中村彝(つね)は大正時代に活躍した洋画家。残念ながら結核のため37歳の若さで亡くなっているが、その短い生涯の中でさまざまな名作を生みだした。
代表作のひとつ『エロシェンコの肖像』は第2回帝展で高い評価を受けただけでなく国の重要文化財に指定され、大正時代を代表する作品としてよく知られている。この記事では中村彝の生涯や代表作の紹介や作品の買取相場・おすすめの買取業者をまとめた。
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中村彝とはどんな画家だったのか?
中村彝は明治20年茨城県生まれ。実家は男3人と女2人の5人兄弟で中村彝は末子として生まれたが、彼が10代の頃に2人の兄と1人の姉を相次いで亡くした。さらに父は中村彝の生後間もなく他界、母は彼が11歳の頃に亡くなる。彼は10代の幼いころから大切な家族との別れを余儀なくされたのである。
彼はその後たった1人残った姉と共に祖母の手で育てられた。しかし、17歳のときに祖母も亡くなり、姉が結婚したことで彼は身寄りがなくなる。中村彝自身も結核にかかり、陸軍中央幼年学校を中退して療養生活に入った。
中村彝は亡き兄の影響を受けて軍人を目指していたため、結核による中退のショックは大きなものだった。しかし陸軍幼年学校を中退した翌年の明治38年、18歳になった彼は級友の影響で絵画を描き始める。その間も結核の療養のため千葉県を転々とするが、明治42年の文展ではとうとう初入選を遂げた。
中村彝の実力は多くの関係者に注目されるようになったが、その中でも彼を経済的にバックアップしたのが新宿中村屋の相馬愛蔵夫妻だった。中村屋は21世紀も健在の食品メーカーだが、夫妻は絵画や文芸などのサロンを作り、才能ある芸術家たちの交流の場として提供していた。
中村彝が相馬夫妻の支援を経て発表した作品の中には、夫妻の子どもたちをモデルにした作品が数点あり、とりわけ長女・俊子をモデルにした作品は最も多かった。中村彝は俊子と恋愛関係にあったが、夫妻は彼の病気を理由に結婚に猛反対。結局この恋が実ることはなかった。この失恋は彼の心に大きな傷を残し、以降は中村屋を出て転々とし、最終的には下落合のアトリエで筆を取ることになる。
エロシェンコの肖像は重要文化財に指定されている
大正9年に中村彝が発表した『エロシェンコの肖像』は、当時中村屋に滞在していたロシア人の詩人ワシーリー・エロシェンコをモデルにした作品。このことからも中村屋とは結婚問題で一時疎遠になりながらも、つながりが全く途切れたわけではなかったことが伺える。『エロシェンコの肖像』は第2回帝展に出品された後国内で「明治以降に発表された肖像画の最高傑作」という最大の評価を受け、重要文化財に指定されている。
新宿区立中村彝アトリエ記念館
中村彝は大正10年から大きく体調を崩し、寝たきりの毎日が続くようになった。病気との闘いが続いたがその中でも『カルピスの包み紙のある静物』や『頭蓋骨を持てる自画像』といった名作を発表し、大正13年に37歳の若さでこの世を去った。彼の遺した作品は今もなお多くの人を引きつけ、平成25年には亡くなる年まで使用していた下落合のアトリエが復元され、「新宿区立中村彝アトリエ記念館」として彼の功績を現代に伝えている。
中村彝の作風と代表作
中村彝は37年の短い生涯の中で名作を遺している。画家としての活動は水彩スケッチから始めたが、現存している作品は油絵の具を使った洋画がほとんどだ。
彼の作品は落ちついた色あいで陰影が柔らかいものが多いが、初期の作品はレンブラントの影響を受け、後年の作品はフランスの画家ルノワールや彫刻家のロダンの影響を大きく受けていると言われている。以下に主な作品を紹介する。
エロシェンコの肖像
ロシア人の亡命詩人ワシーリー・エロシェンコをモデルにした肖像画。ワシーリー・エロシェンコは幼いころに失明し盲目となったが、イギリスにある盲学校へ旅行をしたことをきっかけに、アジアの盲学校教育への貢献に尽力した教育者でもあった。
中村彝を援助していた中村屋の相馬夫妻はエロシェンコにも支援の手を差し伸べていた。中村彝はそれが縁となり彼の肖像画を描くことになる。当時の中村彝はルノワールに傾倒していた時期で、柔らかいタッチでエロシェンコの表情や佇まいをしっかり捉えている。
この作品は「明治以降の油絵の肖像画の最高傑作」と評され、中村彝個人の代表作だけでなく、大正時代を代表する肖像画として重要文化財に指定された。2019年現在は東京国立近代美術館に所蔵されている。
カルピスの包み紙のある静物
中村彝の故郷茨城県の茨城県立美術館に所蔵されている作品。彼が亡くなる前年に完成させた静物画で、タイトルの由来は下に敷いた水玉模様の包み紙にある。これは乳酸菌飲料でおなじみの「カルピス」の瓶を包んでいた包み紙で、大正8年に販売開始されたカルピスは当時から人気があり、中村彝の好物でもあった。
彼がすでに体力の限界にあった時期に描かれたこの作品は、明るい色調ながらも張りつめた集中力を感じる作品だ。病気と戦いながらも絵画の制作に励んできた彼の姿勢が感じられる逸品である。
帽子を被る少女
中村彝が経済的に援助を受けていた相馬家の次女・千香をモデルにした作品。明治45年に発表された。彼の作品は長女の俊子をモデルにしたものが多いが、千香をモデルにした作品もあり、特に本作は中村彝のアトリエに直接飾られていたことでも知られている。
