ゼニスは1865年に創業された、スイスの歴史ある時計ブランドの1つとして知られる。創業当初は違う社名だったが、1900年にパリ万国博に出品した「天頂」を意味する懐中時計のムーブメント「Zenith」が金賞を受賞。世界的に有名になったこともあり、1911年に社名を現在の「ゼニス」へと変更し、現在に至っている。
このエピソードにもあるように、ムーブメントを含め自社で一貫製造するマニュファクチュールであり、中でも1969年に発表されたムーブメント「エル・プリメロ」は、ロレックス「デイトナ」に採用されたことをはじめ、数々の特許や賞を獲得。当時の機械式時計の標準を大幅に凌駕するその性能は、改めてゼニスの技術開発力を世界中に知らしめることとなった。
その後、クォーツショックによって他の有名機械式時計メーカーと同様に業績は低迷し、一時は米国企業に売却されていた時期もあったものの、スイス資本の企業に買い戻され、止まっていた機械式時計の製造を再開させると業績は徐々に回復した。
1999年、LVMHグループの傘下に入ると、より安定した経営基盤のもと、持ち前の技術力をベースに現在も高級時計業界に独自の地位を築いているゼニス。現在でも全てのモデルに自社製ムーブメントを搭載する数少ないメーカーの1つである。
今回は、ゼニスの数々の魅力的な商品の型番=リファレンスナンバーは、どのように設定されているのか、調べてみた。
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ゼニスの型番について
まずはゼニスの現行モデルの型番=リファレンスナンバーについて見てみよう。
ゼニスの型番の例
ゼニスのリファレンスナンバーを見てみると、例外なく長い。下記の例でおわかりのように、15ケタの英数字で構成される。なお本体ケース裏には下記型番のスラッシュより前の9ケタの数字が刻印されている。
<ゼニスの型番の例>
18.2043.400/69.C494:クロノマスター エル・プリメロ 42ミリ
ゼニスを世界的に有名にした伝説のムーブメント「エル・プリメロ」を忠実に再現したキャリバー400を擁するクロノグラフの型番だ。ケースや文字盤のデザインも1969年発表当時の意匠を継承・進化したものになっている。
42ミリはケースサイズで、裏はサファイアガラスのスケルトン仕様。文字盤にはタキメータースケールが備わる。そしてこのモデルには、合計6つのバリエーションがある。
クロノマスター エル・プリメロ42ミリ
- ①18.2043.400/69.C494
- ローズゴールド/シルバー&3色カウンター/ブラウンアリゲーター
- ②03.2040.400/69.C494
- スチール/シルバー&3色カウンター/ブラウンアリゲーター
- ③03.2040.400/26.C496
- スチール/アンスラサイト&3色カウンター/ブラックアリゲーター
- ④03.2040.400/53.C700
- スチール/ブルー&3色カウンター/ブルーアリゲーター
- ⑤24.2041.400/21.R576
- ブラックセラミナイズドアルミニウム/ブラック&シルバーカウンター/ブラックラバー
- ⑥24.2041.400/01.R576
- ブラックセラミナイズドアルミニウム/シルバー&ブラックカウンター/ブラックラバー
各リファレンスナンバーの横に記したスペックは、ケース素材/文字盤の色/ストラップの素材と色。
文字盤の色のところの「カウンター」とは、クロノグラフでよく見られる文字盤上の小さなスケールのこと。「インダイヤル」などとも呼ばれる。このモデルは文字盤上に3つのインダイヤルがあり、①~④の「3色カウンター」はそれぞれ色の異なるインダイヤルが並んでいて、⑤と⑥はシルバーならシルバーで統一されているということだ。
ちなみにこの3色カウンターはゼニスの専売特許。ゼニスらしさを強調する文字盤のデザインである。そして、こうして並べてみると、ゼニスのリファレンスナンバーの見方が、おぼろげながら見えてくる。
ゼニスの型番の見方
前項でモデルバリエーションのリファレンスナンバーを比較した結果、次のような見方が推測できよう。下記の凡例にならって項目ごとに説明していこう。
ア18. イ2043. ウ400/エ69. オC494
-
ア
