天使のわけまえ(Angels' share)。ワインやブランデー、そしてウイスキーなど、熟成過程においてときの流れとともに蒸発して消えていく分を、こじゃれてこのように呼ぶ。樽での熟成により味や香りが複雑に、豊かになるのとひきかえに、天使に飲ませてあげた分とでも考えようか。ただ、天使も天使でけっこう遠慮がなく、ごっそり飲んでいく。
ジャパニーズ・ウイスキーを代表する銘柄山崎。熟成年数の長いもの、とりわけ山崎25年が高額で取引されているのには、限りある原酒が生産や天使のわけまえによってどんどん減っていき、希少性が増しているのも一因だ。
この記事では、そんな山崎25年 2003ボトルインの買取相場や査定情報を解説していく。
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プレミアウイスキーは投資対象品
ウイスキーと聞いて、どのようなイメージを持つだろうか。『落ち着いたバーで出てきそうな、大人なカッコいいお酒』そんなちょっとハードルの高い印象を持つ方は少なくないと思う。しかし、そんなステレオタイプは払拭されてきているのか、最近ではウイスキーの国内消費量が伸び、気軽に飲めるお酒との認識も徐々に定着してきているように感じる。
ウイスキーは世界中で愛飲家がいる、いわば大衆の酒といってもいいものだ。ただ、その一方で、著名な蒸留所でつくられる熟成年数の長い銘柄になると、けっこういい値段がするようになる。
名酒ともいえる銘柄が発売され、それからさらにときを経ることで、その名酒にプレミアがつくことも往々にしてある。このようなプレミアがついたウイスキーは、当初の発売価格の何倍もの値段で取引されており、もはや嗜好品ではなく投資対象品といったほうがピンとくるほどだ。
脚光を浴びるジャパニーズ・ウイスキー
スコットランドのスコッチ・ウイスキー、アイルランドのアイリッシュ・ウイスキー、アメリカのアメリカン・ウイスキー、カナダのカナディアン・ウイスキー、そして日本のジャパニーズ・ウイスキー。
ウイスキーの本場といえば、スコットランドやアイルランドのイメージが強いかもしれないが、最近ではジャパニーズ・ウイスキーも世界で脚光を浴びている。
世界五大ウイスキーの一角となったジャパニーズ・ウイスキーにも、プレミアがついた名酒がある。そのうち、日本のウイスキー文化を醸成してきた山崎蒸溜所が発売したシングルモルト・ウイスキー山崎25年は、国内外の左党から熱い注目を浴びている。
ボトルによっては数十万円で取引される山崎25年とは、いったいどのようなウイスキーなのだろうか。
シングルモルト・ウイスキー山崎とは
山崎は、山崎蒸溜所の名前を冠する代表的なウイスキーの銘柄だ。山崎蒸溜所が位置する大阪の山崎は、自然環境に恵まれており、かつて千利休が茶室を置いた場所としても知られている。山崎の風土や気候、そして水は、ウイスキーづくりに最適な地といわれ、これに日本の職人的なこだわりが融合し名酒山崎が生まれた。
なお、山崎蒸溜所では、ガイドツアー(有料)に参加することができるので、興味があればぜひ一度参加してみてほしい。
山崎は、ウイスキーのタイプでいうと、シングルモルト・ウイスキーになる。モルト・ウイスキーとは、材料にモルト(大麦麦芽)のみを使ったウイスキーのことで、トウモロコシや小麦などの穀物とモルトをあわせて使ったグレーン・ウイスキーとは区別される。
シングルモルト・ウイスキーのシングルとは”単一の”という意味であるが、これは”ひとつの蒸留所”ということを指している。こう聞くと、生産所がひとつとはあたり前ではないか。と思うかもしれないが、実はウイスキーは混ぜられた状態で商品化されるのが一般的だ。混ぜるものを原酒といい、異なる蒸留所にあるモルト・ウイスキーの原酒どうしを混ぜたら、シングルモルト・ウイスキーと称してはならないのだ。
なお、モルト・ウイスキーとモルト・ウイスキー、あるいはグレーン・ウイスキーとグレーン・ウイスキーの原酒を混ぜ合わせることをヴァッティング、モルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーの原酒を混ぜ合わせることをブレンディングと呼び分けている。
名酒と呼ばれるためには、原料や生産地の自然環境に加えて、このヴァッティング技術やブレンディング技術が欠かせない。山崎を生み出す山崎蒸溜所のように名のある蒸留所には、やはり腕のあるブレンダーがいるものだ。
25年間熟成した山崎ではない?
