全国に数多く存在する買取業者。高価買取やスピード査定など売る側に寄り添った買取サービスで人気の高い買取業者もいれば、古物商許可証がないのに無許可で営業していたりなど、古物営業法に違反した行為を働くなどして営業停止処分や最悪の場合逮捕される悪徳な買取業者も存在する。
今や買取業者でなくとも個人でオークションサイトやフリマサイトなどで古物を転売する転売ヤーと呼ばれる輩も存在し、中古品の売買は私たちの生活に普通に根付いているが、だからこそ誰もが古物商についてしっかり知識を深めておく必要がある。
古物商とは、古物の売買をしたりする人のことで、古物とは使用歴のある品物や使用歴はないが使用のために過去に取引された品物、手入れがされてある中古品のことだ。
今回は、古物商について紹介するとともに古物商の違反事例や逮捕例、事件など、古物商の法律を違反するとどういう罰則を受けるのかを詳しく解説していく。買取業者側はもちろん、買取業者に買取を依頼する人や買取業者から商品を購入する人、個人で古物を売買している人も参考にしてみてほしい。
CONTENTS
古物商に課せられた3つの義務
古物商が古物の売買をおこなう場合に守らなければならない三大義務がある。ここではその3つを詳しく解説していく。
本人確認をおこなう義務
本人確認をおこなう義務は、買取業者が買取をおこなう際に買取相手の氏名、住所、年齢などの確認をおこなうことだ。盗難品の換金を防ぐ目的がある。
これに違反した場合、古物営業の許可取り消しや営業停止命令、さらに6か月以下の懲役または30万円以下の罰金などが科せられる場合がある。
取引の記録を保管する義務
取引記録を保管する義務は、買取業者が古物の売買をしたときの取引情報を古物台帳などに記録し、それを3年間保管しておく義務のことだ。記録する内容は取引した年月日、古物の特徴、本人確認の方法など。
これに違反した場合、古物営業の許可取り消しや営業停止命令が下されたり、さらには6か月以下の懲役または30万円以下の罰金などが科せられる場合がある。
不正品を申告する義務
不正品申告する義務は、古物を買取する際に盗難品などの不正品の疑いがあると判断した場合、直ちに警察に通報する義務のことだ。これは盗難品の流通を防ぐための義務である。
これに違反した場合も許可取り消しや営業停止命令が下される恐れがある。さらに、古物が不正品であると知ったうえで買取した場合は10年以下の懲役及び50万円以下の罰金が課せられる可能性も出てくる。
古物営業法について
古物に関する法律として古物営業法というのがある。この古物営業法は、古物売買などの営業行為についての規制を定めた法律で盗難品の流通防止として1949年に制定された。
古物商を営む場合、警察署に古物商の許可を申請する必要がある。古物営業法に該当する物は下記の13品種だ。
- ・美術品類
- ・金券類
- ・書籍
- ・衣類
- ・自動車
- ・自動二輪車及び原動機付自転車
- ・自転車類
- ・事務機器類
- ・写真機類
- ・機械工具類
- ・皮革・ゴム製品類
- ・時計・宝飾品類
- ・道具類
しかし古物商許可証を申請しても許可が降りない場合もある。
- ・犯罪者
- ・暴力団員
- ・住居の定まっていない人
- ・成年被後見人、被保佐人
- ・古物営業の許可を取り消しされてから5年経過していない人
- ・営業について成年者と同一能力を有しない未成年者
上記に当てはまる人は古物商許可証を発行してもらえない。
違反した場合
では古物営業法に違反してしまった場合、具体的にどういう罰則があるのだろうか。罰則にはさまざまな種類があり、違反内容によって罰則の内容も変わってくる。
- ・無許可営業・名義貸しをした場合→3年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- ・法定場所外での営業をおこなった場合→1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- ・取引相手の確認や台帳への記録を怠った場合→6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
