平成30年にインターネットの普及やフリマアプリの人気が爆発したことを受けて、古物営業法が法改正された。それに伴い、現在古物商を所有している人は全員、主たる営業所等届出書の提出が必要となる。基本的に届出が必要な旨が通知されていると思われるので、届出が必要なことを理解している人も多いことだろう。
しかし、書き方や提出する方法がわからず放置してしまった場合に全面施行日以降に古物営業法違反にみなされ刑に処されたり、古物商の取り消しがされる可能性がある。取り消された場合は5年間許可証を発行することができないため、生計を立てる目的で業としておこなっている古物商にとっては大きな損害となる。そこで、主たる営業所等届出書の記載方法を解説するとともに、期間内の届け出が難しい場合の方法や依頼先についても確認していく。
CONTENTS
このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
古物営業法の目的
窃盗犯が、盗品をリサイクル品やアンティーク商品として売却し換金することを防ぐための法律だ。また、窃盗被害に遭った被害者の被害をできるだけ早く回復するための法律でもある。リサイクル市場・アンティーク売買市場が信頼されるためにも、大切な法律と言える。犯罪の防止や犯罪被害者の迅速な回復が目的であるため、担当も公安委員会や警察となっている。
古物営業法の改正
平成30年に古物営業法が改正された。複数の店舗を経営する方々の負担を軽くするため、さらに古物商経営モデルの変化に合わせ、リサイクル品やアンティーク商品のインターネット上の取引のため、何点かの法律の改正があった。
今回の改正に伴い、複数の店舗を経営している個人法人だけでなく、ひとつだけの店舗を営業している個人法人、つまり、すでに古物商免許を取得している人、全員が新しい古物営業法に合わせた届出をする必要が出てきた。古物商を持っている人であれば、主たる営業所等の届出に関する知識は必要不可欠である。
主たる営業所等届出書とは
そもそも、主たる営業所等の届出書というのは、すでに古物商の許可を取得している人の負担を減らすためにも存在している。せっかく取得した古物営業許可を最初から申請し直すのは、時間的にも金銭的にも大きな負担だろう。
そこで主たる営業所等届出書を届け出ることで、旧法で古物商許可を取得していた人の負担を少なくする経過措置が設けられたということである。旧法で古物商許可をされていた個人・法人は主たる営業所等届出書を適切に届け出ることで、新法許可を受けているものとみなされる。したがって、届出が受理された古物商はみなし新法許可者になる。
逆に考えれば、主たる営業所等届出書を届け出ないということは、新法許可を受けていないということになる。そう考えれば、届出を出す重要性が見えてくるだろう。
届けなかったらどうなるのか
結論から言えば、新法許可を受けていないことになるため古物営業法上の無許可営業とみなされる。知らず営業を続けていた場合に、古物営業法第31条1項に基づき、3年以下の懲役 もしくは、100万円以下の罰金に処される危険性が大いにある。
さらに、一度このような処分を受けてしまうと新規の古物商許可申請が難しくなる。新規の古物許可申請のときの欠格事項に該当してしまうためだ。無許可営業に対する処分を受けたあと、古物営業法第4条2項に基づき、5年は新しく古物商許可申請ができなくなる。
たとえ旧法での古物営業法に基づいて、古物商の許可を貰い営業している古物商でも、平成30年10月24日以降にこの届出をしなければ無許可営業になるため、営業を続けるのであれば届出は出しておくべきだ。無許可営業扱いになるのは経過措置期間が終わり、新しい改正法が全面的に施行される日以降の営業に対してとなる。
主たる営業所等届出書を提出する方法
古物商を続けるにあたって不可欠な主たる営業所等届出書は、改正法の一部施行日平成30年10月24日~改正法の全面施行日である2020年4月24日までにおこなう必要がある。ここでは、提出する方法について確認していく。
