1837年に始まったとされるエルメス(Hermes)の歴史の中で、腕時計に関わるようになったのは1920年代から。時計の革ベルトの製作から始まり、当時のスイスの一流時計ブランドと協力しながら製品を発表してきた。1978年にはスイスに時計専門の会社を設立。本格的に時計製作に取り組むようになると、以降は独立したマニュファクチュールとして発展を遂げ、現在に至っている。
エルメスはフランスの会社だが、時計製品はスイスメイドである。最近ではアップルとのコラボレーションによる「アップルウォッチ」を発表したことでも話題を呼んだ。ここでは、そのエルメスの腕時計の型番(=リファレンスナンバー)におけるモデル名との関連や製品の特定の仕方について説明していこう。
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エルメス腕時計の型番について
まずはエルメスの腕時計の現行モデルの型番について、代表的なモデルをピックアップして、その特徴を確認していこう。エルメスの腕時計の型番は、エルメスの日本版公式サイトに記載のものを参照している。
クリッパー PM 24mm
- (1)Ref. W035318WW00
- (2)Ref. W035320WW00
クリッパーはエルメス腕時計のアイコン的存在である。1981年の誕生以来続いている息の長いモデルだ。(1)(2)ともに直径24ミリのケースでムーブメントはクォーツ。
(1)はステンレススティールケース&ブレスレットでシルバーカラー文字盤のスタンダードなタイプである。(2)はステンレススティールに加えてイエローゴールドがベゼルやブレスレットの一部で使用されていて、文字盤もホワイトMOP(マザーオブパール)にクラスアップしたモデルである。
クリッパークロノ TGM 44mm
- Ref. W035437WW00
こちらは男性向けの直径44ミリのケースサイズのクロノグラフである。機械式自動巻ムーブメントを使用し、ケース素材はステンレススティールに加えてチタンも使用している。ケース裏の半分がスケルトン仕様となっていて、レザーストラップの色はオレンジだ。
Hウォッチ PM 21x21mm
- (1)Ref. W044898WW00:白
- (2)Ref. W036710WW00:イリス
- (3)Ref. W036717WW00:ナチュラル(ドゥブルトゥール・レザーストラップ GM)
- (4)Ref. W036732WW00:ゴールド
- (5)Ref. W036704WW00:黒
- (6)Ref. W036709WW00:エトゥーブ
- (7)Ref. W036736WW00:オレンジ
- (8)Ref. W036702WW00:ゴールド
- (9)Ref. W036700WW00:白
「H」をかたどったケースデザインが特徴的なHウォッチも女性に大人気のモデルだ。
(1)のケース素材がホワイトラッカーのステンレススティール。(4)がゴールドプレーテッドのケースで、他はステンレススティールケース。(1)のみ文字盤がホワイトラッカー仕様だが、他は同じ模様の入った白で同様。クォーツ使用でケースサイズは全て共通。
異なるのは型番の右に記した革バンドの色だ。型番を見ると(1)以外は全て6、7ケタ目のみが変動しているのがわかる。(3)の革バンドは重ねて腕に巻く長いタイプ(ドゥブルトゥール)だが、型番の変化はやはり6ケタ目と7ケタ目だけだった。
アップルウォッチ エルメス シンプルトゥール 42mm
- (1)Ref. H0000331 3400:フォーブ
- (2)Ref. H0000311 7600:インディゴ
- (3)Ref. H0000381 7800:マリン(エプロン・ドールプリント)
アップルウォッチの型番は、他の腕時計の型番の構造とは明らかに異なっている。38ミリのケースのモデルも含め、型番の冒頭は「H」になり、冒頭4ケタ数字は全て「0」。末尾3ケタが変化している。
(1)と(2)は革バンドの種類と色が異なるのみだが、Hに連なる末尾3ケタと後ろの4ケタの数字の両者が変化する。基本的には、後ろの4ケタの数字が革バンドの種類や色を示していると思われる。
ちなみに38ミリサイズのHに連なる末尾3ケタは「371」である。42ミリには他に「341」、「321」、38ミリサイズでドゥブルトゥールのレザーストラップのモデルが「351」と「361」がある。全体としてケース自体の違いはサイズが違うのみだが、革バンドの種類ごとにモデルナンバーが変わるのが特徴と言えそうだ。
ケープコッド PM 23x23mm
- (1)Ref. W043588WW00:ブルー・パン
- (2)Ref. W043681WW00:カプシーヌ
- (3)Ref. W043765WW00:フランボワーズ
- (4)Ref. W040242WW00:オレンジ
- (5)Ref. W040246WW00:エトゥープ
