若くして歌川派の門を叩き入門した歌川国貞。歳に似合わない卓越した技術を持った国貞はのちに、初代豊国から名を継いで三代豊国となり、当時の人気No.1を誇った。役者絵や美人画をはじめ、春画など幅広く手がけ、特に美人画においては当時の風潮をしっかりと捉え、女性の粋や艶めかしさを描いている。
また、生涯描いてきた総作品数は浮世絵師で最も多く、数万点を超える。国貞の浮世絵は現在も日本だけでなく世界中で注目されており、オークションなどで活発に取引されている。歴史的価値のある作品であれば、数千万円まで登る。
今回は歌川国貞(三代豊国)の経歴を紹介した上で作品の価値や買取相場について記載していく。国貞の作品をこれからコレクションしたい方やすでに持っているものを売却したい方は、この記事を参考にしていただきたい。
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歌川国貞(三代豊国)とは
歌川国貞(三代豊国)は、初代歌川豊国の門人としてトップクラスに人気を獲得し、美人画や役者絵を得意とした。天明6年(1786年)に江戸、本所に生まれ、姓は角田、名を庄五郎(のちに庄蔵、肖造とする)といった。15、6歳ほどで初代歌川豊国の門弟となり、歌川国貞と名乗った。
初期は一雄斎の号を使っていたが、実家が本所5つ目の渡し場の株を持っていたことから五渡亭の号を使うようになった。それ以降も香蝶楼、琴雷舎、富望山人、北梅戸、富望庵、桃樹園、月波楼、喜翁、不器用又平、浮世又平などの多くの号を使っている。五渡亭の時期に国貞の代表作ともいえる作品が多く制作されている。
国貞の美人画はその時代の風潮を感じさせ、女性の粋(イキ)やあだの優れた描写表現が見られる。国貞の人気は文化から文政にかけて非常に高かったが、若くして画業を大成させてしまったが故か、次第に似たような表現の作品が多くなり、国貞独自の生き生きとした描写はなくなっていく。
しかし、現在でも国貞は高い人気を誇っており、多くの人が作品を取引している。作品総数は浮世絵師の中では最も多く、版画作品だけでも1万点を超えるといわれている。
歌川国貞の生い立ち
天明6年(1786年)に江戸、本所の竪川の5つ目の渡し船の株を持っていた材木問屋の家に生まれた。15、6歳の若さで歌川豊国の門弟になり、歌川を称し、国貞を名乗るようになった。文化4年(1807年)頃から美人画を描き始めた国貞は、不老門化粧若水(滝沢馬琴作)という景物本の合巻を初筆した。
文化11年(1814年)、国貞が29歳ほどのときに作った全部で9枚のシリーズ作、大当狂言之内(おおあたりきょうげんのうち)は、師である歌川豊国さえも超えたといわれる傑作だ。国貞は文政12年(1841年)に刊行された偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)の挿絵を描いたが、それが非常に人気になり源氏絵ブームを巻き起こし、歌舞伎に影響を及ぼした。
役者絵をはじめ春画も若い頃から非凡な才能を見せており、代表作として当世美人合(とうせいびじんあわせ)、当世三十二相(とうせいさんじゅうにそう)、浮世名異女図会(うきよめいしょずえ)、江戸名所百人美女(えどめいしょひゃくにんびじょ)など多くある。そして天保15年(1844年)には、初代豊国の名を継いで二代豊国を名乗ったが、すでにそのときには豊重が正式に二代目を短い期間であったが継いでおり、正確にいうと三代豊国となる。
豊国を継いでからは、作風は特に変化もなく初期の国貞の時代に描かれたものに比べると見るべきものは少ないが、生涯を通して作品を作り続けたことで、浮世絵師としては最多の総作品数を誇り、版画だけでも1万点を超えるといわれている。元治元年(1865年)に死去。享年79歳であった。
歌川国貞(三代豊国)作品
歌川国貞は、79歳で亡くなるまで生涯を通して浮世絵師として最も作品を描いてきた。数万点を超える作品群のため、代表作も多くあり、美人画では江戸名所百人美女、当世美人合、当世三十二相、当世美人流光好(とうせいびじんりゅうこうごのみ)などがあり、役者絵では豊国漫画図絵(とよくにまんがずえ)がある。歌川広重との合作もするなどその活動は多岐にわたる。
大当狂言ノ内 八百屋お七
代表作である文化11~12年(1814~1815年)に描かれた大当狂言ノ内 八百屋お七は、自分の家が火事になったことで出会った男性ともう1度会うために自ら自宅を燃やしたことで火あぶりにされた八百屋の娘のお七を題材としている作品。
背景に高価な鼠地雲母摺(ねずみじきらずり)を用いていることから、版元からすでにこのときから認められていることがわかる。鮮やかな紫の着物に立派なかんざし、高島田に緋色のちりめんの飾り裂を結んでいて華やかだが表情は強く歪んでいる。これから待ち受けるであろう非業の死を想起させる。
当世三十二相 しまいが出来相
また別の作品である当世三十二相 しまいが出来相は、国貞がしばしば称される頽廃的(たいはいてき)な美しさと女性の粋とあだが遺憾なく表現されている。左肩に巻かれている手ぬぐいは彫られた刺青を隠すためと思われ、肌を露出しながら化粧に集中しているその姿は芸者として、また女性として色っぽさを感じさせる。
同時代の喜多川歌麿などの作品とは異なり、生身の女性の実感をひしひしと感じさせ技術において国貞は一流だった。
歌川国貞(三代豊国)作品の買取相場
国貞作品の買取相場を確認するには、オークションやオンラインストアなどで販売されている価格を参考にするのがおすすめだ。国貞の作品は数千円の代表作と呼ばれる作品や3枚続の作品となると数十万円の値がつき幅が広い。