冒頭2ケタの数字は、ケースの素材を示す箇所と考えられる。上記①~⑥のリファレンスナンバーで見たところ、18=ローズゴールド、03=(ステンレス)スチール、24=ブラックセラミナイズドアルミニウムということになろう。 -
イ
この部分がいわゆるモデルナンバーで、ケースの大きさ、色や素材などの組み合わせ等によって末尾が変化すると考えられる。『クロノマスター エル・プリメロ 42ミリ』は、通常「204×」と いうナンバーのモデルというわけだ。 -
ウ
ここがまさにムーブメントのリファレンスナンバー、キャリバーの数字が入る部分だろう。「cal.400」などと、カタログ等に表示されている。ここでは3ケタだが、キャリバーの数字によっては4ケタになる場合もある。 -
エ
文字盤の色を示した部分と考えられる。①~⑥のリファレンスナンバーから考えると、69=シルバー&3色カウンター、26=アンスラサイト&3色カウンター、53=ブルー&3色カウンター、21=ブラック&シルバーカウンター、01=シルバー&ブラックカウンターであろうか。 -
オ
そうなると、最後の英数字はストラップやブレスレットの素材や種類のリファレンスナンバーだろう。アルファベットが素材で、末尾3ケタの数字が色を示すコードと考えられる。上記のナンバーでみる限り、C=アリゲーターストラップで、R=ラバーストラップだ。ちなみに、ステンレスのブレスレットの場合はMが入る。3ケタの数字はストラップの色やデザイン、大きさなどによって変化していきそうだ。
ゼニスの型番を検証
前項の型番の見方を検証するために、今度は別のモデルのリファレンスナンバーで調べてみた。同じく『クロノマスター エル・プリメロ 42ミリ』のシリーズから、ムーブメント心臓部の動きを見ることができる、人気のオープンモデルの型番だ。
ケースサイズは前述のモデルと同様の42ミリ。キャリバー4061の自動巻きムーブメントは、オープンモデル向けのエル・プレミオである。こちらはバリエーションがなんと11種類を数える。
クロノマスター エル・プリメロ オープン
- ①18.2040.4061/69.C494
- ローズゴールド/シルバー&2色カウンター/ブラウンアリゲーター
- ②51.2080.4061/69.C494
- スチール&ローズゴールド/シルバー&2色カウンター/ブラウンアリゲーター
- ③03.2040.4061/69.C496
- スチール/シルバー&2色カウンター/ブラックアリゲーター
- ④03.2040.4061/23.C496
- スチール/アンスラサイト&2色カウンター/ブラックアリゲーター
- ⑤03.2040.4061/52.C700
- スチール/ブルー&2色カウンター/ブルーアリゲーター
- ⑥03.2042.4061/21.C496
- スチール/ブラック&シルバーカウンター/ブラックアリゲーター
- ⑦03.20416.4061/51.C700
- スチール/ブルー&ブルーカウンター/ブルーアリゲーター
- ⑧03.2040.4061/21.C496
- スチール/ブラック&ブラックカウンター/ブラックアリゲーター
- ⑨03.2040.4061/01.C494
- スチール/シルバー&シルバーカウンター/ブラウンアリゲーター
- ⑩22.2080.4061/76.C494
- ローズゴールド+ダイヤモンドセッティング/ブラウン&ブラウンカウンター/ブラウンアリゲーター
- ⑪22.2080.4061/21.C496
- ローズゴールド+ダイヤモンドセッティング/ブラックラッカー仕上げ+ダイヤモンド/ブラックアリゲーター
全体を確認するために、前項のア~オの凡例に従って各部位の数値を調べていこう。
-
ア
スチールをベースにベゼル部分をローズゴールドで組み合わせた51、ローズゴールド+ダイヤモンドセッティングの22のコードが出た。03=ステンレスは間違いなさそうだ。 -
イ
②と⑩、⑪のモデルナンバーは2080。ケース素材の変更と装飾に伴ってモデルナンバーも変化する場合があるということだろう。⑦は通常4ケタが5ケタになって20416というコードに。ブルー一色の文字盤が特殊な仕様ということだろうか。 -
ウ
キャリバー4061は全て共通。 -
エ
