日本刀は工芸品として愛されている品物の1つである。最近ではアニメなどで取り上げられたことによって、若い女性を中心に人気を博すこともあった。
そんな日本刀で特に価値が高い品物に「国宝」と呼ばれるものがある。国宝に認定される日本刀にはどのような価値があるのか、詳しい内容についてまとめていく。
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そもそも国宝って何?
国宝と聞けば、何となく価値が高そうなイメージを持つだろう。国の宝物であるのだから当然だが、そもそも国宝というものは、どういった類のものなのか。誰が認定しているのか、価値の高い物の中でもどういった位置付けにあるものなのか。意外に知っている人は少ないのではないだろうか。
そこで、まずは「国宝」と呼ばれるものについて、基本的な知識からまとめていこう。
国宝とは
日本には、文化財として貴重な価値を持つ物に対して、保護をし、国民の文化的向上を目的とした文化財保護法という法律が存在する。文化財として認定されるのは、有形・無形にとらわれずさまざまであり、よくニュースなどにも取り上げられる人間国宝も無形文化財の1つである。
もともと、文化財保護法は1949年に起きた法隆寺金堂の火災によって、法隆寺金堂壁画の焼損したことがきっかけとなり制定された。この法律によって、文化財に認定されたものに関しては、文化財保護のための活動の一部を公費で賄うことが可能になる。
文化財には種類がある
文化財の種類としては、まず有形・無形によって2つに分けられる。有形文化財は建造物、絵画、彫刻、工芸品、書籍、古文書などが該当する。日本刀の場合、工芸品として文化財に認定される。
無形文化財とは、演劇、音楽、工芸技術など無形の文化的所産において認定を受けるものである。雅楽や能楽、歌舞伎、演芸などの名手がこれに含まれる。人間国宝には、これまでさまざまな人物が認定されており、落語家では5代目柳家小さん、3代目桂米朝、10代目柳家小三治がこれまで人間国宝となった。
いろいろな形で認定されている文化財
文化財にはさまざな種類がある。衣食住、生業、信仰、年中行事などの風俗習慣、民俗芸能などに認定される「民俗文化財」。貝塚、古墳、城跡などの名勝地、動物、植物、地質鉱物などの自然の産物に認定される「記念物」。
地域における人々の生活、または生業、当該地域の風土により形成された景観地として「文化的景観。周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群に定義される伝統的建造物群」。土地に埋蔵されている状態にある「埋蔵文化財」なんていうもの存在する。
【文化財の種類】
- ・有形文化財
- ・無形文化財
- ・民俗文化財
- ・記念物
- ・伝統的建造物群
- ・埋蔵文化財
文化財にもランクが存在する
国から認定を受ける文化財の中でも、ランクが存在する。文化財として国から認定を受けた場合、通常の文化財として登録を受けるが、その中でも歴史上・芸術上の価値の高いもの、または学術的に価値の高いものは、重要文化財として認定される。
さらに、重要文化財の中でも、世界文化の見地から価値の高いもので、かつ類ない国民の宝たるものであるとして指定を受けたものは国宝として認定される。つまり、国宝とは、国が指定する文化財の中でも、そのトップに君臨する存在であることがわかる。
このランクづけは、有形・無形、問わず存在する。
- ・有形文化財→重要有形文化財→国宝
- ・無形文化財→重要無形文化財→人間国宝
国宝について、大まかなイメージができただろう。どれぐらい価値の高いものとして位置しているのか、どれだけ希少とされており、歴史的・文化的・学術的価値の高さがあるのか、想像がしやすくなるだろう。
文化財のランクは次の順序だ。
- ・文化財→重要文化財→国宝
日本刀の国宝はどれぐらいあるのか?
