現代日本を代表する版画家の1人である吉原英雄。その作品の売却を考えている場合、どのくらいで売れるのか、おおよその相場を知りたいと思うだろう。この記事では、吉原作品の相場を推測するうえで参考となる、ネット上での販売価格を紹介する。
吉原作品の画風やメッセージ性についても解説するため、吉原の画業自体について知りたいという人にも、参考にしてみてはいかがだろうか。
CONTENTS
このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
吉原英雄とは
吉原英雄は、昭和から平成にかけて活躍した、現代日本を代表する版画家である。主にリトグラフと銅板を用いて多数の作品を残した。京都市立芸術大学教授を務めた後、同大学野名誉教授となる。紫綬褒章受章や勲三等瑞宝章、従四位などの勲章も受けている。
京都市文化功労者・大阪市文化功労者の2つの顕彰も受けるなど、社会的にも非常に高く評価された版画家である。
現代人の不安や心理的真空感を描く
吉原の作品は「現代人の不安や心理的真空感を描いた」と評価される。心理的真空とは「空っぽな心」だが、顔が描かれない人物がしばしば登場しているのも、その象徴と言える。版画集『ペットショップ』など、人間に商品として扱われる動物を通して、上記のような現代人の虚しさを描いたとされる作品もある。
数々の芸術賞を受賞
吉原は下記のように、国内外の多数の芸術賞を受けている。
- ・第6回国際版画ビエンナーレ・文部大臣賞受賞
- ・第9回現代日本美術展ブリヂストン美術館賞受賞
- ・第20回芸術選奨新人賞受賞
国からの勲章についても、先述のように多数の受章実績がある。
吉原英雄の版画の特徴は
吉原は、あらゆるタッチを描き分ける器用さを持っていた。それと同時に、先述した通り「現代人の不安」に関するメッセージ性の強い作品も多く残している。ここでは、そのような吉原の技術の高さや、メッセージ性を感じられる作品の一部を紹介していく。
ブルドッグの朝食
ペットショップのブルドッグが、一列に並んで朝食をとっている絵だ。背景は真っ黒で、6匹のブルドッグもすべてモノクロームで描かれている。子供でも「ブルドッグがかわいそう」と感じるであろう絵だ。ペットショップの運営も立派な仕事であり、批判的な視点で一方向から見ることは必ずしも正しくない。
しかし、吉原の作品が持つメッセージ性の強さは感じられるであろう。
デューラーのうさぎ
デューラーとは、ルネサンス期の画家である、アルブレヒト・デューラーのことだ。デューラーの代表作に「野うさぎ」という作品があり、吉原のうさぎもそれに似せて描かれている。ただ、デューラーのうさぎはピーターラビットのようにかわいらしい雰囲気であるのに対し、吉原のうさぎは明らかにこちらを睨みつけており、近寄りがたい雰囲気がある。
頭部だけがリアルに描かれている点も、その雰囲気をさらに強いものにしている。与えられた人参にうさぎが見向きしていないことにも、人間の自己満足が感じられる作品だ。
Dog
散歩中と思われる犬と、タンクトップのセクシーな女性が描かれた作品である。女性は顔が描かれておらず、犬とはまったく別の方向を見ている。それぞれを描く色合いやタッチも違い同じ世界にいないことを感じさせる。
女性にとってこの犬はファッションに過ぎないと見ることもできるだろう。
猫と花
「デューラーのうさぎ」と同じく、動物をリアルに描いた作品だ。文字通り、猫と花がモチーフである。こちらは先程のうさぎと違い、猫が単純にかわいらしく描かれている。
花も可憐で、重い雰囲気やメッセージを感じさせる要素は一切ない。特に猫が好きな人が興味を持ちやすい絵だろう。実際に、愛好家が猫好きの親戚にプレゼントしたことが、ブログに書かれている例もある。
吉原がポップさを出すことに徹すれば、一般人にも愛される作品を生み出す能力があったことを示す好例と言えるだろう。
サングラスのある女性像
真っ赤な画面の中に、リアルなタッチで女性の手と口元が描かれている。サングラスがその下方に、落下する途中のような姿で浮かんでいる絵だ。女性の顔立ちは外国人風で、現代で人気のハーフタレントに似た雰囲気もある。
口元と鼻の一部だけでも、美人であると想像させる顔立ちだ。しかし、この女性の美を吉原が良く思っていたか、悪く思っていたかは絵からは判断しにくい。真っ赤な画面は情熱や恋の炎などのプラスの要素も連想させる。
その一方で、魔性の女性が持つ危険さや、一時の恋愛感情や性欲に身を委ねることのリスクを連想する人も少なくないだろう。愛や性に関する哲学的なメッセージを内包した作品と言える。
ミラーオブザミラー
吉原英雄にしては珍しく、版画ではなく油彩である。腰に手を当てる女性の体が描かれているが、写真と見紛うほどにリアルな絵だ。女性の一部分だけがリアルに描かれている点は「サングラスのある女性像」や「サンドレスの女」とも共通している。
興味深いのは「ミラーオブザミラー」というタイトルだ。鏡を「映すもの」と解すれば「映すものを映すもの」と読み取れる。「他人は自分を映す鏡」というが、女性に好かれるかどうかを通して、自己の魅力を測っている男性もいるだろう。
しかし、その鏡である女性もまた、鏡や他人の目に映った自分を通して、自己の存在価値を測っている。永遠に鏡(評価)が連鎖しているわけだが「最終的に一体誰が何を評価しているのか」と、考えることもできる。鏡と鏡を合わせると、その中に永遠に自分の姿が映っていくことは知っての通りだ。
