オフィチーネ・パネライは、1860年、ジョバンニ・パネライがイタリアのフィレンツェに開いた時計店から始まった。当初から精密機械の納入などでイタリア海軍との関係を深めていたパネライは、1936年、イタリア国防省の要請により防水時計の試作品を開発する。以来、軍用腕時計を製作することでその技術力を発展させてきた。パネライは、まさに知る人ぞ知る時計メーカーだったのだ。
しかし東西冷戦の終結という世界情勢の変化の影響もあり、パネライは方針を転換し、1993年には民間向けコレクションを発表。さらに1997年にはリシュモングループの傘下に加わり、翌年には世界の高級時計市場に参入を果たすと、軍用という出自を持ち、堅牢かつ正確さを売りにしたパネライの腕時計は、瞬く間に市場を席巻したのだった。
現在のパネライは本社こそイタリア・フィレンツェに置くものの、スイスのヌーシャテルに自社工房を持ち、ムーブメントを自製する技術力の高いマニュファクチュールとして、多くの時計ファンを魅了する時計作りを行っている。ここでは、そんなオフィチーネ・パネライの型番、いわゆるリファレンスナンバーについて、モデル名との関連性も含めて調べていくことにしよう。
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オフィチーネ・パネライの型番について
まずは、オフィチーネ・パネライのリファレンスナンバーについて、説明する。大事なこととして覚えておきたいのは、パネライの腕時計のケースの裏側にはシリアル番号や製造番号、あるいはケース番号などと言われる数種類のコードが刻印されているのだが、そのどれもがリファレンスナンバーではないのだ。
パネライのケース裏のコード
1998年以降、つまりリシュモングループ入りした後に作られた時計なら、それらの数字は以下のように並んでいるはずだ。
パネライのケース裏のコード
- OP 65××:ケースナンバーと言われるコード。アルファベット「OP」と「65」から始まる4ケタ数字で構成される。恐らくはケースの型番と思われる。
- BB×××××××:シリアル番号。「PB」で始まる場合もある。製品固有の番号であり、1つとして同じ番号はないはずであり、その数字は現在も1つずつ増え続けている。
- S 0900 2000:製造番号と言われる数字で、冒頭のアルファベットが製造年を表し、次の4ケタが順番、右側の4ケタの数字が予定製造個数を示している。つまり、0900/2000なら、2000個製造予定個数のうちの900番目に作られた製品ということだ。そして冒頭のアルファベットで、製造年が分かる。つまり1998年がAであり、99年=B、00年=Cと実に単純。つまりSは、2017年に製造された製品であるということがわかる。
再度申し上げると、これらはパネライの型番ではない。つまりモデルを特定する数値ではないので、間違えないようにしておきたい。
意外なところに書かれているパネライの型番
ではパネライの型番はどこに書かれているかというと、なんと保証書にも書かれておらず、付属の外箱に貼られていたり、ステッカーに印刷されて添付されている。他のメーカーに比べると、パネライのリファレンスナンバーの扱いはずいぶんとぞんざいだ。ケース裏に刻印される別のリファレンスがあるから、型番はそう重要ではないということなのだろうか。
いずれにしても、パネライの型番は「PAM」という英字3文字で始まる。しかもどのモデルもこれは不変だ。そこに5ケタの数字が続いて構成される。
パネライの型番の例
- ref.PAM00424:ラジオミール カリフォルニア 3デイズ アッチャイオ
- ref.PAM00610:ラジオミール 8デイズ アッチャイオ
- ref.PAM01000:ルミノール ベース ロゴ アッチャイオ
- ref.PAM00088:ルミノール GMT オートマチック アッチャイオ
「PAM」は全て共通だから、これがパネライの時計であることはすぐにわかる。一方で製品の特長を何も表していないため、パネライのリファレンスナンバーは「PAM」に続く5ケタの数字のみと言っても過言ではない。
そして、各モデルのリファレンスナンバーにシリーズや素材、色などによる法則性を見つけることは難しく、基本的には好みのモデルの型番を覚えておくのが最も手っ取り早い。
パネライの主なモデルの型番