国貞作品の買取金額も同様のものと考えて良いだろう。現在でも国貞の作品は人気が高いので高価格なものでも活発に取引がおこなわれている。ここでは国貞作品の販売店やオークションなどで売買されているものを参考に買取相場を見ていく。
山田書店 online store
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対策
浮世絵をはじめ、版画や美術関連の書籍などを多く取り扱っている山田書店のオンラインショップで、いくつかの歌川国貞の作品が販売されている。
春遊娘七草
- ・技法:木版
- ・枚数:全7枚
- ・サイズ:37.5 x 25.7(cm)
- ・制作年:1844年
- ・価格:350,000円
秋の七草 棯乃景
- ・技法:木版
- ・枚数 : 全7枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1857年
- ・価格:180,000円
忠臣蔵絵兄弟
- ・技法:木版
- ・枚数 ::全12枚
- ・サイズ:36.6 x 25〜25.4(cm)
- ・制作年:1859年
- ・価格:要問い合わせ
新板風流相生尽 卯春 月に時鳥
- ・技法:木版
- ・サイズ:38.5 x 26.1(cm)
- ・制作年:1815~1842年
- ・価格:150,000円
誠忠大星一代話
- ・技法:木版
- ・枚数 :35枚の内の21枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1847~52年
- ・価格:150,000円
岩井半四郎七役
- ・技法:木版
- ・枚数:全7枚
- ・サイズ:37 x 25(cm)
- ・制作年:1815~1842年
- ・価格:120,000円
合筆源氏 庭中之雪
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1859年
- ・価格:120,000円
流行美人合 櫓下の会合
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:36.3 x 25(cm)
- ・制作年:1837年
- ・価格:120,000円
当世見立七小町
- ・技法:木版
- ・枚数:5枚
- ・サイズ:35.8 x 24.5(cm)
- ・制作年:1815~1842年
- ・価格:85,000円
江戸姿八契
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:37 x 25(cm)
- ・制作年:1815~1842年
- ・価格:85,000円
美人合 春暁
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:36.9 x 24(cm)
- ・制作年:1815~1842年
- ・価格:65,000円
芝居絵
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1815~1842年
- ・価格:65,000円
今様三十二相 手があり相
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1859年
- ・価格:65,000円
美人画
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:50,000円
今様押絵鏡 手塚太郎
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:38.4 x 27.3(cm)
- ・制作年:1860年
- ・価格:40,000円
源太勘当
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1815-1842年
- ・価格:38,000円
芝居絵
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚の内の1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1860年
- ・価格:6,000円
東海道五十三次ノ内 岡部驛ノ上 忠度
- ・技法:木版
- ・サイズ:35 x 25.3(cm)
- ・制作年:1852年
- ・価格:6,000円
浮世絵・版画 ぎゃらりーおおの
買取価格
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手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
浮世絵や版画を専門的に扱っているぎゃらりーおおのに、歌川国貞の作品がいくつか販売されていた。
東都湯島天満宮
- ・技法:木版 3枚続
- ・サイズ:36 x 25(cm)
- ・価格:80,000円
伊豫守義経 堀川夜討ノ図
- ・技法:木版
- ・サイズ:38 x 26(cm)
- ・価格:要問い合わせ
假名手本忠臣蔵
- ・技法:木版 12枚揃
- ・サイズ:25 x 36(cm)
- ・制作年:天保頃
- ・価格:100,000円
大津絵つくし
- ・技法:木版
- ・サイズ:37 x 26(cm)
- ・制作年:文化頃
- ・価格:120,000円
天竺徳兵衛
- ・技法:木版 2枚続
- ・サイズ:36.5 x 24.5(cm)
- ・制作年:天保頃
