中古品を売買する場合に、古物商許可申請をおこなう必要がある。申請時に品目や警察署によっては、知識などが確認される。古物商に関する情報を調べていると、立ち入り検査という言葉を耳にすることがあるが、許可申請時やその後に立ち入り検査が入ることはあるのだろうか。
警察の立ち入り検査の実態などについてリサーチしてみた。
本記事のポイント
- 立ち入り調査の目的や断ることができるかどうかについて
- 懲役や罰金などに処されることはある?
- 帳簿を記録することが大切な理由
CONTENTS
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古物商における警察の立ち入り検査とは
警察は、古物商の営業実態を把握したり、盗品等が混入していないか調査したりすることを目的として、立ち入り検査をおこなうことがある。古物営業法においても、立入検査に関して規定が設けられており、法律にしたがっておこなわれる検査といえる。
立ち入り検査で求められることとは
立ち入り検査とは、「警察が実際に営業所や古物の保管場所を訪れ、盗品等が流通しているかどうかを確認する作業」である。警察が立ち入り検査でできることは、以下のとおりだ。
第二十二条 警察職員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、古物商の営業所若しくは仮設店舗、古物の保管場所、古物市場又は第十条第一項の競り売り(同条第三項及び第四項に規定する場合を除く。)の場所に立ち入り、古物及び帳簿等(第十八条第一項に規定する書面で同項の記録が表示されたものを含む。第三十五条第三号において同じ。)を検査し、関係者に質問することができる。
3 警察本部長等は、必要があると認めるときは、古物商、古物市場主又は古物競りあつせん業者から盗品等に関し、必要な報告を求めることができる。
引用: 古物営業法第22条第3項
営業がおこなわれているか、あるいは盗品が紛れ込んでいないか確認するために、警察署は古物の確認や帳簿などの記録を求め、必要な情報を得るために話や報告を求めることができるのである。
警察か疑わしい場合の確認方法
帳簿には個人情報が記載されているため、情報を求められたからといってむやみに公開できないところだ。また、盗品だからと古物を押収されてしまい、不服に思うこともあるだろう。
ときには、本当に警察署か疑わしく思ってしまう場合があるかもしれない。古物営業法により、警察職員は身分を証明する証票を携帯し、関係者に提示する義務が生じているため、証票の提示を受けることができるか確認しよう。
断ることはできる?
警察が立ち入り検査をおこなうのは、犯罪の防止と被害の早期発見をおこなうのが目的であり、適切に管理することで古物商の健全化に寄与している。
忙しいと断りたくなってしまうかもしれないが、立ち入り検査を拒んだり、避けたりすることはできない。それどころか、古物営業法の規定に従い、10万円以下の罰金に処されてしまう。
第三十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
三 第二十二条第一項の規定による立入り又は帳簿等の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
引用: 古物営業法第35条第3号
求められた帳簿がないとき
中には、帳簿をつけていなかったり、求められても速やかに帳簿を出せなかったりする人もいるかもしれない。しかし、帳簿をつけるのは古物商人の義務である。
第十六条 古物商は、売買若しくは交換のため、又は売買若しくは交換の委託により、古物を受け取り、又は引き渡したときは、その都度、次に掲げる事項を、帳簿若しくは国家公安委員会規則で定めるこれに準ずる書類(以下「帳簿等」という。)に記載をし、又は電磁的方法により記録をしておかなければならない。ただし、前条第二項各号に掲げる場合及び当該記載又は記録の必要のないものとして国家公安委員会規則で定める古物を引き渡した場合は、この限りでない。
引用: 古物営業法第16条
すぐに出せないというのも言い訳でしかなく、古物営業法ではすぐに照会できるよう保管する規定が存在する。
第十八条 古物商又は古物市場主は、前二条の帳簿等を最終の記載をした日から三年間営業所若しくは古物市場に備え付け、又は前二条の電磁的方法による記録を当該記録をした日から三年間営業所若しくは古物市場において直ちに書面に表示することができるようにして保存しておかなければならない。
引用: 古物営業法第18条
したがって、怠っていることが発覚すれば、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に刑に処される。帳簿の記録は「古物商の取引相手の身元確認義務」「盗品を発見した場合に警察への通報義務」「取引記録の保存義務」という3大義務の1つであるため、心配な方は記録方法などを確認しておこう。
第三十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
二 第十六条又は第十七条の規定に違反して必要な記載若しくは電磁的方法による記録をせず、又は虚偽の記載若しくは電磁的方法による記録をした者
引用: 古物営業法第33条第2号
嘘やごまかしをしてしまったとき
立ち入り検査が入ってやましいことがあると、嘘をついたりごまかしたりしてしまうことがあるかもしれない。この場合、10万円以下の罰金に処されてしまう。もしうっかり、誤ったことを言ってしまったり、伝えなければいけないことを伝え忘れてしまったりした場合には、改めて連絡を取り報告するよう努めたい。
第三十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
四 第二十二条第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
引用: 古物営業法第35条第4号
盗品等の発見を妨害してしまったら
立ち入り検査を断ったり帳簿が見つからなかったりした結果、または嘘をついたりごまかしたりした結果、警察が盗品の情報を得るために立ち入ったのに、それを著しく阻害してしまう可能性がある。
この際の規定も設けられており、古物営業の一部もしくは全ての営業停止が6ヶ月以内の範囲で命じられてしまうことがある。そればかりか、場合により営業の許可が取り消される可能性もある。
