数ある腕時計ブランドの中で真に資本価値を有すると言えるものはそれほど多くはないであろう。
もっとも、その中には世界的に知られたロレックスやフランク・ミュラーといったブランド以外にも、知名度はそこまでなくとも玄人受けがよく高額で取引がされているブランドがいくつか存在する。
以下ではそのようなブランドの一つであるノモスに脚光を当てて、そのブランドの特徴について見るとともに、資産価値についても紹介していくこととしよう。
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ノモスとはどのようなブランドか
まず最初に、ノモスについて知るためにも、同社がこれまで辿ってきた足跡を見てみることとしよう。
ノモスは、1906年に数人の職人を擁する小規模な工房として設立された時計メーカーで、その創始者はグイド・ミュラーというドイツ人である。
当時から時計といえばスイスやフランスのブランドが有名であったが、数々の有名マイスターを輩出したドイツにおいて誕生したノモスはその将来を嘱望される存在であった。
しかし、折しも欧州大陸は第一次世界大戦の真っただ中であり、そのあおりを受けて国内が大混乱に陥る中、ノモスの業績も芳しくなく1910年にはやむを得ず廃業することとなった。
しかし、半世紀にわたる廃業期間を経て、1992年にその技術を惜しんだローランド・シュヴェルトナーによって、ノモスを引き継ぐ形で新たな会社が立ち上げられることとなった。
ノモスグラスヒュッテと名付けられたこの会社は、現在まで続くノモスの正式名称である。
なお、ノモスというのはギリシャ語で「秩序と法」を意味する言葉から取られており、その名の通り同社の腕時計はシンプルな美しさとリーズナブルであることを追求しているのが特徴である。
グラスヒュッテとは
ノモスの本拠地は、ドイツ東部にあるグラスヒュッテという、かつて鉱山で栄えた小さな町である。
鉱山が閉鎖される中、街は衰退の危機を迎えるも、高級時計ブランドとして知られるランゲ&ゾーネの工房が開かれるなど、腕時計産業に一縷の望みを託すこととなった。
ノモスは、その技術を伝播されたおかげで設立当初から世界の有名時計ブランドに勝るとも劣らない高い技術力をもって腕時計を製造することができたのである。
また、このような複数のメーカーが切磋琢磨することによって、グラスヒュッテの街も、やがてドイツを代表する時計の街として世界的に知られていくことになるのであった。
言うまでもないが、「ノモス グラスヒュッテ」という会社名の後半部分は、この街の名称から取られたものである。
ノモスの時計の特徴
新生ノモスを立ち上げたローランド・シュヴェルトナーは、合理主義と機能主義をコンセプトとするバウハウスと呼ばれる手法を得意とするデザイナーだ。
そのバウハウスとグラスヒュッテの街に伝統的に受け継がれてきた時計作りの手法とを融合させることで、新たなノモスの時計を生み出している。
彼がデザインした時計は業界において高い評価を受けることとなり、数々の名作を世に送り出すことに成功している。
また、デザインだけでなく、時計の心臓ともいえるムーブメントも自社で製造しており、そのことを示すために、ノモスのムーブメントにはDUWというドイツ製を意味する刻銘が刻まれているのである。
このムーブメントは非常に高性能なものとして評価されており、同社の腕時計が高値で取引される理由の一つになっていると考えて間違いないであろう。
ノモスの代表作とその資産価値とは
では次に、このノモスが誇る数々の腕時計のモデルを見ていくことにしよう。
とはいえ、同社のモデルは多岐にわたることから、ここでは同社の一番人気であるタンジェントを最初に紹介したうえで、それ以外のいくつかに触れるに留めることとする。
タンジェントの特徴と資産価値
タンジェントは、ノモスのフラッグシップモデルといっても過言ではない作品である。
その特徴は、バウハウスのデザインを用いて高い視認性を実現している「飛びアラビアンインデックス」と呼ばれる文字盤である。6以外の偶数文字のみが刻まれた文字盤にシンプルな3針が設置されているデザインは、高い機能性と同時にエレガントさも備える一流のモデルということができるであろう。
また、針にはブルースティールが採用されており、若干青みがかったその色合いが、タンジェントのデザインを一層引き立たせる役割を果たしている。
サイズは38ミリとなっているが、過去に発売されていた35ミリモデルも人気が高く、中古市場においても高値で取引されている。
なお、ノモスの全ての時計に共通することであるが、その形状は薄く作られており、重量も50グラムも満たないほどと着けていても疲労を感じさせないよう工夫されている。
また、一部のタイプでは、ケースバックがシースルーとなっており、裏側からノモス自慢の自社製ムーブメントの動作状況を見ることができるようになっているのもこの時計の特徴である。