- ・営業内容変更の届出を怠った場合→10万円以下の罰金
などの罰則が科せられてしまう。
行政処分について
古物商が古物営業法を破った場合に受ける行政処分には3種類あり、「許可取消」、「営業停止」、「指示」という処分がある。
許可取消というのは、古物営業の実態が6か月以上存在しない場合や古物商か従業員が古物営業法を犯した場合などに適用される。
営業停止は、窃盗品などの不正品の流通防止措置を怠った場合などに適用され、営業停止の期間は6か月以内とされている。
指示は、営業停止の原因となる行為に対して公安委員会がきちんとした業務をおこなうように文書で違反行為を戒める場合に適用されている、いわばイエローカードのようなものだ。
古物商は罰則の対象にならないように、許可証取得時に配られるガイドブッグなどを熟知しておく必要がある。
違反事例について
古物を販売する場合、古物商の許可が必要なのにそれを知ってか知らずか、古物商の許可なく古物を販売し違反を犯している事例は多いようだ。古物商許可が必要な行為は下記のような行為が該当する。
- ・古物を買い取ってそれを販売する
- ・古物を買い取ってそれに手を加えて(修理など)販売する
- ・古物の買い取ってそれをレンタルする
- ・国内で買い取った古物を外国に輸出する
- ・古物を買い取って分解し使える部品を販売する
反対に古物商許の可証が必要ない場合は
- ・自分の物をオークションなどで販売する
- ・タダでもらった物を販売する
- ・旅行の際に自分で使用しようと思って買ってきた物を販売する
などが当てはまる。
しかし、購入する時点では売るつもりで購入した物は古物商の許可が必要になってくる。古物商の許可が必要となる場合は営業としておこなう場合のみで、儲けを目的としていなければ古物商許可証は必要ない。例えば去年一目惚れして買いたくさん着たTシャツを好みが変わったなどの理由から売る場合は古物商許可証は必要ない。
自分で判断するのが困難な場合は警察署に相談してみよう。
転売
今やだれもがネットオークションやフリマなどで不要となった商品を売買できる時代だが、中には転売をおこなっている人も多い。転売とは初めから転売目的で商品を仕入れ、それを売って利益を得ることだ。
販売目的で商品を大量に仕入れてそれを転売する場合は、古物商許可が必要となるがそれを知らずに古物商許可がないまま販売し違反しているケースは多い。中古品を購入し、自分では使用せずに中古品のまま売る行為は古物営業許可が必要となるのだ。
法人・個人どちらの場合でも規模によっては古物営業法違反で逮捕されることもある。しかし、どれくらいの規模から古物商許可が必要になるかはバラつきがあるので、お住まいの地域の警察署に問い合わせるのが一番確実だ。
変更の届け忘れ
許可証に記載されている代表者氏名や住所に変更があった場合、内容に変更があってから14日以内に警察署に書換え申請を提出する義務があるが、これを忘れて営業している古物商は意外と多く、その場合は遅延理由書を提出しなければならない。遅延理由書の提出を怠った場合は古物商許可の取り消しが執行される可能性もある。
古物商違反の逮捕例
ここでは実際にあった過去の古物商違反の逮捕例をいくつか紹介していく。
偽物の「響」をメルカリで販売
2018年8月下旬、フリマアプリのメルカリでサントリーの高級ウィスキー「響」の偽物を販売した古物店の店員2人が詐欺、商標法違反の疑いで逮捕された。
この逮捕された2人は、「響30年」の瓶に別のウィスキーを入れ本物と偽り5本も販売し、合計99万円の利益を得ていた。2人は容疑を一部否認し「偽物だとは知らずに売った」と供述しているという。
古物店で働いていたとしても、偽物の商品を売ることは当然許されない行為で商標法違反にあたる。偽物だと知ったうえで販売した場合は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられることもある。本事件のように、本物だと偽って販売した場合は詐欺罪にもあたり、10年以下の懲役が科せられる。
仮にメルカリなどに偽物を出品して落札されなかったとしても、出品するだけで逮捕される危険性もある。ちなみにお酒を無許可で販売すると酒税法違反にも問われる可能性があるので注意したい。
