現代はインターネットの発達によって誰でも簡単に手元にある物を売却できる時代であるが、そのために予想外の商品が高額で買い取られることも珍しくはない。特に旧家などの蔵に眠っている昔の武具については、価値のある物が多く、その最たるものが刀剣類である。
一般に刀剣については、正宗や国光といった名工によって鍛えられたものに高い値が付き、そのような刀鍛冶の銘が打たれていない、いわゆる無銘の刀剣は大した価値がないと考えられがちである。しかし、そのような刀剣の中にも非常に高く評価されるものがあることから、以下では刀剣の評価基準を見たうえで無銘であっても高評価につながる要件を整理していくこととする。
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刀剣の評価方法とは?
刀剣の真贋について
まず最初に刀剣の鑑定にあたってチェックされるのが、その品の真贋である。いくら名工の銘が打たれている刀剣であったとしても、それが偽造されたものであったり、単なる模造品に過ぎない場合には著しく低い評価しかえることはできない。
また、無銘の刀剣の場合には、当然ながら銘の真贋は問題とはならないが、その刀剣が作られたと考えられている時代や場所が正しいかどうかについて厳密に確認されることが通常である。その結果、刀剣にまつわる情報が正確であり、かつ作られた時代や場所が高評価につながるものである場合には、たとえ無銘であったとしてもそれだけで低い評価になることはない。
銘の有無
次に、言うまでもないが真正の銘が打たれているということは、それだけで評価につながる重要な要素である。この点、無銘の刀剣であっても、かつては銘が打たれていたにもかかわらず何らかの事情で消えてしまったというケースも考えられる。
例えば、後から刀身を鍛えなおしたというケースや実際に戦闘で使われるなどして摩耗してしまったような場合である。そのような品が無銘であると見做されて二束三文のものとして扱われることのないよう、以前に銘が存在したような形跡がないかはしっかりとチェックされる項目である。
刀装の見極め
さらに、刀剣の評価において重要となるのは、現在残っている刀装が作られたときからどの程度変わっているかという点である。
当時の状態のまま変わらず残っているものであれば長い年月を経てきている分、価値は高まっていると見做されるが、一方で途中で修理したり、作り直したりしているような場合には本来の価値よりも大きく割り引いて評価される場合もあり得る。
実際の鑑定においては、この刀装の見極めを行ったうえで、あらかじめ決められている保存刀装や重要刀装といった複数のランクのなかから対象の刀のランクを決めることになるのである。
柄の中の状態確認
刀剣を鍛えた刀鍛冶が属していた流派を見極めるためには、刀の柄のなかにある「なかご」と呼ばれる部分を確認することが重要である。流派によって異なる特徴があるため、この部分を見るだけで流派の特定が可能となるからである。
無銘の刀剣であっても評価の高い流派の品であることが分かればそれだけで高額で取引されることも多いため、この点についての確認も鑑定における重要なポイントであると言えるだろう。
鑑定書の重要性
刀剣の評価において信頼のできる鑑定機関から発行された鑑定書が付されていることは極めて重要である。この点、現在においてもっとも信頼性が高いと考えられている鑑定機関は、公益財団法人の日本美術刀剣保存協会である。
もっとも、鑑定書が付いていれば何でもよいというものではない。同協会では、保存、特別保存、重要刀剣、特別重要刀剣という4つの種類の鑑定ランクを設けており、このうちもっとも評価が高いとされる「特別重要刀剣」であれば、国の重要美術品と同等といった扱いになるため、高額での売却が想定されるが、「保存」であればそこまでは期待できないであろう。
刀剣を高額で売却するための方法とは?
