※当記事は古物の専門家が寄稿しています
最近は副業で転売などが人気になり、古物商が注目されるようになってきている。消費者の手に一度渡ったものを含めて中古品を扱う場合に、業としておこなうのであれば、古物商許可が必要である。許可がない場合に、警察のチェックやヤフオク・メルカリといった販売先からの通報、第3者からの通報によって無許可営業が発覚し、刑に処される可能性もある。
したがって、転売を副業もしくは主たる生計としておこなうことを考えているのであれば、古物商許可証を取得する必要があるだろう。初期費用は申請の手数料16,000円のほか、住民票などの必要書類が必要となるが、有効期限や更新によって、継続的に費用を支払う必要があるか気になる人も多いのではないだろうか。
そこで、古物商許可証には有効期限や定期的な更新があるのかどうかについて確認をおこなっていく。
CONTENTS
このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
期限や更新はないが取り消される場合はある
古物商許可証には有効期限や更新がない。普通自動車免許は3年ごと、優良ドライバーなら5年ごとの更新など、意外と更新が必要な資格は多いが、古物商許可証は一度取得すれば生涯有効であるありがたい許可だ。
ただし、取得すればそれで安心というわけではなく、許可を取り消されるケースもあるので注意しなければならない。ここでは、許可証が取り消されるケースについて確認していく。
不正な手続きで取得した場合
不正な手続きで取得した場合は取り消されて当然といえば当然だ。不正のないよう正しく手続きをしなければならない。
取得後、欠格要件にあてはまった場合
次にあてはまる者は古物商許可証の欠格要件となり、許可を受けられないため、許可を取り消される。
- ・成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ない者
- ・古物営業法で定める刑に処された者
- ・暴力団員又は暴力団でなくなった日から5年を経過しない者、暴力的不法行為等を行うおそれのある者(過去10年間に暴力的不法行為等をおこなったことがある者)、暴力団員による不当な行為等に関する法律により公安委員会から命令又は指示を受けてから3年を経過しない者
- ・住居の定まらない者
- ・古物営業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
- ・許可の取り消しに係る聴聞の期日等の公示の日から、取り消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しない者
- ・営業について成年者と同一能力を有しない未成年者
- ・営業所又は古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者としての管理者を選任すると認められないことについて相当な理由のある者
- ・法人役員に、(1)から(5)までに該当する者がある者
許可を取得したときに上記の欠格要件にあてはまらなくても、「成年被後見人になった」「倒産した」など、事情が変わりあてはまることになれば、許可は取り消されることになる。
また、営業所の管理者が欠格要件にあてはまった場合には、管理者を変更しなければならない。さらに、法人で許可申請をしていた場合、役員の中で1人でも欠格要件にあてはまったときには、その役員を退任させなければいけない。
営業開始しなかったまたは、営業していない場合
そもそも、なぜ古物商許可という制度がつくられたのか。取引される古物の中に窃盗の被害品などが混在するおそれがあり、盗品などの売買の防止、被害品の早期発見により窃盗その他の犯罪を防止し、被害を迅速に回復することを目的としている。
営業をしないが許可だけを取得する古物商が増えると、盗難品が売却された場合の早期発見がむずかしくなるため、6か月以上営業をしない場合は、許可を取り消されることとなる。
ちなみに、「営業を開始しない場合」や「営業を休止した場合」とは全く営業活動をおこなっていないことをいう。取引がなくても、広告を作成したり、販売サイトを更新したりと、営業活動を随時おこなっていれば許可取り消しの対象とはならない。つまり、ずっと使える許可だからといって、いつか必要になるかもしれないというタイミングでの取得はおすすめしない。
