世界中に数多く存在する時計ブランドのうち、真に資産価値があるといえるものは一握りに過ぎない。なかでも、小規模ながらにロレックスやオメガといったグローバル企業と競い合うだけの実力を有するメーカーは極めて希少であるが、そのようなメーカーの一つがフランスに本拠を構えるペキニエマニュファクチュアル(PEQUIGNET MANUFACTURE)である。
以下では、このペキニエがいかなるブランドであるのかを歴史や特徴とともに、その商品の価値について見ていくこととしよう。
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ペキニエマニュファクチュアルの歴史と特徴
時計ブランドであるペキニエマニュファクチュアル(PEQUIGNET MANUFACTURE)。歴史と特徴についてご案内しよう。
ペキニエの歴史
ペキニエマニュファクチュアルは、1973年にエミール・ペキニエというフランス人によって設立された時計メーカーである。
創立者であるペキニエ氏は、経営者でありながらデザイナーでもあるという異色の経歴を持つ人物で、ファッションの国であるフランスを本拠地にするだけあって、その腕時計のデザインは流行に左右されない独自の美しさを追求し、一躍高い評価を受けることとなった。
ブランドの転機
設立当初のペキニエは、このようにデザインに強いこだわりを持つ宝飾系の時計ブランドとしての位置づけであったが、2004年に大きな転機を迎えることとなる。
この年、新たにディディエ・レイブングッド氏をチーフ・エグゼクティブ・オフィサーに迎えることになった同社は、それまでのデザイン優先の時計作りを180度転換させて、自社でムーブメントを開発するという本格的な機械式時計のメーカーへと脱皮を図ることになるのである。
ビジネスを拡大
これによって開発されたムーブメントが、2009年に発表された「カリブル ロワイヤル」で、その後も「リュー ロワイヤル」と「パリ ロワイヤル」という自社製ムーブメントを世に送り出している。
これらはいずれも精巧かつエレガントな作りが高く評価されており、それまではファッションアイテムとして見られがちであったペキニエの腕時計の価値を、一段上へと引き上げることになるのである。
なお、2010年代にはムーブメント開発に投資しすぎるあまり、経営が危機に陥ったこともあるが、そこから立て直して現在ではさらにビジネスを拡大しつつある。
ペキニエの特徴
ペキニエが誕生した1970年代は、折りしも登場したクオーツ時計によって時計業界が席巻されていた時代であり、旧来型の機械式時計を手がけるメーカーはどこも経営が逼迫して、クオーツショックと呼ばれる状況が生じていた。
そのような中で、フランスの時計産業の栄光を取り戻そうとして設立されたのがペキニエであり、その想いを受け継いで技術力に磨きをかけようと取り組んだのが、2000年代に経営を担うことになったディディエ・レイブングットであった。
技術力の進歩
そのため、同社は徹底的に技術力を高めることを追求し、その工房では時計先進国であるスイスから招いた多くの技術者が、日々新たな技術開発に取り組んでいる。
また、工場の設備や環境整備にも力を入れており、特に時計作りの大敵ともいえるほこりを除去するために、室内には最新の空調システムを導入するなど最適な時計作り環境を実現するために、できることはすべて取り組むという徹底振りである。
工房にも特徴が
フランスらしく、作業台などはペキニエカラーといわれる色で統一されているのも同社の工房の特徴である。この工房において、ペキニエの腕時計は設計からデザイン、開発、生産に至るまですべての工程を一気通貫で行うことができるようになっており、それによって他社では簡単にまねすることのできない精巧な腕時計を世に送り出すことができているのである。
ペキニエの代表作とその資産価値
ペキニエには代表作と言えるモデルが数多くあるが、ここではその中でも特筆すべきリュー ロワイヤル、パリ ロワイヤルとロワイヤル トリオンフについて、その特徴と価値を見てみることにしよう。
リュー ロワイヤル
ペキニエを代表するモデルの一つがリュー ロワイヤルである。このモデルには、カリブル ロワイヤルという同社の自社製ムーブメントが搭載されており、これは理想の構造や機能を追求することを第一として開発されたものである。
そのため、サイズや外観について旧来の慣習に一切とらわれずに作られており、マニュファクチュールとしてのペキニエの真骨頂ともいえる作品となっている。
エレガントな外観と機能性
一方で、ムーブメント以外に目を向けると、リュー ロワイヤルはエレガントな外観と高い機能性を有していることが見えてくる。すなわち、文字盤には大きな円状のスモールセコンドを備えるとともにディスクが3枚設けられており、曜日・日付表示機能や月齢表示機能などを有している。
また、ここまで多機能な腕時計は、文字盤が複雑になりがちであるが、このモデルは非常にシンプルにまとまっており、視認性も十分に確保されているという点も特徴となっている。
数多くのタイプが存在
このように非常に優れた特徴を有するリュー ロワイヤルであるが、数多くのタイプが存在しており、その価格帯は50万円台から300万円弱までと幅広くなっている。
実用性を重視してシンプルなものがよいというのであれば低価格モデル、よりデザイン性を重視し複雑な作りのものが好みであれば高価格モデルといった選別の仕方がよいであろう。
