親族が鬼籍に入ると、我々は冥福を祈り、喪に服す。このように故人を偲びたいところだが、現実的には辛くも遺族が現世でやらなければならないことは山ほどある。例えば、葬儀や死亡に関する諸手続き、そして故人が残した遺産の分配や遺品の整理だ。
特に遺産の分配や遺品の整理に関しては、相続税のことを考慮しなければならないと、みな気をつけるところだと思うが、場合によっては、相続税以外にも税金が発生することがあるので注意が必要だ。それはどのような場合かというと、遺品を売却したときだ。
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遺品を売却するのは普通のこと?
相続人が遺品を相続した後に、その遺品を売却して現金に換えるケースは珍しくない。とりわけ、最近は何でも買いとってもらえる時代だ。買取業者は山ほどあるし、メルカリなどのフリマアプリやインターネットオークション、バザーなどを利用して売ることも容易にできる。
加えて、狭小な住環境が問題となっている日本において、遺品、特に家具や家電などの大型のものが、「お荷物」となっている感は否めないだろう。さらに、少し前まで断捨離ブームがあったせいか、今まで嫁入り道具と並んで処分に頭を抱えていた遺品も、最近では割り切って売却するなり、廃棄するなりする人が増えてきたように感じる。
故人としても、遺品がお荷物として相続人の負担になっているよりも、遺品を売却することで現金に換えて有意義なことに使ってもらえる方が喜ぶのではないだろうか。今の時代、もはや遺品を売却するのは普通のことのように思える。
遺品の売却にも税金がかかることがある
物を売ってお金を得た場合、そのお金は基本的には「譲渡所得」の扱いとなり(目的や売るものの内容によっては「事業所得」や「雑所得」の扱いになる)、これは遺品であっても同様だ。
しかし、譲渡所得の全てが課税対象というわけではなく、「課税される譲渡所得」と「課税されない譲渡所得」というのに分けられる。非常におおざっぱに言えば、高額になるものは課税され、大した額にならないのは課税されないと考えるとわかりやすい。
課税される場合には、所得税と住民税がかかることになり、確定申告をおこなうことになる。 そのため、遺品を売却する場合には、そもそもそれが課税されるケースに該当するのかどうか、見極める必要がある。以下、詳細について見てみよう。
生活用動産を売却しても課税されない
遺品でもよくある、家具や家電、衣服などの日常的な生活に通常必要なものは「生活用動産」と呼ばれる。嬉しいことに、生活用動産を売却しても、その譲渡所得は課税対象外となっているのだ。
つまり、遺品の冷蔵庫を売って現金に換えたところで、所得税も、住民税も、もちろん相続税もかからないことになる。税務署としても、少額なものに対していちいち課税していたのではキリがないので、少額不追及といったところなのだろう。
ただし、生活用動産は先に述べた通り「日常的な生活に通常必要なもの」と説明されていることに気をつけた方がよいだろう。一般的に、スポーツカーやヨットなどの、高価な「道楽品」あるいは「ぜいたく品」といったものを売却したのであれば、「課税される譲渡所得」に該当するだろう。
その他にも、例えば一口にソファといっても、ニトリのソファとカッシーナのソファとでは、市場価値が桁違いだ。とてつもない額で買い取ってもらえたのであれば、生活用動産の範疇を超えて、その譲渡所得が課税対象になるかもしれないので注意しよう。
税金の世界には、往々にしてこのような社会常識に照らして判断する例外が存在するので、もし心配であるのなら税務署や税理士に相談するとよいだろう(税務署なら無料で相談できるのでおすすめだ)。
なお、生活用動産以外にも、譲渡しても「課税されない譲渡所得」に該当するものは以下の通りだ。
- ・強制換価手続により資産が競売などをされたことによる所得
- ・国又は地方公共団体に対して財産を寄附した場合
- ・公益を目的とする事業をおこなう法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合の所得
- ・国等に対して重要文化財等を譲渡した場合の所得
- ・財産を相続税の物納に充てた場合の所得
