川瀬巴水は、日本を代表する浮世絵師・版画家である。日本での評価はもちろん、海外での評価が非常に高く葛飾北斎や安藤広重と同じような人気を誇り、「昭和の広重」とも呼ばれている。新版画という新しい木版画を確立し、日本の美術界に大きな影響を及ぼした人物だ。そんな川瀬巴水の作品の買取相場や価値について解説しよう。
本記事のポイント
- 川瀬巴水は新版画の確立に心血を注いだ木版画の代表作家
- 「増上寺の雪」が無形文化財技術保存記録の作品に認定された
- 高額査定になる版画の基準とは？
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画家 川瀬巴水の略歴・経歴とは
川瀬巴水は1883年に糸組物職人の長男として東京に生まれ、10代のころから画家を志し青柳墨川や荒木寛友に学んだものの、家業を継ぐために一度は画家への道を断念した。しかし、諦めきれずに妹夫婦に商売を譲り、再び画家を志すことにした。
鏑木清方に入門を申し出るものの、20代半ばを過ぎた年齢を理由に入門を断られたり、岡田三郎助に師事するものの挫折を経験したりとなかなか芽が出ずにいた。しかし再び入門を申し出て鏑木清方の門人となり、1910年に「巴水」の画号で日本画家として活動を始める。
師である鏑木清方の得意とする美人画に行き詰まりを感じた後は、同門の伊藤深水の影響を受けて版画家に転向した。版画家になってからは新版画の確立に心血を注ぎ、美しい風景版画を数多く制作して海外でも「昭和の広重」と評価されるほどになった。1952年には「増上寺の雪」が無形文化財技術保存記録の作品に認定されている。
川瀬巴水の作風・特徴と代表作品
川瀬巴水は生涯にわたり600点もの版画を制作した。雪・月・雨などを題材とした詩情的な風景版画を得意としており、同じ色を何度も重ね色に深みを持たせたり、色鉛筆で描いたような線など独自の表現方法を編み出したりしている。全国各地にスケッチ旅行に出かけ、情緒豊かな風景版画を制作することから旅情詩人とも呼ばれた。
川瀬巴水の代表作は、旅みやげ第一～三集、東京十二題、日本風景集東日本編などのシリーズものがある。単作では日光街道、平泉中尊寺金色堂などがある。
川瀬巴水の作品の買取相場や値段
川瀬巴水の作品は美術品買取専門店で買取ってもらえるほか、ネットオークションやフリマアプリで売却することも可能だ。買取方法によって買取価格も変わってくるため、それぞれの特徴や買取相場についてみてみよう。
美術品買取専門店の買取相場
美術品買取専門店は、絵画や版画、陶磁器などの美術品を専門に扱っている買取店である。美術品に造詣が深い査定員が在籍しており、販売ルートを持っているため、市場価値に見合った金額で買取ってくれるのが利点である。
買取の方法もたくさん用意されており、店舗に持ち込む店舗買取、家まで買取に来てくれる出張買取、宅配便で送り買取ってもらう宅配買取などがある。査定は無料の店がほとんどで、査定金額が気に入らない場合は断ることも可能だ。100万円以上の高額買取でも即金で支払ってくれるため、スピーディーに現金化したい人に向いている。
- ・日本画「涸沼」：330,000円
- ・木版画「厳島之雪」：60,000円
美術オークションの買取相場
美術品を専門とするオークションは、基本的に贋作が売買されないため安心感がある。稀に、鑑定を誤った旨が公示されるケースもあるが、美術品の売買をしたい人が集まる場と言える。場合により、絵画の相場から算出した予想価格より大きく上回る価格で落札されるケースもある点が利点だ。作家によっては、数千万円や数億円といった高額取引もおこなわれている。現金化には時間がかかるため、注意しよう。もし、美術オークションへ出品するのが煩雑だと感じたり、よくわからないと思ったりするなら、代行してくれる買取業者などもいるため検討しよう。
- ・日本画「伊豆・西平」：1,800,000円
- ・未詳「駒込の月 未装」：120,000円
