日本刀や兜、甲冑などの武具は、美術工芸品として本物であることが何よりも重要視される。そして、本物であることの証明として鑑定書が存在するが、この「鑑定書」についてどのようなものがあるのかご存じだろうか。今回は武具の査定における鑑定書の役割や種類、有無での価格差などを調査していく。
Japanese Armour (甲冑) / junyaogura
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「鑑定書」は武具の査定において重要なポイント
日本刀や兜、甲冑などの武具の買取依頼を行う上で、品物と同じぐらいの重要性があるのが「鑑定書」である。鑑定書は、機能として、その品物が本物であるかどうかを証明するための物であり、鑑定書があることによって、査定時に品物が本物であると判断できる。もし鑑定書がない場合、その武具が本物である根拠がないに等しくなってしまう。
武具や付属品などに記されている銘などから真がんを判断できるが、やはり鑑定書付きの方が根拠としては非常に有効である。鑑定書は、美術工芸品としての武具の歴史的背景や真がんを明らかにし、保証できる客観的な書類と定義できるだろう。
武具の価値や真がんを判断する上で、最も有効な根拠となりうるのが「鑑定書」である。当然ながら、鑑定書の有無によって、査定金額が変わってくる。日本刀や兜、甲冑などの買取依頼を検討している場合には、品物だけではなく、鑑定書などの書類も併せて確認しておきたいところだ。
鑑定書にも種類がある
武具の鑑定書について疑問が残るのは、「では、一体鑑定書はどこで発行してもらえるのか」である。鑑定書が武具の真がんを客観的に判断する書類であるならば、それを発行している機関などが存在しているはずだ。
実は、鑑定書と一口にいっても、個人が発行しているものもあれば、機関が発行しているものまでさまざまである。発行者によって、鑑定書の信頼度にも影響を及ぼすことが考えられる。よくわからない個人の鑑定士によって発行された鑑定書よりも、正式な機関から発行される鑑定書の方がより高い信頼を得られるだろう。
このように鑑定書にもいろいろな種類があることが伺える。ここでは、日本刀の鑑定書を発行している機関について紹介していこう。
公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」は、刀剣類や刀装、刀装具などの保存を目的とした財団であり、昭和23年に文部大臣の認可によって設立された背景を持つ由緒ある機関だ。主に、刀剣類の鑑定や指定、台帳の作成を行っており、「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」の発行する鑑定書は、非常に信頼度の高いものとして認識されている。
そのため「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」が発行した鑑定書を持っていれば、査定においては、まず本物であると判断されるだろう。 実質的に日本で最も信頼度の高い鑑定書を発行している機関といえるので、刀剣類を保管している場合には、鑑定書を確認してみるといいだろう。
NPO法人 日本刀剣保存会
「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」以外にも鑑定書を発行している機関は存在している。「NPO法人 日本刀剣保存会」は、日本刀などの文化遺産の継承に貢献するための団体で、鑑定書の発行も行っている。7名の審査員と2名の審査員補による鑑定を行っており、「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」ほどではないが、信頼度のある鑑定書を発行している。
個人が発行する鑑定書もある
「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」「NPO法人 日本刀剣保存会」などの公式機関が発行する鑑定書がある一方で、個人の鑑定士によって発行される鑑定書も存在する。これに関しては、鑑定士の実績や実力などが信頼度に大きく反映される。ただ、よほど高名で評判の良い鑑定士でもない限りは、鑑定書としての価値は低く見積もられる可能性がある。やはり鑑定書の信頼度としては「機関>個人」というのが一般的な認識である。
また、中には、詐欺師のような鑑定士も存在しており、価値のない武具などを高値で購入させ、鑑定書を発行するという可能性も考えられるため、できることなら公式機関に鑑定書の発行を依頼するのがベストといえるだろう。
鑑定書を発行するための鑑定はどのような方法で行われているのか
鑑定書の重要性や鑑定書の種類などについて理解していったが、次は鑑定書を発行する上で、行われる鑑定はどのような方法で行われているかについてまとめていく。品物のどういった部分を鑑定しているのかを知ることで、高価買取のヒントになるだろう。ここでは主に日本刀の鑑定方法についてまとめていく。
刀剣の作者について
刀剣は誰が作ったのかというのが非常に重要視される。高名な作者や由緒ある流派が制作した品物であれば、当然高い価値を持つことになる。鑑定においては、要するに誰が作ったのかというのを明らかにすることが含まれている。刀剣の作者を明らかにすること=刀剣の価値を明らかにすることにつながるのである。
銘による判断
刀剣の銘の有無によっても鑑定の方法が異なるといえます。在銘である場合、記されている銘と、その流派や作者の作風が品物と一致しているか、銘が表す時代の作柄であるかを判断する。銘がない場合には、日本刀の時代を想定し、刃紋などを確認することによって、作者や流派を推定していく。刀剣の場合、さまざまな手掛かりによって真がんを判断していくことが伺える。
刀装など
鑑定書を発行するための鑑定作業には、主にこのようなポイントを見て行われる。刀剣類やその他の武具の買取を検討している方は、高価買取の参考になるだろう。
鑑定書にもランクが存在する
日本刀や兜、甲冑などの武具には、当然ながらランクが存在する。「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」が発行している鑑定書では、日本刀は4つのランクに分けられている。それぞれ指定の審査基準をクリアしたうえで、認定を受けることができる。ランクの高い鑑定書を有している日本刀は高価買取がかなり期待できるだろう。では、日本刀の鑑定書による4つのランクを紹介していく。
保存
江戸時代以前に制作されたもので銘が正しいと判断された品物や、南北朝時代以前の著名な刀工による銘が入っているものが認定される。もし無銘であっても、時代などが特定でき、鑑賞が可能な物であれば、「保存」の認定を受けることができる。
特別保存
保存刀剣と認められている品物の中でも、保存状態がよく、出来の優れているものが認定される。
重要刀剣
特別保存刀剣の中で、平安時代~江戸時代に制作された日本刀であり、保存状態の良さや出来が特に優れているなどの項目をクリアし、国認定の重要美術品に相応しい質を有しているものが認定される。
特別重要刀剣
重要刀剣の中でも、特に保存状態に優れており、出来栄えが特別な物が認定される。
日本刀には、上記の4つのランクが存在しており、ランクが異なれば当然査定価格は異なるだろう。そして、鑑定書の有無によって、査定価格に差が生じてしまうことについてもおおかた予想ができる。「特別保存刀剣」と認められていた日本刀でも、鑑定書がなければ、それを客観的に証明することが困難になる。
そうなれば、買取価格も大きく変わってくる。鑑定書の重要性というものが、あらゆる角度から理解できるだろう。何ら証明を得ていない刀剣を数百万円で買取るといったようなリスクを取る業者は少ないと考えられる。みんな偽物をつかまされたくはないのだ。
武具の買取における鑑定書の有無による買取価格差は?