「嵐」のコンサートチケットを転売
2016年9月14日、人気アイドルグループ「嵐」のコンサートチケットを転売していた香川県に住む女性が古物営業法違反の疑いで逮捕された。女性は古物商許可証がないにも関わらず、インターネットで嵐のチケット5枚を札幌市在住の女性3人に転売し利益を得ていたという。
この女性は2014年10月から2016年4月の間で同様の手口でコンサートチケットなどを300枚近く転売し、1000万円以上の売り上げがあったとされている。
コンサートチケットの転売で逮捕される例はほかにも数多く存在し、社会問題となりつつある。自分が行くつもりで購入したコンサートチケットが急用などで行けなくなってしいまった場合などは古物商の許可は必要ないが、基本的にはチケットを転売する場合は古物商の許可が必要だ。
不要になってしまったチケットなどを売りたい場合は買取業者に買い取ってもらう方法もある。古物営業法のことは難しくてよくわからないとい人は下記のようなチケット買取業者に依頼するのが安全だ。
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
古物商の事件・悪いニュース
上記では古物営業法に違反し実際に逮捕された事例を紹介したが、ここでは逮捕まではいかなくても、古物営業法に違反した疑いなどで書類送検された事例などを紹介していく。
帳簿の不備
2016年にイスラム学者の男性が経営するリサイクルショップの男性店員が帳簿に不備があったとして書類送検されている。男性は中古の洗濯機や冷蔵庫などの家電を買い付けた時に売主の身元確認を帳簿に記録していなかった。
古物商は売主の身元確認をおこなう義務があり、従業員がその義務を怠ったことで今回の事件が発生した。
生年月日改ざん
2012年、大手レンタル店「ゲオ」の副店長の男性が17歳の少年からゲームソフトを買い取る際に年齢を18歳以上に改ざんし書類に記載したとして書類送検されている。
未成年から商品を買い取る場合は保護者の同意が必要となるが、副店長の男は少年の生年月日を1993年生まれから1983年と書き換え年齢を偽装していた。また、少年が買い取りにと持ち込んだゲームソフトは量販店から盗んだ物で、少年が窃盗で逮捕されたことから今回の事件が明るみになった。
本人確認不十分で営業停止処分
2016年、全国に店舗をかまえる古書店「まんだらけ」が、本人確認が不十分のまま宅配買取で古物を買い取ったとして東京都中野区の1店舗に1ヶ月の営業停止処分を下している。
本来であれば宅配などの非対面取引で古物を買い取る際は、相手が提示した氏名や住所などが本当かどうか確認する必要があるが、同社はそれを怠って買取をおこなっていたとされている。
無許可で中古車オークションを開催
2015年、許可なく中古車のオークションを開催していたとして大阪府の自動車販売会社「大阪ダイハツ販売」の男性社長と役員、社員の4人が書類送検されている。
社長らは2014年に3回無許可で事業者向けに中古車オークションを開催し、約85万円を売り上げたとされている。本来、中古品を扱う業者間で物品を売買する場合は古物商の許可証と古物市場主も必要だが、社長らは古物市場主の許可が必要だったとは知らなかったと供述している。
古物商を狙った強奪事件
2019年には古物商を狙った強奪事件が東京の赤坂で発生。古物商に務める男性2人が赤坂の路上で3人組の男に現金約8000万円が入ったバッグを盗まれるという事件が起こった。
古物商に務める男性2人は、金の延べ棒を買い取って欲しいと依頼を受け存在しないマンションの部屋に向かっている最中だった。バッグを奪われる際に軽傷は負ったものの命に別状はなく、犯人3人も後日逮捕されている。
まとめ
本コラムでは古物商に関する義務や実際にあった違反例・事件などを詳しく紹介してきた。最近はインターネットの普及により、個人でも物を売買する行為が簡単にできるようになった分、せどりや転売で逮捕される人も多くなった。
買取業を営んでいる人はもちろん、これから古物を売ろうと思っている方はぜひ本コラムを参考に、古物営業法について知識を深めてもらいたい。