棟方志功らと並んで戦後を代表する版画家である浜田知明。その作品は反戦を中心とした強烈なメッセージ性から、現代でも高く評価されている。その浜田作品がどのくらいの値段で売れるのか、作品を保有していれば特に興味があるだろう。
ここでは浜田作品の買取価格の相場を知るための情報として、業者による販売価格などの情報をまとめていく。代表作の解説もするため、浜田の創作自体について知りたい人にも参考にしてもらいたい。
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浜田知明とは
浜田知明は戦後に活躍した版画家・彫刻家である。1917年に熊本県で生まれ、2018年に100歳という高齢で没した。棟方志功や駒井哲郎、浜口陽三などと並んで、戦後の日本を代表する版画家の1人と評価されている。
16歳のときに飛び級で東京美術学校(現東京藝術大学)の油画科に入学した。同大では洋画家の藤島武二に師事している。1939年に同大を卒業したが、同時に日中戦争の局面が激化し、浜田も中国山西省方面に徴兵された。
このときの経験が、後ほど紹介する代表作「初年兵哀歌」シリーズの創作につながっている。
浜田知明の版画の画風・特徴
浜田の版画の作風は強烈である。「版画やアートのイメージが吹き飛ぶ」と感じる人もいるだろう。その代表が「初年兵哀歌」のシリーズだが、紹介する作品は徐々に刺激が強くなっていくので注意していただきたい。
また、最後に紹介する「ボタン」シリーズのように、新聞の政治風刺漫画のような作品も残している。これも版画としては珍しいテイストの作品だ。これが浜田作品の特徴のまとめだが、実際にどのような絵なのか、それぞれ紹介していく。
初年兵哀歌「歩哨」
「初年兵哀歌」のシリーズは、浜田の代表作である。そのなかでも「歩哨」は特に有名だ。この作品のモチーフは、自死しようとしている初年兵である。
初年兵とは入隊してから1年未満の兵士のことだ。浜田自身の従軍体験を元に描かれている。絵の中では、骸骨のように抽象的な顔をした兵士が、血の涙のような黒い雫を目から流す。
そして、立った状態でライフルの銃口を喉元に当て、片足をつかって銃の引き金を引こうとしている。銃身の長いライフルで自死するときはこのように、手ではなく足を使うのである。浜田は著書の中で従軍当時を振り返り「自分に戻れるのは狭い便所の中だった」という旨を語っている。
この絵の背景も、狭いトイレを思わせる小さな部屋である。
初年兵哀歌「便所の伝説」
これは「歩哨」よりもさらに自死をストレートに描いた作品だ。狭いトイレの個室で、初年兵が首を吊って自死している。「歩哨」の兵士の顔は頭蓋骨風だったが、こちらの顔は子どもが描いたような幼いタッチの顔である。
その幼さが、10代や20代前半などの若さで戦場に駆り出された初年兵の悲哀を強調しているとも見える。
初年兵哀歌「頭」
これは「歩哨」や「便所の伝説」よりさらに強烈な作品である。中央に立てられた棒には、男性の生首が突き刺されている。そして、その後方には男性の頭部を切断したと思われる3人の人影がある。
人影は踊って楽しんでいるようにも見える。絵の舞台はおそらく中国だろう。バックに見える家屋の屋根、崖などの地形のダイナミックさ、浜田が従軍していたのが中国山西省であることなどから推測できる。
版画を含めたアート作品に「よくわからないけど高尚なもの」というイメージを持っている人は、この「頭」を見て少なからず驚くのではないだろうか。
初年兵哀歌「風景」
先の「頭」も含めて強烈な作品が多い浜田だが、極めつけがこの「風景」だ。あまりに残酷なモチーフであるため詳しい解説は控えるが、何を描いているかは絵を見ればわかるだろう。このような行為は実際に多くの兵士がおこなっていたと証言されている。
浜田や仲間がそのような行為に加担しなくても、遺体などを目撃してしまった可能性はあるだろう。絵の背景は荒野のような場所だが、よく見ると、行軍して去っていく兵士のような集団が見える。おそらくこの「犯行」は彼らの仕業だろう。遠くに見える小さな人影がこれほど残酷な「風景画」も珍しい。
ボタン(B)
「ボタン」も浜田作品の代表的なシリーズである。ボタンとは核兵器のボタンのことで、核開発を風刺しつつ批判するシリーズだ。Bには3人の男が登場している。
一番後ろにいるアメリカ大統領を思わせる男は、自分の前にいる大臣のような男の後頭部のボタンを押す。ボタンを押されて動くロボットのような大臣は、さらに目の前にいる顔が見えない男の後頭部のボタンを押す。この顔の見えない男は、1人の兵士を暗喩したものだろう。
最後にこの兵士のような男が核兵器のボタンを押す。実際の絵の中では「ボタンを押す直前」だが、そのような流れで戦争が起こることを暗喩している。通常、このような風刺画では大統領のような人物がボタンを押す姿が描かれる。
しかし、ここでは核のボタンを押すという「汚れ仕事」が、兵士のような人物に押し付けられている。少年時代、望まないのに敵兵を殺害することを強要された浜田の体験が、このような構図を生み出したのだろう。
浜田知明の版画の買取価格
浜田の作品の相場をはっきり示しているケースはないので、明確な相場を知るのは難しい。そこで、浜田の作品の売却を考えているなら、一番知りたいのは「いくらで売れるか」ということだろう。買取価格の参考になるのは「実際にいくらで販売されているか」だ。ここではそのデータとして、ヤフオクとダッドアートでの販売価格を紹介する。
データは2019年6月24日時点のもので、最新の情報は変化していることに留意されたい。
ヤフオクにおける浜田知明の版画・落札価格