取得人物の所在が不明になった場合
以前は「取得した人物が3か月以上所在不明となった場合」、許可が取り消されていた。しかし、2018年4月17日に古物営業法が改正され、「取得した人物の所在がわからなくなり、その旨を公告して30日以内に申し出がない場合」に変更となった。2018年10月24日に施行している。
前述したように、古物商許可は有効期限や更新手続がないため、所在不明の古物商や廃業後も届出をしていない許可が多くあると推測されている。所在不明の古物商に対しては指導・監督ができず、名義貸しなど許可が悪用されるおそれもある。
よって、古物商が所在不明となり、所在地などを確知できないときには、公安委員会が官報により公告し、公告後30日を経過しても古物商からの申出がない場合、許可が取り消されることとなった。引っ越しをしたり、営業所を移転したりした場合にはすぐに変更届など必要な手続きをとらなければならない。
古物営業法違反をした場合
古物営業法に違反すると「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」で許可取り上げられることとなる。その後5年は古物商許可を取得することができない。
すみやかな変更手続きが必要
変更する内容によって、おこなう手続きが違ってくる。古物商許可を申請したときに提出した情報と違った状況になった場合、届出をおこなう必要が出てくるのが「変更届」。さらに、その変化した状況によってすでに発行されている古物商許可証の記載内容まで修正しなければならない場合には「書き換え申請」をおこなわなければならない。
例えば、古物商許可を取得後に、転勤・退職などで管理者が変更になったり、主に取りあつかう品目を変更したりした場合には、「変更届出」が必要だ。また、許可者の氏名や住所の変更、法人代表者の氏名や住所の変更、行商をするかどうかの別などについて変更した場合などに必要なのが、「許可証の書き換え申請」である。
変更届出が必要な場合
古物商許可を取得後に、以下の内容にあてはまる変更があった場合には変更届出をしなければならない。
- ・主たる取扱品目の変更
- ・営業所の廃止、増設、移転
- ・営業所の取扱品目、名称の変更
- ・営業所の管理者、管理者の住所の変更
- ・役員を追加した場合や役員が辞任した場合、さらに役員が交代(辞任・就任)をした場合
- ・役員の住所が変更となった場合
- ・ホームページを開設して古物取引をおこなう場合
- ・届け出していたホームページを閉鎖する場合
許可証の書き換え申請が必要な場合
古物商許可を取得後に、以下の内容にあてはまる変更があった場合には書き換え申請をしなければならない。
- ・個人の場合:氏名や住所の変更
- ・法人の場合:名称や所在地の変更
- ・法人の場合:代表者氏名や住所の変更
- ・個人及び法人:行商をする、しないの変更
提出先
変更届出、書き換え申請の提出先は、古物商許可証の交付を受けた経由警察署または、許可取得後に営業所を移転して届出をしている場合は届出後の営業所の所在地を管轄する警察署。住所の変更や営業所の移転の場合、届出をしてある経由警察署での手続きになり、移転先の管轄警察署ではないので注意が必要である。
提出できるのは、警察署が開庁している平日のみで土日祝日には受付をおこなっていない。手数料は、変更届出の場合は無料、書き換え申請の場合は新たな許可証の発行があるため1500円とある。
提出期限
変更届出、書き換え申請の提出期限は変更があったときから原則14日以内(法人の場合で登記事項証明書を添付しなければならない変更の場合は20日以内)と決められている。
会社を移転し、新たな所在地の記載された登記事項証明を取得するのには2週間ほどかかってしまうため、登記の変更があるときは早めに申請手続きの準備をしておくことが必要だ。
期限内に手続きしなかった場合には、遅延理由書を提出しなければならない。遅延理由書を提出しなければ、許可を受けた者が警察署に呼ばれて、状況を説明したり、理由書のようなものを書かされたり、いろいろ面倒なことになることもある。ときには古物商許可の取り消しになる可能性もある。
必要書類は確認をおこなう
