日本を代表する現代洋画家の1人に、高塚省吾という作家がいる。彼は、生涯にわたって裸婦画を描き続けてきた異端であるが、その作品があまりにも美しすぎるために、今なお人々の間で広く親しまれている。この記事では、そんな高塚省吾の作品の買取相場と価値について解説していく。
高塚省吾の作品は、最近になって価格が高騰し始めているため、その価値が気になるという方は決して少なくないはずだ。また、記事の後半では高塚省吾の作品を専門的に取扱っている業者も紹介するため、高塚作品の高値売却を狙う方は、ぜひこの記事を参考にしてほしい。
本記事のポイント
- 「裸婦といえば高塚省吾」と言われるほど裸婦を描くのに徹した画家
- 人気が高まりつつある画家の一人
- 買取業者や美術オークション、ヤフオクから見る買取相場
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画家・高塚省吾とは
高塚省吾とは、日本を代表する現代洋画家の1人である。別名裸婦の巨匠とも呼ばれており、個展を開き始めた1950年代から2007年に生涯を閉じるまでの間に、数々の美人画・裸婦画を世に送りだしてきた。高塚省吾の特徴は、なんといっても繊細で透明感のある作風だろう。
彼の描く裸婦には、性的な欲求を掻き立てるようないやらしさがまったく感じられない。それどころか、まるで美が擬人化したような荘厳ささえ感じさせる。
裸婦画は古来より油彩画によって描かれることが主流だった。一方、高塚省吾はそこにパステルを用いることによって、絵画から光沢を失わせ、裸婦画が本来もっている淡さや儚さを強調した。つまり、高塚省吾の裸婦画は、日本人がもつ、願望とは無垢なものへの憧れ、純粋への志向=イノセンス願望を表した作風であると言い換えることができる。旧くから、日本人は穢れ思想に囚われ続けてきたが、それは現在の萌え文化にもつながっている。
高塚省吾の裸婦画が日本の風土に適合しているのは紛れもない事実だ。また、それを証明するかのように、没後10年以上たった現在でも、高塚省吾の作品は根強い人気を誇っている。
高塚省吾の生涯
高塚省吾の人生は、挫折の連続であったといえよう。また、奇しくも同じ裸婦の巨匠と呼ばれる庵跡芳昭が孤高の画家であったように、高塚省吾も美術団体には所属しようとしなかった。彼の生涯は個展とともにあったのである。
梅原龍三郎や林武、硲伊之助らに師事
1930年、岡山市にある巖井で高塚省吾は生を受けた。幼少時代のことはあまり語れることがないが小学生のときから絵画コンクールで度々入選していたことが明らかになっている。1949年、東京藝術大学に入学後は当時の画家の権威であった梅原龍三郎や林武、硲伊之助らに師事した。
このことが高塚省吾の人生を大きく変えることになったといえよう。1953年に同大学を卒業したあと、硲伊之助に推される形で自身の作品を第7回日本アンデパンダン展に出品した。ちなみに、硲伊之助はこの展覧会の主宰である日本美術会の委員長である。
高塚省吾は、その後も第11回まで作品を出品し続けたが、受賞に結びつくことはなかった。これが最初の挫折である。
新東宝撮影所の美術課に勤務
日本アンデパンダン展への出品を諦めた高塚省吾は、銀座カンカン娘や野良犬、細雪といった作品で知られる新東宝撮影所の美術課に勤務することとなった。しかし、彼は画家としての夢を諦めたわけではなく、むしろ美術課に所属することによって、成功のきっかけを掴めるのではないかと考えていた。その後、大学時代の同士たちとともに8人の会を結成。
いくつか個展を開いたが、結局優れた作品を生みだすことはできなかった。これが2度目の挫折である。1956年にはNHK広報室嘱託になり、1968年に退社するまでの間、彼は本業に専念することとなる。
ちなみに、高塚省吾の仕事の腕自体は確かなものであった。1955年には谷桃子バレエ団の台本制作に携わり、1957年には小津安二郎が監督を務める映画の題字を担当している。そのときの活躍ぶりを評価する声は決して少なくない。
禅と裸婦