ジャパニーズ・ウイスキーを代表する銘柄山崎の中でも、熟成年数の長い山崎25年は価値ある一品だ。生産数が限定されているというのもあり、過去に発売された山崎25年は、いまプレミアがついて当時の希望小売価格よりも数倍の値段で取引されている。
山崎25年、おそらくこの名前から山崎を25年間熟成させたウイスキーだと思う方も少なくないと思うが、この解釈は実は正しくない。シングルモルト・ウイスキーは、多くの場合、原酒と原酒をヴァッティングして商品化している。
このとき、異なる熟成年数の原酒をヴァッティングすることがある。そのため、商品として熟成年数を表示する際には、使用した原酒でもっとも熟成年数が短いものを表示する決まりになっているのだ。たとえ50年間熟成した原酒であっても、5年間熟成させた原酒が1滴でも混ざれば、熟成年数5年のウイスキーとなる。
つまり、山崎25年というのは、少なくとも25年以上熟成した原酒からつくったシングルモルト・ウイスキーということになる。
高額取引される山崎25年 2003ボトルイン
2019年2月現在、シングルモルト・ウイスキー 山崎25年(700ml)の希望小売価格は税別125,000円と、各ラインアップの中でも最も高額だ。しかし、プレミアがついた山崎25年ともなると、この額を優に超えて取引される。
中でも、ピュアモルト・ウイスキー 山崎25年 2003ボトルインは、とりわけ高額で、もし美品の状態であれば、およそ50万円~80万円ほどで業者に買い取ってもらえるようだ。この2003年にボトリングされた山崎25年は、飲み終わった空きボトルであっても数万円の値段がつくほど、突出したプレミアがある。
基本的には、美品・箱ありが前提となるが、仮に多少状態の悪いボトルだけであっても業者なりネットオークションなり、あるいはフリマアプリなりで売ることはできるだろう。それぐらい、ずば抜けた人気を誇る銘柄なのだ。
山崎の中でもグレードの高い山崎25年、さらに山崎25年の中でも超高額で取引されるピュアモルト・ウイスキー 山崎25年 2003ボトルイン。お手持ちであるならば、口に含んで贅沢なときを過ごすなり、大切に愛でたり、飾っておいたりするのもいいだろう。
ただ、もはやこの銘柄は、嗜好品としての性質よりも、投資対象品としての性質を著しく帯びており、売却という選択肢も考えてみてはいかがだろうか。もし、ウイスキーがお好きでないというのなら、売却を考えないのは余計にもったいなく、宝の持ち腐れになっているように思える。
しかし、ウイスキーを売るなんて、そうそう経験することはないと思うので、どうやって売ったらいいか迷ってしまうかもしれない。そこで、次にコツを紹介したいと思う。
売却先別のメリット・デメリット
ウイスキーを売ろうと思ったら、選択肢として業者に買い取ってもらうか、自分で売るかがある。それぞれの概要とメリット・デメリットを見ていこう。
筆者個人の考えとしては、ピュアモルト・ウイスキー 山崎25年 2003ボトルインのような難しいアイテムは、業者に買い取ってもらうのがおすすめだが、それぞれの違いをぜひ理解しておいてほしい。
業者に買い取ってもらう場合
業者に買い取ってもらう場合、注意したいのが業者選びだ。特にウイスキーのような、一般の人にはなかなか価値がわからないようなアイテムは、専門業者に依頼するのがいい。
家電も家具も鉄材もウイスキーもなんでも買取しますと謳う総合的な買取業者では、適正な査定が期待できないためだ。また、このような業者では、最適な再販経路が開拓されていない場合がほとんどなため、おのずと査定額は低くなるだろう。
