SMWS 119.10 山崎19年はザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)が販売していた銘柄だ。山崎蒸留所は日本の蒸留所として2番目にSMWSに指定された。SMWSはスコッチ愛好家の集団だから、ここの指定を受けるということは本場の舌に適ったことを意味する。
SMWSは蒸留所から原酒を樽単位で買い取って会員に販売する組織だ。1つの銘柄が樽1つ分しか販売されないため数が少なく、じきに販売終了となって中古市場ではプレミアムがつく。SMWS 119.10 山崎19年も例外ではない。今回はSMWSや山崎蒸留所について紹介しながら、2019年3月現在で得られたウェブ上の買取相場をお伝えてしていく。
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ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)の活動
SMWSはスコッチを原酒で味わうことにこだわる愛好家の集まりだ。蒸留所から原酒を樽の中の状態で買い取って、そのままを瓶づめして会員に販売している。価格は1万円弱から数万円といったところだ。
日本にも支部があり、インターネットサイトで入会と購入が可能だ。入会金は通常入会が10,000円で、他にミニボトル3本がついた20,000円のウェルカム・パックなどがある。SMWSのウイスキーは樽の酒をそのままボトリングしたものだからすべてシングルカスク、カスクストレングス、ノン・チルフィルタード(低温ろかなし)だ。
加水しないのでアルコール度数は60%前後と高い。ジャパニーズウイスキーではこれまで余市・白州・宮城峡・秩父・羽生・軽井沢などが選ばれている。
山崎蒸留所と日本のスコッチ
山崎は最も有名なジャパニーズ・モルトウイスキーだと言っていいだろう。そして山崎蒸留所は日本初の本格的ウイスキー蒸留所だ。職人たちの長年の努力によって、山崎蒸留所から芳醇で繊細なジャパニーズウイスキーのひな型が生み出された。だがSMWSによって最初に指名を受けたのは、山崎ではなく余市だった。これには歴史的な流れが深く関わっている。
山崎蒸留所と竹鶴政孝
サントリー(当時の名称では「寿屋」)の創業者鳥井信治郎は、赤玉ポートワインの大当たりで得た資金をもとに日本にも本格的なウイスキーの蒸留所を作ろうと考えた。当初は英国から技師を招く予定だったが、日本人として初めて現地の蒸留所にもぐりこんで製法を学んでいた青年がいると知る。それが竹鶴政孝だ。
竹鶴にはウイスキーを作るなら北海道という思いがあったが、流通コストなどを含め総合的に評価した鳥井は京都大阪の府境にある山崎の地に蒸留所を開設する。竹鶴は初代所長として10年活躍したのち、本場のスコッチに負けないウイスキー作りを目指して北海道余市に蒸留所を開き、本場仕込みのスモーキーなモルトを作り出す。彼のこだわりが後々SMWSの評価につながったわけだ。
山崎蒸留所のモルトウイスキー
山崎蒸留所では100種類程度のモルト原酒が作り分けされている。これは世界的にもまれなことである。スコットランドでは規模も得意分野も異なる蒸留所が互いに原酒を調達しあいながら操業をおこなっている。日本ではそもそも蒸留所の数が少なく、それぞれの蒸留所ごとに独立して製造をおこなうのが普通だ。
山崎蒸留所では1つ1つのモルト原酒ごとに発酵・蒸留・貯蔵のやり方が微妙に違う(例えばピートの使用の有無や程度など)。それらの原酒を鋭敏な神経と経験にもとづいてブレンドして生まれるのが山崎のシングルモルトだ。
SMWS 119.10 山崎19年の特徴
SMWSが山崎蒸留所の多様なモルト樽のなかから選び出したのが、SMWS 119.10山崎19年を含む119のシリーズである。
ボトルの名称
SMWSはブランドよりも樽にこだわり、商品をコードナンバーで呼ぶ。SMWS 119.10 山崎19年の正式名称は119.10で、119番目の蒸留所の10番目の樽を意味する。
SMWSの各ボトルには原酒の味わいを表現する奇妙なタイトルが添えられている。SMWS 119.10 山崎19年のタイトルは毎日がクリスマスだったら(I Wish It Could Be Chirstmas Everyday)だ。直接的な表現を与えられたボトルもあるが、多くはこういったなんとも言えないセンスのタイトルになっている。
シェリー樽熟成の個性的な原酒
119.10はファーストフィルのシェリー樽を使っており、アルコール度数は62.6%、ボトリング本数は465本となっている。公式テイスティングノートにはドライフルーツ、ブランデーが燃えさかるクリスマスプディング、ダークチョコレートなど、芳醇かつ苦みをともなった甘さを連想させる言葉が並ぶが、すったマッチと焦げたゴムという表現もある。加水後には素晴らしいバランスで親しみやすくなるというが、かなり個性的な酒のようである。