以上のことを踏まえながら、武具の買取における鑑定書の有無による買取価格差について考えていこう。具体的な価格差については、あらゆる要素によって買取価格が決まるジャンルでもあるため、明らかにすることは困難ではあるが、想定することは可能だ。
鑑定書がある場合
鑑定書は確かに重要なものである。品物を客観的に証明するために、これほど効力を有するものはない。ただ、重要なのは鑑定書があるかどうか、だけではなく、その品物が本物であるかどうかだ。鑑定書は品物の時代や作者を客観的に証明するための要素の1つであり、それ以外にも、特定する方法は存在する。例えば、品物に「銘」が入っている場合、作者を特定できる、刃紋を見ることで、流派や時代の作風を特定できる。そのため、武具が客観的に本物であることを証明する要素を備えているのであれば、品物の価値は損なわれないのではないのだろうか。
鑑定書がない場合
現実的には、鑑定書のない品物には贋作が数多く流通するなど信頼度の問題がある。いくら銘が入って、作風などに統一性があったとしても精巧に作られた贋作であるという可能性は十分あり得る。
結論としては、鑑定書の有無によって、買取価格の差は生まれるといっていいだろう。また、買取業者の方針によっても異なるといえる。鑑定書の無い刀剣の買取を受け付けないという業者も存在する上に、鑑定書の有無によって評価額に差が生まれると明言している場合もある。もし鑑定書がない武具の買取を検討している場合には、売却前に鑑定書を取得しておくことを推奨する。
鑑定書の取得方法について
鑑定書は武具を売却する上で、重要な物である。品物を客観的に証明する上で、最も有効な物でもあるため、鑑定書の有無によって買取価格に差が生まれることはやむを得ない。そのため、武具の買取を検討している人は、買取依頼前に鑑定書を取得しておくべきだ。
公益財団法人日本美術刀剣保存協会 審査の流れ
実は、鑑定書の取得は意外に簡単に行える。「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」での鑑定書の取得、審査については下記サイトから確認できる。具体的な内容としては、まず申請用紙をダウンロードし、必要事項を記入する。窓口か郵送のいずれかの方法によって申請を行う。申請時には、「申請用紙」「審査物件」「登録証原本」「過去の審査で合格となっている場合、証書の原本」を用意する。所定の審査を経て、審査結果通知書が発送される。後日、鑑定書として有効となる証書が送られて審査が完了となる。
https://www.touken.or.jp/shinsa/flow.html公益財団法人日本美術刀剣保存協会 審査料
審査には指定の料金がかかる。日本刀のランクが高い審査ほど、審査料は高くなる。価格表については以下のURLを参照して欲しい。
https://www.touken.or.jp/shinsa/fee.html武具の買取前に鑑定書の有無を確認しよう
結論として、武具の高価買取を狙うのであれば、鑑定書は必須といえる。
鑑定書を取得しておく
武具の買取を検討しているのであれば、事前に鑑定書の有無を確認しておくべきだ。もし、鑑定書がない場合、適切な機関から鑑定書を取得したうえで、査定依頼を出したほうが買取価格は高くなる。買取業者は、武具を買取ったのちに、再販売をして利益を得ているわけで、その中で「鑑定書付き」と記されている商品の方が売れやすいのは当然である。武具を購入する側の気持ちになってみてもわかるように、やはり鑑定書のお墨付きがついている方が、安心して購入できるものだ。そういった観点からも鑑定書の有無は買取価格に影響を及ぼすことは大いに考えられる。
正式な機関から発行された鑑定書であるか
鑑定書についても、どの機関が発行した鑑定書であるかという点も確認した方が良い。鑑定書の発行機関によっても、信頼度が異なるため、よくわからない個人などが発行した鑑定書は、そこまでの価値を持たないといえるだろう。
武具の買取を考えている人は、このような点を留意して、査定依頼をすれば、満足のいく買取を実現できるだろう。
まとめ
武具の買取における鑑定書の重要性についてまとめていった。やはり大量生産品とは異なり、品物単体だけでは、本物であるかどうかの判断をするのは、非常に難しくなることが考えられる。鑑定書によって、客観的な証拠を提示できるというのは、査定に大きく影響することがわかる。武具の買取を考えている人は、品物だけではなく、鑑定書の存在も気に留めておくといいだろう。