ダイヤルカラーを示すコードにもバリエーションがあるということがわかる。01は全体に渡ってシルバー。同じく21=ブラック、76=ブラウン、51=ブルーということになる。アンスラサイト+多色カウンターのコードは23に変化。オープン部分があるため、カウンター部の配色が変わっているからだ。色のパターンによって細かくコードが振られているということがわかる。 -
オ
全てアリゲーターレザーストラップで型番も共通していた。
全体として、イのモデルナンバーの割り振りには細かい規定があるようで、同モデルシリーズでも大きく変わる場合があることがわかった。ただし、ウのキャリバーの部分は不変。ここの数字が変わればキャリバーも変わったということだ。
キャリバーの番号からモデルを選べるわかりやすさが、ゼニスのリファレンスナンバーの大きな特徴と言えるだろう。
名キャリバー搭載機種の型番
前章で紹介したキャリバー400、あるいはキャリバー4061は、ゼニスの人気モデルに搭載しているムーブメントだ。これ以外のゼニスの定評あるムーブメントから、それを搭載する機種の型番を紹介しよう。
クロノマスター エル・プレミオ グランドデイト フルオープン
- 51.2530.4047/78.C810
- スチール&ローズゴールド/サファイア(スケルトン)/ブラウンカーフ
- 03.2530.4047/78.C813
- スチール/サファイア(スケルトン)/ブラックカーフ
ゼニスの傑作ムーブメントの1つ、キャリバー4047搭載でケースサイズは45ミリ。フルオープン仕様のサファイアダイヤル越しに見えるムーブメントは、ビッグデイト表示、ムーン&サンフェイズ表示、そしてクロノグラフの3つの複雑機構をパワフルに動かす。メカニカル腕時計の芸術的なムーブメントの動きを常に楽しめる逸品だ。
エリート クラシック(39ミリ)
- 18.2290.679/18.C498
- ローズゴールド/シルバー(スモーク仕上げパラジウム)/ブラウンアリゲーター
- 18.2290.679/01.C498
- ローズゴールド/シルバー/ブラウンアリゲーター
- 03.2290.679/01.C493
- スチール/シルバー/ブラックアリゲーター
- 03.2290.679/26.C493
- スチール/ブラック(スモーク仕上げ)/ブラックアリゲーター
- 03.2290.679/51.C700
- スチール/ブルー/ブルーアリゲーター
- 03.2290.679/11.C493
- スチール/シルバー(ローマ数字のインデックス)/ブラックアリゲーター
エリートキャリバー679は、厚さ3.85ミリの薄型自動巻きムーブメント。旧モデルには3.28ミリのキャリバー680もあったが、2017年現行モデルではこちらが最薄。それを直径39ミリ、厚さ9.45ミリの超薄型ケースに収め、極めてシンプルにデザインされたドレスウォッチのシリーズだ。モデルナンバー2290で統一されている。
一番下の[ref.03.2290.679/11.C493]のインデックスがローマ数字で、それ以外はバーインデックス。ケース直径33ミリの女性向けバージョンのモデルナンバーは2330で、同じムーブメントを使用している。
まとめ
ここまで、ゼニスの型番について、現行モデルの型番例を取り上げながら説明してきた。ゼニスのリファレンスナンバーは、機械式腕時計の心臓部であるムーブメント作りに長けたメーカーだけあって、そのことを誇示するように、ナンバーの中にキャリバーがそのまま表記されている。従って、ムーブメントの種別によってモデル名を特定しやすい特徴を持つ。
なにしろ、エル・プリメロは本来ムーブメントの名称。それがそのままモデル名にも含まれているのは、ゼニスというブランドを象徴していると言えよう。中古品も含め、ゼニスの腕時計を購入するなら、傑作キャリバー搭載かどうかで判断してみるのも1つの手だ。
なお、ここに掲載したゼニスの型番のコードについては、全てを調べた結果ではなく、もちろんメーカーが公式に発表したものではもない。いくつかのリファレンスナンバーからの類推に過ぎないので、参考程度にお読みいただきたい。
ちなみにゼニスのリファレンスナンバーは、公式サイトに掲載してあるものを参考にしている。
ゼニスオフィシャルサイト:http://www.zenith-watches.com/jp_jp/