SMWS 119.10 山崎19年の相場
SMWSの各銘柄は1つの樽を使い切れば販売終了となる。もともと数が少なく、会員しか買えない品物だから中古市場での流通は限られ、希少価値は高い。ここでは2019年3月15日現在で得られた相場情報をお伝えする。かなりのプレミアムがついているので注目していただきたい。
買取業者の相場
大黒屋は非常に希少な品も含め幅広い銘柄について買取上限価格を公表している。SMWS 119.10 山崎19年には130,000円という値がつけられている。リストにあるSMWS山崎のなかでは最高額だ。
ちなみに最安値はSMWS 119.11 山崎 17年の60,000円である。ウェブ上の情報がごく限られているため、SMWS 119.10 山崎19年の販売時の価格は残念ながら筆者には不明だ(ある購入者のブログによると14,000円ほどらしい)。
SMWSのボトルには極端な価格差はなく、12~20年物でおおよそ12,000円~30,000円であるから119.10もそこに収まるはずだ。とすると、10倍程度のプレミアム価格が与えられていることになる。
ヤフオクの落札相場
2018年2月から2019年3月15日現在までの落札例は1件のみで、359,999円の即決価格で落札されている。希少さと山崎ブランドのなせるわざか、見事なプレミアムである。
ただし、これほどの高額が安定して望めるとは言い切れない。ちなみに海外のオークションサイトでは130,000~400,000円程度で落札されており、幅が大きい。
高く売るためのポイント
業者に売るにしてもオークションに出すにしても、品物の状態がよくて付属品がそろっていることが大事だ。ボトルやラベルの傷も問題になる。希少品の場合、きれいな状態を保っていれば空ボトルも売り物になることがある。買取業者とネットオークション、それぞれのポイントを見ておこう。
買取業者で売る場合
複数の業者を比較するのは定石中の定石だ。一括査定をすれば比較の手間はかなり軽減されるから、ぜひ利用すべきである。査定額の比較はもちろん、送料や出張費などの手数料、実物査定後にキャンセルした場合の返送料、振込手数料などもポイントになる。
同種のものをまとめて売れば増額が望めるかもしれないし、買取額増額キャンペーンがおこなわれていることもある。SMWS 119.10 山崎19年は特殊な商品だから酒に詳しい査定人がいる業者が望ましい。上で挙げた大黒屋は酒類専門の査定人を置いている。
酒類を専門的に扱っている業者としては、ファイブニーズ、レッドバッカス、ジョイラボなどがある。ハードオフにも酒類専門の店舗リカーオフがある。実際に問い合わせて、SMWSのことをわかっているような業者を選びたい。
ネットオークションに出す場合
業者の買取額よりオークション落札額のほうが高いのが普通だが取引の手間やかかる時間、リスクなどを勘定に入れると単純に値段の差がそのまま設けの差になるとは言えない。自分の目的と適性を考えた上でメリットとデメリットをハカリにかける必要がある。出品の際には商品のデータを集め、実物写真を用意し、商品説明の文章を練るといった手間がある。
相場を調べて価格を設定するというのもそれなりに時間を食う。落札者への対応、発送手続きなども慣れないと手間取る。なかにはわがままな落札者もいるし、落札しておいて取引を開始してくれないことすらある。
出品したとしても思うように値が上がらなかったり、なかなか落札されないこともある。金欠状態で売り上げを見込んでいたりするとジリジリさせられる。こうしたデメリットを考えても十分おつりが来ると思えたなら、ネットオークションは合理的な選択肢になるだろう。
所得税が課されたり、酒税法違反になる可能性も
高額ウイスキーを売って1回に30万円以上の収入になった場合、所得税が課税される可能性があるので注意してほしい。食器や衣類など生活で使うものを売る場合は、家庭用動産の譲渡と見なされて非課税だが、貴金属や骨董品などは1回で30万円以上の売り上げになると課税対象になる。
希少な高額ウイスキーは場合によっては骨董品などと同じと見なされる。とくに転売や投資を意図している場合はそうだ。また、ネットオークションで継続的に酒類を出品するとなると実質的に酒類販売業と見なされるから、酒税法にもとづいて販売業免許が必要になる。
まとめ
ウイスキーブームと市販高級銘柄の品薄状態が続いていることもあり、中古市場でのウイスキー価格は高めに推移している。山崎、白州、余市といった人気銘柄は特にそうだ。SMWS 119.10 山崎19年も10倍から10数倍程度のプレミアム価格になっている。
したがって、状態のいいうちに売ってしまうのも合理的な選択だろう。売る場合には自分に合った方法を選び、十分な事前対策をしておくことが大切である。今回紹介した相場情報や売り方のポイントをぜひ参考にしていただきたい。