- (6)Ref. W040248WW00:ブルー・エレクトリック
- (7)Ref. W040253WW00:イリス
- (8)Ref. W040272WW00:黒
- (9)Ref. W043620WW00:フランボワーズ
- (10)Ref. W043623WW00:エトゥープ
長方形に正方形を重ねたケースとインデックスは、シェーヌ・ダンクル(錨の鎖)に着想を得て生まれたと言われるケープコッドのシリーズである。やはり右側に革バンドの色名を記している。
全モデルのケース素材はステンレススティールケースだが、(8)(9)(10)がホワイトMOP製文字盤に、ケースにはダイヤモンド付き。また、(1)(2)(3)(5)(9)(10)がドゥブルトゥールのレザーストラップで、それ以外が通常の長さだ。
しかし、これらの特徴の違いに各型番は反映されていない。構造として少々わかりにくい。たとえば(1)と(2)の違いは革バンドの色のみだが、数字冒頭4ケタは「0435」と「0436」で異なる。一方(4)〜(8)まで「0402」は共通だが、(5)のバンドのみドゥブルトゥールで㉀は文字盤が異なりダイヤモンドの装飾まで加わっている。
つまり、エルメスの型番は、時計の機能や素材の違いでつけられているわけではないということだろう。
エルメスの型番の特徴
前章でエルメスの人気モデルから各型番をピックアップしてきた結果、ある程度の特徴はつかむことができた。
エルメスの時計はの型番は「W」で始まる
まず必ず共通していたのが、スマートウォッチ(アップルウォッチ)以外のモデルの型番は全て「W」から始まるということ。一方アップルウォッチの型番は「H」で始まり、さらにいまのところ「H」に続く数字4ケタは「0000」で共通である。
エルメスの時計の型番の末尾4ケタは「WW00」
2017年10月現在で、エルメスの日本版公式サイトに掲載されている全ての腕時計の型番の末尾4ケタは「WW00」であった。唯一文字盤の色がグレーで機械式時計の「クリッパークロノ TGM」もこの部分は変わらない。
また、自社製自動巻ムーブメントのキャリバーH1950を搭載する「スリム ドゥ エルメス」も、【Ref. W041762WW00】と変化ナシなのだ。全てが同じであるならあまり意味がないと思われるが、今後の製品展開次第で変化するモデルが出てくるのであろうか。
後述するが、ここまで紹介してきたエルメスの型番は、現在ショップで掲載されているエルメスの時計の型番と大きく違う構造となっている。商品点数も明らかに少なくなっていて、現在のエルメスウォッチは、今後の商品展開を整理・再考している過渡期にあるのではないかと考えられる。
冒頭数字4ケタが各シリーズを特定するナンバー
全体のモデル数は少ないながら、エルメスの現行の型番の最初の「W」の次の4ケタの数字が、メーカー側が各シリーズ毎にふったリファレンスナンバーであると思われる。たとえば女性向け「クリッパー」のリファレンスナンバーは「0353」。クロノグラフは「0354」になる。以下に各シリーズの4ケタのリファレンスナンバーを記しておこう。
- クリッパー:0353/0354
- ナンタケット:0441
- Hウォッチ:0378/0367/0368/0448
- ケープコッド:0435/0436/0437/0402/0413/0443
- スリム ドゥ エルメス:0417
- フォーブル マンシェット:0418
現行モデルでは、「クリッパー」を除き、各シリーズ内の4ケタのナンバー間の違いはほとんどない。「ケープゴッド」や「Hウォッチ」にはいくつかあるが、サイズの違いのみでデザインに変化はなく、文字盤の色もほとんどが白系統である。
なお、この4ケタのナンバーに続く2ケタの数字が、それぞれのモデルを特定する数字になっていると見られる。2ケタの数字は革バンドの種類や形状、材質、加工法などの細かい違いによって割り振られていると思われるが、公表されているスペックや色などからは判断できなかった。
大きく変わったエルメスの型番の構造
【HH1.210.131/UNO】。こちらはエルメスの「Hウォッチ」の30×21mmという現行モデルにはない型番だ。つまり、型落ちしたモデルということになる。
【CD6.710.230】は、機械式(自動巻)の「ケープコッド メカニカル」の型番で、こちらもすでにエルメスの公式サイトには掲載されていない。
【CP1.321.212/4967】は「クリッパー」の直径28ミリサイズの型番で、材質は【Ref.W035320WW00】と同様である。
このように、エルメスの型番の構造は、過去のモデルからは全く変わってしまっている。ショップによっては現行の新品モデルの型番の商品が入っていないお店もあり、現状の小売りの現場では、過去の形式の型番のほうがまだまだ主流となっている。
一方で、古い型番を使用しているモデルは店頭在庫で終了すると思われることから、ショップのサイトなどで気に入ったモデルを見つけたら、早めに購入しておくことをおすすめしたい。