日本国内における国宝と呼ばれるものの位置付けについて理解することができた。そうめったに、お目にかかれるものではないことは分かるだろう。では、次に浮かんでくる疑問として、国宝に指定されている日本刀は一体どれぐらいあるのだろうかということだ。
国宝というぐらいであるから、数が少ないことはおおよそ想像できるが、具体的にどれぐらいの数の日本刀が国宝に指定されているのだろうか。国宝に認定されている日本刀の数は60あまりと言われている。ここでは、その一覧を紹介していこう。
上古〜平安時代中期
- ・金銅荘環頭大刀拵・大刀身
- ・七星剣
- ・丙子椒林剣
- ・直刀・黒漆平文大刀拵
- ・剣(無銘)
山城国
流派:栗田口派
- ・短刀 銘吉光(名物後藤藤四郎)
- ・短刀 銘吉光(名物厚藤四郎)
- ・短刀 銘吉光(福岡・個人蔵)
- ・剣 銘吉光
- ・太刀 銘久国
- ・太刀 銘則国
流派:来派
- ・太刀 銘国行
- ・太刀 銘来国俊
- ・短刀 銘来国俊 正和五年十一月日
- ・短刀 銘来国俊
- ・小太刀 銘来国俊・黒漆蛭巻太刀拵
- ・太刀 銘来孫太郎作(花押)正応五□辰八月十三日以下不明
- ・太刀 銘来国光
- ・太刀 銘来国光嘉暦二年二月日
- ・短刀 銘来国光(名物有楽来国光)
- ・短刀 銘来国次
その他
- ・太刀 銘三条(名物三日月宗近)
- ・太刀 銘定利
- ・刀 金象嵌銘長谷部国重本阿花押 黒田筑前守(名物へし切)
大和国
- ・流派:保昌・短刀 銘高市□住金吾藤貞吉 □亨二二年甲子十一月十八日(名物桑山保昌)
- ・流派:当麻・太刀 銘国行
- ・流派:手掻・太刀 銘包永
- ・流派:龍門・太刀 銘延吉
- ・流派:千手院・大太刀 銘貞治五年丙午千手院長吉
相模国
流派:相州
- ・短刀 銘国光(名物会津新藤五)
- ・短刀 銘国光(徳川慶喜が指料としていた品)
- ・短刀 銘国光(最も小振りな作)
- ・短刀 銘行光
- ・刀 金象嵌銘城和泉守所持 正宗磨上本阿(花押)
- ・刀 金象嵌銘正宗本阿(花押) 本多中務所持(名物中務正宗)
- ・刀 無銘正宗(名物観世正宗)
- ・刀 無銘正宗(名物太郎作正宗)
- ・短刀 無銘正宗(名物日向正宗)
- ・短刀 無銘正宗(名物九鬼正宗)
- ・短刀 無銘正宗(名物庖丁正宗)
- ・短刀 無銘正宗(名物庖丁正宗)
- ・短刀 無銘正宗(名物庖丁正宗)
- ・短刀 無銘貞宗(名物寺沢貞宗)
- ・短刀 無銘貞宗(名物徳善院貞宗)
- ・短刀 朱銘貞宗 本阿花押(名物伏見貞宗)
- ・刀 無銘貞宗(名物亀甲貞宗)
備前国
流派:古備前
- ・太刀 銘備前国友成造
- ・太刀 銘友成作
- ・太刀 銘備前国包平作(名物大包平)
- ・太刀 銘真恒
- ・太刀 銘信房作
- ・太刀 銘正恒(徳川美術館所蔵)
- ・太刀 銘正恒(ふくやま美術館所蔵)
- ・太刀 銘正恒(平安末期の作で個人所有)
- ・太刀 銘正恒(典型作で文化庁所蔵)
- ・太刀 銘正恒(典型作で文化庁所蔵)
流派:一文字派
- ・太刀 銘一
- ・太刀 無銘一文字(名物日光一文字)
- ・太刀 無銘一文字(山鳥毛)
- ・太刀 銘則宗
- ・太刀 銘吉房(号 岡田切)
- ・太刀 銘吉房(二尺三寸余りの長さで岡田切と同様、東京国立博物館所蔵)
- ・太刀 銘吉房(伊予西条藩主松平家を経て林原美術館所蔵)
- ・太刀 銘吉房(複数あるなかでもっとも古調、個人所有)
- ・太刀 銘吉房(別家の吉房の作とされ、ふくやま美術館所蔵)
- ・太刀 銘助真(号 日光助真・日光東照宮所蔵)
- ・太刀 銘助真
- ・太刀 銘吉平
- ・太刀 銘備前国吉岡住左近将監紀助光 南无八幡大菩薩 南无妙見大菩薩 元亨二年三月日
- ・薙刀 銘一備州吉岡住左近将監紀助光 元応二年庚申十一月日
- ・太刀 銘助包
- ・太刀 銘則房
- ・刀 無銘則房
長船派
- ・刀 金象嵌銘光忠 光徳花押 生駒讃岐守所持(生駒光忠)
- ・太刀 銘光忠
- ・刀 金象嵌銘光忠 光徳花押
- ・太刀 銘長光(大般若長光)
- ・太刀 銘長光(名物遠江長光)
- ・太刀 銘長光
- ・薙刀 銘備前国長船住人長光造
- ・太刀 銘備前国長船住左近将監長光造
- ・太刀 銘熊野三所権現長光
- ・太刀 銘備前国長船住左兵衛尉景光 作者進士三郎景政 嘉暦二二年己巳七月日
- ・短刀 銘備州長船住景光 元亨三年三月日
- ・太刀 銘備前国長船住景光 元亨二年五月日(小竜景光)
- ・太刀 銘真光
- ・太刀 銘備前国長船住近景 嘉暦二年□月日