ではここから、オフィチーネ・パネライの主要モデルのリファレンスナンバーを紹介していこう。
ラジオミール
1936年にイタリア海軍の要請により製造した、パネライにとって記念すべき最初のモデルデザインを再現したシリーズである。イタリア海軍の第1潜水隊特殊部隊工作員のために製作された時計は、高い防水性と視認性を併せ持っていた。
ちなみに「ラジオミール」とは、1916年にやはりイタリア海軍の要請によって開発した、計器や装置の文字盤を発光させるためのラジウムベースの粉末のことだ。
【ref.PAM00425】ラジオミール S.L.C. 3デイズ アッチャイオ
- ムーブメント:手巻式キャリバーP.3000
- ケース:直径47ミリスティール製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラック
- ストラップ:カーフ(ダークブラウン)
「S.L.C.」とは「Siluro a Lento Corsa」の略で、イタリア海軍特殊潜水部隊の兵士が潜水作戦の際に搭乗した低速魚雷艇を意味するという。まさに初期パネライが製作した軍用防水ウォッチへのオマージュにふさわしいレトロなダイバーズウォッチと言える。
防水機能は10気圧防水。3デイズとはパワーリザーブ3日間の自社製キャリバーP.3000の性能を意味している。レザーストラップはカーフの黒やとバッファローの黒など好みの色を選択できるのが、パネライのコレクションの大きな特徴の1つ。レザーストラップを採用する全てのモデルで選択可能だ。
【ref.PAM00388】ラジオミール ブラックシール 3デイズ オートマチック アッチャイオ
- ムーブメント:自動巻キャリバーP.9000
- ケース:直径45ミリスティール製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラック/9時位置にスモールセコンド/3時位置に日付表示
- ストラップ:アリゲーター(ブラック)
パワーリザーブ3日間の自動巻キャリバーP.9000搭載の“ブラックシール”。パワーリザーブ56時間のCOSC認定手巻式ムーブメントキャリバーOP II搭載モデルは【ref.PAM00380】。
ラジオミール 1940
「長時間の過酷な条件下でも水中で使用できる時計」。さらなる海軍からの要請のために、パネライはケースとアタッチメントを同じスティールの塊から製作する。そうして1940年に作られたモデルにヒントを得ているのが、この「ラジオミール 1940」である。クッション型ケースとラグがケースと一体化し、シリンダー型のリュウズが採用されているのが特徴だ。
【ref.PAM00513】ラジオミール 1940 オロロッソ
- ムーブメント:手巻式キャリバーP.999
- ケース:直径42ミリ18Kポリッシュレッドゴールド製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラック/9時位置にスモールセコンド
- ストラップ:アリゲーター(ダークブラウン)
搭載されるキャリバーP.999は、パネライが製造するキャリバーの中でも最も小さく、最も薄い製品。クラシックな味わいあるケースに視認性の良い文字盤が美しい。
【ref.PAM00619】ラジオミール 1940 3デイズ オートマチック チタニオ
- ムーブメント:自動巻キャリバーP.4000
- ケース:直径45ミリサテンチタン製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラウン/9時位置にスモールセコンド
- ストラップ:バッファロー(ダークブラウン)
自動巻きムーブメントとしては初めてオフセンターのマイクロローターを搭載する自動巻キャリバーP.4000を、2種類のチタン合金のケースに収めた。素材、ムーブメントは最新の技術が投入されながら、エクリュカラーの文字盤がビンテージ感を醸し出す。
ルミノール
パネライと言えば、「ルミノール」のレバー付きブリッジを思い出す人も多いだろう。巻き上げリュウズを保護し、誤動作による時刻表示のミスを未然に防ぐためのレバー付きブリッジは、深海での使用にも耐える優れた防水機能も確保していた。そして、その特徴的なリューズプロテクターの形状こそが、多くの時計ファンを魅了するデザインの一部となっている。
