小早川清 浮世絵・作品の買取相場・価値まとめ

美人画で有名な作家である小早川清。鏑木清隆に師事し美人画のいろはを教わった小早川は、帝展や文展(文部省美術展覧会)など多くの展覧会にて入選し認められていった。

代表作に「近代時世粧」シリーズや、「旗亭涼宵」などがあり、小早川は旧来の浮世絵とは異なって、より妖艶に、よりリアリティ溢れる女性を描いた。

今回は小早川清の経歴を紹介した上で、作品の価値や買取相場について記載していく。小早川の作品をすでに所有していて売却したい方や、これからコレクションしていきたいと考えている方は、この記事を参考にしていただきたい。

小早川清とは

小早川清は明治22年(1889年)に福岡にて生まれた作家である。鏑木清隆に師事し、第5回に入選した「長崎のお菊さん」など美人画を得意とした。多くの美しい女性の立ち姿などを描いてきており、多くは島根県立石見美術館や、千葉市美術館、東京国立近代美術館といった著名な美術館に収蔵されている。

代表作に1930年ごろに制作された「近代時世粧」シリーズがあり、これは「ほろ酔い」、「爪」、「化粧」、「黒髪」、「口紅」、「瞳」で構成されており、その妖艶な女性が描かれた作品は非常に人気があった。また、「旗亭涼宵」の作品のように当時の一世を風靡した芸者兼歌手の人物を多くモデルとして起用するなど、当時の風俗と結びついた作品を残していった。

小早川清は明治22年(1889年)に福岡県博多市で生まれた。絵を学ぶ際に最初、上田鉄耕に支持していたが、大正4年(1915年)福岡から上京後は、鏑木清隆の門人となった。小児麻痺の後遺症のせいで左手一本しか使えないにも関わらず、鏑木のもとで美人画の教えを受けた小早川は、大正13年(1924年)の第5回目の帝展にて「長崎のお菊さん」が初入選を果たす。それ以降も教えを受けた美人画で帝展に加え、文展、新文展などでも入選した。

昭和2年(1927年)から新たに渡辺版画展にて木版画の制作を始める。その3年後には自費出版で「近代時世粧」シリーズを版行し、「爪」や「口紅」、「黒髪」など代表作を製作、この時彫り師に高野七之助、摺師に斧富三郎がいた。

昭和8年(1933年)には、戦前に人気を博した歌手で芸者の市丸を描いた「旗亭涼宵」が、第14回帝展にて特選を受賞するなど多くの賞を生涯を通して獲得した。また、戦後にも引き続き作品を製作していたが、「長崎のお菊さん」など初期作品の方が人気が高い。

個人的に浮世絵を集めてコレクションしており、深く研究をしていた。昭和23年(1948年)、東京にある自宅にて脳溢血により他界。享年49歳。

小早川清作品

ここでは小早川清作品の代表作である「旗亭涼宵」、「近代時粧ノ内 ニ『化粧』」、「近代時世粧ノ内 四『瞳』」を紹介する。

旗亭涼宵

本作は昭和8年(1933年)当時、戦前の日本で非常に人気があった芸者であり歌手である市丸が描かれている。小早川は市丸を好んでモデルに選んでいて、他の作品にも「市丸」と題された作品が存在している。この作品を描くまで小早川は、キリシタン文学や浮世絵を取材した作品を制作していたが、この作品では同時代の風俗を描いている。

219.2 x 168.3cmと人よりも大きいものに描かれていて、メインのモチーフである市丸は実際の大きさに近いだろう。

市丸は流し目で手にうちわを持って立っているだけなのだが、その姿は一切の無駄がなく非常に洗練されている印象を受ける。画面には、左上に少し垂れたすだれ、左下に赤いテーブルの上に置かれた緑色の湯のみなどが描かれていて、畳の縁が画面外に伸びていることで部屋の広がりを感じさせる。また、背景に描かれた自然豊かな木々などは、彩度を落とすことで、メインの市丸の黒い着物やうちわの鮮やかな青色に目がいくように仕向けられている。

市丸の美しさを画面に再現しつつ、絵画的にも充実ある画面に仕上げたことで、単なる美人画ではなくそれ以上の絵画作品として成立している点で秀作である。この作品は島根県立石見美術館に所蔵されている。

「近代時粧ノ内 ニ『化粧』

芸者だろうか。上半身がはだけた女性が髪を後ろでまとめた後、当時のパフのようなものでほおから耳にかけて薄く赤い粉をつけている。白い肌が画面の大部分を占めるように描かれており、画面下部には鮮やかな青と赤の着物が目に入る。

全体的に落ち着いた色で描かれているが、パフに使われているビビットな赤と、着物の鮮やかな色が共鳴し合い、画面全体を保たせている。

近代時世粧ノ内 四「瞳」

雪が舞う暗がりの中、女性が振り返っている様子が描かれている。じっとこちらを見つめる目は力強く、女性の目を見ている鑑賞者側も目が離せなくなる。髪は束ねられているが、急いでいたのか、髪が何本か垂れ下がっている。羽織っている模様は昭和5年(1930年)ごろに流行っていたとされる文様で、暗い背景の中にビビットな赤色が目をひく。

振り返っている様子の絵というと、菱川師宣の描いた「見返り美人図」を思い出すが、本作とは大きく違うことがすぐにわかるだろう。時代背景ももちろん異なるが、特定の人物を描こうとせず、体の全体像を遠くから描いた「見返り美人図」に対し、「近代時世粧ノ内 四『瞳』」は誰か特定の人物がいたことを思わせる。キリッとした一重まぶたなど細かく描かれている本作品は、菱川師宣の時代の浮世絵とは明確に異なる新しい浮世絵として成立している。