- ・債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得
上記の項目に該当するのかどうかわからない場合には、やはり税務署や税理士に相談しよう。
売却額30万円を超える貴金属や骨とう品は「課税される譲渡所得」
遺品の中には、貴金属や宝飾品、骨とう品や美術品などがあることも珍しくない。亡くなった祖母の指輪を身に付けている人もいるだろうし、亡くなった祖父の掛け軸を床の間に飾っている人もいるだろう。
もしこれらを売却する場合、1個または1組につき売却額30万円以下なら「課税されない譲渡所得」(生活用動産)になり、30万円超であれば「課税される譲渡所得」になる。
いざ遺品を売却するときに割と値が付きやすいのが、このカテゴリーだ。骨とう品や美術品なんてどこの家にでもあるものではないかもしれないが(「開運!なんでも鑑定団」を見ていると、そうとも思えないが)、貴金属や宝飾品は多くの家庭にあるのではないだろうか。
例えば、指輪だ。「婚約指輪は給料の3倍」と言われて、高額な指輪が売れていた時代があった。「固い絆を表すプラチナ」「永遠の輝きを放つダイヤモンド」はいずれも高価なうえ、素材的な価値はなかなか下がらない。
もし、これらの売却額が30万円を超えるようであれば、「課税される譲渡所得」になることを忘れないようにしよう。
なお、似たものとして「金地金」「プラチナ地金」(いわゆるインゴット)があるが、こちらはわかりやすく資産であることからか、30万円以下か30万円超かの基準はなく、すべて「課税される譲渡所得」に該当するので気を付けよう。
「課税される譲渡所得」に該当しても絶対に課税されるわけではない
例えば、遺品の宝飾品を売ったところ100万円になった場合、基準である30万円を超えているので、「課税される譲渡所得」に該当するのはお分かりいただけるかと思う。
しかし、だからといって、100万円すべてに対して課税されるわけではない。実際には、売却額の100万円から取得費用(この宝石を購入した金額)と売却費用(手数料や印紙代など)を差し引いた利益(売却益)から、さらに特別控除額50万円を引いて残った額(課税譲渡所得金額)が課税対象となる。
なお、これは総合課税の場合だ(土地や建物、株式は分離課税)。
- 【総合課税の課税譲渡所得金額の求め方】
- (売却価額-(取得費+譲渡費用))-特別控除額50万円=課税譲渡所得金額
もし、「課税される譲渡所得」がその宝飾品だけの場合、指輪を50万円で購入し、売却費用がかかっていないのであれば、
- [100万円(売却額)-50万円(取得費用)-0円(売却費用)-50万円(年間特別控除額)=0円]
で、所得税・住民税はかからないことになる。しかし、もし同条件で110万円で売れたのであれば、10万円に対して課税されることになる。
なお、遺品となると、レシートでも保管されていない限り、正確な取得費用はわからないと思う。そんな場合は、売却額の5%を取得費用として計上することができ、しかも実際の取得費用が売却額の5%を下回っていたとしても、5%として計算することが可能なのだ。
つまり、100万円で売れた指輪の購入額が不明であるなら、取得費用を5万円とすることができ、仮にそれが1万円で購入していた場合であっても5万円として計上できることになる。
5年以上所有していると税制上有利になる
「課税される譲渡所得」については、売れた金額から買ったときの金額と諸費用、さらには特別控除を引いて残った額(課税譲渡所得金額)に課税されるわけだが、もしその売ったものが5年を超えて所有していた場合、この残った額をさらに半分にすることができるので、税負担も軽減される可能性がある。
一方で、モノを売る場合、その多くが時間の経過に伴い、価値も下がっていくので、わざわざこの税制上のメリットを活用するために5年間意図的に所有するのはあまりおすすめできない。
5年以上前に相続して当初は売るつもりがなかったけど、やっぱり売ってしまおうと思うようになった人は、こういった制度になっていることを知っておいてほしいと思う。
被相続人が売却してもあまり変わらないが・・
上記の話については、相続人が売却しても、被相続人が生前に売却しても、同じような仕組みで税金がかかるので(当人たちの所得にもよって税額が変わってくるが)、遺品を売るにしても、生前贈与するにも、あまり損得は発生しないと思った方が良いだろう。
