iPhoneにおける“脱獄”とは、端的に言うと製品にかけられている制限を解除することを意味する。これを行うことで、Appleに認定されていない、App Storeからはダウンロードできない非公式のアプリケーションを使用できたり、デザインをカスタマイズできるようになる。
当然ながらこうした行為はAppleの規約違反となり、保証や公式サポートを受けることはできなくなる。すべての行為や結果を自己責任として認めることを前提として、それでもやりたい、やってみたいという人がやっているのが“脱獄”=JailBreakだ。
ここでは最新のiOSである、iOS11の脱獄方法・手順・注意点などについてまとめている。
※情報は2018年5月28日時点のもの。

My "hacked" iPod Touch / theducks
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iPhoneを脱獄してできること
iPhoneを脱獄してしまうと、Appleの保証や公式サポートを受けられなくなるばかりでなく、iPhoneに不具合が生じたり、セキュリティ能力や処理能力が落ちるなど、様々なデメリットが考えられる。なによりiPhoneそのものが使えなくなってしまう危険性もあるわけで、興味本位で気軽にやってみようとするのは、やめておいたほうがいい。
それでも、なぜ一部の人がiPhoneを脱獄したがるのか。以下に、iPhoneを脱獄することによって可能となる例を挙げてみた。
iPhoneを脱獄するとできることの例
- ・カメラのシャッター音を消すことができる
- ・iPhoneのフォントを好きなものに変えられる
- ・メニュー画面などをAndroid調に変えられる
- ・テザリング未契約プランでテザリングする
- ・プレステのゲームをエミュレーターでプレイできる
- ・Youtubeの広告をブロックする。バックグラウンドで動くようにする
- ・SIMロック解除(SIMフリー化)できる
- ・音量ボタンをダブルクリックで写真や動画の撮影が可能に
以上のことなどが、iPhoneを脱獄することによって可能となる。もちろんこれだけではなく、Apple Storeには出ていない多様なアプリが無料も有料も含めて購入できるようになっている。
一部グレーゾーンの行為も含まれているが、脱獄したからといって逮捕されるわけではなく、Appleの規約違反は間違いないものの、違法行為とされているわけではない。ただし、脱獄した後で有料のアプリを無料でダウンロードするような行為は、明らかな犯罪行為となることは覚えておいていただきたい。いたずらのつもりでやっていたら突然逮捕されてしまった……ということにならないよう、心して行ってほしい。
iPhone脱獄のデメリット
脱獄について説明する前に、脱獄のデメリットにも触れておきたい。前述のように、iPhoneの脱獄はすべて自己責任で行わなくてはならず、さらには公式サポートのような手厚いサポート記事もサポート電話もない。困ったことが起きたとしても、人に聞いたからといってうまくいくものでもなく、ウソを教えられているかもしれない。あるいはアドバイスを装って悪質なアプリをインストールさせられてしまうかもしれない。だからといって人に文句を言うこともできないのが脱獄なのである。
脱獄は、こうしたリスクを予め承知のうえで行われるべきだ。不具合がおきたら自分で対処法を探して自分で解決するのが原則である。そのほか、脱獄のデメリットには以下のようなものが挙げられる。下記の事象が必ずしも起きるわけではないが、覚悟なり対処の用意をしておく必要があるだろう。
脱獄のデメリット
- ・デバイス本体のセキュリティ能力の低下の可能性
- ・Appleのサポートやキャリアのサポートを受けることができなくなる
- ・修理することになった際にはかなりの額の出費を覚悟したほうがいい。または修理してもらえない可能性もある
- ・デバイスの動作が重くなるかもしれない
- ・バッテリーの消費が早くなる
- ・端末の処理能力が下がる可能性がある
- ・トラブル時にはすべて自分で調べて対処しなければならない
- ・脱獄対策されたアプリが使用できなくなる可能性が高い
iOS11.0〜11.1.2の脱獄はデバイス対応の脱獄ツールを使う
脱獄を実施するには、デバイスに対応したツール(アプリケーション)を使用する。iOS11以降に対応する脱獄ツールには、「Electra」がある。他のツールについてはiOS11に対応しているかどうかは、いまのところ発表されていないものが多い。
「Electra」対応デバイスは、『iOS 11.0?11.1.2』が動いているモバイル機器で脱獄が可能だ。iPhoneならば、iPhone SE、iPhone 5s、iPhone 6、6Plus、iPhone 6s、6s Plus、iPhone 7、7 Plus、iPhone 8、8 Plus、iPhone Xといった機種のほか、iPad mini 2、mini 3、mini 4などでもできる。