中古市場での評価
次に、中古市場でのペキニエの評価であるが、同社は自動車メーカーと同じように認定中古品の取り扱いをしており、そこでは30万円程度から160万円程度でこのモデルが販売されている。
流通量がそれほど多くないブランドということで、フリマアプリであるメルカリなどでの取引事例は認められなかったが、中古品でも新品の半額以上の価格で売買されているという事実からは、ペキニエの腕時計の高い資産価値をうかがい知ることができるのではないだろうか。
パリ ロワイヤル
リュー ロワイヤルがペキニエのベースプロダクトとして位置づけられるのに対し、より高級なスタイルを追求して丁寧に仕上げられているのがパリ ロワイヤルである。
その特徴は、複雑さとエレガントさが融合したデザインにあり、それに加えてペキニエオリジナルの高機能ムーブメントが搭載されているという点にある。
なお、高級スタイルとうたわれているものの、その価格帯は100万円台から300万円程度と、リュー ロワイヤルとそれほど大きく乖離しているわけではない。
また、中古も70万円以上となっており、リュー ロワイヤルと同等か、それ以上の資産価値を見て取ることができるであろう。
ロワイヤル トリオンフ
ペキニエの代表作の3つ目は、同社のモデルの中では異色とも言えるスポーティなスタイルが特徴的なロワイヤル トリオンフである。
その名の由来ともなったパリの凱旋門をイメージさせる硬派な文字盤は、フォーマルシーンよりもカジュアルシーンにおいてその価値を発揮するものといえるだろう。
このモデルのタイプ数はそれほど多くなく、価格帯も120万円から180万円と、ペキニエのモデルの中では比較的ばらつきが少なくなっている。
なお、中古品については取引事例が確認できておらず、滅多に中古市場に出てこない希少価値の高いモデルであるといえるが、それだけに上述の2つのモデルと同等以上の評価がなされることはまず間違いないはずである。
ペキニエの資産価値を構成する要素
ペキニエの腕時計は手ごろなものでも50万円以上はするが、その価値の裏づけとなる要素は、同社の歴史を見れば明らかである。
すなわち、宝飾系時計メーカーとして誕生し、機械式時計メーカーとして成長を遂げたという経緯によって、デザイン性と技術力の双方を高いレベルで兼ね備えていることが、ペキニエの各モデルの価値を確固たるものにしているのである。
デザイン性
まずデザイン性であるが、代表モデルの紹介のところでも述べたように、シンプルでありながら高い視認性を備えているのが特徴である。
その上で、フランスのブランドらしく遊び心もさりげなく取り入れており、例えば文字盤の裏側がスケルトンになっており、同社が誇るムーブメントの動作をじかに目にすることができるといったこだわりが見て取れる。
また、色彩の使い方も絶妙であり、白い文字盤に青の長短針、黄色のディスクといった組み合わせは、その真骨頂であるといえよう。
技術力
腕時計ブランドの実力を図る際に、ムーブメントを自社で開発・製造することができるというのは重要な要素である。
ペキニエは、一時は絶滅状態であったフランス時計業界において、いち早く自社ムーブメントの製造に成功したメーカーである。もとはスイスから導入した技術を自国で昇華させて、世界でも有数の精巧なムーブメントを作り出したことは、時計愛好家たちの間でも高く評価されているのである。
また、ムーブメントだけに目がいきがちであるが、それ以外のローターなども十分な巻き上げ効率を備えるなど、世界水準の競争力を備えるパーツとなっており、総合的な技術力で見ても世界有数であるとみなしてよいだろう。
ブランド時計としてのペキニエの順位とは
最後に、数多くの時計ブランドのなかで、ペキニエのランクがどの程度であるのかについて見ておくことにしよう。
フランスでは唯一無二の存在
世界でも最上位に挙げられるブランドの多くは、創業から100年以上経過している老舗企業ばかりであり、創業から50年も立っていないペキニエはこの点では不利である。
一方、デザイン性や技術力においては、ペキニエはそのような長い歴史と伝統を有するブランドに決して劣らないだけの実力を有しており、そこだけを捉えてみれば一流クラスのブランドと評価することも可能である。
特に、長らく時計ブランド不毛の地であったフランスにおいては、唯一無二の存在とも言え、同国内だけで見れば最上位と言っても過言ではないだろう。
将来的にはトップクラスに入るだけのポテンシャル
一方グローバルな観点からは、企業規模が小さいだけに、ブランドステータスや認知度が大手に比べて不利であることは否めない。
しかしながら、近年になって時計愛好家を中心にその評価は徐々に高まってきており、インターネットの普及によってその情報は多くの人が目にするところとなっている。
そのため、現段階での位置づけとしては、デザイン性や技術力ではトップクラスに比肩する実力を有するものの、総合的なブランド価値という観点からはその下くらいにランクされるものの、将来的にはトップクラスに入るだけのポテンシャルを備えていると考えてよいだろう。
まとめ
今回は、ペキニエマニュファクチュアルの資産価値や、時計ブランド中で何番目に位置するかなどについてご紹介した。デザイン性と技術力の双方を高いレベルで兼ね備えていることが、ペキニエの価値を確固たるものにしている。
ブランドステータスや認知度は大手に比べると不利ではあるが、将来的にはトップクラスに入る可能性をペキニエは秘めていると言えるだろう。