英字では「SINN」と表記し、読み方は「ジン」。1961年、ドイツ軍パイロットで飛行教官でもあったヘルムート・ジン氏が、フランクフルトでパイロット用の時計を作るために興した会社を発端とする腕時計ブランドだ。
その哲学は、『使うためだけの時計』作り。重要なのは機能性であり、実際に役立つ機能しか搭載されていない潔さが、ジン氏が経営を退いた現在でも、製品全てに息づいている。全ての時計が徹底してプロ仕様として設計され、実際に消防レスキュー部隊や対テロ特殊部隊といったホンモノのプロが使用しているという質実剛健ぶりは、ミリタリーファンをはじめとする多くの一般ユーザーから、ヘビーな時計ファンをも魅了している。
ここでは、日本でも根強い人気を誇るジンの腕時計における型番の特徴、その見方について説明していく。なおジンの型番は、日本版公式サイト(http://www.sinn-japan.jp/)に記載の現行モデルのものを参照した。
CONTENTS
こちらのページには広告パートナーが含まれる場合があります。掲載されている買取価格は公開日のみ有効で、その後の相場変動、各企業の在庫状況、実物の状態などにより変動する可能性があります。
ジンの型番の特徴
ジン腕時計の型番は、非常にシンプルで覚えやすく、それでいてファン心理をくすぐる構造になっている。
モデルナンバーで製品を識別
ジンのラインナップの中でもスタンダードな人気モデル「Instrument Chronograps」のモデルを例にとろう。こちらのコレクションには以下の10タイプのモデルがある。
- Instrument Chronograps:103 / 140 / 144 / 356 / 358 / 756 / 757 / 900 / 910 / EZM10
ジンの製品は、上記のように一部を除いて、主に3ケタの数字によるモデルナンバーで識別される。一方で上記にあるような「EZM10」のようなアルファベットが付加されるモデルナンバーや、数字4ケタのナンバーも出てくる。ただいずれにしても、後述する型番の構成は同様だ。
型番はモデルナンバー+アルファベットで構成される
ジンの製品ラインナップでは、モデルナンバーごとにバリエーションが存在し、それらが型番によって区別されることになる。たとえば、上記のモデル「103」には下記の6つのバリエーションがある。
モデル103のバリエーション
- ①103.B.AUTO
- ②103.B.SA.AUTO
- ③103.B.SA.DIAPAL
- ④103.TI.IFR
- ⑤103.TI.UTC.IFR
- ⑥103.B.SA.AUTO.E
①~⑥のように、ジンの型番はタイプナンバーに時計の特徴を示すアルファベットが付加されるのが、基本的な構造となっている。となると、内蔵するムーブメントの性能なども含めて、時計ファンは冒頭のタイプナンバーそのもので商品を選択したり比較することになるため、覚えやすいうえに、「通」っぽく型番で話すことができるので、ファン心理もくすぐられるというわけだ。
なおジンの腕時計にはいわゆるモデル名といったものは存在せず、型番がモデル名を兼ねているので、欲しいモデルがある場合には、型番を忘れずにチェックしておく必要があるだろう。
型番のアルファベットは時計の特徴を示す
上記のタイプ「103」の6つのバリエーションを見ていただきたい。それぞれの型番のアルファベットは、ピリオド毎にそれぞれ意味を持っている。
たとえば①~③の103の次の「B」は、ケース素材がステンレススティールであることを示していると思われる。④と⑤は同じ場所が「TI」となっているが、ちょうどこの2つのケース素材はチタンである。「AUTO」は自動巻ムーブメントの時計であることを示している。「SA」は風防素材にサファイアガラスを使用。「UTC」はそのものずばり、2つの時間帯を表示できる機能を有していることを意味している。
ただこのUTCの機能は、③の製品にも備わっている。さらには①~⑥の全てが自動巻ムーブメントだが、全てに「AUTO」と記されているわけではない。このように、表示される素材や機能は製品によって、またその必要性によって選別されていると考えられる。
③の場合には、「DIAPAL」機能が搭載されていることが前面に表記されている。「DIAPAL」は、ジンが独自に開発して特許を取得した技術で、潤滑油なしでも摩擦の起こらない素材を組み合わせてムーブメントの耐久性を高めるとともに、オーバーホールのインターバルを通常の約二倍へと伸ばすことが可能となった画期的なシステムのことだ。
一方⑤の「IFR」とは、航空飛行における「計器飛行方式」のことで、この機能を持つ時計はコックピット内の時間計測機器が故障かその疑いがあるときに代替できるものとして、公的な認証機関によって認証されていることを意味している。まさにプロユースの証が型番に表現されているというわけだ。そしてこのように、型番に表示される機能は製品によってさまざまなパターンがあるということになる。