挫折ばかりであった高塚省吾の人生に転機が訪れたのは、1960年代後半のことである。彼は、この時期から東京大学の佛教青年会で曹洞宗の坐禅会に参加するようになった。きっかけこそ明らかになってはいないものの、自分の作風に限界を感じていたのは明白だろう。
しかし、結果としてはこの判断は正しかった。彼はこの時期から海や薔薇、白と黒といった作品を次々と発表し、風景と肉体が一体化した表現をし始めた。これが後年、透明感のある裸婦像へと発展していったのである。
確立された名声
禅の修行を経た後の高塚省吾の活躍は目覚ましかった。1970年代の初めごろに、明智小五郎シリーズや人間椅子、人でなしの恋などで知られる江戸川乱歩の全集の表紙絵を手がけることになった。さらに、1977年には国際青年美術家展、1978年にはジャパン・エンバ美術賞展、1979年には現代の裸婦展とミロ国際素描コンクールにそれぞれ入選している。
これにより高塚省吾の名声は確立された。1980年には、念願だった画集高塚省吾素描集おんなを出版。その後、彼は2007年に亡くなるまでの間、自身の名を冠した個展を開催し続けた。
日本の絵画史を見ても、ここまで裸婦に徹しきった画家というのは、ほとんど見受けられない。また、日本人女性が本来もっている透明感のある肌や控えめな肉付きを、ここまで完璧に表現した画家は高塚省吾の他にはいない。
高塚省吾 絵画作品の中古買取価格相場
ここでは、高塚省吾の作品の買取相場について解説していく。高塚省吾の作品の買取相場は、10万円〜100万円程度とされているが、ほとんどの買取業者は査定額を公開していないため、値段を確認するのは極めて困難だ。
買取業者や美術オークションの買取相場一覧
買取価格や買取相場を提示した例では、以下のようなものがある。
- ・「二人静」油彩80〜120万円(アート買取協会)
- ・「ブレザー」パステル12〜17万円(アート買取協会)
- ・「ブレザー」パステル10〜15万円(獏)
- ・「裸婦」油彩20万円(アンシャンテオークション)
- ・「黒のストッキング」パステル18.2万円(アンシャンテオークション)
- ・「思い出」?16万円(SHINWA AUCTION)
- ・「ハイバックチェア」パステル15.6万円(アンシャンテオークション)
- ・「夢吟醸」パステル12.1万円(アンシャンテオークション)
- ・「山高帽」パステル11万円(アンシャンテオークション)
ヤフオクの落札相場一覧
買取業者や美術オークションだけではなく、利用を検討したいのがヤフオクである。ヤフオクとは、Yahoo!JAPANが提供する日本最大級のネットオークションサービスの1つで、毎日5,100万個もの商品が出品されている。その利用者数も国内最大級である。
実は、ヤフオクでは過去の販売データから落札商品の相場が簡単に調べられるため、これを調べることによって、大まかな買取相場も把握できる。それでは、実際にヤフオクにおける高塚作品の落札相場について、具体的に確認していこう。
ヤフオクでの高塚省吾 作品の落札相場
高塚省吾の作品の平均落札相場は、約260,000円だ。この264,534円という額は、買取業者の多くの買取相場に比べて高めであるといえるだろう。
そのため、高塚省吾の作品を高値で売却したい方はヤフオクを利用も視野に入れたい。しかし、ヤフオクにはいくつか問題点がある。それは取引相手とのトラブルだ。
ヤフオクは素人同士のやり取りになることが多いため、トラブルの起こりやすさは極めて高い。ひどい場合には、初めから壊れていたと主張して、落札者が破損させてしまった商品を送り返してくることもある。また、高額落札される高塚作品のほとんどは、鑑定士による真作保証書が付属されている。つまり、本物であるかどうかを証明できない素人では、高額落札が狙いにくい。
以上のことから、高額売買となる高塚省吾の作品をヤフオクに出品するのはあまりおすすめできない。そのため、ヤフオクはあくまで落札相場や人気作品を参考にするためのツールとして捉えておこう。
ヤフオクでの最高落札価格