小早川清作品の買取相場

小早川清の作品は数万円から100万円近くの値段で取引されており、高価格帯ながら活発に売買されている。小早川清の作品に限らず浮世絵は非常に人気があり世界中でコレクションされている。

ここでは小早川清作品の販売店やオークションなどで販売されている価格を参考に、買取相場を見ていく。

山田書店 Online Store

浮世絵を始め、版画や美術書など多くの美術関係のものを置いている山田書店のオンラインショップで、小早川清の作品が販売されていた。

• ・作品 : 自筆色紙
• ・技法 : 紙 墨
• ・サイズ : 27 x 24(cm)
• ・枚数 : 1枚
• ・価格 : 10,000円

• ・作品 : 近代時世粧之内　五　黒髪
• ・技法 : 木版
• ・サイズ : 49.8 x 28(cm)
• ・制作年 : 1931年
• ・ED : 100
• ・価格 : 要問い合わせ

秋華堂 SHUKADO

掛け軸や日本画、浮世絵などを多く取り扱っている秋華堂にて小早川清の作品が販売されている。

• ・作品 : 下田のお吉
• ・技法 : 木版
• ・サイズ : 49.8 x 28(cm)
• ・価格 : 750,000円

ぎゃらりーおおの

浮世絵や版画を取り扱っているぎゃらりーおおのにて、小早川清の作品が販売されている。

• ・作品 : 口紅
• ・技法 : 木版
• ・サイズ : 約26 x 39(cm)
• ・備考 : テープ跡 小シミ
• ・価格 : 80,000円

• ・作品 : 近代時世粧ノ内二
• ・技法 : 木版
• ・サイズ : 約50 x 30(cm)
• ・制作年 : 1930年
• ・ED : 100
• ・価格 : 要問い合わせ

浮世絵工房

江戸版画の制作や販売などをしている浮世絵工房のオンラインショップにて、小早川清の作品が販売されている。

• ・作品 : 近代時世粧ノ内 四「瞳」
• ・技法 : 木版
• ・サイズ : 44.5 x 27(cm)
• ・制作年 : 1930年
• ・価格 : 75,600円

小早川清作品の売り方

小早川清作品の買取相場を紹介したが、すでに小早川の作品を所有していてこれから売却したい方もいると思う。ここでは小早川清作品を売る際のポイントを紹介する。小早川のいつの時代の作品で、何を描いているのかなども重要だが、それと同等に重要なのが作品の状態だ。

小早川清の浮世絵の作品となると数十年前から数百年前に制作されたものになるため、作品の劣化が激しい場合がある。乱雑に保管していたことで擦り傷や穴など損傷していたり、ほこりをかぶっていたり、日焼けしてしまっている場合は、作品の価値が大幅に変わってきてしまう。損傷は専門の修復師による復元が可能な場合もあるが、別途高額な費用がかかってしまうので、作品を所有しているのなら、事前に自分で率先して保護をするようにしよう。

小早川清作品をどこで売るか

小早川清の浮世絵を始め、他の作家の日本画や油絵、版画などの美術作品を売却する際、どこでどのように売れば良いのか初めは迷ってしまうと思う。ここでは、代表的な作品の売り方について紹介するので参考にしてほしい。

オークション

オークションに自分の持っている作品を出品すれば、その作品をほしい人がいればいるほど価格が釣り上がるので、自分が想定していた金額以上の価格で作品を取引できるだろう。作者が有名であり、貴重な作品であればあるほどほしがる人がいるだろう。その反面、作品を求める人がいない場合は、落札されないこともあるので確実に売れるとは限らない。

最近では個人で所有する作品を出品することができるネットオークションの他に、オークション会社が運営するスペースで取引することもできる。その場合は、事前にオークションに参加する画廊やギャラリーなどに、一度連絡を取った上で出品するケースがあるので、事前に情報を取り寄せるようにしていただきたい。

買取業者

浮世絵など古くからある美術作品であれば、専門の買取業者に依頼することで熟練の査定員が、作家や作品の歴史的価値、希少性、作品の状態の良さなど全てを考慮した上で、作品の価格を決めてくれるので安心感がある。世界中で取引されている美術作品の最新情報を熟知しているため、適切な値段で取引することができるだろう。浮世絵や日本画、油絵など美術作品に自分が詳しくなくても、専門家に任せることで安心して売却できる。

まとめ

小早川清は、49歳という若さで亡くなってしまったが、多くの代表作を残してきた。鏑木清隆に師事したことで、旧来の美人画よりもよりリアリティ溢れる甘美な女性を描くことに成功した。

オークションなどで小早川の作品が出品されると数万円から数十万円の値段がつくことも珍しくない。小早川の作品の購入を考えている方はすぐに購入せずに、所蔵されている美術館や展覧会が企画されたときに、作品を一度見てみることをお勧めする。

芸術作品は日々価値が変動しており、価格が一定ではない。作品を購入したい場合は、そのときにオークションや販売店などで価格を確認し、ほしいときに購入するのが良い。すでに作品を持っていて売却したい場合でも、心からその作品をほしい人に売ることで、作品がこれから先の未来も残っていき、文化の保存という観点からも大切なことなので、売る相手やタイミングを見て売っていただきたい。