ジン腕時計のタイプナンバーと型番
ここでは、上記で紹介したタイプ「103」のバリエーションを除いたジンの腕時計の各タイプのバリエーションを紹介していこう。
「Instrument Chronograps」の型番
定番クロノグラフのモデル群。ジンの腕時計のラインナップの中で最もスタンダードで高い人気を誇る。
▶140:140.ST / 140.ST.S
ジンの伝説的スペース・クロノグラフ140を再設計したクロノグラフ。ETA社の傑作ムーブメント「バルジュー7750」をベースにジン社が新設計したキャリバーSZ01を搭載する。
▶144:144.ST.SA
時速計測のタキメーターや脈拍を測ることができるパルスメーターを備えた高機能クロノグラフ。
▶356:356.FLIEGER / 356.SA.GR / 356.SA.FLIEGER.Ⅲ
「FLIEGER」とはドイツ語でパイロットを意味する。直径38.5mmのコンパクトなケースが特徴のパイロットクロノグラフの原点。
▶358:358.SA.FLIEGER
人気シリーズ「356」の直径を42mmに大型化。
▶756:756 / 756.DIAPAL
極限状態での視認性を確保するため、瞬時に読み取ることができるようデザインされたクロノグラフ。ケースにテギメント加工(ジンが独自に開発した窒素を使用した浸炭加工技術)を施すことにより高硬度を実現。タイプナンバーそのままの型番のモデルも。
▶757:757.UTC / 757.S / 757.S.UTC / 757
756シリーズに機能を付加し、外観も一新したクロノグラフ。
▶900:900.FLIEGER / 900.FLIEGER.S / 900.DIAPAL
厳密な技術スタンダードに基づいて作られた航空用として最適なモデル。テギメント加工が施され、80,000A/mという高い防磁性能も備えている。
▶910:910.JUB
ブランド創立55周年を記念した300本限定クロノグラフ。スプリットセコンド機能に加え、コラムホイールが特徴的なモデル。
▶EZM10:EZM 10.TESTAF
SZ01を搭載した最強のパイロットクロノグラフ。「EZM 10.TESTAF」は、“パイロットウォッチ標準規格(TESTAF)”に基づいてテストされ認定された最初のモデル。
「Instrument Watches」の型番
基本的に3針時計のラインナップがこのコレクションに属する。
▶104:104.ST.SA / 104.ST.SA.A / 104.ST.SA.IW
パイロットクロノグラフ103シリーズの三針タイプ。どれも性能は同じだが、「104.ST.SA 」を基準として、「A」はインデックスがアラビア数字に変わり、「IW」は文字盤カラーとインデックスが黒から白に変化。
▶212:212.KSK
ドイツ特殊部隊協会がジンとコラボレーションして誕生した特殊任務仕様モデルK212の市販版として発表された300本限定モデル。
▶240:240.ST / 240.ST.GZ
スペースクロノグラフ「140」の三針タイプに位置付けられるモデル。「GZ」はタイドメーター搭載。
▶556:556.M / 556.A / 556.IM / 556.I.Perlmutt.W / 556.JUB
高い品質とコストパフォーマンスを誇るモデル。
▶856:856 / 856.S / 856.B / 856.B.S / 856.B-Uhr
コックピットクロックの視認性を確保したモデル656にUTC機能を付加し、さらにテギメント加工されたステンレスケースを使用。
▶857:857 / 857.B / 857.B.S / 857.UTC.VFR
24時間表示式のUTC機能を搭載した本格パイロットウォッチ。
▶EZM3.F
両方向回転のカウントダウン式パイロットベゼルを備えたパイロットウォッチ。
▶EZM7:EZM7 / EZM7.S
特殊部隊のために開発した出撃用計測器EZM(アインザッツ・ツァイト・メッサー)シリーズのモデル。
▶EZM9:EZM9.TESTAF
ドイツのパイロットウォッチの技術規格TESTAFに基づき、アーヘン応用科学大学によりテストされ認定されたモデル。
▶EZM12
ドクターヘリの救命医師のために開発されたモデルで、カウントアップ式のインナーベゼルとカウントダウン式の回転ベゼルを搭載。
「Driver / Navigation Chronograps」の型番
パイロットやナビゲーターあるいはドライバーが本当に使用する機能が盛り込まれた計時機器のモデル群。本格的なプロフェッショナルユースに耐えうる仕様が装備されている。
▶903:903.ST.AUTO.S / 903.ST.AUTO / 903.ST.AUTO.B.E
