うことがあるだろう。誰かが以前購入した品物が不要になったから、適切な方法でリサイクルショップなどが買い取り、店頭に並んでいるものと信頼して売買をおこなっている。
しかし、もしかするとどこかの誰かが盗んできた品物をリサイクルショップなどに売り、不適切な方法で金銭を手に入れようと目論むことがあるかもしれない。そのような不適切な方法で金銭を手に入れようとする人たちを厳格に取り締まる決まりがなければ、乱れた社会になってしまう。
例えば、高級な美術品を手に入れたとき、その品物を盗難の被害から守るために必要以上の警備をおこなわなければならなくなったり、場合によってはその品物を保有するのを諦めなければならないことになるかもしれない。古物商許可申請とはこういったものに対応するために存在するのである。
盗難が発生した場合の対応
具体的に盗難が発生した場合、どのような流れになるだろうか。順を追うことで古物商の必要性がわかりやすくなるだろう。まず、自分の所有する物品が盗まれたら、盗まれたものを返して欲しいと盗難の届け出を警察に出すだろう。警察はその届け出を確認すると盗まれたものを売りに出している人がいないか捜査する。
この捜査は古物商全体に品触れを出し、該当する盗品がないか捜査する。そうすることで持ち主に盗品を返還することが可能だ。また、買取をおこなった場合にどこに住む誰から買い取ったか記帳する義務があるため、すぐに犯人を割り出すことができる。
しかし、仮に古物商として登録していない人が盗品を扱ってしまった場合、すぐに盗品を見つけ出すことが不可能であろう。盗んだ側はこれによって自由に売買できるようになれば、高価なものを盗み、売買するような社会になってしまうことが危惧される。
古物商は盗品の流通を阻止するために存在する
古物商を営む人に厳格な届出と許可を必要としているのは、盗品類の流通防止と被害の早期回復のためだ。古物商許可を取得した古物商は、盗品を流通させないような防止措置や盗品捜査に協力できるように警察の監視下で行動している。
そうすることで、万が一盗まれたものが市場に出回ったとしても警察がすぐに発見できるような仕組みが成立している。だからこそ、無許可で営業をおこなった場合には古物営業法違反で厳重に裁かれるのである。
バレなければと考えても警察には無許可が一目瞭然
許可が下りるまで、無許可で営業していたとしてバレなければ大丈夫だろうと安易に判断する人がいるかもしれない。しかし、それは絶対におこなってはいけない。その理由について解説していく。
古物プレートで許可を得ているか確認
サイトや店舗で営業をおこなえば、警察の目に入りやすい。インターネットを通じて営業をしようとしている場合でも、警察は日々適切な売買がおこなわれているか、インターネット上の取引を監視しているのだ。
監視はかなり厳しく、例えばインターネット上のフリマアプリを用いて転売をおこなっているだけでも、営業とみなされれば古物営業法違反で取り締まられるため、かなりリスクが高いと言える。
また営業を開始すれば、お客様・取引先・同業者など、さまざまな人と交流する機会があるはずだ。そのどこかから情報が漏れる可能性もある。古物商というのは、たとえオンラインショップであったとしても古物商プレートというものを提示し、どんな古物を扱うか明示しなければならない。これは古物商に定められた決まりである。
無許可の場合、許可番号などを記載するプレートは掲示することができないため、当然無許可営業の疑いを持たれ、無許可でなくても掲示していない時点で古物営業法違反であるため、捜査が入るだろう。
無許可で営業することで多大な迷惑をかける
無許可で古物営業をおこなうことで社会や警察に多大な迷惑をかけることは言うまでもない。しかし、迷惑をかけるのは社会だけではない。警察の捜査が入り、自身はもちろん、家族や取引先などにも多大な心配をかけ、場合によっては迷惑をかけてしまうこともある。
仮にこれから許可を取ろうと思っていた、欠落事由には該当しないし、きちんと許可申請は出していたと言っても、許可を得る前の古物営業は例外なく無許可とみなされ、これに違反すれば当然罰を受ける。
許可さえとっていれば、こういった心配をせずに済むだろう。可能なら古物商許可申請の準備を早くおこないたいが、仮に開業予定日に間に合わなかったとしても今後営業を続けられなくなることを考えれば、きちんと許可が通ってから開業すべきことは言うまでもない。
テナントや倉庫など、かけた費用が高ければそれをもったいないと感じる人も多いだろうが、それ以上に無許可営業はリスクが大きく、多大な迷惑を多くにかけてしまうのである。
古物営業法違反をすれば5年は営業できない
ここで、欠落事由について再度確認をおこないたい。許可を得ないことにより、多大な迷惑をかけ、刑罰を受けることについては話したが無許可による影響はこれだけで済まない。古物営業法第4条第2項では、以下のような記述がある。
“禁錮以上の刑に処せられ、又は第31条に規定する罪もしくは刑法(明治40年法律第45号)第235条、第247条、第254条もしくは第256条第2項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者”(古物営業法)
この31条の1項には、無許可で古物営業をおこなった人について書かれており、上記の条件に該当する。つまり、無許可で古物営業をおこない古物営業法違反とみなされた場合に5年以上経たなければ欠落事由に該当し、古物商許可申請をおこなうことができなくなるのである。
テナントや倉庫にかかる費用などが惜しいという理由で、許可を得る前に早めても5年もの間、営業することができなくなれば費用がもっと無駄になるのはいうまでもない。せっかく開業準備したものが全て無駄になってしまうのである。
まとめ
古物商というのは、盗品が流通することを避けるために存在する。警察も確実に無許可で営業をしている人を探すために最善を尽くしている。そのため、無許可で営業する人は厳重に裁かれる。古物営業の許可を得なかっただけで罰金や刑罰などを受け、社会や家族に迷惑をかけるだけでなく、5年間も古物営業をおこなうことができなくなってしまうのである。
こうしたことから、許可が間に合わない場合には、絶対に開業の日程を遅らせて確実に許可を得てから、開業をするようにすべきである。本当は許可を取れるのに許可が下りるまでに営業開始を待たなかったというだけで、罪に該当するのはもったいないことだ。何より、私生活に多大な影響を及ぼす可能性があることを重々理解しておく必要がある。
もし、開業準備に追われて忙しく手が回らなかったり、書類があまりに面倒であるように感じるのであれば、有料にはなるが、古物業許可申請を専門としている行政書士に依頼するのも方法だ。全て丸投げする場合でも、4~5万円程度で請け負ってくれる人が多い。
資料は注意事項をよく読みかけば、一般の人でも難しいものではないため、時間に余裕がある場合には早くから手をつけて確実に資料をそろえるようにしていく必要があるだろう。開業には充分な余裕を持って気持ちのいいスタートを切れるように準備していきたい。
この記事を監修した専門家