高額売却が期待できる売却先
以上で見てきたとおり、ある程度の要件を満たせば無銘の刀剣であっても高い評価が得られる訳であるが、その評価を実際の売却価格に結び付けるためにはいくつかの工夫が必要となる。
この点、刀剣を売却する先として真っ先に思いつくのは町の骨董品店やアンティークショップだろうが、そのような店舗では再販によって収益を上げることを目的として買取りを実施していることから、ある程度ディスカウントした価格でしか売却することができない。
そのため、より高く売却しようという場合には、その刀剣を手元に置いておきたいと考える一般消費者に対して直接売却を試みることがポイントである。
一般消費者へのアプローチ方法
では、店舗を持たない個人が一般の消費者に対して自分の刀剣を売却するためにどのようなアプローチを採ればよいのであろうか。
これについてもっとも有効な手段は、ヤフオクなどのインターネットのオークションサイトや、メルカリなどのスマートフォンやタブレットのアプリを利用するということである。これらのプラットフォームは個人間の売買を可能にするだけではなく、特に前者のようなオークション形式のものの場合、購入希望者間で値上げ競争が行われることも期待できるため、本来の評価額よりもはるかに高額で売却することも不可能ではない。
オークションやフリマで売るためには
写真を使ったより高く売却するための工夫
とはいえ、ヤフオクやメルカリを漫然と利用しているだけでは無銘の刀剣を高額で売却することは不可能とは言えないまでも困難である。無銘であるが、評価の高いものであるということをいかにして知ってもらうかが成功の秘訣と言えよう。
この点、これらのプラットフォームでは写真の掲載が可能であることから、なるべく刀剣がはっきりと見える写真を複数掲載することが重要である。その際、似たような写真を2枚も3枚も掲載するのではなく、様々なアングルから撮った写真や附属品の写真を用いることがポイントとなる。
また、映りこませる背景であるが、できればより高尚なイメージを持たれやすい床の間や旧家の蔵といったものにすると、より刀剣の魅力を引き立たせることができるはずである。さらに、写真の明るさにも留意すべきであり、暗い画像ではなく明るい画像となるよう光源などを利用することも検討してよいであろう。
情報提供による高額売却の工夫
写真を使うことが有効であるとはいえ、それだけで刀剣の高額売却が可能となるわけではない。写真とともに重要なファクターとなるのが商品の説明である。ヤフオクやメルカリでは、所定の商品説明欄が設けられているため、そのスペースを利用していかに自分の刀剣が価値の高いものであることを伝えることが必要となるわけである。
記載すべき項目としては、既に述べたように、刀剣の評価を高める要素をなるべく網羅することである。例えば、無銘であっても流派が特定されているのであればその旨を記載すべきであるし、作られた時代や場所が分かっているのであればその点についても触れておくのがよいであろう。
また、鑑定書が付されていることは重要であるが、その鑑定書においていかなる評価がなされているのかについても可能な限り伝わるように記載すべきである。併せて、鑑定書を作成した鑑定機関がどこであるかも明記しておくとよいだろう。
なお、刀剣が無銘のものであるという点については、あえて伏せておく必要はないが積極的にアピールするものでもないため、問い合わせを受けたら正直に答えるというスタンスでよいであろう。また、商品説明を書くに際しては、事実と異なる虚偽内容となることのないように留意すべきである。
問い合わせには正確に答えること
刀剣類の収集家にはかなりの専門知識を持つ人が数多く存在するため、いかに詳しく商品説明を記載したとしても、購入希望者がそれだけでは満足できずに問い合わせを行ってくるケースがある。
メルカリなどではコメント機能が用意されているため、当該機能を使ってそのような問い合わせに対応することができる訳であるが、その際に求められている以上の回答を行うことによって、商品を高額で売却する可能性を一層高めることが可能となる。
例えば、鑑定書を取得した時期について聞かれた場合に、その年月に加えてその時の鑑定士からのコメントについても回答するといった具合である。
無銘の刀剣こそ高く評価されるべき理由
既に述べたように、無銘の刀剣であっても工夫次第で高く売却することは可能であるが、最後になぜそのような結論を導けるのかについて以下では収集家の心理から見てみることにしよう。
収集家の心理
この点、収集家としては、他人が持っていない物を保有していることに価値を見出したり、優越感を感じる傾向があるが、有銘の刀剣については既に同様のものが世間に存在していてその評価が固まっているため、いくら価値のあるものであるといってもあえて欲しいとは思わない場合がある。
一方で、これが無銘の刀剣となると、その評価を見極めるために収集家としての目利き力が試されていることになり、自身が価値があると思った場合には多少高くても買いたいという心理状態になることは容易に想像できるのではないだろうか。
加えて、無銘の刀剣は他に類似のものが存在しない可能性もあることから、場合によっては将来的に予想以上に価値が高騰する可能性もゼロとは言い切れず、そのようなロマンを求める収集家にとってはある程度の出費を伴ってもその可能性に賭けたいという気持ちになることも考えられる。
ヤフオクやメルカリを利用して収集家の心理状況をくすぐる
ヤフオクやメルカリには、写真の掲載やコメント欄などのようにそのような収集家の心理をくすぐることができる様々な仕掛けが用意されていることから、これらを最大限に利用して売却活動を行うことによって、世の中に数多く存在する刀剣類の収集家からより高値を引き出すことが可能になるという訳である。
なお、過去には無銘の刀剣と思われて二束三文で取引されたものが、実際には鑑定かの間で極めて評価の高い刀鍛冶によって鍛えられたものであるということが後に判明したというケースも存在していることから、単に無銘であるというだけで高値での売却をあきらめるという安易な判断はくれぐれも避けるべきである。