パイロット、ナビゲーター、コミューターのための機能が盛り込まれた計時機器。インナーベゼルに刻まれているスケールで速度、距離、燃料消費、上昇および下降速度、マイルやキロへの換算ができる回転計算尺を搭載。
▶956:956.KLASSIK
クラシックラリー・オートパイロットやナビゲーターのために開発されたモデル。ラリーにとって重要な時速30km/hまでの計測を可能にしたダイヤル外周の二重タキメーターが搭載される。
▶917:917 / 917.GR
モデル956同様にラリー・パイロットやナビゲーターのために開発されたモデル。よりクラシックなデザインが特徴。
Driving Watchesの型番
その名のとおり、ダイバーのための本格機能が装備されたモデル群。
モデルナンバーにある「EZM」とは、ドイツ語の「アインザッツ・ツァイト・メッサー」の略。アインザッツは危険を冒す出撃・出動を意味し、ツァイトは時刻、メッサーは計測機器を意味する。つまり「EZM」とは、出撃用計測機器を意味している。ヒューマンエラーを徹底的に排除したデザインと機能性を特徴とする。
▶EZM:EZM3 / EZM13 / EZM 1.1
「EZM3」はドイツ警察特殊部隊の制式時計として開発されたダイバーズウォッチ。「EZM13」はプロフェッショナル・ダイビングのためにデザインされた機械式腕時計。「EZM1」 は関税局中央支援グループの特殊部隊(ZUZ)のために開発されたモデル。
▶T1:T1(EZM14) / T1.B
Tシリーズはチタン製ケースのダイバーズウォッチシリーズ。直径45mmの大型ケースを持つT1は、「EZM14」というミッションタイマーでもあり、-45℃から+80℃までの気温での精度保証がされている。
▶T2:T2(EZM15) / T2.B
プロのダイバーにとって最も重要な安全性を備えたダイバーズウォッチ。「EZM15」のミッションタイマーでもある。
▶U1:U1 / U1.SDR / U1.Camouflage / U1.S / U1.S.E
Uシリーズはケース素材にドイツ最新鋭の潜水艦Uボートの鋼鉄を使用したシリーズ。こちらは、時・分・秒と日付表示のみの基本モデル。1,000mの耐圧テストをクリアしているプロフェッショナルダイバーズウォッチ。
▶U2:U2 / U2.SDR / U2.S
「U1」に第二時間帯を表示できるデュアルタイム機能を搭載したモデル。
▶UX:UX / UX.SDR / UX.GSG9 / UX.SDR.GSG9 / UX.S.GSG9
出撃用計測機器「EZM2」の進化形。シリコンオイルを封入するジン社独自のハイドロ・テクニックにより5,000mという高い防水性能を誇る。
▶U1000:U1000 / U1000.SDR / U1000.S
Uシリーズにクロノグラフを装備。
▶U200:U200 / U200.SDR
Uシリーズのケース直径を37mmにサイズダウンしたモデル。
▶U212
「EZM16」というミッションタイマーに位置づけ。ジンのダイバーズモデルの中で直径47mmという最大サイズのケース。
その他のシリーズの型番
ここまで紹介してきたモデル以外の型番を、シリーズごとに紹介する。
▶6000:6000 / 6060 / 456 / 6052 / 6068 / 6099
「Financial Watches」のシリーズモデル。フランクフルト経済振興協会の要請を受けて開発されたシリーズで、金融関係者のための計測機器として、ファイナンシャル・ウォッチと称される。
▶Meisterbund:6200.Meisterbund.Ⅰ/ 6200.WG.Meisterbund.Ⅰ
「Classic Masterpieces」のシリーズ。ドレスデン時計工房(UWD)、SUG(ザクセン時計技術社グラスヒュッテ)、そしてジンの3社がドイツメイドにこだわって製作した。
▶JAPAN Limited:EZM3.J / 856.B.STN / 556.GREEN / 356.ISETAN
日本限定モデルの型番。「ISETAN」はその名の通り伊勢丹新宿店限定50本というレアモデル。
まとめ
ジンの腕時計の型番は、なによりもその冒頭の3ケタの数字=モデルナンバーが大切であり、機能や性能はこのモデルナンバーによって識別される。
たとえばスタンダードなクロノグラフが欲しければ「103」や「140」、プロ仕様の時計がよいなら「EZM」のシリーズというように、モデルナンバーこそがジンの製品を選ぶうえでの大きな手がかりとなる。そのためには、各モデルナンバーの機能を調べる必要があるが、その全てに意味のあるメカニズムや装備を確認していく作業さえ楽しくなってしまうのが、ジンの腕時計を選ぶうえでの最大の特徴と言えるだろう。
当記事では断片的に各モデルの機能を紹介したが、ぜひ各型番ごとに機能や性能を詳しく調べつつ、目的に応じた腕時計を選んでいただきたい。


ブログカードがロードできませんでした。