特別貴重刀剣認定書(マルトク)とは何か?

最終更新日:2018年12月26日
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日本刀は優れた武器であるだけでなく、「武士の魂」と言う言葉があるように、所持する者の精神性を表すものであり、またその歴史的価値や造形の美しさから、美術品としても愛好されるという特別な存在だ。

日本の法律では、銃砲刀剣類登録証が付いているものなら、自由に譲渡、売買が可能である。ただし売買に関しては、鑑定書があるかないかで売値、買値に大きな差が出ることになる。ところが、この鑑定書にいくつもの種類が存在するため、戸惑いを覚えることも珍しくない。

この記事ではその鑑定書の中でも比較的よく目にすることがある「特別貴重刀剣認定書(マルトク)」について解説する。


Shinken and saya on floor / Falling Outside The Normal Moral Constraints

鑑定とは

「鑑定」とは、その品物の特徴や素材などから、制作された時代や作者を判断することを言う。これらの要素は、品物の売買において非常に重要なポイントだ。それがはっきりしていれば、目の前の品物にどれくらいの価値があるのか、誰にもある程度の判断がしやすくなるためだ。

刀剣でもそれは同じだ。例えば無銘の刀であっても、佇まいが美しく、時の流れを感じさせる見事なものがあるが、そのままでは、いかにも価値がありそうな刀というだけでしかない。しかし権威ある鑑定機関により「南北朝時代以前に作られた名刀である」と言う鑑定が行われ、鑑定書が発行されていれば「古名刀」としての価値を持つことになる。当然、取引価格にも大きく影響するのだ。

鑑定のポイント

作者

刀の鑑定は、次のように行われる。まず、があるかどうかの確認だ。銘は刀身に入っていることもあれば、茎(なかご)に記されている場合もある。茎とは、刀身の手元側、普段は柄の内部に入り込んでいる部分だ。

刀身はこの茎を目釘で留めることで、柄と繋げられている。そこで目釘を抜いて柄を外し、茎の様子を見ることで作者が確認できることもある。仮に茎に銘がなかったとしても、茎の形、また目釘穴の形や位置からも刀匠の見当をつけることができる。

時代や地域

また、刀は作られた時代や地域によって形状や作風が異なり、刀の表面に出る紋にも刀匠それぞれで異なる特徴があるため、これらも鑑定の手掛かりとなるのだ。

鑑定機関の鑑定を受けた刀には、その内容を記載した鑑定書が発行される。これはその刀が「本物」だという証明書であり、刀剣を取り扱う古美術商や専門店が買取をする際、査定価格を決める重要な要素となる。

証書の歴史について

一方、刀には文化財としての側面もあり、こちらでは柄や鞘などの装具も含め、刀が作られた当時そのままの形をどれだけ保っているかが重要になる。

2018年現在、刀剣の権威ある鑑定機関としては、「公益財団法人日本美術刀剣保存協会」と「日本刀剣保存会」が知られているが、このうち日本美術刀剣保存協会のみが、 刀に対し文化財としてのランク付けを行っている。

公益財団法人日本美術刀剣保存協会の活動

第二次世界大戦後、アメリカの占領下にあった日本ではGHQによる日本刀の没収が行われ、敵の手に渡すくらいならと貴重な刀剣を壊したり、二度と回収できない場所に捨ててしまう所有者が続出していた。こうした事態から日本刀の文化、歴史を守り、その技術を後世に伝えなければならないとして、1948年2月に設立されたのが「公益財団法人日本美術刀剣保存協会」である。

保護した刀剣を収め、一般に公開する「刀剣博物館」の設置や、日本刀の原料となる特別な鋼の生産確保、研磨や作刀技術のコンテストなど、その活動は盛んであり、日本刀文化に大きく貢献した。

刀剣などの認定制度がスタートしたのは協会が設立された1948年の9月で、その後1982年8月に鑑定制度へと切り替わるまで続いていくことになった。

刀の認定審査は、東京国立博物館内に設置されている本部だけではなく、日本各地の支部でも行われていた。ところがこの地方での審査で不正が行われていたことが発覚し、問題となったのである。このため審査を本部のみとし、それまでとは大きく異なる審査方法を導入して、鑑定制度が始まったのだ。

鑑定制度

鑑定制度では、価格に対する決定力を持つ鑑定と、文化財としてのランク付けが同時に行われ、密接に結びつけられている。

ランクには「保存」と「重要」がある。

保存

「保存」は、南北朝時代から江戸時代までの著名な刀匠による銘入りのもの、または年代や地域、作風の系統が判定できるものを指す。その中でも特に保存状態のいい、美しいものは「特別保存」とされる。鑑定書が発行されるのはこの「保存ランク」の刀に対してだ。

重要

「重要」の方は平安時代から江戸時代にかけて作られたもので、かつ博物館、美術館に展示されるレベルの美しさと希少性を兼ね備えた逸品であることを意味する。「重要特別」ともなると重要文化財、あるいは国宝にも匹敵する存在だ。この「重要ランク」の刀には、指定書と系統を示した図譜が発行される。

特別貴重刀剣認定書

「特別貴重刀剣認定書」、通称マルトクとは、つまり旧審査システムにより行われたランク付けを表す証書だ。新システムの導入により廃止されたため、残念ながら公に通用するものではなくなってしまった。システム変更の経緯から、認定書を信頼できないものとして嫌い、認定書付きの刀剣は買い取らないとする店も存在する。

しかし、多くの専門店では買取の査定において、価値を表す一つの基準として扱われている。

鑑定審査は手軽とは言えない

「認定書」は、例えてみれば美術品の「箱書き」のようなものである。価格に全く関わらないわけではないが、刀の真贋を保証するものではない。さらに審査システムの変更もあって、その有効性も失われてしまっている

