1830年にスイスで創業し、その歴史を一度も途絶えさせることなく、ずっと時計を作り続けてきた。と聞いて、ボーム&メルシエ(Baume&Mercier)の名を思い出す人は、日本ではそれほど多くはないかもしれない。しかし、れっきとしたスイスの老舗時計ブランドの1つであり、その技術力を高く評価されてきたメーカーだ。
「いかなる妥協もせず、最高品質の時計だけを作る」という信念のもとに時計を製作し、数々の栄誉ある賞も授かっている。現在の社名となったのは1920年。戦乱の世を経た1940年代、ボーム&メルシエは、美しさと実用性を兼ね備えたバングルタイプのジュエリーウォッチに代表される「マルキーズ」のシリーズを発表。大きな成功を収めた。
以来、洗練されたエレガンスとコンテンポラリーなデザインセンスを備えた数々のアイテムが、多くの時計ファンの興味を集め、現在に至っている。ここでは、そんなボーム&メルシエの型番=リファレンスナンバーとモデルの関係について、詳しく説明していこう。
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ボーム&メルシエの型番について
ボーム&メルシエのリファレンスナンバーは、5ケタの数字で構成される。公式サイトでの表記は、必ずシリーズ名に続いて数字を入れるようにしている。
<公式サイトでの型番表記の例>
- CLIFTON-10337
- CLIFTON-10338
- CLIFTON-10340
各シリーズモデルにおいては、それぞれの特徴の違いによるモデル名の使い分けは行っておらず、「CLIFTON」(クリフトン)シリーズであれば、このシリーズ名と上記の型番によって機種が判別されるようになっている。つまりは、この型番がモデル名と同義という使い方をしている。
ケース裏に型番はない
ただし、他のメーカーのように、型番がケース裏等に刻印されてはいないようだ。公式サイトでは各モデルのケースの表側と裏側をクローズアップして眺めることができるようになっているが、そこに型番=リファレンスナンバーと思われる数字は刻印されていない。公式サイトを見る限りでは、7ケタの数字がシリアルナンバーだろう。
それ以外にもリファレンスナンバーと同様の5ケタの数字が刻印されているのが見えるが、現行モデルでは「65×××」という数字構成になっていることが多い。この数字構成は、公式サイトに表記されているリファレンスナンバーとは全く異なっている。
恐らくは、型番とは別の「ケースナンバー」などと呼称されるリファレンスナンバーで、メーカー側が製品個体を判別する際に使用している番号と思われる。ショップの公式サイトを見る限り、この数字は使われていないので、当記事では取り扱わない。
ショップでの型番表記は「MOA」で始まる
ボーム&メルシエの公式サイトでのリファレンスナンバーの表記は、「シリーズモデル名-5ケタのナンバー」という形だが、各公式販売店や中古ショップでの表記は、「MOA10337」というように、「MOA」に続いて5ケタの数字を入れている。
どのシリーズモデルにおいても「MOA」から始まっているので、他のブランドの型番と区別するための、ボーム&メルシエ固有のアルファベット3文字=MOAとなっている模様だ。
新品を販売する正規販売店の中には数字のみを表記しているショップもあるが、多数派はMOA始まり。中古ショップはどこのお店でもMOAで始まる型番を使用しているので、ボーム&メルシエの中古品を探したり、お店に問い合わせたりする際には、MOAで始まる型番を使ったほうが、意思疎通がうまくできそうだ。
従って、当記事内でもボーム&メルシエの型番にはMOAをつけて表記することにしていこう。
ボーム&メルシエの型番の構造
次に、ボーム&メルシエの現行モデルのリファレンスナンバーより、その構造を調べてみた。全部で43モデルがラインナップされるクリフトンシリーズの型番を例に、説明していこう。
クリフトンシリーズの型番
クリフトン(CLIFTON)シリーズは、2013年に発表された比較的新しいコレクション。「伝統を受け継ぎながらも現代的なデザインに、高級時計ならではのクオリティの高い仕上げが施されています」と公式サイトのコメントにあるように、全体としてはシンプルな造形ながら、随所にこだわりが感じられるデザインが人気となっている。
以下、型番はシリーズ名を省略し、男女向け関係なくMOA始まりで表記する。
MOA10052/MOA10053/MOA10054