このタンジェントの価格であるが、タイプごとに値段の際はあるものの、一般的なものでおおよそ40万円前後となっている。
高級ブランドのなかでは比較的リーズナブルといえる価格帯であるといえるであろう。
一方、中古市場においてどれくらいの価格で取引されているかであるが、ここでは個人間での取引を簡単に行うことができるフリマアプリであるメルカリと、インターネットオークションであるヤフオクの事例から考察することとしよう。
まず、メルカリにおいてタンジェントの成約事例の中で最高額となっているのは約20万円である。
一方のヤフオクでは約15万円が最高額となっている。いずれにしてもなかなかの高価格で取引されていることが分かるであろう。
ラドウィグの特徴と資産価値
ラドウィグも、タンジェントと同じく非常にシンプルな文字盤が特徴であるが、タンジェントがアラビア文字を採用しているのに対し、こちらはクラシカルなギリシャ文字を採用している。
使われているムーブメントは、タンジェントと同じキャリバーαで、サイズも同じ38ミリとなっている。
シースルーのケースバックや、重さを感じさせない形状などタンジェントと共通する部分はこれら以外にも多くなっている。
このラドウィグの新品の価格帯は、タンジェントよりも少し抑え目の25万円前後となっている。
これに対して中古市場の取引価格は、メルカリの成約事例では11万円である。
ヤフオクでは事例が見当たらなかったので、出品されればなかなか希少価値の高い案件となるのではないだろうか。オリオンの特徴と資産価値
タンジェントやラドウィグよりもさらにシンプルさを追求したモデルが、オリオンである。
まさにバウハウスの模範ともいうべきシンプルな文字盤は、数字が一切記載されていないのが特徴である。
そのため、カジュアル、フォーマルを問わず着用することが可能であり、その実用性も群を抜いて高いと言えるだろう。
オリオンは非常の多くのタイプが存在しており、価格帯もまちまちであるが、人気のあるものだと新品で20万円から30万円ほどとなっている。
一方、メルカリでは10万円前後、ヤフオクでは13万円前後での成約事例を見ることができ、こちらも高額で取引がされている。
ノモスの資産価値を検証する
ここからは新品でも中古でも結構な高値で取引されているノモスの資産価値について検証してみることにしよう。
検証方法としては、時計の価値を左右する要素を順に取り上げたうえで、それがノモスに当てはまるかどうかを見ていくこととする。
搭載されているムーブメントの技術
時計の価値を評価するに当たって、もっとも重要な要素の一つがどのようなムーブメントが用いられているかということである。
大量に製造されていた廉価なムーブメントが搭載されているような時計は、実用性には問題はないものの、資産価値という点では大きく見劣りすることは避けられない。
高く評価されるのは、熟練の時計職人によって製造されており、他社から供給を受けずに自社で作られているムーブメントである。
この点、ノモスのムーブメントは、前述のとおりすべて自社製であり、そこに用いられている技術はグラスヒュッテにおいて100年以上にわたって連綿と受け継がれてきた高度なものである。
そのため、ムーブメントを見る限り、ノモスは一流の時計ブランドとしての価値を有するということができるであろう。
施されているデザイン
次に、腕時計に施されているデザインも価値評価における要素の一つである。 加えて、著名なデザイナーによって作られているというのもポイントとなる。
単に凝ったデザインにするのではなく、時間を知るための道具という時計の本来の用途を妨げることなく、いかにエレガントに見せるかが評価されるには必要となるのである。
この点、ノモスのデザインは、シンプルさを追求しており、実用性という面では全く問題はない。
加えて、バウハウスの特徴である機能美を備えており、パーティー会場などのフォーマルな場でも人目を引くエレガントさを兼ね備えていることから、そのデザインは他のラグジュアリーブランドと比較しても遜色のないものである。
歴史に裏付けられたブランド価値
三番目の要素となるのが、ブランドの有する歴史である。単に歴史が長ければよいというものではなく、長い歴史の間にいかに人々に支持されてきたかが重要である。
この点、ノモスは20世紀初頭に廃業を迎えてから、80年もの間閉鎖状態であったという変わった変遷を辿っている。
それにもかかわらず、長い年月を経て復活を果たしたということから、同社のブランドに対する人々の高い支持を窺い知ることができるであろう。
まとめ
以上、ムーブメント、デザイン、歴史の3つを時計の価値を左右する要素として取り上げた。ノモスはいずれも高いレベルで備えている。
ここで改めて価格を見てみると、タンジェントは一般的なもので40万円前後、ラドウィグは25万円前後、オリオンは人気のあるものだと新品で20万円から30万円で取引されている。
中古市場でも高額で取引されているという事実からも、高い資産価値を有していると考えることができるであろう。