刀の蒐集が趣味で、長年楽しんできたが保管が難しい状況になった、遺品としてもらったが自分は興味がないので、大事にしてくれる人に譲りたいなど、刀を手放す理由は様々である。しかしせっかくなら、きちんとその価値を理解したうえで売却したい、というのは当然の思いだ。

刀の価値をあらためて形にしたいなら、あらためて日本美術刀剣保存協会の審査を受け、鑑定書を発行してもらうという方法がある。ただし、これにはいくつかのリスクが存在することは知っておかなければならない。

費用と時間

まず、審査を受けるには安くない費用が掛かる。2018年10月現在、非会員が審査を受けるには、例えば「保存」では27,000円ほどの料金が必要だ。

時間もかかる。審査申請のスケジュールは決められており、「保存」「特別保存」の受付は1、3、5、7、11月の土日と祝祭日を除く、3日連続する平日に限られている。また審査結果が出るまでの期間は通常2~3ヶ月で、審査に出したからと言ってすぐ回答が得られるものではないのだ。そのため相続税の申告を急がなければならないなどのケースでは、悠長に審査を受けている余裕がないということもある。

価値が下がるリスクも

さらに、昔に比べて鑑定の技術も大きく進歩しているため、審査を受けた結果、価値が下がってしまったり、最悪の場合、残念ながら偽物でした、という事態もあり得るのだ。

しかし、旧システムの認定書よりも、新システムによる鑑定書が付いていることが、刀の価値を高めてくれることは確かだ。昔では判定が付かなかったが、最新の鑑定技術で誰の作か解明され、価値が大きく上がるというケースもある。

改めて新システムによる審査を受けて鑑定書を取るか、認定書のままで査定を行うかは、よく考えたうえで自分の状況に合ったものを選択することが重要だ。

「特別貴重刀剣認定書」付き刀剣の相場を知る方法はあるか

鑑定書ではなく、特別貴重刀剣認定書で査定を受けた場合、その買取相場がいくらぐらいになるかは、気になることの一つだ。しかしこれについてはそれぞれの刀で履歴や状態が異なるため、一概にこれだけの価格になります、と言うことはできない。

100万円近い査定額が出るものも存在する

最高レベルの逸品では、100万円近い査定額を付けられるものも存在する。ただし、この査定額はあくまで最高額であって、錆や傷がなく、著名な刀匠の手になるもので、装具などの状態も完璧な「刀」でなければ、これほどの査定を受けることは難しい。

そもそも、一口に「刀」と言っても「刀」「短刀」「脇差」では全く査定価格が異なる。一般的には短刀は刀の30%~50%程度、脇差は20%~40%程度だ。そして一見傷が見えなくても、「刃切れ」のように専門家が見れば細かな傷が発見されることもある。

美しい状態を保つようこころがける

何より日本刀は定期的に正しい手入れを行わなければが出てしまうもので、長期間人の目に触れないところに埋もれていたものは、査定以前に数十万円ほどかけて錆を取らなければならないという場合さえ起こるのだ。

結局、相場を知るにはまず、刀の状態を確認して、目立つ錆や傷がないかを確認したうえで、複数の刀剣専門店古美術店を回って、査定を受けることが一番だと言える。その結果、時間と費用をかける価値がありそうだという手ごたえを得ることができたなら、日本美術刀剣保存協会の審査を受けて、鑑定書を取ることで買取価格を底上げすることも可能だ。

鑑定書の前に登録証を

刀剣の所有には「銃砲刀剣類登録証」の付帯が義務となっている。これは刀剣一本に対し1枚ずつ付帯するものであるため、警察への届け出は必要ない。

申請方法

新たな所有者となった場合には、入手日から20日以内に「銃砲刀剣類等所有者変更届」を、住所記載、署名捺印のうえで各都道府県の教育委員会宛に送付することが義務付けられている。

もしも刀剣に登録証が付帯していなかったときは、警察署に「古式銃砲・刀剣類発見届出済証」を提出し、登録審査会で専門家の審査を受けなくてはならない。審査により個人所有可能な美術刀剣とされれば、その場で登録証が交付される。このとき、登録審査手数料がかかるため、前もって用意しておくことが重要だ。

登録証は価値ある美術品や骨とう品として認められたものに交付される公文書である。もしも譲渡された刀剣に、付帯していたはずの登録証が紛失してしまっていた場合は、警察署にその旨届け出を行い、紛失理由書と再交付申請書を教育委員会へ提出する必要がある。

入手日から20日以内に手続きを

登録証がなければ、刀の売買は当然、持ち運ぶこともできない。もしも入手した刀の登録証が見当たらない場合は、何を置いても20日以内の届け出をまず実行することが肝心だ。

まずは専門店に相談しよう

特別貴重刀剣認定書は、日本美術刀剣保存協会の旧審査システムのもとで発行されたもので、1982年以降は廃止された証書だ。そのため以降は公的には効力を持たず、美術品の箱書き程度の意味となっている。つまり、認定書が付いていたからと言って、必ずしも査定で高値が期待できる、と言うわけではない

しかしこれは、逆に言えばその他の部分が評価され、意外な値が付く可能性もあるということだ。刀も商品である以上、その価格は人気によって左右される。貴重な品だからと言って高く売れると決まっているわけでもなく、要は需要がどれだけあるかと言うことなのだ。

もしも手元に認定書のついた刀剣があり、買取を希望するなら、まずは刀の鑑定を自前で行っている専門店や、買取に実績のある古美術商に連絡を取り、アドバイスを受けることがお勧めである。

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