- ・価格:60,000円
御好芸者五行の内土
- ・技法:木版
- ・サイズ:36 x 24(cm)
- ・制作年:文政頃
- ・価格 : 25,000円
辰巳十一時ノ内辰刻
- ・技法:木版
- ・サイズ:37 x 25(cm)
- ・制作年:天保頃
- ・価格:要問い合わせ
歌川国貞(三代豊国)作品の売り方
歌川国貞作品の買取相場を紹介してきたが、すでに国貞の作品を所有していてこれから売却を考えている方もいると思う。ここでは国貞作品を売る際のポイントを紹介する。いつ頃に作られた国貞の作品なのか、歴史的に価値ある代表作なのかなども価値を決める際に重要だが、それと同等に重要になってくるのが作品の状態だ。
国貞の作品となると数百年前に制作されたものになるため、作品の劣化が激しい場合がある。擦り傷や穴、日焼けなどによって作品の状態が変化しているだけで価格が大きく変わってきてしまうので、注意して取り扱っていただきたい。
また、作品を売却する場合は近くにある骨董屋にすぐに売るのではなく、オークションや画廊、専門の買取業者を利用してほしい。売り場所によっては数万円単位で価格が変わることもあるので比較するようにしよう。
作品の保存状態
浮世絵作品だけでなく、油絵や日本画、版画などどの作品にもいえることだが、作品の価格を決めるのに保存状態は非常に重要で、作品をぶつけたことによる傷や穴、カビ、日焼けなどによって作品の価値は大きく下がってしまう。専門の修復師に頼んで作品を復元してもらうことも可能だが、別途高額な費用がかかってしまうので、前もって作品の保護をするようにしてほしい。
浮世絵は紙などに刷られているため、少しの衝撃で破れたり、傷がついたりと損傷しやすいため、保管したり移動したりするには木箱など工夫がいる。また、保管している部屋の温度、湿度管理を怠ってしまうとカビが生えてしまい、簡単には除去できないので注意が必要だ。
自分の好きな作品を自室などに飾っておきたい人も多くいると思う。その場合は直射日光があたる場所に設置するのは避けるようにしてほしい。すぐに変化しないが、時間が経つにつれて徐々に日焼けによって作品が茶色く変色していき、元の作品の状態には二度と戻らなくなってしまう。
浮世絵や版画、日本画などの美術作品は非常に繊細だ。常に気をつけないと簡単にホコリや日焼け、傷、カビなどに汚染されてしまう。作品をすでに持っている方も、これから購入を考えている方も作品の保護に力を入れてほしい。
歌川国貞(三代豊国)作品をどこで売るか
歌川国貞をはじめ、浮世絵や版画などの美術作品を売却したい際、どこで売れば良いのか最初は迷うだろう。国貞作品をはじめ美術作品を売却する際、主に利用するであろうオークションと買取業者のメリットを紹介する。
オークション
オークションに自分の持っている作品を出品すれば、その作品を求める人がいればいるほど価格がつり上がり、想定以上の価格で作品を取引できるだろう。作者が有名で、作品が代表作で有名なものほど求める人が多いだろう。その反対に、作品を求める人がいない場合は落札されないので、確実に売れるとは限らない。
近年では自分で簡単に出品することができるネットオークションのほかに、オークション会社が運営する会場で取引することも可能。その場合は、オークションに参加する画廊などに一度連絡を取って予約してから出品するケースもあるので、事前に情報を集めてからオークションに参加してほしい。
買取業者
美術作品専門の買取業者に依頼することで専門の査定員が、作者や作品の詳細な情報や歴史的な価値、作品の状態など総合的に判断して価格を決めてくれる。世界で取引されている美術作品の最新の販売価格の情報を持っているため、適切な価格で取引が可能だ。浮世絵作品など数百年前に制作された作品の詳しい知識を持っていなくても、専門家に任せれば適正価格で売却できるため安心感がある。
おすすめの買取業者:八光堂
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
国貞作品などの浮世絵は数百年の歴史を持っていて評価も定まってきているため、多くの買取業者が存在する。その中でおすすめの買取業者が八光堂だ。八光堂は査定方法の種類が多くあり、全国出張、店頭買取査定、メール査定、LINE査定、無料鑑定式と依頼者のニーズに合わせてやりやすい方法を選択できる。
何よりも査定はすべて無料なので自宅に眠っていた作者がわからない作品や、作品の状態が悪くて価格がつくか不安な場合でも気軽に査定依頼することができる。多くのメディア出演もしており認知度も高く安心感があるためおすすめだ。
まとめ
歌川国貞は15、6歳にして歌川豊国の門人として歌川一派となった。代表作として役者絵では豊国漫画図絵、美人画は当世美人合、当世三十二相、浮世名異女図会、江戸名所百人美女など、さらには春画などを手がけた。特に美人画においては当時の頽廃的な様子と女性の艶かしさを表現することにおいてほかの浮世絵師と一線を画していた。
初代豊国から名を継いで、三代豊国と名乗ってからも作品を作り続け、総作品数は浮世絵師として最も多く、数万点を超える。美術作品は日々価格が変動していて一定ではなく、価値が上がることもあれば下がることもある。
作品を購入したい場合は、そのときにオークションや販売店などで価格を確認し、欲しいときに購入するのが良いだろう。すでに持っている作品を手放したい場合でも、心からその作品を欲しい人に売ることで、作品がこれから先の未来も残っていき、文化の保存という観点からも重要なので、売る相手やタイミングを見て売っていただきたい。