訪問販売(訪問購入)でクーリングオフが利用できるのはよく知られているが、実は訪問買取の場合でもクーリングオフは可能である。悪徳訪問買取業者による押し買いの被害が増えているので、クーリングオフについて今一度学んで財産を守ろう。
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まずはクーリング・オフ制度についてもう一度確認!
クーリングオフとは、契約後一定期間内に契約を取り消すことができる制度。主に、訪問販売などの不意打ち性のある取引で適用できる。
取引後に消費者が頭を冷やすための期間
クーリングという言葉は英語の「cool」から派生していて、「冷やす」の意味。不意打ち性のある取引だと「口車に乗せられてつい契約してしまった…」というようなケースが頻繁に起こる。そういった誤判断から消費者を守るため、クーリングオフ制度が「頭を冷やして考え直せる期間」を設け、契約を取り消せるようにしている。
クーリングオフを利用すれば損することを防げる
クーリングオフが起こった場合、取引した金銭や物品は元通りに返還される。業者側が損をしたとしても違約金や損害賠償を請求することはできない。さらに、物品の返還などに必要な費用は業者側が負担すると定められている。
訪問買取でも、クーリングオフが適用可能に!
冒頭で少し触れたように、訪問買取でもクーリングオフが利用できる。2010年頃から始まった貴金属押し買いの爆発的増加を受けて、特定商取引法が改正。それまで規定のなかった訪問買取もクーリングオフの対象になった。改正法が施工された2013年2月21日以降の訪問買取の契約について適用されている。
訪問買取のクーリングオフ期間はどのくらい?
訪問買取のクーリングオフ可能期間は、「売主が売買の申込書や契約書を受け取った日から8日以内」だ。この期間内は売主は物品の引き渡しを拒否できるし、買取業者は強引に引き渡しを要求することもできない。売主は一度冷静になるためにも、契約書と同時に物品の引き渡しを行うのは避けた方が良いだろう。
買取業者がすぐに第三者へ物品を売ってしまったら?
買取業者がクーリングオフ期間内に、売主から買い取った物品を新しい第三者の買主に売り渡してしまうケースも考えられる。
この場合、買取業者は元の売主と新しい第三者の買主の双方に、取引に関する情報を通知しなければならない。具体的には、元の売主に対して「売却先」や「売却日」を新しい第三者の買主に「売主からクーリングオフされる可能性があるということ」を知らせる。
そして、新しい第三者の買主にクーリングオフされる可能性を告げることから分かるように、元の売主は新しい第三者の買主に物品が渡った後でも、その物品に対する所有権を主張できる。そのため、原則的には返還請求をして物品を取り戻すことが可能である。
訪問買取のクーリングオフのやり方は?
訪問買取のクーリングオフをするには、売主が買取業者に対して書面で通知することが必要である。この書面を発送した時点で、クーリングオフの効果が発生する。そのため、簡単に日付の証拠が残せる「特定記録郵便」や「簡易書留」で送るのが一般的だ。
ハガキに必要情報を記載して郵送
特定記録郵便や簡易書留の場合、紙ははがきでOK。裏面には「契約年月日」「買取業者の名前・住所」「取引対象(物品)の名前」「買取金額」「契約を解除する宣言」「送付する日付」「自分(売主)の名前・住所」を記載する。すでに物品を渡している場合には、返還を要求する文言も付け加えると良いだろう。表面にはしっかりと相手に届くように、買取業者の住所と名前を記入する。
完成したはがきは郵送する前に両面をコピーして手元にコピーを残しておくと安心だ。その後、郵便局の窓口へ持っていき、特定記録郵便簡易書留で送付したい旨を告げる。手続き終了後に渡される受領証は証拠になるので、家に持ち帰って大切に保管しておこう。
内容証明郵便も利用可能
他に、より詳細に書面の内容まで証拠として残せる「内容証明郵便」を利用することも可能。内容証明郵便で送る場合は、はがきではなく普通の紙に書く必要がある。内容は簡易書留で送る場合と同じで良いですが、「1行20字以内」など細かく書式が定められているので遵守する。また、郵便局へ行く前に2枚コピーして原本と合わせて3枚を持って行こう。送付用・売主の手元に残す用・郵便局で保管する用として、郵便局に一度提出する必要があるからだ。
警察に通報した方が良いケースは?
