テレビ東京で放送されている「開運 なんでも鑑定団」は、さまざまな人が所有するお宝を鑑定に出すことで、その意外な価値がわかる人気の鑑定バラエティ番組だ。長きに渡り美術品や骨董品、絵画などの仕事に携わるこの番組の出演者は、自分の店舗を含めさまざまな場所で活躍する現役の鑑定士や査定士である。
したがって、なんでも鑑定団を通して彼らの話に耳を傾けるだけでも、古美術品のコレクションや売却に関するさまざまな知識を得られることだろう。今回は、そんな人気テレビ番組・なんでも鑑定団の出演者である鑑定士が運営する実店舗や一般の視聴者が注目する彼らがどこで働いているのかと疑問の答えをじっくり調査していきたい。
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中島誠之助
1994年の番組開始当初からレギュラー出演し続ける中島誠之助は、なんでも鑑定団を代表する人気の古美術鑑定家だ。この番組のオフィシャルサイトには、茶道具と焼き物が主な鑑定ジャンルであると書かれている。
中島誠之助が骨董商になるまでの歴史
骨董商だった伯父より鑑定技術を仕込まれた中島誠之助は、1960年より古美術鑑定の仕事に従事するようになる。しかしながら親族のとの間に生じたさまざまな事情により、1976年30歳のときに独立し、東京南青山に古伊万里染付専門店・からくさをオープンさせている。
こうした形で古伊万里磁器の魅力や素晴らしさを世間に広めた中島誠之助は、その3年後に自分の店のあるエリアに因んだ南青山骨董通りを作詞する。また六本木通りから青山通りにかけて多くの骨董品店が並ぶ地域を指す骨董通りという愛称は、中島誠之助が名付け親であるとも言われている。
「からくさ」の閉店
日本国内において古伊万里磁器の知名度が高まるきっかけとなった骨董屋のからくさは、2000年に閉店してしまったようだ。そのため近年の中島誠之助は、古美術鑑定家やエッセイスト、テレビタレントとして非常にさまざまな業界で活躍している。
また「ズッコケ三人組〜怪盗X物語〜」や「ルパン三世 炎の記憶 TOKYO CRISIS」といったアニメ作品にカメオ出演する近頃では、骨董商とは大きく異なる声優の世界でも中島誠之助の名前が知られるようになっている。
北原照久
長寿番組・なんでも鑑定団に1回目より出演し続ける北原照久は、世界有数のブリキのおもちゃコレクターだ。したがってこの番組における鑑定ジャンルは、彼自身が収集をする下記のカテゴリーが中心となる。
- ・レトロ玩具
- ・ミニカー
- ・特撮、アニメ玩具
- ・広告キャラクター
- ・看板
さまざまな施設で自身のコレクションを公開中
品物の収集を得意とする北原照久は、中島誠之助のような骨董商ではない。そのため2019年6月2日現在、彼の運営する買取専門店は存在しないようだ。しかしながら、下記のように日本全国のさまざまなところに展開された北原照久の博物館や施設の一覧に目を通すと彼が特定分野のコレクションで第一人者的存在であることも納得できる。
- ・ブリキのおもちゃ博物館(横浜市)
- ・河口湖 北原ミュージアム Happy Days(富士河口湖町)
- ・北原コレクション エアポートギャラリー(羽田空港第一ターミナル)
- ・北原コレクションミュージアム(セブンパーク アリオ柏)
- ・ザ・ミュージアム 松島(宮城県松島町)
- ・箱根北原おもちゃミュージアム(箱根町湯本)
安河内眞美
安河内眞美は、日本画を専門に鑑定をおこなうなんでも鑑定団の出演者だ。
「ギャラリーやすこうち」を開くまで
銀座の画廊店で働いていた彼女は、アメリカでの語学留学後に義兄の影響で古美術に興味を持ち始める。それから都内の老舗骨董店に転職した彼女は、しばらくの間、古美術商としての修行を積んでいたようだ。
その後の独立を経て1985年にオープンした古美術店の洗心は、2006年に美術商やすこうちに改名し、現在に至っている。
鑑定も可能なギャラリーやすこうち
安河内眞美が営むギャラリーやすこうちでは、商品画像を見ておこなう写真鑑定と現物を確認する通常の鑑定の2つを電話やメールで受け付けている。ちなみに掛け軸や屏風の鑑定も得意分野とする安河内眞美は、なんでも鑑定団でお馴染みの日本画以外の価値も適正に判断できる。
