着物を着るという方の中には、和装小物である笄(こうがい)をいくつも持っているという方も多くいるだろう。ここでは、笄を売りたいと考えている人に向けて、そもそも笄とは何なのかという説明を踏まえつつ、買取相場や査定情報、できるだけ高く売るためにはどうすれば良いのか、といったことを解説していく。
笄を売る予定がある方は、この記事を参考にしつつ、適切な買取価格で買取ってもらうようにするべきだ。正しい情報を身につけて、納得のいく買取をしてもらおう。
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笄(こうがい)とはどのようなものなのか
そもそも笄とは、どのようなもののことを指すのか知らないという方もいるかもしれないが、笄は和装小物の1つとして知られている。女性が長い髪を束ねたり結んだりすることによって作り上げる、日本の伝統的髪型である髷(まげ)を作るときに必要になる装飾的な結髪用具ことを指すのだ。
もともとは中国で使用されていたものが日本に広まったことが、日本でも笄が使われるようになった背景である。なお、中国でも頭皮がかゆくなってしまったときに、結んだ髪の形を変えずにかくことができるものとして重宝され、女性の身だしなみを整える際に必要と考えられてきた。
刀剣の付属品としての役割や他の役割もあった
また、日本では女性だけでなく男性でも日本刀の付属品として一緒に持ち歩く人も多かったといわれている。刀剣の付属品としては、笄に加えて、小型の刃物である小柄(こずか)と鞘から刀身が勝手に抜けてしまうことを防ぐ目的で使用された目貫(めぬき)の3つをあわせて三所物(みところもの)と呼ばれる。笄のおかげで刀の鞘元に装着することができたのである。
また、戦の際に一騎打ちで殺害した相手の足首に笄を刺しておくことで、仇討の帰来を待つというメッセージを伝える意味合いも持っていたといわれる。武士が戦に持っていった笄には家紋が記してあったようで、どこの家の者がおこなったことなのかを判断することもできたのだろう。
これらの他にも、柄の端が小さなスプーン状になっていたことから耳かきや、粉薬をすくう際にも使用されていたことが分かる。ちなみに、男性でも女性の場合と同じように笄を使って髷を整えることもあったようである。
どのような形状や材質なのか
笄の形状として、頭部はイチョウの葉の形をしているものが多く、その頭部から細長い2本の足が出ているものや棒笄と呼ばれる棒のような形をしているものが一般的であった。ウミガメの一種で、タイマイという亀の甲羅を使用して作られたべっ甲製のものや象牙を使ったもののほかにも、金属製や木製、牛や馬のひづめを使って作られるものも存在している。
そのような素材で作られた笄に、螺鈿(らでん)や彫刻といった細工が施されているものに関しては、とても高い値段がつけられていたのである。室町時代になり、刀の付属品として取扱われていた笄に職人であった後藤祐乗という人物が装飾をほどこすようになると芸術品としても扱われるようになった。
なかでも鶴のくびの骨で作った笄は最高級品であると評され、他のものよりも高額で取扱われていたほか、頭痛の際のおまじないとしても効果があると伝えられてきたため、そのような効果を求める人たちに人気となったようである。
ちなみに、代々の後藤家職人たちは織田信長や豊臣秀吉などの武将にその技術の高さを認められ、彼らに仕えてきたが江戸時代になって徳川が政権の主導を握るようになってからも徳川家に仕え、三所物を作り続けてきた人物である。
後藤祐乗とはどんな人なのか
数々の武将に気に入られた後藤祐乗は、藤原利仁の後裔(こうえい)ともいわれる後藤基綱の子供であり、室町時代の金工家として知られる人物である。後藤家の所伝では、足利義政側近の軍士として仕えていた際に入獄になってしまうことがあり、そこで桃の木を小刀を使って神輿船(みこしぶね)と猿を刻んだところを義政に認められ、装剣金工を業とするようになったと伝えられている。
三所物の製作を主におこなうことが多く、金や赤銅などの地金に龍、獅子などの緻密な文様をほどこしていくことで高い評価を得ていた。後藤祐乗を筆頭に後藤家は代々、金工家として活躍していく。また、室町時代から江戸時代にかけて御用達の彫金をおこなってきた後藤四郎兵衛家の祖としても知られている。
笄はかんざしと同じなのか
笄の形は、女性が髪を結ぶときに使うことがあるかんざしに似ているといわれることも多く、同じもののことを指しているのではないかと考えている方もいるだろう。しかし、笄とかんざしは実は別のルートをたどっているものなので同じものではない。
かんざしは、もともと髪に飾るものとして作られた。一方、歴史的に笄をみていくと、中国においては新石器時代というはるか昔の遺跡から銅や動物の骨など、さまざまな材質を使用して作られた笄が出土していて、その時代から笄が人々に使われていたということが分かる。
また、笄を使うということは、成人女性であるということを意味する場合もあったため、笄礼(けいれい)といわれる髪を笄で結い始めるときの儀式が成人式として扱われていた時代もあった。もともと笄は、かんざしの根元を固定するために使われていたものの、江戸時代中期~後期になると装飾品として扱われるように変化していく。