なお、iOS 11.1.3への対応は現時点で未発表。予期せぬトラブルやコンフリクトを防ぐためにも、できればiOS 11.1.2やそれ以前のバージョンへのダウングレードを行い、対応バージョンでの脱獄をおすすめする。
脱獄の前には必ずバックアップをとること
脱獄は、デバイスにとって推奨されない危険な行為であることを前提に考えなければならない。従って、脱獄の前には必ず本体の保存データをiTunes等を使ってバックアップをとっておくべきだ。なお、バックアップのとり方がわからない、調べられないようなら、脱獄はハナからあきらめたほうがいいだろう。
このほか、脱獄をスムーズに、そして失敗しないように進めるための準備として、iPhoneのパスコードロックやTouch IDのロック、Face IDのロックをいったんオフにしておく、「iPhoneを探す」モードをオフにする、機内モードをオフにする、iPhoneが十分に充電をされている状況で実施する、本体ストレージに十分な空き容量を作っておく等の準備をしておきたい。また、脱獄はできればWi-Fi環境が整っている状態で実施することも推奨する。
パソコンにCydia Impactorをダウンロード
いよいよ脱獄を実施する。まず最初に、脱獄を行うためのアプリケーションをダウンロードするために、Cydia Impactorをダウンロードする。
Cydia Impactorとは、Mac OSをはじめWindowsやLinuxで動くパソコンにインストールし、Appleの認証していないアプリをiOSデバイスにサイドロードすることができるツールだ。使用しているパソコンのOSに対応するバージョンをダウンロードしてほしい。「サイドロード」とは、アプリ開発者が実機での動作を確認するためにAppleの認証を経ずに行う方法で、自身のApple IDを使用してインストールすることになる。
なお、Cydia Impactorを使用してインストールしたアプリの証明書は7日間で有効期限が切れてしまう。これは、前述のように実機での動作を確認するためのツールという意味合いがあるためだ。証明が切れた際には、再度インストールプロセスを繰り返す必要がある。ただし、有料のAppleデベロッパーアカウントIDの場合には、1年間有効な証明書で署名される。また、そうした期限を延ばすためのtweak(カスタマイズ用のアプリ)もかつては存在した。
脱獄用のElectraアプリをダウンロードする
次に脱獄用のアプリ「Electra」を、デバイスにダウンロードする。「Electra」はipaファイル形式で保存されているアプリケーションだ。なおipaファイルとは、iOSアプリのアーカイブのフォーマットのこと。もしElectra.ipaではなくElectra.zipになっていたら、.zipの拡張子を.ipaに変更すればよい。
「Electra」アプリをデバイスにインストールする
ここから脱獄の具体的な作業がスタートする。まず最初に、脱獄を行うデバイス(この場合はiPhone)を、Cydia ImpactorをダウンロードしたパソコンとUSBケーブルで接続する。そして、さきほどダウンロードしたCydia Impactorを解凍し、起動する。すると中央にウィンドウが現れ、そこに接続したデバイス(iPhone)が選択されているかを確認する。もし選択されていなかったら、選択肢の中から選ぶ。
次にダウンロードした「Electra」(ipaファイル)を、Cydia Impactorのウィンドウにドラッグ&ドロップする。するとユーザー認証の画面が現れるので、自身のApple IDとパスワードでアプリに認証を行う。認証されれば、あとは自動的にインストールまで実行してくれる。完了すると元の画面に戻る。「Electra」がインストールされていれば、後はデバイス側での作業に移ることになる。
「Electra」アプリをiPhoneで認証する
続いて「Electra」アプリの認証作業を行う。そのままではアプリは起動しないため、設定アプリを起動。「一般 」から「プロファイルとデバイス管理」(あるいは「デバイス管理」)を開き、「追加されたプロファイル」を選択する。そこに入力したApple IDのメールアドレスが記載されているので、これをタップする。→さらに現れた画面の「(AppleIDのメールアドレス)を信頼」をタップする。これで「Electra」アプリが起動できるようになる。
脱獄を実施する
ここからがようやく脱獄の開始となる。ホーム画面に戻った後に「Electra」のアイコンをタップしてアプリを起動する。アプリが開いて中央に現れる「Jailbreak」ボタンをタップすると、ついに脱獄が開始される。途中でポップアップが出現するが、『Continue Jailbreak』で作業を続行させる。そのうちにCydiaのインストールが行われる。ちなみにCydiaとは、Apple未認証のアプリを購入するためのプラットフォームを提供するアプリのこと。脱獄したiOSデバイス用のアプリストアと考えるとわかりやすい。