あくまで想像だが、吉原はその映像に「他者の評価に頼らなければ自分を確認できない現代人の集合」を見ていたのかもしれない。吉原の作風は「現代人の不安を表現した」と評価されることが多い。この作品もそのひとつと考えていいだろう。
近畿30景シリーズ
文字通り近畿地方の30の景勝地を描いたシリーズである。寂光院や琵琶湖の海津大崎などが描かれている。ここまで紹介した他の作品と比べ、これは写実的でストレートに美しい風景画である。
リトグラフだが水彩画に見える人も少なくないだろう。関西テレビの開局30周年を記念して制作されたシリーズであり、一般大衆にわかりやすい表現を意識したと想像できる。
挑戦
これは詩画集『少年』に収録されているリトグラフ作品だ。美しく咲いたバラの花を、茎の部分でスッパリ切る直前の、停止したハサミを描いている。この絵を見て「バラがもったいない」あるいは「かわいそう」と感じる人もいるだろう。
おそらく「挑戦とはそういうものだ」というメッセージが込められているのではないだろうか。
吉原英雄の版画・作品の買取価格
吉原作品の買取相場を知るには、ネットでの販売価格を見るのがもっとも参考になる。ここでは、2019年6月30日時点での価格を紹介していく。
Yahoo!オークション
ヤフオクでも吉原作品は多数落札されている。その一部を紹介すると下記のとおりだ。
- ・サングラスのある女性像…78,777円
- ・裁断師の夢…16,499円
- ・サンドレスの女…9,999円
- ・プチペット…7,350円
- ・出来事…8,249円
いずれも落札価格であり、すでに確定した価格である。他にも多数の作品が落札されているが、おおむね5,000円~10,000円の価格帯と言える。
こもれび
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
名古屋で古書と古美術を販売するこもれびも、吉原英雄の作品を販売している。先に紹介した「デューラーのうさぎ」で、価格は20,000円だ。技法はリトグラフで額サイズは54.3×70.5cm、作品状態は良好で、刷られた部数は60部である。
吉原英雄の作品を高値で売る2つのコツ
中古市場でも常に高値で売買される吉原作品だが、売値をさらに上げるためのコツもある。ここではそのコツのうち、特に重要な2つを紹介しよう。
業者の査定を多めに受ける
通常は、一番高い価格を提示してくれる業者を選ぶために、査定を多く受けるものだ。しかし、吉原英雄の作品の場合、理由はそれだけではない。吉原の作品は、時期やシリーズによって絵のタッチやテーマが大きく異なるためだ。
同じ吉原英雄の作品でも、業者によってまったく異なる価格になる可能性がある。そのため、できるだけ多くの業者で査定を受ける必要があるのだ。
フリマアプリやネットオークションでも売ってみる
多くの業者の査定を受けて、それでも提示された価格に満足できないということもあるだろう。その場合は、フリマアプリやネットオークションを活用し、自ら売る方法もある。フリマアプリなら楽天が運営するラクマや、メルカリなどが特に人気だ。
ネットオークションなら、もはやこの分野の代名詞とも言えるヤフオクを使うのがいいだろう。こうしたさまざまなサービスを活用することで、より多くの人々にアプローチできる。それによって、どのようなテイストの吉原作品であろうと、高値で売るチャンスが増えるわけだ。
おすすめ買取業者
吉原の作品は、多くの画商や絵画販売業者が積極的に買い取りしている。ここでは、そのなかでも特におすすめの業者を紹介する。
アート買取協会
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
名古屋に本社を構え、仙台から博多まで全国各地に支社を持つアート買取協会。同社は吉原作品の買取りに特に力を入れており、取扱作家として吉原英雄専用のページを作っているほどだ。このため、こうしたページを持たない業者と比べて、高値で買い取ってもらいやすいと期待できる。
美術品・絵画買取センター
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
東京都中央区に店舗を構える美術品・絵画買取センター。同社を運営する株式会社・バーバリーアートスペースは、平成29年度の売上実績が11億3,000万円という、大きな数字を残している。「売買実績が豊富」と謳う業者は多く存在するが、このように実際の売上が公開されている点で、同社の実績は特に信用しやすいだろう。
同社もアート買取協会と同様、吉原作品の買い取りに力を入れている。吉原英雄専用のページを作成しており、代表作の「シーソー1」の紹介もしているほどだ。24時間以内の査定が可能など、スピーディーな査定ができる点でも評価されている。
特に早めに吉原作品を売却したいと考えている人は、同社の査定を受けて見てはいかがだろうか。
まとめ
吉原英雄は膨大な数の作品を残している。それぞれのテイストも技法も異なるため、作品によって価格は大きく変わるものだ。自身の手元にある吉原作品がどの程度の価値を持つのか、一度業者の査定を受けて把握しておくほうがいいだろう。
多くの業者が力を入れて買い取りをしているため、思わぬ高値がつく可能性もある。まずは気軽に、当記事で紹介した業者に問い合わせしてみてはいかがだろうか。