ちなみに余談にはなってしまうが、ヤフオクでの高塚作品の最高落札価格について解説しておこう。高塚作品につけられた最高落札価格は、しなやかな時間という作品の2,789,000円である。この作品は、高塚省吾が1997年に制作したもので、高塚省吾の画集まぶしい季節で数ページにわたって掲載された有名なものである。
そのサイズはなんとF60号、横1303mmで縦970mmという巨大サイズだ。これほどのサイズは、高塚省吾の作品のなかでは唯一これのみである。
次点での最高落札価格
次点の最高落札価格は、赤い帽子という作品につけられた 1,409,000円である。この作品に関する情報はほとんど明らかにされていないため、なぜこれほどまでの額がついたのかは不明である。しかし、その理由としては、高塚省吾の直筆サインが書かれていること、F12号という大サイズであることが関係していると考えられる。
高塚省吾の作品のサイズについては後述するが、実は、高塚作品のほとんどはF10号以下であるため、このような大サイズはそれだけで希少価値がある。
その他の落札例
ヤフオクにおいて、高塚省吾作品の売買は盛んであり、「ときめいて」油彩が79万円、「彼方」パステル画39.2万円、ブロンズレリーフが約22.5万円といったように、数十万円での取引が続く。中には100万円を超える作品もあるが、油彩やパステルであれば、基本的には数十万円の相場である作品が多いと言える。
高塚省吾は、版画作品も作成しているが、これよりも厳しい査定になるはずだ。例えば、アンシャンテオークションでは、「絹のスカーフ」のリトグラフが出品されたが、3万円での落札となった。「朝のトルソ」もリトグラフが出品されているが、5.1万円での落札である。制作部数や人気作品の版画かどうかなどが、買取価格に影響してくる。
開運!なんでも鑑定団でわかる高塚省吾の価値
高塚省吾マニアにとっては周知の事実だが、高塚省吾の作品は過去に4度、「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系)に取り上げられたことがある(2021年7月28日時点)。「開運!なんでも鑑定団」とは、テレビ東京で放送中の人気番組で視聴者から鑑定してもらいたいお宝を募り、番組内で専門家が鑑定をおこなうというものだ。この番組での評価額は直接買取相場には結びつかないが、高塚省吾の作品の価値を知る有力な手がかりにはなるだろう。
それでは、過去に取り上げられた3つの作品について具体的に確認していこう。
ジーンズの女
開運!なんでも鑑定団で取り上げられた作品1つ目は、高塚省吾が1994年に制作したジーンズの女である。この作品は、2012年10月30日の放送で取り上げられた。鑑定額はなんと200万円である。
鑑定人は洋画商を営んでいる永井龍之介だ。彼は、並大抵のデッサン力ではここまでの絵は描けないと評した。また、ジーンズに使われている青色が肌の色をしっかりひきたてているとも評していることから、ジーンズの女は高塚省吾の作品のなかでもとくに、肌の美しさを強調した作品だといえる。
実際に、絵のほうを見ていただければ、白を基調とした透明感あふれる肌と覚めるような青との対比の美しさに目を奪われることは間違いないだろう。腰つきの艶めかしさもまるでミロのヴィーナスを思い起こさせるようで、構図的にも楽しめる絵画となっている。
裸婦
開運!なんでも鑑定団で取り上げられた作品2つ目は、高塚省吾のパステル画、裸婦である。この作品は、2012年10月30日の放送で取り上げられた。鑑定額は100万円である。
鑑定人はジーンズの女を担当した永井龍之介で、彼は白や黄色といった暖色を使って、肌のボリューム感や柔らかさを表現していると評した。また、高塚省吾の作品は一般的には10号程度であるため、依頼品のような20号という大きめのサイズは珍しいとも述べている。以上のことから、高塚省吾の作品は大型であればあるほど、作品の希少価値が増すといえるだろう。
もちろん、作品自体の魅力はいうまでもなく、とくに光が当たっている乳房から脇腹にかけては、まるで写真のような写実性に満ちている。