- ・短刀 銘備州長船住長重 甲戌
- ・大太刀 銘備州長船倫光 貞治五年二月日
その他
- ・太刀 銘国宗(ふくやま美術館所蔵)
- ・太刀 銘国宗(照国神社所蔵)
- ・太刀 銘国宗(日光東照宮所蔵)
- ・太刀 銘国宗(徳川美術館所蔵)
越中国
流派:相州
- ・短刀 銘則重(号 日本一 則重)
- ・刀 無銘義弘(名物富田江)
- ・刀 金象嵌銘天正十三十二月日江本阿弥磨上之(花押) 所持稲葉勘右衛門尉(義弘作・名物稲葉江)
備中国
流派:青江
- ・太刀 銘貞次
- ・太刀 銘為次
- ・太刀 銘正恒
- ・太刀 銘康次
- ・太刀 銘守利
伯耆国
流派:古伯耆
- ・太刀 銘安綱(名物童子切安綱)
- ・太刀 銘安家
筑前国・筑後国・豊後国
流派:左文字
- ・太刀 銘筑州住左(江雪左文字)
- ・短刀 銘筑州住左
- ・短刀 銘左 筑州住(号 太閤左文字)
- ・短刀 銘筑州住行弘 観応元年八月日
流派:三池
- ・太刀 銘光世作(名物大典太)
その他
- ・太刀 銘豊後国行平作(古今伝授の太刀)
- ・大太刀 無銘伝豊後友行
以上が日本で国宝に認定された日本刀の一覧である。
日本刀は古くは古墳時代から作られていたとされており、その長い歴史の中で、現存する国宝の日本刀がこれだけある。そう考えると、これらの日本刀の価値の高さというのがイメージできるだろうか。
国宝の中でも特に貴重な天下五剣
国宝というだけでも非常に価値の高い日本刀とされているが、その中でも、さらに価値の高い名刀として知られている5本の日本刀が存在している。これらは天下五剣と称され、文化財保護法とは別個の呼び名でもあるので、5本中3本が国宝となっているが、それでも極めて価値の高い名刀である。
この天下五剣は室町時代ごろより特に名刀と呼ばれていた日本刀で、刀の出来栄えだけではなく、それにまつわる由緒や逸話も含めた稀代の名刀として知られている。国宝に興味を持ったのであれば、この天下五剣も合わせて知っておくといいだろう。
【天下五剣】
- ・国宝:三日月(みかづき)宗近
- ・国宝:童子切(どうじぎり)安綱
- ・国宝:大典太(おおでんた)光世
- ・御物※:鬼丸(おにまる)國綱
- ・重要文化財:数珠丸(じゅずまる)恒次
※御物・・・皇室の所有品、宮内庁が所蔵
国宝の日本刀はどこに保存されている?
日本刀の中でもトップクラスに希少価値が高い国宝。そんな国宝は一体どこで保管されているのだろうか。多くの国宝の場合、所蔵されているのは美術館や博物館である。その他にも、神社などに奉納されている物や文化庁が所蔵しているものもある。中には、個人が所有している国宝も存在している日本刀もある。
特に、所蔵数が多いのは、東京国立博物館である。ここでは、国宝を含めた貴重な日本刀を数多く展示しているので、気になった方は足を運んでみるといいだろう。
国宝に指定された日本刀の価格はどれぐらい?
国宝が希少かつ、歴史的・文化的・学術的に価値があるというのは、簡単に想像ができる。しかし、上を見上げたときに、どれぐらいの高さであるのかはなかなか測ることはできないのではないだろうか。
具体的に国宝の価値を知るには、やはりお金で測るのが最もわかりやすい。
国宝の日本刀の貨幣価値は?
ここでは、国宝に指定されている日本刀の貨幣価値についてまとめていこう。例えば、国宝 大包平は、1967年に文部省から6,500万円という値段で買い上げられた品物である。現在の貨幣価値に換算するとおよそ2億6,000万円といわれている。
基本的に国宝に指定されるような日本刀は一般に流通する品物ではなく、国などが買い上げることによって、具体的な値段が明らかとなるのだが、やはり国宝クラスともなると、最低でも3,000万円は下らないだろう。
さすがに個人で所有するのは困難ではあるが、こういったスケールの大きさを理解しながら、展示会などに足を運ぶとより日本刀の奥深さがわかって面白いのではないだろうか。
まとめ
国宝に指定される日本刀の希少価値や条件などについてまとめていった。漠然と名刀と言われている品物について、具体的なイメージができたのではないだろうか。
やはり国宝ともなれば、その価値は青天井である。見るだけでも相当な価値があると言えるだろう。
死ぬまでには1度は国宝と言われている日本刀を目にしたい人は、ぜひ東京国立博物館やふくやま美術館などに立ち寄ってみるのをおすすめする。
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