訪問買取は、買取業者が強引に事を進めないように法律によって制限事項が設定されている。
書面の交付をされない場合はアウト
クーリングオフに関して言えば、買取業者は「クーリングオフができることを伝える書面の通知」をしなければならない。書面を交付せず無知につけこんで契約を進める業者は悪徳なので、すぐに帰ってもらおう。さらに、「クーリングオフの妨害」は禁止されている。よくある文句として「今キャンセルするとここまでの経費を負担してもらうことになる」や「違約金を請求することになる」というものがありますが、これは嘘である。そのような脅しに惑わされず、安心してクーリングオフしよう。
クーリングオフ以外も違反の場合はある
クーリングオフ以外でも「電話もなしにいきなりの訪問買取」「事前に承諾していないもののの買取」「事前に査定のみと約束したのに買取」「買取拒否後の再勧誘」は禁止されている。また、「買取業者が名前を隠すこと」「契約に必要な書面を交付しないこと」も違反である。
法律を無視した業者に困ったら、警察に通報したほうがいいケースだ。売主は手厚く保護されていることを意識して、騙されないようにしよう。
通報した場合、違反業者には業務停止命令や、悪質な場合は懲役や罰金などの罰則が下る。自分の財産を守るだけでなく、他の人への被害も未然に防ぐことに繋がるだろう。
注意!物品によっては、クーリングオフが適用できません。
クーリングオフには、例外物品が定められている。例外物品とは「2輪以外の自動車」「携帯が容易でない家電」「家具」「書籍」「有価証券」「レコード・CD・DVD・ゲームソフト類」だ。これらの物品を訪問買取で取引した場合、クーリングオフはできない。
例外物品の基準は?
例外物品は、「クーリングオフがなくても消費者側の利益を損なう恐れがないもの」や「クーリングオフを適用可能にすると流通が著しく阻害されるもの」を対象として定められた。例外物品を訪問買取してもらう際は、より慎重に選ぶようにしよう。
注意!取引形態によっては、クーリングオフが適用できません。
例外物品でなくとも、取引の方法によってはクーリングオフの対象外となる。
買取前提で売主が訪問を依頼した場合
1つは、売主側がその買取業者に売ると決めて買取のために訪問を請求した上で結んだ取引だ。事前にメールなどで査定のやり取りをして、引き渡しのために売主が訪問を頼んだケースなどが当てはまる。この場合、事前にじっくり考えることができるので、頭を冷やす期間は必要ない。ただし、実物を見て査定額が変わった場合は別の取引になるので、クーリングオフの適用可能だ。
クーリングオフがなくても損しない場合
2つめは、業者側が営業所以外で契約締結することが通例であり、クーリングオフが無くても売主側が利益を損なわない取引の場合。これに当てはまる取引形態には「引越し時の訪問買取」「御用聞き取引」「常連取引」がある。
御用聞き取引とは、店舗を持つ買取業者が家を訪問し勧誘ではなく「何か御用はありませんか」というスタンスで営業を行い、契約する取引を指す。常連取引とは、買取業者と売主の間で頻繁に取引が行われている状態での取引だ。具体的には、店舗を持つ買取業者だと「過去1年間にその売主との取引が1回以上あった」場合、店舗を持たない買取業者だと「過去1年間にその売主との取引が2回以上あった」場合は常連取引にあたる。
BtoB取引
3つめは、厨房機器やオフィス機器などのBtoB取引。BtoB取引とは、Business to Business取引のことで、企業と企業の間で交わされる取引を指す。個人であれば該当することはない。
特定商取引法改正後も、悪質な押し買いは続いています!
押し売りの買取版である「押し買い」の被害は、訪問買取にクーリングオフが適用された後も続いている。特に狙われている物品は、貴金属。価値ある貴金属をかなり少額に査定して強引に買い取っていくやり方だ。
高齢者は要注意
そして、特にターゲットにされやすいのは高齢者。押し買い被害相談の約7割が60歳以上の高齢者によるものである。
押し買い業者はある日突然訪問してくる事もあれば、「家庭であまった古着を買い取ります」などと電話がきて訪問の口実を作って来る事もある。後者であれば、実際に訪問した際に「他にアクセサリーなどはありませんか」などと事前の話にない査定を申し出るのが常套手段である。
そして、とにかくしつこく買取を迫ってくる。「あまりのしつこさに疲れ、帰ってもらうために」「長い時間をかけて査定されて断りにくくなった」という様な気持ちで買取に応じてしまう人も多いようだ。 また、亜種として「査定のために持ち帰る」といって盗んでいく手口や、高額の見積もりを出すが後日払いできちんと振り込まない手口もある。


クーリングオフの存在を忘れずに!
少しでも怪しいと思ったら話を鵜呑みにしないことが大切だ。その上でクーリングオフの存在も忘れないようにしよう。基本的に押し買い業者は売主に「クーリングオフが利用できない」と思い込ませようとする。しかし実際の所は、クーリングオフによって売主が手厚く保護されているのだ。
あなたの近くに、価値のある物品を持った高齢者はいないだろうか。もしいるのであれば、悪質な押し買いが流行している事、訪問買取でもクーリングオフが利用できる事を話しておくと良いだろう。