浜田知明の版画は、ヤフオクでも多数出品され、落札済みとなっている。すでに落札された価格の一部を紹介すると下記のとおりだ。
- ・夜→120,000円
- ・見られている→60,000円
- ・地下牢→59,000円
それぞれ限定50部から60部の作品である。単純計算すると「夜」の60部すべての売上が、合計720万円となる。あくまで時価だが、浜田の「夜」という創作の金銭的価値は720万円ということだ。
このような計算も浜田作品の相場を把握する上で参考になるだろう。
ダッドアートにおける浜田知明作品の販売価格
創業37年の卸価格直販の画廊ダッドアートでは、下記の値段で浜田作品を販売している。「初年兵哀歌」や「ボタン」のような代表作はないが、浜田の画業自体に興味を持った人ならピンとくる作品も見つかるだろう。
- ・せかせか→140,000円
- ・男→64,000円
- ・顔2→55,000円
- ・顔3→55,000円
- ・顔5→55,000円
「顔」のシリーズが複数出品されており、55,000円で統一されている。執筆時点で販売中のものはこれだけだが、「いらいらB」など多数の作品が売却済みとなっている。「情報過多人間」などは、現代人にも興味深いテーマの作品といえるかもしれない。
高値で売るコツと売却のポイント
浜田作品に限らず、絵画を高値で売るには押さえるべきポイントがある。ここではそれらのポイントのなかでも、浜田作品の売却で特に重要と言える2つの点を解説しよう。
状態が良いうちに早めに売却する
浜田知明は偉大なアーティストだが、亡くなったのは2018年であり、完全に「現代の人」である。だからこそ現代人でも作品を理解しやすいのだが、まだ評価が完全に安定していないという特徴もある。もちろん、これは良いことでもあり、これから生前以上に評価が高まっていく可能性もあるだろう。
確かなことは、これから先の浜田作品の価値がどうなるかわからないということだ。江戸時代や明治時代の版画家のように、良くも悪くも相場が安定しているということはない。そのため、今の価値が将来も維持されるとは限らない。
業者も仕入れた後ですぐに売れるわけではないため、値下がり傾向が始まると、業者は「売れない間にさらに値下がりすること」を想定し、買い値がさらに下がるようになる。浜田作品でそのようなことはないと思いたいが、リスクはゼロではない。何より、一般家庭では画廊や美術館のように完全な保管ができないため、持ち続けているうちに状態が徐々に悪くなってしまう。
これらのリスクを考えると、できるだけ早期の売却を考えるか、売却はしなくても査定だけは受け、現時点の相場を把握しておくことをおすすめしたい。
ネットで自ら販売するときは商品説明を詳しく書く
浜田知明の作品も、基本的には買取業者に売ることをおすすめする。業者が売るほうが買い手に信頼され、最終的に高値で売れることが多いためだ。個人で直接販売すると、業者の中間マージンはかからないものの、信用がないため逆に安値になることも少なくない。
それでも自分で直接売りたいという人や業者の査定価格が低かったので自分で売るという人もいるだろう。その場合はヤフオクなどのネットオークションや、メルカリ・ラクマなどのフリマアプリを使うのがおすすめだ。そして、これらのサービスを使うときは、商品説明をできるだけ詳しくするべきである。
たとえば少しの汚れがあるというなら、あえてその汚れも写るように写真を撮影するといいだろう。そのほうが文章だけで説明するより、買い手が不安を感じない。文章の説明だけだと不安になって購入を見送ってしまうかもしれないが、画像ではっきり見せることで「これなら許容範囲だ」と感じてもらえる可能性もあるだろう。
もちろん、実際に商品を送った後のクレームを防ぐことにもつながる。このような理由から、文章でも画像でも商品の説明はできるだけ詳しくすることをおすすめする。
おすすめ買取業者「総合美術買取センター」
買取価格
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ポリシー
ウイルス
対策
浜田の作品を売るとき、特におすすめできる買取業者は総合美術買取センターだ。同社は浜田のジャンルである版画だけでなく、洋画や日本画、陶芸などのあらゆる美術品を買い取っている業者である。この点が、浜田作品の売却で特におすすめできるポイントだ。理由は、浜田が彫刻や油絵の作品も多数残していることにある。
版画だけでなくこれらのジャンルの浜田作品も持っている人は、まとめて売れる業者に売るべきだろう。大量に仕入れて大量に売ることは、業者の利益につながる。そのため、多くの仕入れができるまとめ売りは、業者にも歓迎される。
他ジャンルの浜田作品があるなら、総合美術買取センターのような業者にまとめて売るのが得策なのだ。もちろん、版画だけでの売却にもおすすめする。同社は電話やメールによる査定はもちろん、自宅への訪問やLINEによる査定もおこなっている。
このように多様な方法で査定を受けられるため、忙しい人でも作品を売りやすいのだ。査定は完全に無料なので、受けることのデメリットやリスクはない。「大体の値段を知る」という目的で、同社の査定を気軽に受けてみるのもいいだろう。
まとめ
今回は浜田知明 版画・作品の買取相場・価値まとめを紹介した。浜田作品に限らず「絵画を売る」という経験は、人生でひんぱんにするものではない。まだ一度も経験したことがないという人が多数派だろう。そのため、査定を受けるときも身構えてしまうのは当然だ。
しかし、現代ではLINEでも査定を受けられるほど、絵画を売るハードルが低くなっている。浜田知明の作品が手元にあるなら、相場を知るためという気軽なスタンスで、まずは査定だけでも受けてみてはいかがだろう。