必要書類の入手方法
必要となる書類は以下のとおりだ。
- ・主たる営業所等届出書その1
- ・主たる営業所等届出書その2
ひとつの公安委員会の管轄内に複数の営業所がある場合、ふたつ以上の公安委員会管轄内ですでに古物商許可を得ている場合は、その2に記載をすることとなっている。この書類は各都道府県警の公式サイトに様式がある。東京都については、以下のリンクからも飛ぶことが可能だ。
提出の対象者
営業所がひとつしかない個人・法人でも、全員届出が必要だ。具体的には、以下が対象者となる。
- ・平成30年10月24日以前に古物商許可を受けている個人・法人
- ・平成30年10月24日以前に許可を受けた古物市場主
- ・主たる営業所等届出書の提出期間の間に古物商許可を受けた個人・法人
- ・主たる営業所等届出書の提出期間の間に古物商許可を受けた古物市場主
届出を出す準備
主たる営業所等届出書の申請者は、押印が必要となる。しかし、個人と法人とで記載押印が異なる。個人で営業している場合には、個人の押印をするようになる。例えば、東京都○○区○○1-1-1 △△ハイツ000号室 甲山 太郎 「個人印」が必要。
そして、法人として営業している場合には、個人の名前と押印はできない。法人の記載押印が必要だ。例えば、東京都○○区○○1-1-1 株式会社 甲山商事 代表取締役 甲山 太郎 「社印」が必要。
また申請にあたっては、申請者にすでに交付された古物商許可番号と古物商許可年月日の記載が必要となる。古物商許可証に書かれている、許可番号と許可年月日の情報を確認すると良いだろう。もし、この許可番号や年月日を間違えてしまうと、届出ができない。印鑑の準備や古物商許可番号、古物商許可年月日の確認はあらかじめ済ませておくべきである。
届出の記載方法
申請者が、営業所あり、営業所なし、古物市場かを選択する。これは、旧法で申請していた内容と同じものを選択する。仮に店舗が無く、インターネット上でしか古物商として営業していない方でも営業所ありに該当する。つまり、ほぼ全ての古物商の個人・法人が営業所ありに該当するということで、営業所なしに該当する個人・法人はごく例外と言える。
次に、主たる営業所又は古物市場に主たる営業所についての記入をおこなう。現在、ひとつの営業所しかない場合には様式その1のみの届出となる。届出には、その営業所のふりがなと名称を記載する。先に記入した住所と同じ場所である場合には住所は不要となるが、もしも届出者欄の住所と違うのであれば、こちらの欄に住所を記入する。
なお、現在、ふたつ以上の営業所がある場合には、様式その1の他に様式その2の届出が必要となる。様式その1には、古物商の個人・法人が決定した主たる営業所について記載する。ふりがなも忘れずに記載するよう注意しよう。
そして、主たる営業所以外の営業所については、様式その2に記載していく。もし、営業所が複数の公安委員会管轄の都道府県にある場合は、都道府県ごとに様式その2が必要となるため、この点も注意が必要となる。
例えば、主たる営業所が、甲営業所(A県)で、乙営業所(A県)、丙営業所(B県)、丁営業所(B県)、戊営業所(C県)と営業所がある場合には、様式その1にA県甲営業所を、A県用の様式その2に乙営業所を、B県用の様式その2に丙営業所と丁営業所を、C県用の様式その2戊営業所を記載し4枚まとめて提出することになる。なお、様式その2にはすでに交付されたそれぞれの都道府県別の公安委員会の古物商許可証番号を記載する必要がある。
届出の提出方法
この書類の提出先は、主たる営業所を管轄する都道府県公安委員会だが、警察署の生活安全係か防犯係が窓口になっている。手数料に関しては無料となっている。
なお、郵送では受け付けてくれないため、窓口が開いている時間を確認して直接行き、届出をする必要がある。どうしても難しい場合には、有料になるが行政書士に依頼するのが良いだろう。
ちなみに、主たる営業所等届出書の宛先は、〇〇公安委員会となる。〇〇部分には管轄の都道府県名を入れると良い。全国の公安委員会の管轄については、国家公安委員会の公式サイトの一覧から確認すると良いだろう。以下のリンクからも飛ぶことが可能だ。