そのため、本来のように実用的な用途で使用する場合でも1本しか使わなかったり、髪型によっては笄を使わなかったりすることもある。特に、中心で2つに分解することができる中割れ笄という笄に関しては、結髪をほとんど作り終えてから仕上げに挿すため、本来の役割としてではなく、装飾品として扱われている。
笄の買取相場を知ろう
笄を作っていた職人は、後藤祐乗をはじめ、数多く存在していた。特に、織田信長や豊臣秀吉が活躍していた時代には後藤祐乗の作品が高く評価を受けていたものの、江戸時代に入ると、後藤家以外の職人も笄を作るようになったのである。
現存しているものの中にも、さまざまな職人が手掛けたものがあり、どのような笄か、ということや誰が作ったのかによっても買取金額が異なる。目安の買取金額としては笄1本に対して3,000円~50,000円がつけられることが多いといわれている。なお、後藤家の職人が製作した笄に関しては、50,000円以上の高額な金額がつけられることもあるようだ。
また、笄を単品で売ることはもちろん可能だが、三所物の1つとして知られていることから、小柄と目貫の2つと一緒に売りに出すことで、さらなる買取金額アップを狙うことができるだろう。さらに、笄にはサイズや材質、ほどこされた装飾がどんなものなのかによって価値が変わってしまう。どのような装飾がほどこされているかをきちんと確認するようにしよう。
査定情報や高く売るコツとは
笄を買取してもらう場合、できるだけ高く売るためには、いくつか気を付けるべきことがある。
専門の買取業者を選ぶ
まずは、骨董品専門店のような、笄に関して専門の知識を持っている査定員が在籍している買取店や買取業者を選ぶようにしよう。笄は和装小物なので、和装小物に詳しいお店で買取査定をしてもらうという方法がある。また、それだけではなく、武具として用いられていたこともあるため、骨董品専門店でも鑑定してもらうことが可能である。
リサイクルショップなどでは、笄の専門知識を持った査定員が在籍していないという可能性は大いにある。そのようなお店で査定してもらうと、本来つけられるべき値段をつけてもらうことができず、安い金額で売ってしまうことになりかねない。
笄の価値に関しては、自分ではよく分からないという人が多いだろう。そのため、提示された金額が安いのか高いのかという判断もできないかもしれない。適切な買取価格が自分では分からないからこそ、正しい判断ができる査定員がいるお店で査定してもらうのが良い。
複数の買取業者で見積もりをする
また、2社以上で見積もりをとってから売るのが良いだろう。笄の買取金額に関しては、お店や業者によって異なってしまう。場合によっては数千円~数万円の差になることもある。そのため、最初に査定してもらったお店ですぐに売ってしまうのはもったいないのだ。2社以上の買取店から買取金額の見積もりを出してもらうことで、より高い金額で買い取ってもらうことができるかもしれない。
櫛(くし)とセットの場合は一緒に出して、素材もチェック
和装小物の買取をおこなっている業者に依頼する場合、笄は、櫛とセットで扱われることも多いので、櫛もある場合は一緒に売りに出すのが良いだろう。なお、笄の高額査定してもらえるポイントとしては、どのような材質を使って作られたものなのかという点が挙げられる。
笄は石や金属、動物の骨など、さまざまな素材で作られるので、どの素材を使って作られたのかをチェックすることで買取金額が上がるかが分かる。サンゴで作られたものやべっ甲を使って作られた笄など、人気が高いものや希少価値が高いもの、高級な材質で作られたものは高額査定が期待できる。また、螺鈿細工など、何かしらの細工が笄に施されているようであれば、高額査定になるかもしれない。
和装小物は、増えつつある外国人観光客の着物への関心の高さや、着物を着る若者が増えてきたことを理由に高額買取がおこなわれることもある。需要が高い場合、高めの買取金額になることもあるので売りたいと考えている笄があるのであれば、まずは査定だけでもしてもらうのが良いだろう。需要が少なくなってしまうと同じ笄でも買取金額が下がってしまう可能性もある。
汚れを取り除いて、付属品も忘れずに
これらのほかにも、笄の状態もできる限りキレイな状態で査定に出すようにしよう。ホコリがついているだけでも買取金額は下がってしまうことがある。ホコリなど、事前に拭いて取れるものもあるので査定に出す前に自分で取れる汚れは取っておくのが良い。
また、笄が入っていた箱やその他の付属品がある場合は、それらも一緒に査定に出すようにしよう。箱や付属品がついているだけで買取金額がアップすることもある。そのため、自分で勝手にいらないと判断せず、査定員に確認してもらおう。
まとめ
いかがだっただろうか。あまり聞きなれない笄だが歴史も長く、立派な武具としても使われていた過去がある。
素材や細工によっては、希少価値も高く十分に高価買取が狙える可能性があると言えるだろう。また、近年では外国人による和装小物への関心の高さも手伝ってくれる。
もし、笄をゆずり受けたりして、手元に不要な笄があるという方は、ぜひ1度、専門の買取業者に査定に出してみてほしい。もしかしたら、思わぬ臨時収入につながる可能性もあるかもしれない。