第二十四条 古物商若しくは古物市場主若しくはこれらの代理人等がその古物営業に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは他の法令の規定に違反した場合において盗品等の売買等の防止若しくは盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき、又は古物商若しくは古物市場主がこの法律に基づく処分(前条の規定による指示を含む。)に違反したときは、当該古物商又は古物市場主の主たる営業所又は古物市場の所在地を管轄する公安委員会は、当該古物商又は古物市場主に対し、その古物営業の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて、その古物営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
引用: 古物営業法第24条
許可が取り消されたら5年以上営業できない
そして、一度許可を取り消されてしまったら、5年間は古物商許可を得ることができない。なぜなら、欠格事由に該当してしまうからである。きちんと帳簿をつけなかったり、警察の命令に従わなかったりした結果、路頭に迷ってしまわないように注意したい。
第四条 公安委員会は、前条の規定による許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、許可をしてはならない。
六 第二十四条第一項の規定によりその古物営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前六十日以内に当該法人の役員であつた者で当該取消しの日から起算して五年を経過しないものを含む。)
引用: 古物営業法第4条第6号
疑わしいものは適切に保管・対処しよう
疑わしいものについて保管義務があるため、怠った場合もケースにより取り消されてしまうことがあるかもしれない。
第二十一条 古物商が買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けた古物について、盗品等であると疑うに足りる相当な理由がある場合においては、警察本部長等は、当該古物商に対し三十日以内の期間を定めて、その古物の保管を命ずることができる。
引用: 古物営業法第21条
古物商許可申請時や後に立ち入り検査が入ることはある?
立ち入り検査の目的から、古物商許可申請時に立ち入り検査がおこなわれる可能性は低い。しかし、古物商許可を取った瞬間から、古物商人として盗品などの調査で警察に立ち入られることがあるため、「古物商許可申請時や後に立ち入り検査が入ることはあるか」と問われたら、「可能性はある」という回答になる。
このほかにも、下記などのことを確認されることはあるかもしれない。
営業所の実在を確認
飛ばし行為などに関して厳格な対応を取っているため、記載した営業所などの情報が疑わしい場合に、調査がおこなわれることはあるだろう。仮に営業所が確認できず、通知しても30日間、何の申し出もなく変更届も提出しないようでは、古物商許可が取り消されてしまうことがある。
第六条 公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者について、次に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を取り消すことができる。
2 公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者の営業所若しくは古物市場の所在地を確知できないとき、又は当該者の所在(法人である場合においては、その役員の所在)を確知できないときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該者から申出がないときは、その許可を取り消すことができる。
引用: 古物営業法第6条第2項
書類に偽りがないか確認
古物商許可の書類に偽りがないか、不当な手段で提出したものではないかなどの確認もあり得る。虚偽のものであった場合に、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処され、許可も取り消されてしまう。
第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
二 偽りその他不正の手段により第三条の規定による許可を受けた者
引用: 古物営業法第31条第2号
第六条 公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者について、次に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を取り消すことができる
一 偽りその他不正の手段により許可を受けたこと。
引用: 古物営業法第6条第1号
6ヶ月以内に営業を始めているか確認
古物商は許可を得ればずっと古物営業ができるというわけではなく、営業実態が伴っていることが条件である。具体的には、古物商許可申請を得てから6ヶ月間営業実態がない、あるいは6ヶ月以上休業している際には、許可を取り上げることができるようになっている。
古物商許可を受けてから6ヶ月以上経っている状態であれば、営業実態を調べられる可能性があるということである。
第六条 公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者について、次に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を取り消すことができる。
三 許可を受けてから六月以内に営業を開始せず、又は引き続き六月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと。
引用: 古物営業法第6条第3号
プレートの掲示や管理場所などを確認
ほかにも、規定を満たしたプレートを見やすい場所に掲示しているか、管理場所は十分に確保できているかなどが確認されることがある。特に、家具や車など大型のものを扱う古物商人は、注意しておこう。
第十二条 古物商又は古物市場主は、それぞれ営業所若しくは仮設店舗又は古物市場ごとに、公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならない。
引用: 古物営業法第12条
まとめ
古物商許可を得た瞬間から、警察の立ち入り検査が入る可能性が生まれる。そのときになって慌てないように、古物商許可を得たものが遵守しなければならないことや、立ち入り調査で求められることなどを把握しておこう。
立ち入り調査では、下記のことが行われる。
- ・帳簿の記録を確認
- ・従業員への質問
ほかにも、下記などをチェックされることがある。
- ・営業所はあるか
- ・書類に偽りはないか
- ・営業実態があるか
- ・プレートの位置や規格を満たしているか
- ・保管場所は十分に確保できているか
法律に従い営業していれば何ら問題はないが、懲役や罰金、営業停止や許可の取り消しに至ることがあるため、警察が立ち入った際や電話がきた際には細心の注意を払おう。