貴州茅台酒は中国酒の中でも特に珍重されるもので、年代物になると1本数十万円の価格がつくこともある。名前から茅台醇香酒はその上級グレードにあたるのではないかと期待されるかもしれないが、残念ながらそうではない。中国ではプレゼント用やちょっと改まったパーティ用によく使われるものではあるが、ビンテージ品として価値のあるものとは思わない方が良いだろう。具体的に見てみよう。
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茅台醇香酒は貴州茅台酒の親戚筋
茅台酒(マオタイチュー・まおたいしゅ)は中国でも大変人気の高い酒だけに、偽ブランド品や模造品が横行している。本物は貴州茅台酒・株式会社(中国語で股份有限公司)が製造している貴州茅台酒の複数のグレードの物だ。つまり、茅台醇香酒も厳密には貴州茅台酒ではないことになるし、貴州茅台酒の公式サイトにもラインナップされていない。
しかし、茅台醇香酒がまがい物という訳ではないので注意しよう。茅台醇香酒は貴州茅台酒の親会社である貴州茅台集団の傘下にある茅台酒廠集団技術開発公司の製品なのだ。簡単に言えば、茅台醇香酒は貴州茅台酒の親戚筋にあたる酒なのである。
茅台酒は中国酒の中で白酒(バイチュー)と言うグループに属している。これは日本でひな祭りのときに供される白酒(しろざけ)とは全く異なるもので、一言でいうと焼酎である。
それも中国焼酎は21世紀に入って台頭してきた低度酒(アルコール度数25%~35%程度のもの)を除けば、基本的に50度~60度と言う非常に高い度数の酒だ。しかもウイスキーやブランデーとは異なり、氷を入れたり水で割ったりはしない。
中国での乾杯(中国語:干杯)は文字通りの意味で一気飲みが基本だ。だから白酒の銘酒はいずれも口あたりがいい。ただし、香りは強烈に個性的なので慣れるまでは飲みにくいだろう。
茅台醇香酒ブランドは年代酒のブランド
茅台醇香酒を作っている茅台酒廠集団技術開発公司には18種類のブランドがあり、その中で茅台醇香酒はすべてが年代を明らかにした高級ブランドと言える。中国の酒類通販をチェックしてみると、最上級の茅台醇香V100(柔和醤香型白酒封蔵級)で1,000人民元(日本円で約16,000円)の実勢価格だ。アッパーミドルクラスの茅台醇香V35(柔雅濃香型白酒特醸級)化粧箱入りで400人民元(日本円で約6,400円)となっている。
さらにミドルクラスの茅台醇2008では200人民元(日本円で約3,200円)程度の実勢価格だ。これは同じ年代酒で比べた場合、貴州茅台酒の65年物にあたる貴州茅台酒丙申の4,500人民元(日本円で約72,000円)と言う実勢価格に比べるとかなり安価であると言えるだろう。
もちろん茅台酒廠集団技術開発公司の他のブランドには、それなりに高価なものもあるのでそれを紹介しておこう。まず天朝上品だ。これにもいくつかの種類があるが、文景之治と言う酒は500mL1本で3,300人民元(約52,800円)とかなり高価である。これほど高くはなくても、天朝上品ブランド7品種はどれも1,000人民元(約16,000円)以上している。
また、アッパーミドルクラスの茅仙は700人民元(約11,200円)の純香と1,000人民元(約16,000円)の追夢の2種類がある。これらの酒は茅台醇香酒のブランドではないが、同じ茅台酒廠集団技術開発公司の製品なので、覚えておいて損はない。残念なことにこれらのブランドも買取に関する情報は見あたらなかった。
買取実績がほとんどない茅台醇香酒
中国でも日本でも、茅台酒と言えば貴州茅台酒と言うイメージが強いためか、それ以外の物についてはほとんど買取情報が見あたらない。参考になりそうなものとして、茅台醇香酒V35柔雅濃香型白酒特醸級・木製化粧箱入りで400人民元(日本円で約6,400円)の実勢価格の物が、フリマアプリ・メルカリで4,800円で販売されていた。税・送料込みである。
なので、プレミアがついていない物については実勢価格の0.5倍~0.7倍程度と考えておくと無難だろう。それより安いようであれば他の買取業者を検討するか、自分で飲んでしまった方が良いだろう。
茅台醇香酒はどちらかと言うとマイナーな茅台酒なので、お土産などでもらうことも少ないだろう。かと言って売るためにわざわざ中国で買ってくる人も珍しい。
そうなると、以前に入手したものが出てきたと言うケースが多いだろう。そんな場合でも長期間高温にさらしていたり、瓶の周囲にカビが生えてしまっていたり、瓶の蓋の部分にシミができていたりと言うことがない限り、中身は無事である可能性が高い。捨てずに査定してもらうのが良いだろう。鑑定結果に納得がいったら買い取ってもらおう。
中国酒を扱っている買取店がおすすめ
茅台醇香酒を買い取ってもらうのであれば、単なる酒類の買取をおこなう店と言うのではなく、中国酒に長けた店を選ぶのが良い。中国酒、特に白酒は古い物に値打ちが出やすい上に、古い物だとかなり凝った甕や壺に入っていて容器自体に値打ちが出ることもある。なので、茅台酒と中国焼酎、紹興酒と老酒を同一視するレベルの店では、正当な評価がされない可能性もある。
茅台酒を扱っていることはもちろん、五粮液や剣南春、西鳳酒などの高級白酒を扱っていて、中国焼酎に詳しいと思われる店を選ぶと良い。中国酒に詳しい店では白酒のような蒸留酒だけでなく、青島ビールや紹興酒などの醸造酒を扱っていることもあるのでチェックしておこう。