さて、Cydiaのインストールが行われると、その後自動的にSpringBoardが再起動される(リスプリング)。「SpringBoardの再起動」とは、要するにホーム画面が再起動されること。いわゆるデバイスの再起動とは異なるので、勘違いしないようにしてほしい。そして、 この「リスプリング」から復帰後、ホーム画面にCydiaがあれば作業は終了である。そのiPhoneがめでたく脱獄されたことになる。Cydiaを起動したら、好みの脱獄アプリを利用できる。
脱獄後の注意点
デバイスを再起動すると脱獄アプリが動作を停止してしまうが、落ち着いて対処すれば問題ない。再起動を行ったらホーム画面から『Electra』アプリを起動し、『Jailbreak』ボタンをタップ。あとは自動的にリスプリングが行われるのを待っていればよい。リスプリングが終われば脱獄環境に戻る。
また脱獄アプリをデバイスに入れる前には、該当アプリがデバイスの環境に対応しているかどうかを必ず確認したうえで実行することを心がけたい。アプリが対応していなかったケースでは、場合によってその後一切機能しなくなることもあると言われている。 いわゆる”文鎮化“と呼ばれるような状態である。そのような状況に備えるには、まずは日頃から必ずデータのバックアップをとっておくことを心がけておいたほうがよいだろう。
一度iPhoneを脱獄させると、特定のアプリが起動しなくなったり、iPhoneが再起動を繰り返すなど、動作が不安定になってしまったりすることがよくある。その時に有効な対処法は、やはり自分1人の力で探し出すなり調べるなりして、経験値を積んでいくほうが大切だ。自分で徹底的に調べ、そのうえでどうしてもわからないときに、そうしたコミュニティのエキスパートに聞いてみる。
それでもどうしても直らない、直し方が分からない場合の最後の手段は、予めとっておいたバックアップからの復元でiPhoneを元の状態に戻してあげればよい。だからこそ、バックアップが必要となる。
脱獄したiPhoneに入れられるiOS11対応のTweak
Tweakとは、脱獄したiPhoneに入れることのできる脱獄用のアプリのこと。iOS11対応のTweakは、以下のサイトで有料・無料を問わず紹介されているので、参考にするといいだろう。
- 「最新脱獄アプリ」http://iphonedatu.blog.fc2.com/
- 「OS,Jailbreak...などメモ」http://haususuahahdh.hateblo.jp/
iOS11に対応していないTweakも多数あるため、便利そうなTweakを見つけたとしても、OSで対応しているかを確認のうえで使用するべきであろう。
脱獄の意味はなくなりつつある?
かつてのiPhoneの脱獄は、iPhoneユーザーにとっても意味ある行為だった。脱獄=JailBreakとは、Appleが製品を管理するうえでかけている制限を解除し、その端末が持っている本来の能力を発揮させるという意味がある。
実際に、今は可能となっているコピー&ペーストやテザリング有効化といった機能は、かつてはiPhoneを脱獄すると可能となる機能だったのだ。しかし現在はバージョンを追うごとにiOSも進化を遂げ、そうした脱獄アプリの機能をも取り入れることで、非常に便利になっている。その意味では、脱獄の必要性も年々薄れてきていると言わざるを得ない状況にある。
さらに、現状ではiOS11以降の脱獄用のインストーラーはCydiaしかない状態で、OSの進化とともに脱獄すること自体が非常に難しくなってきているといった状況もあるという。
ネット上の情報ではまったく新しい脱獄用のインストーラーが開発中との報も出ているが、かつて多くのハッカーたちが競い合って、まるで愛車をチューンナップするようにiPhoneを脱獄することによって自分好みの形にカスタマイズしていくという活況は、過去のものとなってしまった。
今年はOS12へのバージョンアップも控えており、デバイスの脱獄をして楽しむというユーザーがますます減っていくことも考えられる。今後の脱獄のトレンドがどう変化していくのか、今は誰もわからない状況となっていることは間違いないようだ。
まとめ
ここまで、iOS11以降の脱獄の方法とその手順について説明してきた。現状で脱獄ツールのインストーラーとしてiOS 11.0?11.1.2に対応しているのは、「Cydia」のみという状況。しかし、11.1.3には対応しておらず、以降のバージョンアップについても対応するのは時間がかかりそうだ。未対応ということは不具合が生じる可能性が非常に高くなるので、脱獄を行うときには、対応デバイス、対象OSをよく確認のうえ、実施してほしい。くれぐれも自己責任で行うことを忘れずに、「脱獄」を楽しんでいただきたい。