本作は彼が最期まで使用していた下落合のアトリエにも飾られていたという。大きめの帽子をかぶり、まっすぐに前を見据えた少女の肖像画。全体的に落ち着いた暗めの色を使用しているため、少女の姿がいっそう華やかだ。この作品は和歌山県にある田辺市立美術館で見ることができる。
中村彝作品の買取相場
中村彝は明治から大正期を代表する画家として有名であり、日本の近代美術史に多大な貢献をしている。そのため代表作のほとんどは美術館に所蔵されていて目にする機会も多い。その一方37歳の若さで亡くなったため、市場に出回っている作品は少ない。
市場で取引されている画集だけでも1万円~2万6千円とかなり高額なので、真作の絵画はそれ以上の高額がつくことが予想されるだろう。作品の保存状態がよければさらに価格は高くなる。もし中村彝作品の売却を検討しているなら、大切な作品が傷まないように保存状態には気をつかった方がいいだろう。
洋画を高額買取してもらうためのポイント
洋画は美術品の中でもメジャーなジャンルである。もし絵画の売却をするならリサイクルショップよりも美術品を専門に扱っている買取業者へ査定をしてもらい、それから買い取ってもらう方がいいだろう。
専門の業者は真贋を見わける専門性があるだけでなく、相場の動向に詳しいため高価買取も期待できる。このような理由から、美術品の買取はリサイクルショップよりも圧倒的に専門の買取業者がおすすめだ。
しかし、売却する絵画の保存状態が悪いと買取価格が低くなるのは当然のことだ。絵画は貴重な文化財でもあるので、適切な保存方法を理解し美しい状態で買い取ってもらおう。ここでは特に高価買取のための注意点をまとめた。
絵画全体の埃を落とす
絵画を売却するときは額縁や全体についた埃をきちんと落とすようにしよう。しかし絵画を傷つけないために水ぶきは厳禁。軽く埃をはらったり、額縁の溝を乾いた布で拭き取ったりするだけでも印象はがらりと変わる。見ために劣化がわかる場合は状態を悪化させないように触らず、そのまま査定に出そう。
作品の証明書や付属資料
絵画を購入したときに真作であることを証明するための証明書や付属資料があれば、査定のとき一緒に提出しよう。絵画も巧妙な贋作が多く作られるジャンルのため、真作であることを裏付ける資料があれば高価買取の可能性も上がる。そのため、証明書や付属資料もきちんと保管しておくことが大切だ。
おすすめ買取業者を紹介
中村彝の作品は買取強化をしている業者が多くあるが、今回はその中でも実績が高い買取業者を紹介する。ぜひ売却の参考にして欲しい。
総合美術買取センター
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
総合美術買取センターは絵画や美術品の買取を専門におこなっている買取業者。電話やホームページからのメールで無料査定をおこなっている他、LINEでも査定ができるので気軽に問い合わせしやすい。
扱っている作品も洋画・日本画・現代アートと幅広く、ホームページに記載されていない作家でも査定は可能だ。店頭買取はおこなっていないが、出張買取で対応し全国展開も幅広くおこなっているので問い合わせてみよう。
アート買取協会
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
アート買取協会はピカソやユトリロ、藤田嗣治などの巨匠の作品を扱っている買取業者。買取査定は電話・専用フォーム・LINEで対応しているが、スピード査定をモットーにしているので時間がかかりすぎる心配はない。買取も出張・宅配の他に店舗買取も対応している。洋画は有名作家を多数取り扱っているので、中村彝作品の高額査定も期待できるだろう。
秋華洞
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
秋華洞は東京・銀座に店舗を構える買取業者。重要文化財の買取実績もあり、親子3代で80年という長い歴史を誇る美術品買取専門店だ。もちろん中村彝作品にも詳しく、重要な作家として専門ページで紹介するなど買取を強化している。
査定は店頭・電話・専用フォーム・LINEで対応し、相談だけでも気軽におこなうことができる。美術品の取り扱い実績全国ナンバーワンを誇る専門店なので、納得の査定をおこなってくれるだろう。
日晃堂
買取価格
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手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
日晃堂は横浜に店舗を構える美術品・骨董品買取専門店。絵画だけでなくアンティークや甲冑などの骨董品も幅広く取り扱っている。日晃堂でも中村彝作品は重点的に買取している作家の一人で、販売ルートを独自に確立しているためしっかりとした査定が期待できる。
買取は店頭・出張・宅配の3種類から選ぶことができるのはもちろん、電話でも年末年始以外は年中無休で対応している。多くの買取実績を誇る店舗なのでまずは相談してみよう。
まとめ
中村彝は明治・大正時代を代表する画家であり今も人気が高い。レンブラントやルノワールなどの影響を受けた温かみのあるタッチ、限られた人生の中で生み出された作品は真摯な姿で多くの人に感動を与えている。
日本の近代美術史に大きな影響を与えた画家でもあるので、その作品は重みがある。中村彝の作品を売却するときは、ぜひ信頼と実績のある買取業者に査定を頼もう。