被相続人が相続人のために税負担を軽くしたいのであれば、やはり生前贈与の仕組みを利用して、相続税を抑えるということぐらいではないかと思われる。
しかし、「より高く売る」という意味では、ものによってではあるが、相続人が相続して時間が経ってから売るよりも、被相続人が生きているうちに早く売った方が高く売れる可能性は高くなる。
そもそも、身の回りにあるような生活用動産は、先ほど述べたとおり、売却したところで課税されないのだから、税負担を考える必要はなく「高く売れるタイミングで売る」べきかとも思う。
また、被相続人が生前のうちに動産を処分するのは、相続人や遺族にとっても助かることだ。もし、遺品が整理されていない状態で旅立ってしまった場合、下手したら残した遺産よりも遺品整理を業者に依頼する方が高くつくかもしれないし、お金の問題以前に遺族にとって大変な手間をかけさせることになる。
そういう意味では、動産はなるべく被相続人が売却するなりして処分しておくのが、スマートかと思うがいかがだろうか。
おすすめの遺品見積もり業者
遺品の買取でおすすめの業者を紹介していく。(2020年10月時点)
遺品は買取品目が多いため、複数の商品をまとめて買い取ってくれる業者が重宝される。また、さまざまなジャンルの専門知識が豊富な業者に頼めば高額査定につながりやすいので以下の買取業者を参考にしよう。
買部隊
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
首都圏エリアでどんな物でも買い取っている買部隊は、出張費無料で即日対応も可能な頼もしい買取業者だ。修復が必要なヴィンテージ品や、壊れている家電製品も提携先で修理が可能なので積極的に査定している。古い状態の遺品でも高価買取の可能性があるので、まずは無料査定をしてみよう。
遺品を売るならヒカカク!で賢く一括査定申込み
遺品整理でさまざまなジャンルのものを売る場合、オークションやフリマアプリといったツールを使う人も多い。自分の好きな価格で自由に売却できるからだ。しかし、上記の方法だと売れ残ってしまうリスクやトラブルに巻き込まれるリスクがある。
そのため、安全で確実に遺品を売りたい場合は買取がおすすめ。ただ、遺品とはいえ同じ商品ならより高い方がよいだろう。
そこでおすすめなのが相場情報サイト「ヒカカク!」である。ヒカカク!はさまざまなジャンルの商品にぴったりの買取業者を紹介してくれるサイトだ。1分の入力でおすすめの業者を最大20社まで探してくれるメリットが魅力である。
遺品を売りたいけれど業者を選んでいる時間がない人はとくに活用してほしい。
遺品売却時の注意事項
遺品を売却するときには、いくつか気をつけるべきことがある。ここでは、それぞれ具体的に見ていこう。
1. 納税は適切におこなう
上記の説明をお読みいただければわかるかと思うが、実は動産の遺品を売ったところで、納税義務が生じることはあまりないのだ(不動産は別だが)。それは、まずもって生活用動産を売却しても課税対象にならないというのが大きいだろう。一般的に気をつけるべきは、高額で売れた宝飾品や美術品ぐらいだ。
しかし、だからといって油断してはならない。もし、納税義務が生じたのなら、くれぐれもちょろまかすようなことはせず、しっかりと手順を踏んで確定申告をおこなってほしい。脱税は重罪だ。もしわからないようなことがあれば、やはり税務署に相談してみるとよいだろう。
税務署は、脱税者に対してはめちゃくちゃ厳しいが、納税者に対しては割と親身になって相談に応じてくれるものだ。まずは基本中の基本、納税となる。
2. 相続放棄する場合は売却してはならない
相続において債務(借金、未払い金など)の方が多い場合、相続放棄を選ぶのが主流だと思うが、相続放棄をするためには「被相続人の財産を勝手に処分してはならない」というルールがある。簡単に例示してみよう。
- 例:おじいさんが1億円の借金を残して亡くなった。おじいさんの持ち家や土地、その他財産は、すべて売ってもせいぜい1千万円程度にしかならない。
- 負債の方が多いので相続放棄することにした。
- でも、おじいさんの家にロレックスのデイトナがあったので、持ち帰って業者に買い取ってもらい10万円ゲット!