ピュアモルト・ウイスキー 山崎25年 2003ボトルインのような、もともとの商品としての適正価値とプレミアを総合的に考慮し、かつ再販経路を築いているような、酒類買取の専門業者に査定を依頼するのがベストだ。
そのうえで、数社に査定を依頼して、査定額を比較してみるのが望ましいだろう。買取業者に依頼するメリットは、すぐに買い取ってもらえること、そしてまともな業者であれば割と適正な値段をつけてくれること、後々トラブルになりづらいことなどが挙げられる。
デメリットは、場合によっては近くに対応可能な業者がいない(出張買取範囲外、宅配買取不可など)、適切な業者を探す手間がかかることなどが挙げられる。
個人で売る場合
個人で売る場合には、フリマアプリやネットオークションを活用するのが最適だ。おそらく実地のフリーマーケットなどに出品したところで、価値を見出してくれる人、その価値の分だけお金を支払ってくれる人にはなかなか出会えないだろう。
ただ、フリマアプリやネットオークションには販売手数料がかかるので、忘れないようにしよう。
個人で売る場合のメリットは、何よりも自分で販売値を設定できることだ。ただ、実はこれはメリットであると同時にデメリットでもあり、適正な販売値がわからないとどうしようもない。そのため、なんとなくで安売りしてしまえば”もったいない”になるし、相場を無視して高額で出品しても”売れない”になる。
デメリットとしては、いつ売れるかわからない(すぐに換金できない)、ウイスキーは割れたら最後なので発送手配が面倒であったり心配になったりする、コアなアイテムであるためトラブルに巻き込まれやすい(つまり、事前の適切な説明が難しい)などが挙げられる。
高く売るためのポイント
ここでは、ピュアモルト・ウイスキー 山崎25年 2003ボトルインを少しでも高く売るためのポイントを2つお伝えしていく。
付属品
付属の箱の存在を忘れてはいけない。例えば、業者に買い取ってもらう場合、箱があるかないかで査定額が大きく変わってくる。筆者が問い合わせた大手の専門買取業者では、箱がないと20%ほど減額になると言われたが、業者によってはそれ以上となるかもしれない。
また、これは個人で売る場合でも同様で、箱の存在を重要視するウイスキー・コレクターは数多い。
そのため、汚れていようが擦れていようが、箱があるのなら必ずセットにして売るようにしよう。箱が汚いからといって、決して捨ててしまわないように気をつけてほしい。
ラベル
ウイスキーの命はどこか。それはラベルだといっても過言ではない。たかがラベル、されどラベル。ラベルはウイスキーに関する情報が詰まっているだけではなく、そのウイスキー・ボトルのキャラクターや風格を決める意匠が凝らされているのだ。
通常であれば、ラベルはついたままなので問題ないと思うが、ボトルの汚れを拭き取ろうとするときには、ラベルを引っかけたり、破ったりしないように、くれぐれも注意してほしい。
まとめ
ジャパニーズ・ウイスキーを代表する山崎の至宝ともいえる山崎25年、さらに山崎25年にはピュアモルト・ウイスキー 山崎25年 2003ボトルインのようなプレミアがついた銘柄があり、その取引相場は50万円~80万円にものぼる。
もし、業者を通じて売るなり、個人で売るなりするなら、箱を用意する、ラベルを傷つけないといった点に注意しよう。
日本の家には、意外とウイスキーが眠っているものだ。家族が好きであったり、あるいは贈答品としてもらったはいいが誰も飲まなかったり。山崎25年は素晴らしいウイスキーなので味わう楽しみは格別だ。
しかし、ウイスキーは嗜まないというのであれば、財宝級の価値があるものかもしれないので、ぜひ売却を考えてみてはいかがだろうか。