特に人気の「Hウォッチ」や「クリッパー」は、現行モデルにはないバラエティさがあるので、多くの品数がそろうショップで探したほうが、お気に入りのモデルを見つけられるのではないだろうか。
型番を知っておくことのメリット
では、今までエルメスの腕時計の型番や特徴について紹介してきたが、ここで型番を知っておくことのメリットも紹介したい。型番は自分とは関係がない。知っていても意味がない。と思っている人もいるかもしれない。しかし、意外にも型番は知っておくだけでかなり役立つ。それどころか必要となることもある。その重要性とお得な点を下記にて見ていこう。
色々な情報を入手しやすくなる
まず言えることが、型番を知っておくだけでネットでの検索などが簡単になることである。商品名だけであると正直曖昧な情報での検索となってしまう。例えばカタカナかそうでないかなどでも異なってくる。しかし、型番であればその番号の商品は一つしか存在せず、検索でかなり絞ることができる。
そのため、商品の情報、例えば買取相場などの調査などでも型番はかなり役立つと言えるだろう。
また、近年はSNSなども普及している。そのため、型番を把握してSNSなどでハッシュタグ「♯」などを使って検索すれば自分の欲しい商品の個人的な素人の口コミなどを見ることができる。
修理に出すときなどにも便利
また、修理に出したりする際も型番を知っておくと便利だろう。型番を知っておけば事前にいくらくらいかかるのか調べることもできるだろう。正確に修理業者に型番を伝えることで正しい金額で正確に修理してもらえる可能性が上がると言える。
中古で売るときに必要不可欠
また、中古で売るときには正直必要不可欠な情報と言える。
中古買取業者で査定に出す場合、特にオンラインなどで事前に調べたい場合には型番を知っているとスムーズに行うことができるだろう。また、買取業者に実際に持っていく場合も型番を知っていることを伝えるだけで知識があるとみなされ少しでも値段を下げられるのを防ぐことができるとも言える。
さらに、個人間のやり取りとなるネットオークションやフリマアプリ、メルカリなどで売る場合は要注意である。モデル名と写真だけでは正直情報が少ない。そこに加えて、型番はもちろん、自分の商品の状態(動作・傷・使用年数)なども投稿に記載することで信憑性を得ることができ、顧客を集めることができる。
また、真剣にその商品が欲しいと思っている人であれば、型番で検索する可能性も高い。そのため、そういったエルメスの腕時計の価値を知っている人に買い取ってもらうためにもしっかりと型番とそのほかの詳細を記載しておくことが重要だ。
中古で買うときに重要
また、売るときと同様に、買う側にとっても型番を知っておくことは重要である。中古のお店で買う場合も型番を伝えることですぐに欲しい商品が見つかるだろう。
また、メルカリなどのフリマアプリやネットオークションで買う場合も型番を知っておくことで投稿を見極めることができる。最低条件である型番を載せていない、商品の情報が少なすぎる場合は正直あまり信用できない売り手と考えられる。何か隠したいから書いていないだけの可能性もある。また、買い取った後に届いて見たら違う商品だったといった事態が起こっては大変である。
個人間でのやり取りで欲しい商品がある場合は必ず売り手と十分に商品の状態の確認、情報をもらっておくことが重要である。正直、こういったネットでの個人間の売買のものは、仲介として企業なども入らないため、トラブルが起きてしまった場合自分で責任を取るしかないものである。また、ネット上のため、本人と会うこともなく、正直売る側はそのまま姿を消すことさえも可能だ。
そのため、中古でエルメスの腕時計のような高級品を買う場合は個人間での売買はあまりおすすめできない。安全性を取るならば少し値段が高くなっても信用できる中古の業者で購入する方が良いだろう。
まとめ
ここまで、エルメスの型番について説明してきた。前章でも説明したように、現行エルメスの型番はつい最近大きく変更され、その構造は大きく変化してしまっている。従って過去のモデルを現行の型番から類推することは不可能と言える。過去のモデルの型番は変更のしようがないので、もし気に入ったモデルがあるのであれば、過去の型番を記録しておいたほうがいいだろう。
一方で現行モデルの型番は、「W」の次の4ケタの数字が重要である。今後の商品展開次第では、根強い人気を持つ「クリッパークロノ」の型番【Ref.W035437WW00】の派生モデルが出てくるかもしれない。冒頭4ケタの数字、「W0354」などの数字がわかれば、ある程度どのシリーズのモデルか特定できるので、気に入ったモデルのナンバーは覚えておくといいだろう。
現状は機械式の腕時計の商品が少なく、マニュファクチュールとしてのエルメスの技術力も影を潜めているだけに、エルメスウォッチの今後の展開に注目していきたい。