コーヒー
開運!なんでも鑑定団で取り上げられた作品3つ目は、高塚省吾が1993年に制作したコーヒーである。この作品は、2018年5月29日の放送で取り上げられた。鑑定額はたったの1,000円で、残念ながら複製品という評価が下されてしまった。
鑑定人は美術商を営んでいる山村浩一だ。彼は、原画であれば100万円以上だったろうと語っている。また、高塚省吾の作品は裸婦画が多いということもあって、かつては女性からの評判が悪かったが、最近はその考え方が変わって徐々に人気が高まっていると解説した。
以上のことから、高塚省吾の作品は今後も価値が上がり続けると考えられる。そのため、高値で売却したい方は、作品を大切に保管しておくのも手だといえよう。逆に、これから高塚省吾の作品を手に入れたいと思っている方は、なるべく早めに行動に移すことが重要だ。
油彩画
番組内で作品名について語られず、油彩画として紹介された高塚省吾の作品が2020年11月10日に放映された。鑑定人は、コーヒーを鑑定した山村浩一だ。売り手は、奮発して12万円を出してネットオークションで落札して購入したそうだ。評価額は120万円。実際の買取相場と結びつかないとはいえ、購入価格の10倍の評価額だ。
鑑定士は、推定1980年代の作品で、裸婦を描き始めた初期ではないかと語る。「画風を確立した1990年代の作品に比べると硬さや粗さが残っている」とのことではあるが、余白をうまく活用し、東洋的な表現方法に、陰影をつける西洋画の表現方法を織り交ぜて制作されている。
出張買取に対応している買取業者
【ヒカカクおすすめ店】総合美術買取センター
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対策
総合美術買取センターは美術品専門の買取店。各分野でそれぞれ20年以上の経験を持つ業界トップの鑑定士が在籍し、特に、著名作家の買取価格に自信をもつ。高塚省吾の作品買取にも力を入れており、作家の略歴とともに、買取実績として「朝」「裸婦」が掲載されている。
八光堂
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創業40年。骨董品、美術品の買取を行っている東証マザーズ上場の全国規模の八光堂は、高塚省吾の買取にも力を入れている。ブログの中で「裸婦といえば高塚省吾」と言われる背景や作品の紹介を詳細に記載しており、力の入れ具合がわかる。
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約30年もの間、美術品を買い取ってきた実績がある美術品・絵画買取センター。美術品・絵画のジャンルごとに経験豊富な業界トップの鑑定士をそろえ 相場を熟知した上での査定額のご提示が可能。LINE査定も行っている。高塚省吾の代表作「鏡」「ゆく水の」「ジーンズミューズ」を紹介し、高価買取をしている。最新の買取実績として「青いベッドカバー」「黄色いシャツ」が紹介されている。
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アート買取協会とは大手美術品買取業者の1つで、高塚省吾の作品を専門的に取扱うサイトを設置している。先ほど述べたように、「二人静」油彩80〜120万円と、「ブレザー」パステル12〜17万円の買取相場を提示している。
また、その実績自体は買取業者の中でトップクラスだ。実際に、サイトには37件(2021年7月28日時点)もの買取実績が報告されており、そのなかには高塚省吾の人気作品であるうす紅も含まれている。客の買い値よりも高い査定額を提示してくれたという報告も上がっているため、売却を考えている方はぜひともこちらを利用しよう。
まとめ
この記事では高塚省吾の作品の買取相場と価値について解説してきた。高塚省吾の作品の価値は、今後も上がり続けていくことが予想されるため、作品を保管して価格が上がるのを待つのも有効だ。もし、早めに売却したいと考える方は、買取業者を利用しよう。