【ref.PAM00560】ルミノール ベース 8デイズ アッチャイオ
- ムーブメント:手巻式キャリバーP.5000
- ケース:直径44ミリポリッシュスティール製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラック
- ストラップ:カーフ(ブラック)
パワーリザーブが8日間というキャリバーP.5000を搭載する、ルミノールのベーシックモデル。ケース直径は44ミリと従来のものより小ぶりになっていて、厚さも薄めだ。ナイト表示で浮かび上がるアラビア数字のインデックス(12・3・6・9)が美しい。
【ref.PAM00104】ルミノール マリーナ オートマチック アッチャイオ
- ムーブメント:自動巻キャリバーOP III
- ケース:直径44ミリ ポリッシュスティール製クッションケース
- ケースバック:ねじ込み式スティール
- 文字盤カラー:ブラック/9時位置にスモールセコンド/3時位置に日付
- ストラップ:アリゲーター(ブラック)
パネライが1940年代から1950年代にイタリア海軍特殊潜水部隊のために製造した時計を忠実に受け継いだモデル。30気圧防水。42時間パワーリザーブの自動巻キャリバーOP IIIはCOSC認定の高性能高精度を誇るムーブメントだ。
ルミノール 1950
1950年、パネライは第2次大戦後ラジオミールで培った経験をさらに進化させ、ブリッジ型リューズプロテクター、ケースと同じ1つのスティールの塊から製作して強化したワイヤーループ式アタッチメント、クッション型ケース、フラットで幅の広いベゼルなどの特徴を備えたモデルを「ルミノール」と名付け開発した。「ルミノール 1950」はこの当時のデザインを忠実に再現したシリーズだ。元軍用という実用性の高さとクラシカルなデザインで人気も高い。
【ref.PAM00372】ルミノール 1950 3デイズ アッチャイオ
- ムーブメント:手巻式キャリバーP.3000
- ケース:直径47ミリ ポリッシュスティール製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラック
- ストラップ:カーフ(ダークブラウン)
黒の文字盤に長針と短針のみのシンプルなデザインは、1950年当時のモデルそのままの味わいが楽しめるベーシックな「ルミノール1950」。
【ref.PAM00422】ルミノール マリーナ1950 3デイズ アッチャイオ
- ムーブメント:自動巻キャリバーP.3001
- ケース:直径47ミリ ポリッシュスティール製クッションケース
- ケースバック:サファイアクリスタルのシースルー
- 文字盤カラー:ブラック/9時の位置にスモールセコンド
- ストラップ:カーフ(ダークブラウン)
9時の位置のスモールセコンドがポイントとなるモデル。3日間のパワーリザーブを持つキャリバーP.3001を搭載。このモデルはパワーリザーブ表示をケース裏のクリスタル越しに確認できる。パワーリザーブ表示が文字盤上にあるキャリバーP.3002を搭載するモデルの型番はref.PAM00423。
まとめ
オフィチーネ・パネライの腕時計には、ケース裏にケース番号やシリアル番号、そして製造番号が刻印されているが、型番=リファレンスナンバーは刻印されておらず、保証書にも書かれていない。ストラップの型番と一緒にステッカーに印刷されて外箱に貼られているか、添付されているかのどちらかである。
そして型番の構成は「PAM」で必ず始まり、5ケタの数字で構成されるシンプルなもの。パネライの型番は設定されているものの、製品の特定には別のリファレンスを使用するためか、あまり重くは用いられていない印象だった。とはいえショップでは型番表示が必ずされているところをみると、やはり人気モデルの型番を覚えておいて損はなさそうだ。
パネライの場合、リューズプロテクターのある「ルミノール」とシンプル&クラシカルな「ラジオミール」のどちらを選ぶかで好みが分かれる。ただ両者の型番に大きな違いは見られないのが悩ましいところ。なお、ルミノールの型番はオフィチーネ・パネライの公式サイト(http://www.panerai.com/ja/)に掲載されているので、こちらで確認するのがもっともわかりやすい。ビンテージや過去のモデルに関しては時計専門の買取ショップのサイトが詳しい。