「伊豆・西平」はまさしく予想をはるかに上回る落札がされた作品の一つで、予想価格（エスティメイト）は300,000〜600,000円だった。
ネットオークションの落札相場
ネットオークションはインターネットのオークションサイトに出品して、ほしい人に落札してもらうというシステムである。ヤフオク・ネットオークションにも川瀬巴水の作品は数多く出品されており、50万円以上の高値で落札されているものもある。需要の高いものほど入札者が多く、値段もどんどん上がっていくため驚くほどの高値で落札されることもある。
ただし、作品を発送する手間がかかるほか、オークション終了まで一定の期間待たねばならず、即金を得ることはできない。また、落札額の10％ほどを出品手数料として支払わねばならない。
- ・木版画「牛堀」：591,800円
- ・木版画「朝鮮智異山泉隠寺」：250,001円
- ・木版画「平等院の夕」：200,000円
フリマアプリの売却相場
フリマアプリは、インターネットのフリマサイトに値段をつけて出品するとほしい人が買取ってくれるシステムである。フリマアプリ・メルカリには川瀬巴水の作品がたくさん出品されており、活発に取引されている。
フリマアプリもネットオークションと同様に配送する手間や出品手数料がかかるが、タイミングが良ければ出品してすぐに売れることもある。高額で取引されている作品は少なく、高いものでも5万円を超えるものはない。
- ・木版画「信州木崎湖」：50,000円
- ・木版画「日光街道」：50,000円
- ・木版画「三保ノ松原」：14,000円
なんでも鑑定団での出品事例
有名作家は、人気テレビ番組「開運！なんでも鑑定団」（テレビ東京系） に作品が持ち込まれ、評価額をつけられることがある。川瀬巴水も例に漏れず、作品が出演している。
- 2018年12月11日放送「版画10点」3,00,000円 ※1点を除いてすべて初摺
- 2021年2月16日放送 「版画15点」4,500,000円 ※15点のうち12点が初摺
木版画作品の価値の基準
木版画は絵画のように一点物ではなくm製作されている部数が多くなるため、絵画のように天文学的な価値はつきにくい。しかし、川瀬巴水のように名の知れた作家による木版画には高い価値がつけられる。では、版画作品の価値の基準はどのようなポイントがあるのかみてみよう。
作家・作品の知名度
木版画作品の価値は、作家と作品の知名度が基準になる。知名度といっても、一般的に認知されているかではなく、美術界で名が知れているかどうかが基準となる。
川瀬巴水は海外でも評価の高い版画家であるため、買取の査定においても高い価値が付くのが一般的だ。また、川瀬巴水の作品は関東大震災で紛失した原版もあり、希少な作品も多い。作家のサインが入っているものも価値が高くなる。
初刷りか後刷りか
木版画は初刷りか後刷りかによっても作品の価値が変わる。何度も刷りを重ねるうちに原版の凹凸が低くなっていくため、初刷りの方が後刷りに比べてくっきりとした版画に仕上がる。そのため、一般的に初刷りの方が作品の質も高く、高値がつくことが多い。また、没後の版画よりも生前の版画の方が高価になりやすい。
作品の状態
木版画は紫外線にあたったり湿気に触れたりすることで、作品の状態が劣化することがある。変色や退色が目立ったり、カビが生えたりしているものは作品の価値が下がる。保存状態が悪いものは買取ってもらえないこともあるので気をつけよう。作品の価値を下げないためには、普段から紫外線や湿気に注意をし、適切な状態で保存することが大切である。
発行部数
木版画に限らず版画作品は、数十枚から500枚ほど印刷されるのが一般的である。版画の隅に25/200のように記載されていることが多く、分母数が少ないほど価値が高い傾向だ。500枚以上印刷されるとそれ以上版画の価値を下げないように原版にキズを入れるのが慣例となっており、版画の価値が保たれている。
川瀬巴水の作品を高く売るためのコツ