直径41ミリのスティールケース、2針+スモールセコンド、自動巻ムーブメント、レザーストラップ、クリスタルガラスのケースバックという共通項を持つリファレンスナンバー。
MOA10055/MOA10057
こちらは直径43ミリのスティールケースに、文字盤にムーンフェイズが追加され、自動巻ムーブメント、レザーストラップ、クリスタルガラスのケースバックという構成のモデル。
MOA10058/MOA10059
リファレンスナンバーは続いているが、この2つは直径39ミリでケース素材は18Kレッドゴールドとなり、シンプルな文字盤に3時に日付、自動巻きムーブメント、レザーストラップにクリスタルガラスのケースバックという仕様。
MOA10060
今度は直径が42ミリとなって素材は18Kレッドゴールド。今度は2針にスモールセコンド、自動巻ムーブメントにレザーストラップとクリスタルガラスのケースバックという仕様に。
MOA10099/MOA10100
現行モデルでは、シリーズ内においては末尾60から99に飛ぶ。こちらは直径41ミリのスティールケースに、文字盤にスモールセコンドと日付が入り、自動巻ムーブメントに加え、初のスティールブレスレット仕様となる。両者は文字盤の色違い。クリスタルガラスのケースバックは同様だ。
以下、クリフトンシリーズの型番は、ケースサイズが30ミリ前後の女性向けモデルが続く。GMTやクロノグラフといった複雑機構のモデルなども入っている。
MOA10150/MOA10151/MOA10152
こちらの型番はケース直径30ミリの女性向けに設定されたモデル。スティールケースに日付表示、自動巻ムーブメント、スティールブレスレット、クリスタルケースバックという仕様だ。
MOA10175/MOA10176
やはりケースサイズが30ミリの女性向けの型番。仕様はほぼ前項の型番モデルと共通しているが、ムーブメントがクオーツになっており、ケースバックも閉じられている。以下は、やはり男性向けの複雑機構を擁するモデルの型番が続く。
MOA10306
クリフトンシリーズの最高峰、パーペチュアルカレンダー搭載モデル。自社製自動巻ムーブメント、キャリバーVaucher 5401を搭載。月、スモールセコンド、日付、ウィークデイ、ムーンフェイズを表示する。
ケース素材は18Kレッドゴールドで、レザーストラップ、サファイアクリスタル製ケースバックといった仕様だ。20万円台から購入可能なシリーズのなか、約280万円のプライスタグをつける。
MOA10337/MOA10338/MOA10339/MOA10340/MOA10378
この型番は、「クリフトン・クラブ」という男性向け新シリーズのもの。現代の“ジェントルスポーツマン”のためにデザインされたというスポーツウォッチで、この5つのモデルは回転ベゼルが1つのアイコンとなっている。
ケースサイズは直径42ミリ。自動巻ムーブメントをスティールケースで包んだ仕様となっている。ベルトはカーフスキンストラップとラバーバンド、スティールブレスレットに分かれる型番が飛んでいる理由は不明。
MOA10342/MOA10343
1964個限定で製作されたシェルビー・コブラをイメージしたモデル。クロノグラフカウンターを備えたオートマチックムーブメントを擁し、タキメーター、デイ&デイト機能を搭載。ブラックカーフスキンストラップが付く。ケースサイズはやや大きめの44ミリ。
特に法則性は見えないボーム&メルシエの型番
ここまで、クリフトンシリーズのリファレンスナンバーを順番に見てきたが、特に法則性等は感じられず、ナンバーはモデルを区別するためにただ割り振られている印象だ。傾向があるとすれば、数値が大きくなるほど複雑機構の時計になってくると言えるが、そうとも限らない型番のモデルもあるため、注意が必要だ。
また、後述するが、他のモデルもクリフトンと同様の番号帯に割り振られており、番号によってモデルを見分けることはできない。シリーズ(コレクション)名→リファレンスナンバーという形で、好きなモデル、興味深いモデルのナンバーを記憶しておくのが、型番からモデルを判別する最良の方法と思われる。
ボーム&メルシエその他のモデルの型番
ここからは、クリフトンシリーズ以外のボーム&メルシエの型番を、コレクションごとに紹介していこう。
ハンプトンシリーズの型番
1940年代の時計にインスパイアされつつ、現代的なデザインをその特徴的なスクエアケースに盛り込んだのが、ハンプトンのシリーズ。男女に分け隔てなく使用可能なドレスウォッチとなっている。
MOA10153/MOA10154