買取価格については比較見積もりサイトを利用すればいい。茅台醇香酒と言う名前だけでなくV100やV35と言った年代表記、封蔵級や珍蔵級と言ったグレード表記などを加えておくとより正確な査定をしてもらえるだろう。
その他、化粧箱が紙箱なのか、木製なのか、透明プラスチック製なのかといった情報も重要だ。封緘紙の状態についても、化粧箱のものと瓶の物の両方の状態がわかればそれも記入しよう。もちろん不透明な化粧箱に封緘紙が貼られていれば、瓶の封緘紙は確認できないのでその旨を記載すればいい。
汚れなどはきれいにする
飲食物なのだから新品であることは絶対条件だ。そして、中国製品の場合高価なものであれば偽物はつきものだと考えた方がよいだろう。なので、メーカーは高級酒には厳重な封をおこなっている。
化粧箱に入っている場合、上下の蓋には必ず封緘紙が貼られている。これが剥がされていたり破れていたりした場合、特に透明プラスチックのケースの場合価値は激減する。内容物の入れ替えを疑われるからだ。
紙箱でも封緘紙が破れていると値打ちは下がるが、中の瓶の確認のために開封することはあるので、透明ケースほどではない。瓶の蓋にも工夫を凝らしたロック機構が付いていて、開封することでロック機構が完全に壊れるような仕掛けになっている。
さらに、一部の高級酒では瓶のラベルや外装箱にQRコードが付いていて、それをスマホで読み取ってそのURLにアクセスするとシリアルナンバーが表示されることもある。そのシリアルナンバーと瓶のラベルに表示されたシリアルナンバーの一致を確認することで真正性を担保していることもあるのだ。
URLではなく、QRコードそのものがシリアルナンバーになっていることもある。なので、QRコードが汚れていると価値が下がってしまうということも意識しておいた方がいい。
オークションやフリマアプリを利用する
茅台醇香酒でプレミアがついた商品と言うのは見あたらなかった。なので、業者に買い取ってもらうよりヤフオクなどのオークションや、メルカリなどのフリマアプリで個人的に販売することも検討に入れると良いだろう。
以下に中国における新品の実勢価格を紹介しておく。1人民元=16.00日本円で換算しているので、そのときどきのレートで計算し直せば良い。この数値を参考に売出価格を決めると良いだろう。
- ・茅台醇香酒V20特醸級500mL50人民元(約800円)
- ・茅台醇香酒V20濃香型500mL78人民元(約1,250円)
- ・茅台醇香酒V28珍蔵級500mL100人民元(約1,600円)
- ・茅台醇2008200人民元(約3,200円)
- ・茅台醇香酒V35柔雅濃香型特醸級400人民元(約6,400円)
- ・茅台醇香酒V100柔和醤香型封蔵級1,000人民元(約16,000円)
オークションやフリマアプリを使うときに注意しなければいけないのは、繰り返し売ってはいけないと言うことだ。相手が買取業者であれば問題になることはあまりないし、問題になりそうであれば業者が教えてくれる。それに対してオークションなどで売る場合に、リピートがあると業として売っているとみなされる可能性があるのだ。
酒を売るには事前に税務署に届けを出して酒販免許を受けておかなければならない。もちろん、余ったものを1回売るだけなら何の問題もないが、繰り返していると場合によっては国税庁から取り調べを受ける可能性があることを知っておこう。
送るときには対衝撃梱包を厳重におこなう
茅台醇香酒に限った話ではなく中国酒全般にある危険性は、ケースの中で瓶が暴れて割れてしまう可能性があるということだ。安物の場合それほどではないのだが、ある程度高級品になってくると先に紹介したロック部分が外装箱の中で動いて箱の壁面にぶつかり割れることがある。特にまっすぐ立っていない状態で衝撃を受けると弱い。
なので、緩衝材をしっかり詰めた箱に入れることはもちろん、箱には取り扱い表示をおこなうことが必要だ。「天地無用」「取扱注意」「ガラス製品」「横倒し厳禁」の4種類は最低でも表示しておくことが望まれる。
こうしたときに便利なのが宅配買取だ。宅配買取とは、申し込むと最初に梱包資材と着払いの送り状が送られてくるもので、それに買取見積もりを依頼する商品を詰め込んで送るだけと言う、手間いらず・費用いらずな買取方法である。
この方法の場合でも、自分で緩衝材や取り扱いシールを準備してしっかり梱包し、宅配業者を通じて返送する必要がある。そうしておくことで、万が一の破損の際にも発送元の責任にされる可能性は低くなるだろう。
なお、茅台醇香酒は基本的に500mL瓶なので宅配便やゆうパックで送ることができる。ただし、アルコール度数が50度を軽く超える茅台醇香酒の5L瓶は、航空危険物とみなされるため陸路で送れない地域には発送できないので注意が必要だ。
まとめ
茅台醇香酒の場合、コレクターズアイテムとして、実勢価格より高価に買い取ってもらえる可能性は少ないと思われる。もらい物などで入手したが自分は飲めないから売るという場合に売ればいい。
一方、中国酒を好む人がいる場合、パーティなどで封を開けると場が盛り上がるだろう。個性派ぞろいの白酒の中でも特に濃厚な味と香りが特徴の茅台醇香酒なので、売るより飲んだ方が値打ちがあると言えるのだ。