川瀬巴水の作品を高く売るためには、いくつかのコツを覚えておくのが賢明だ。では、その中でも最も重要なものを5つ紹介しよう。
複数の買取店で査定をする
川瀬巴水の作品を高く売るには、1つの買取店だけでなく複数の買取店で査定することが重要だ。それぞれの買取店には独自の査定基準があり、1つめの店で10万円の査定金額であっても、次の店では15万円と査定されることもある。
インターネットの一括査定サービスを利用すれば、1度に複数の買取店の査定額を知ることができるため手間が省ける。その中で最も高い値をつけてくれた店に買取ってもらうとよいだろう。また、ネットオークションやフリマアプリの落札金額や売却金額と比較することも忘れずに。
査定に出す前にきれいにする
作品の価値は作品の知名度や発行部数、状態などで決まるが、ホコリをかぶった状態で査定に出すと査定員の心証が悪くなり、状態が悪いということで減額されることもある。査定に出す前は額にたまった汚れやホコリを拭き取るなど、きれいな状態にしてから出すのが望ましい。
ただし、版画自体についた汚れを取るためにゴシゴシとこすったり、薬品をつけたりするのは禁物である。余計には作品を劣化させ、買取不可能になる可能性もある。しかし傷をつける可能性があるような無理はせず、できる範囲できれいにするのが原則だ。
付属品をそろえる
川瀬巴水の作品を購入したときについていた額や箱、保証書などの付属品は、査定の前にそろえておくのが賢明である。備品がそろっているほど減額は少なくなり、高い金額で買取られる可能性が高まる。絵画や版画を買取に出すときに、わざわざ額縁から出して持ち込む人もあるが、額縁も作品の一部として数えられることがあるため、つけたままで査定に出すのが正解だ。
値段交渉をする
買取店で最初に提示される査定金額は店が出せる最高値ではなく、それよりも低い金額であるのが一般的だ。そのため、最初の査定価格ですぐに納得するのではなく、値段交渉をすることが必要になる。
値段交渉をすると2割から3割ましの査定金額になるのが相場であるため、最初に提示された金額の1.5倍ほどの値段で交渉してみるとよいだろう。なかなか値段が上がらない場合は、端数を切り上げるように頼むなど、少しでも高く売るための努力をすることが大切だ。
まとめ売りをする
買取店は手間や人件費が省けるため、1点で査定に出されるよりもまとめて査定に出されることを好む。川瀬巴水の作品は「東京十二題」や「旅みやげ第一集」などのように複数枚のセットとなっているものも多いため、それらをまとめて売ると高い査定金額が期待できる。また、川瀬巴水の作品とほかの画家の作品をまとめて売るのでもよい。
版画作品の保管方法
版画作品を売りたいときに高く売るためには、正しい保管方法を知っておく必要がある。
適切な環境
版画作品を保管するに適した環境は、直射日光があたらない温度18度から20度、湿度が55％ほどの空間である。湿度が70％を超え、気温が30度を超えるとカビが生えやすくなるため気をつけよう。一度生えてしまったカビを除去するのは不可能に近い。通気口の近くなど、ガスが発生する場もできるだけ避けよう。
立てた状態で保管する
版画を保管するときは、寝かせた状態ではなく立てた状態で保管するのが良いとされている。箱や袋に入れて保管するのがよいが、たまに中から出して空気に触れさせる必要もある。
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川瀬巴水を高価買取作家に挙げている愛研美術は、査定料金・出張費用・移動経費等の費用は、お取引成立・不成立に関わらず無料とのこと。
まとめ
川瀬巴水は世界的にも評価の高い浮世絵師・版画家であるため、家の中に眠らせている作品を買取に出せば高く売れる可能性が高い。湿度や気温の高い倉庫の中に定期的な手入れもせず置きっぱなしでは、作品の劣化を招き価値を下げることになりかねない。査定は基本的に無料であるため、とりあえず査定に出してみて価値を見極めるのもよいだろう。