サイズが42.6x29.2ミリのスチールケースに、アラビア数字のインデックスと日付表示のシンプルなハンプトン。ムーブメントはクォーツで、両者の違いはレザーストラップの色のみ。10万円代でボーム&メルシエの世界に入っていけるエントリーモデル。
MOA10026/MOA10027/MOA10028
四角い文字盤上にスモールセコンドとデイト表示を絶妙のデザインで収めた。自動巻ムーブメントを45×32.3ミリのスティールケースに収めた。ストラップはアリゲーター。
MOA10029/MOA10030
四角い文字盤に四角いスモールセコンドが愛らしいハンプトンのクロノグラフの型番。スティールケースのサイズは48.4×34.3ミリとやや大きめ。6時の位置に日付表示。
クラシマシリーズの型番
クラシマ(CLASSIMA)は、スタンダード、かつシンプルなデザインを基調とするスリムウォッチのシリーズ。ミニマリズムを追及した文字盤はあらゆる状況に溶け込む。
MOA08833/MOA08688/MOA8689
直径42ミリのスティールケースに自動巻ムーブメントを搭載。ホワイトオパリン仕上げの文字盤の12時位置の窓から、ライン・ギョシェ彫りを施したムーブメントを見ることができる。
MOA08833がスティールブレスレット仕様で、MOA08688と同08689がレザーストラップ仕様。末尾89が文字盤がブラック仕様という違いだ。さらにはムーブメントの性能が少し高いMOA08868というモデルもある。こちらも同じく42ミリのスティールケースでレザーストラップの仕様だ。
なお、この8000番台の型番はクラシマシリーズ内にいくつかあり、カタログ上では「クラシマ-8833」と表記されている。しかしこれをMOAで始まる型番表記をする際は、冒頭に「0」をつけ、「MOA08833」と5ケタにして表記されることが多い。少々わかりにくいが、両者は同一モデルのものを指している。
MOA10330/MOA10331
端正なデザインの美しいクロノグラフ。42ミリのスティールケースに自動巻ムーブメントを搭載。パワーリザーブは48時間で、サファイアクリスタルのケースバック、シルバー/オパリン仕上げでラインギョシェ彫りの文字盤と、機能や装飾は盛り沢山ながら、価格は36万円(税抜)とリーズナブルな設定だ。
ケープランドシリーズの型番
ケープランド(Capeland)はスポーティかつレトロチックな風合いを持つ時計を擁するコレクション。ボーム&メルシエが1948年に製作したクロノグラフにインスピレーションを得たとされる。
MOA10063/MOA10064/MOA10065/MOA10066
直径44ミリのスティールケースに、自動巻ムーブメント、キャリバーLa Joux Perret 8120を擁するクロノグラフ。タキメーター、テレメーター、デイト表示を備える。
それぞれレザーストラップかスティールブレスレットが、文字盤の色によって適切に組み合わされている。似たようなモデルに末尾61と62もあり、見た目はほとんど変わらないものの、ケースサイズが42ミリで、ムーブメントも異なる。
MOA10006/MOA10007
44ミリのスティールケースにフライバック機能を備える自社製のオートマティックムーブメント、キャリバーLa Joux-Perret 8147-2を搭載。タキメーター、テレメーター、デイト表示を特徴とし、アリゲーターストラップを合わせる。「プレゲ針」がレトロな文字盤に絶妙なアクセントとなっているクロノグラフだ。
ボーム&メルシエの型番まとめ
ここまで、ボーム&メルシエの型番について、その特徴を説明してきた。改めて言うが、このブランドの型番は、本体には刻印されていない5ケタの数字であることは覚えておいたほうがいいだろう。そして、ショップなどでは、「MOA~」とアルファベットで始まる。
数字自体には特に意味などはなく、各モデル毎にランダムに型番が割り振られている。ただし、文字盤の色違いや同じケースでストラップとブレスレットで異なるというような場合、モデルのバリエーションということで型番が続くことが多い(一方で全く異なるモデルになることもある)、などといった特徴があった。
いずれにせよ、ボーム&メルシエに欲しいと思う時計があるなら、好みのモデルの型番を覚えておけば、中古市場でも探しやすいはずだ。各モデルの型番は、公式サイト(http://www.baume-et-mercier.jp/)で確認するのが一番いいだろう。
過去のモデルも含めて探す際には、時計専門のショップが詳しいので、利用をおすすめしたい。
買取・売却する際の参考記事