変更届出、書き換え申請は変更する内容により必要な添付書類が異なるので確認が必要である。具体的には、警視庁・道府県警察のホームページにて掲載しており、申請書類はダウンロードできるようになっている。警察署の窓口に行かなくても必要な書類を入手できる。東京都の警察署は、以下のリンクから飛ぶことができる。
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/tetsuzuki/kobutsu/tetsuzuki/kakikae.html例えば、営業所を増設する場合、変更届出以外に、営業所の賃貸借契約書のコピーが必要となる。管理者が新たな人物になる場合は、その管理者の住民票、身分証明書、登記されていないことの証明書、略歴書、誓約書も必要だ。
法人の代表者変更の場合は、書き換え申請以外に、法人履歴事項全部証明書が必要である。役員以外の者が代表者になる場合は、その代表者の住民票、身分証明書、登記されていないことの証明書、略歴書、誓約書も必要だ。しっかりと必要書類も確認していきたいところである。
主たる営業所等届出書の提出が必須
すでに古物商の許可を得ていて、今後も引き続き営業を継続される古物商が忘れてはいけない届出がある。2018年4月17日に古物営業法が改正され、一部は、2018年10月より施行しているが、2020年4月までの政令で定める日に許可単位の見直しが施行されることに伴ったものである。
これまでの古物営業法では、営業所等が所在する都道府県ごとに古物営業所の許可を受ける必要があった。改正後は、主たる営業所の所在地を管轄している公安委員会の許可を1つ取得すれば、その他の都道府県において許可は不要となる。
これにより、今後も引き続き古物営業を営もうとする者は、2020年4月までの政令で定める日までの間に、主たる営業所等届出書を主たる営業所を管轄する警察署に届出をする必要がある。複数の県で許可を受け、それぞれの府県で営業所を設けている方は、いずれかの府県の主となる営業所のある管轄署に届出をすることになる。
この届出は、現在許可を受けている方(個人、法人、営業所の有無は問わない)についても、全員が対象だ。営業所が1つしかなくても、主たる営業所の届出は必要になる。営業所が複数存在する場合は、いずれかを「主たる営業所」とし、それ以外の営業所については「その他の営業所」として届出なければならない。
主たる営業所等届出書を提出期限内に提出しないと無許可営業とみなされる。最悪の場合に、古物許可が取り消され、5年間は営業できなくなってしまうだろう。
まとめ
古物商は一度許可を受ければ、有効期限や更新がない。したがって、一度費用を収めれば、変更届や書き換え申請が必要な場合を除いて、追加で費用を払ったり、警察署へ行く必要がないだろう。
変更届が必要になるケースは主に、「主たる取扱品目の変更」「営業所の廃止、増設、移転」「営業所の取扱品目、名称の変更」「営業所の管理者、管理者の住所の変更」「役員を追加した場合や役員が辞任した場合、さらに役員が交代(辞任・就任)をした場合」「役員の住所が変更となった場合」「ホームページを開設して古物取引を行う場合」「届け出していたホームページを閉鎖する場合」で、申請当初と情報が変わった場合となる。もし所定の期間内に提出しないと刑に処される可能性があるため、注意が必要だ。
また、個人の場合に氏名や住所の変更や行商をするかどうかの変更をおこなう場合に、書き換え申請が必要となる。法人の場合には、名称や所在地の変更、代表者氏名や住所の変更、行商をするかどうかの変更をおこなう場合に、書き換え申請が必要となる。
今回のように、法改正で「主たる営業所等届出書」の提出が義務付けられている場合には、提出の必要性が生じる場合もある。これについては費用無料となっているが、もし期間内に書類の提出が難しく、行政書士に依頼するのであれば、別途、依頼するための費用がかかってしまうだろう。
もし、古物営業法違反をおこなったり、不正な手続きで許可を入手したり、6ヶ月営業をしないもしくは休業をしたり、欠格事由にあてはまるようになったり、古物商が行方不明で公告が出されて30日以上放置していると許可を取り消されてしまう。許可申請をすれば有効期限などはないものの、古物商のルールに従い注意を払って営業しなければならないだろう。
この記事を監修した専門家