国家公安委員会の公式サイト主たる営業所等届出の代行サービス
古物商許可申請をおこなっている行政書士事務所では、今回の法改正に伴う主たる営業所等届出の代行サービスをおこななっている事務所がある。届出を直接おこなうのが難しい場合に、有料となるが検討すると良い。
代行をおこなってくれる行政書士の例としては、以下のようなところがある。古物商の法改正に関する知識が十分にありそうか、古物商を専門としているか、自分と相性が良さそうかなどの観点から、依頼する行政書士を選択すると良いだろう。
ふじ行政書士事務所
古物営業法の改正とともに主たる営業所等届出の必要性が説明され、業務依頼の案内がなされている。しかし、リンクへ飛ぶと新規許可申請のみ価格が記載されており、各種届出などは別途問い合わせとなっている。新規許可申請の費用は相場と比べると安めだと感じるので、さほど高い請求はないと思われるが、一度確認をしておくと良さそうだ。
行政書士・社会保険労務士岩元事務所
営業所の有無など細かく主たる営業所等届出について記載がされている。ここは初回相談無料で、電話やメールでの問い合わせになるようだ。料金についてもまず確認をおこなうことになると思われる。
行政書士法人田村環境事務所
主たる営業所等届出に対し、面倒であったりよくわからない人は任せてほしい旨がきちんと明記されている。料金については、電話かフォームでの問い合わせになるようだが、主たる営業所等届出がサービス内容の対象になっていることは間違いない。
石川法律事務所
主たる営業所等の届出でかかる費用が明確に明記されている。営業所が1つの場合に税抜き25,000円、複数ある場合には追加1箇所につき5,000円となる。また、届け出る場所が東京都以外の場合には、別途交通費が必要となる。
荒井行政書士事務所
どのプランも比較的安価な設定になっているのが印象的だ。主たる営業所等届出がどのプランに該当するか明確な記述がないが、提出のみなら提出代行という10,000円+交通費のサービスになるだろう。必要書類を集める代行についても、1つ2,000円程度でおこなっている。
アクシア行政書士事務所
改正古物営業法への対応が可能であることが明記されていて、心強さを感じる。業務内容を見ると、古物商特化というわけではなく幅広い業務をおこなっているようだ。依頼については、まずは電話やメールで見積もりを出してもらおう。
アイノン行政書士事務所
主たる営業所等の届出について説明がされており、古物商の申請、届出をサポートしていることが明記されている。しかし、料金案内を見ると新規申請の費用のみが記載されている。新規申請の費用を見ると相場通りかやや高い印象を受けるが、主たる営業所等の届出については確認してみないとわからない。
ハピネス行政書士事務所
料金案内を見ると古物商以外にも幅広く業務をおこなっているようだ。新規許可は他と比べると70,000円と高い。おそらく主たる営業所等の届出については、書き換え申請・変更に該当すると思われるが、30,000円かかるようである。
新田ゆい行政書士事務所
幅広い業をおこなっており、古物商も対象となっている。料金体系を見ると、主たる営業所等の届出がどこに該当するかわからない部分がある。まずは電話で料金を確認することになりそうだ。
まとめ
主たる営業所等の届出自体は、営業所が1つか複数あるかで必要となる書類が異なるものの、記載する内容は決して難しいことではない。しかし、全員が提出しなければならないものであり、届出をおこなわないことで違反となり罰則を受けてしまう可能性がある。確実に届出を提出しておきたいところだ。
もし届け出るのが難しい場合には、行政書士への依頼も視野に入れた方が良いだろう。料金に関しては一律で決まっていないため、行政書士によって大きく異なる。信頼ができるか相性が合うかといった条件とともに、料金についてもしっかり比較をおこない、任せられる行政書士を探すと良いだろう。
この記事を監修した専門家