この場合、「10万円ゲット、やったぜ!」などと喜んでいる場合ではない。おじいさんの財産に対して相続放棄するということは、おじいさんの所有していた財産を処分する権利がないと同義だからだ。
しかし、目先の欲にかられてついつい処分(売却)してしまった。さて、どうなるかというと、相続放棄する意思がないと見なされ、相続放棄できなくなるおそれがあるのだ。
つまり、10万円ゲットの見返りに、借金まで相続することになりかねないのだ。相続人が1人であれば、1億円の借金と1千万円にしかならない財産を相続、要するに9千万円の借金を負うことになる。
そのため、相続放棄する場合には、くれぐれも勝手に財産を処分(売却)するような真似はやめよう。
3. 遺品の売却は相続することが確定した後に
特に借金がなく相続放棄の必要もない場合、多くの人は相続を希望すると思うが、相続人は自分だけというわけではないので気を付けよう。相続は、法律および遺言や遺産分割協議に従っておこなわれる。
そのため、勝手に先走って遺品を売却するとトラブルのもとになりかねない。売却するのは、自分が相続した遺品に限るというのが鉄則だと思っておいた方がよいだろう。
また、いらぬトラブルを避けるためにも、高額で売れても言いふらさない方が賢明だ。妬みを買いかねない。
4. モノによっては早く売却する
特に電化製品などでは、時間が経てば経つだけ価値が下がる傾向にあるので、売るなら早い方がよいだろう。
考えてもみてほしい、10年前のパソコンを譲ってもらえると聞いて嬉しいだろうか?あまり遅くなると、最悪どこにも買い取ってもらえず、廃棄するのに有料となるケースもある。
とりわけ、家電リサイクル法対象品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)を処分するのは高額なので注意しよう(これらは無料で引き取ってくれるなら、それだけでもありがたい)。
まとめ
さて、ここでは遺品を売却した際に発生する税金について見てきたが、「案外、税金ってかからない」と思わなかっただろうか。もちろんケースバイケースのことではあるが、基本的に一般的に市場に出回っているような生活必需品であれば、遺品であれ、売ったところで課税されることはないと考えてよいだろう。
そのため、通常は売却にあたって、あまり身構える必要はないだろう。身構えるべきは、売ることによって大金が手に入る場合だ。
また、納税にあたっては、たいてい控除額が設定されており、ここでも例外ではない。譲渡所得(総合課税)に対する特別控除額は50万円とけっこう高く設定されているので、課税対象となるのはよほどの場合、それこそお宝を売った場合と考えておくとよいだろう。
また、動産の譲渡所得に関しては、基本的に誰が譲渡しても同じように税制が適用されるので、被相続人があらかじめ売っておくべき、相続人が売るべき、といった議論には発展しないだろう。せいぜい、相続税が発生しそうなときに、相続税負担を減らすために生前贈与するかどうかといったぐらいの話だ。
ただ、被相続人が生前に動産を処分(売却)することは、税制面でメリットがほとんどなくても、遺族の遺品整理の負担を減らすことにつながるため、やる意義は十分にあると思われる。