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ヤフオクが11月8日にガイドラインを変更
11月8日Yahoo JAPANが運営する国内最大手のオークションサイト「ヤフオク」が転売に関するガイドラインを変更しました。
「ヤフオクでは、当社が不適切と判断した商品の削除を行っておりますが、このたび、転売する目的で入手したと当社が判断するチケットを出品禁止物として明示することとしました」
これまでも事あるごとに話題に上がっていたチケット転売ですが、とくに対策は取られてきませんでした。今回、ようやくヤフオクがチケット転売に対する規制に乗り出したことになります。
これまでのヤフオク転売の実態
以前までもチケットの転売に対しては「市場原理に従って高くなるものを売って何が悪い」という声がある一方で「本当に欲しい人達が適正価格でチケットを手に入れられないのはおかしい」という声が上っていました。
特にジャニーズなどのアイドルグループなどのライブチケットは元値が約9,000円であるのに対して転売価格は10万円を超えることもしばしば。とくに人気の嵐のチケットは8,000円のチケットが1枚20万円で落札されたことがあるそうです。法外な値段でもチケットが売れることもあり、転売はどんどんエスカレートしてきていました。
ほかにもサッカーの観戦チケットやイベントなど、人気が出るチケットほど転売屋が介入して、独自のプログラムを作成し、自動で大量のチケットを買い占めた挙句にヤフオクなどに転売するのですから、一般のファンはたまったものではありません。とあるアーティストのライブでは全体の3分の1のチケットがヤフオクや転売サイトに出品されたというケースもあるほどです。
大手芸能事務所などはヤフオクに出されている転売チケットのオークションIDを通報すると該当するチケットを無効処分にして、そのチケットを改めて正規販売するという対策を取っているところもありますが、根本的な解決にはいたっていませんでした。
音楽業界からは転売に反対する声明
これに対して、音楽業界は2016年8月に「転売に反対する」という声明を発表。音楽業界4団体と100以上のアーティストが賛同して、高額チケット転売に対して異議を唱えました。チケットさえ売れれば音楽業界はとくに気にしないのではないかと思う方も多いかと思いますが、チケットの高額転売によって音楽業界も被害を受けていたのです。
CD全盛期であった1990年台から2000年台初頭まではアーティストの主な売上はCDがメインでした。それまでは、コンサートはレコードやCDの宣伝の場という位置づけで運営されており、そこまで利益を出さなくても良かったのです。しかし、インターネットの普及に伴い、YouTubeや音楽配信サービスなどがメインになってくると、ライブでの売上がCDの売上を超えてくるようになりました。CDが売れないとなればライブでの収入を上げないとアーティストは活動を続けていくことができません。アーティストにとってはいかにライブで収益をあげるかが重要になってきたのです。
ライブではアーティストの関連グッズも多く売られており、ライブの売上に貢献しています。しかし、転売チケットを購入したお客さんはチケット購入だけで数万〜数十万円のお金を使ってしまっていて、グッズを購入するだけの予算が残っていません。本来、ライブに来てお金を落としてくれるお客さんの資金を必要以上に奪ってしまうチケット転売は音楽業界やアーティストにとっても喜ばしいことではなかったのです。
どうやって判断するのかという問題も
しかし、実際問題としてどのように「転売目的のチケット」を見分けるのかというのは難しい問題です。ヤフオクからは「公表すると、基準をかいくぐった出品を誘発する恐れがあるため非公開」ということでその方法は公開されていません。
2017年12月現在でもガイドラインを変更してから約一ヶ月が経過しているにもかかわらず、ヤフオクには多くの転売チケットが出品されているのが確認できています。ネットではこのような声も聞かれていることからも、本格的に対応が入るのは「まだ先」だと考えられます。
ヤフオク最近チケット高額転売禁止にするって言ってはいたけど実際規制かかってるんですかね
— でぃの (@dino_jpn) 2017年12月7日
チケット転売サイト「チケットキャンプ」が営業停止へ
こうした流れの中、チケット転売サイト大手の「チケットキャンプ」が営業停止に追い込まれました。チケット転売の場としては「ヤフオク」も類似サイトの「チケット流通センター」などもあったのに、なぜ「チケットキャンプ」だけ営業停止になったのか。
もともと「ヤフオク」はチケット専業でやっていたわけではありません。「チケット流通センター」もとくに広告を打ったりして派手に活動していたわけではありませんでした。そのため、ユーザーの深層心理にも「闇取引」「裏ルート」といった後ろめたい気持ちを持ちながら利用していた経緯があります。
しかし、「チケットキャンプ」はテレビ広告で大々的にチケット転売を宣伝。チケット転売が世の中に承認されているかのようなイメージを作らせてしまうことが懸念されました。音楽業界がいち早く「チケットキャンプ」を問題視したのは当然の結果だったわけです。
チケット価格が一律の日本市場
アメリカのアーティストでは実はチケットは席の位置によって価格が異なるのは一般的です。前方と後方のチケットでは価格差に5倍〜10倍の差があるのは当たり前であるアメリカはLive NationとTicketmasterの2社がほぼ独占状態になっています。そして大資本で大規模システムを構築して最大効率で運営されています。
アメリカのイベント会社と比べると資本が小さいレコード会社はこうしたアメリカ的な売り出したできないという背景があります。さらに、アーティストとしても高額なチケットではなく、子どもでも少し頑張れば手に入る価格帯に設定して、多くの人に足を運んでもらいたいという気持ちがあり、チケットは一律になっているという背景があります。
アーティストの人気が上がれば上がるほど、市場に出されるライブチケットの価値は上っていきます。どんどん手に入らなくなっていくにつれてプレミアがついていき、価値が元の10倍や20倍になってしまうのです。とはいえ、アーティストがライブ数を増やすということも難しいとされています。なぜなら、アーティストも生身の人間ですから、全身全霊を込めるライブを毎日のように公演するのは現実的に不可能ということです。
アメリカのエンターテイメント業界の興行チケットは一次市場(正規販売)が2兆円、二次市場(転売などの二次流通)が6000億円といわれています。これはスポーツ業界や音楽業界が転売業者を公認することで、業界全体の成長につながっているとされています。このようなデータを見れば、日本市場も一次市場と二次市場が折り合いを付けながらお互いに共存していく道があるように思えます。いずれにせよ、従来の旧態依然とした手法では業界として先がないということは音楽業界の関係者も自覚しつつあるようです。
2020年の東京オリンピックに向けても重要な課題に
日本では2020年に東京オリンピックの開催が決定しており、チケットが入手困難になりそうな好カードや決勝戦などはチケット転売が発生する可能性は十分にあるでしょう。果たしてチケットの転売に対してエンターテイメント業界としてどのように対応していくのか、今後の動向に注目です。