また、これまでご紹介した彼女の経歴から見ると一般の骨董品専門店や古美術商に近い知識も十分に持つ鑑定士であると捉えて良いかもしれない。
山村浩一
彫刻・西洋画の鑑定ジャンルで紹介されている山村浩一も、開運なんでも鑑定団のレギュラー出演者だ。
永善堂画廊の代表取締役社長
大学卒業後、国内大手のシンワアートオークションで働いていた山村浩一は、2000年に父の経営する永善堂画廊に入社する。その後、2013年8月に同社の代表取締役社長に就任した彼は、2016年10月からなんでも鑑定団のレギュラー鑑定士になっているようだ。ちなみに山村浩一は、一般財団法人全国美術商連合会青年部の副部長もつとめている。
永善堂画廊の取り扱い商品
銀座6丁目にある永善堂では、主に日本画・洋画・外国人画家の作品を買取販売対象としている。なんでも鑑定団で山村浩一が鑑定をおこなう洋画のジャンルには、棟方志功や山下清、東郷青児、白髪一雄といった多彩な人物の名前が並べられている。
またアンディ・ウォホールやパブロ・ピカソ、ジョアン・ミロなども画家一覧に並ぶ永善堂では、油絵や版画、彫刻といった海外作家による多彩なカテゴリーの美術品も歓迎していると捉えて良いかもしれない。
田中大
古文書や日本画ジャンルを得意とする田中大は、開運なんでも鑑定団の準レギュラー出演者だ。過去には番組を病欠した、安河内眞美の代役を務めたこともある。お宝に息がかからないようにとハンカチで口を抑える鑑定スタイルを持つ田中大は、番組内で京都のハンカチ王子と呼ばれている。
思文閣の代表取締役社長である田中大
田中大は現在、24歳で入社した家業である思文閣出版の社長を務めている。この業者では下記のように、美術品に関するさまざまな事業をおこなっている。美術品の査定をおこなう実店舗やギャラリーは、京都・銀座・福岡にあるようだ。
- ・美術品の査定
- ・作家の個展、展示
- ・古典籍の販売
- ・美術や工芸等に関する書籍の出版
- ・大入札会
大入札会とは、思文閣が2008年より開催している非公開入札式オークションだ。国内外10,000人もの美術愛好家が注目するこのオークションには、平均落札率が約9割という実績がある。また落札者だけでなく出品者からも好評を得ているこの催しは、自慢の絵画や美術品を売る方々にとってもおすすめ度の高い内容となるだろう。
大熊敏之
置物、近代工芸の担当として出演する大熊敏之は、富山大学大学院芸術文化学研究科の教授だ。番組公式ページの鑑定士データ内には、単身赴任をしている大熊敏之が収録の度に富山県からやってくるというエピソードが掲載されている。
またワイルドな風貌からは想像がつかないほど優しい笑顔で鑑定をおこなう大熊敏之には、その魅力的なギャップに多くのファンがいるようだ。
研究員・学芸員としても経験、実績を持つ大熊敏之
2005年に富山大学の教員になる前の大熊敏之は、下記のように非常に多くの美術館で活躍していた。
- ・北海道立函館美術館
- ・北海道立近代美術館
- ・宮内庁三の丸尚蔵館
皇居東御苑内にある宮内庁三の丸尚蔵館には、京都御所で儀式の際に使われる刀剣や屏風、歴代天皇の伝来品といったさまざまな美術品が保存されている。このように日本の歴史にも大きく関係する工芸品のある施設で主任研究官をしていた大熊敏之は、非常に幅広い視点から日本国内の伝統工芸品を鑑定できる出演者であると捉えて良いかもしれない。
増田孝
準レギュラーである増田孝は、古文書のジャンルで鑑定をおこなう出演者だ。番組公式サイトには、中国皇帝でも戦国武将でも、誰が書いたものかピタリと鑑定する彼のエピソードが掲載されている。また解読も得意とする増田孝は、番組内で古文書の生き字引と呼ばれているようだ。
大学教授、研究者として活躍する増田孝
千葉県佐倉高校の教諭などを経て愛知文教大学の教授に就いた増田孝は、2007年11月より副学長、2010年2月から2014年1月末まで学長として活躍していた。また2015年4月以降は、愛知東邦大学教授、学長補佐として後進の指導にあたっている。
ちなみに増田孝は、書の真贋や古文書の読み方、日本近世における書跡成立史の研究といった非常に幅広いジャンルの本も執筆している。したがって、人気テレビ番組・開運なんでも鑑定団をテレビ視聴する機会のない方々でも、古文書の専門書を通して増田孝の名を目にすることは十分にあると捉えて良いだろう。
阿藤芳樹
2016年9月27日までレギュラー出演者だった阿藤芳樹は、番組内で西洋アンティークを専門に鑑定をおこなっていた。彼は自身の会社・阿藤ギャラリーの代表取締役社長でもある。
阿藤ギャラリーの業務内容、取り扱い商品
この会社で公開するホームページによると阿藤ギャラリーは前会長によって西洋骨董専門店として昭和24年に開業している。主な業務内容の中には、18世紀〜20世紀初期頃までに欧州で作られたいわゆるヨーロピアン・アンティークと呼ばれる美術工芸品の現地買い付けと販売といったことが書かれている。
具体的には、下記のように非常に多彩な商品の取り扱い実績があるようだ。
- ・コーヒーカップ
- ・ワイングラス
- ・アクセサリー
- ・硝子器
- ・陶板
- ・陶磁器
- ・彫刻
- ・絵画
- ・家具
- ・照明器具
年間4〜5回ヨーロッパに行き、これだけ多くの種類の品物を買い付けする実態から見れば、阿藤芳樹の番組内における鑑定力の高さも納得できることだろう。
勝見充男
古民具の鑑定ジャンルで多く登場する勝見充男は、東京の代々木上原で古美術・自在屋を営む店主である。番組ページ内の鑑定士データには、「仏像から古道具までなんでもこざれ」といったコメントが書かれている。また骨董品ならではとも言えるオリジナルの楽しみ方を追求する店主としても、業界内で注目されているようだ。
骨董自在ナリ
勝見充男は、2005年に「骨董自在ナリ」という本を出版している。この書籍の中には、一般の皆さんに骨董市をすすめる話なども書かれているようだ。また書籍のレビューに目を通すと骨董の世界の奥深さに多くの人が魅了されていることにも気付かされる。
ちなみに著者略歴によると古美術商を営む家に生まれた勝見充男は、十代の頃から西洋骨董に目覚め、大学を出てから十年間このカテゴリーの専門店で修行をしていたそうだ。また自在屋の四代目として活躍する現在は、NHK文化センターや旭日カルチャーセンター、日本創芸学院などの講師といった顔も持っている。
森由美
茶道具・焼き物のジャンルで登場する準レギュラー・森由美は、この番組の開始当初から出演している中島誠之助の娘である。番組サイトのエピソードには、柔らかな語り口と父譲りの鋭い審美眼で活躍中と書かれている。
森由美の経歴
陶磁研究家である森由美には、東京藝術大学大学院美術研究科で保存科学を学んだ経歴がある。また大学院卒業後は、戸栗美術館で学芸員として仕事をしながら展示企画や東洋陶磁を学んでいたようだ。
美術館から独立した現在は、伝統文化や陶磁器に関する執筆や企画制作、講演などをおこないながら、NHK文化センターの講師や戸栗美術館の学芸顧問として活躍中となっている。また準レギュラーのなんでも鑑定団以外にNHKラジオ深夜便・大人の旅ガイドなどにも出演しているようだ。
戸栗美術館とは?
ちなみに森由美が学芸顧問をしている戸栗美術館は、陶磁器を中心とした美術品の永久的な保存と多くの人に公開することを目的とする渋谷区松濤の美術館だ。この施設内には、銅島や伊万里といった肥前磁器の他に朝鮮や中国などの東洋陶磁器も多くコレクションされている。
こうした形で日本でも数少ない陶磁器専門美術館でもある戸栗美術館で活躍する森由美が、なんでも鑑定団の焼き物や茶道具の鑑定ジャンルに登場するのも十分に納得できることだと言えるだろう。
まとめ
それぞれのジャンルに精通した鑑定士や古美術商、世界的なコレクターが鑑定をおこなうなんでも鑑定団は、一般の骨董品専門店とほとんど変わらない視点で品物の価値判断ができる番組であると考えられる。またなんでも鑑定団のサイトには、開運データベースとして過去に鑑定をおこなった美術品や骨董品の実績も掲載されている。
したがって、収集や売却で自分の所有するお宝に似た品物の価値を調べたいときには、この番組のサイトに目を通してみても良いかもしれない。また現在の古美術品市場における適正な価値が知りたいときには、こうした鑑定士の営む専門店に相談をするのが理想となるだろう。