NHKや毎日放送の人気番組に多く出演していた榊莫山は、掛け軸の買取市場において意外と注目度の高いマルチアーティストだ。書道、絵画、デザインと多彩な才能を持つ彼の残した作品の中には、飾り皿や色紙なども見受けられる。また近頃では、彼の執筆した「斉白石画集」や「榊莫山 自選作品集」などの書籍についても数万円もの高価買取実績が増えているため、榊莫山は掛け軸などの美術品以外でも高く売れるアーティストと位置づけて良さそうだ。
今回は、飄々としたキャラクターでお茶の間の人気者でもあった榊莫山の経歴や作風、彼の描いた絵画作品や掛け軸の買取相場などを皆さんと一緒に確認していきたい。
CONTENTS
こちらのページには広告パートナーが含まれる場合があります。掲載されている買取価格は公開日のみ有効で、その後の相場変動、各企業の在庫状況、実物の状態などにより変動する可能性があります。
榊莫山とは?
昭和~平成の時代に活躍した榊莫山は、バクザン先生の愛称で知られる前衛的なアーティストだ。京都府相楽郡にて小学校教頭の息子として生まれた彼には、自身にも公務員の教員だった経歴がある。
4人の師から絵画や書を学ぶ
個性豊かな書画を描く榊莫山は、書を松永楳園と辻本史邑、油画を佐々木三郎、美学を井島勉のもとで学んでいる。日本の美学者として知られる井島勉とは、選科生として入学した京都大学文学部で出会ったようだ。これに対して奈良在住の書家・辻本史邑については、奈良国立博物館で開催されていた第1回正倉院展を見たその足で入門に向かったと言われている。
書の世界で頂点へ
辻本史邑への入門によって本格的な書の道に入った榊莫山は、1951年から2年連続で漢詩の最高賞を受賞した。また20代で頭角をあらわした榊は、さまざまな展覧会への出品を経て若くして書道の頂点へと上り詰めたようだ。こうした形で日本書藝院展でもその実力を認められていた榊莫山の書画や掛け軸は、自由でありながらも書道家を納得させるだけの技量が整っていると捉えて良いだろう。
特定組織に属さない独自の世界観
20代で書道の頂点に辿り着いた榊莫山は、自身の師である辻本史邑が亡くなった1958年以降に奎星会や日本書藝院を退会し、書壇の世界から退いてしまう形となる。また特定組織に属さなくなった彼は、これまで得た知識や技法を使って独自の世界を制作する道へと進み始めたようだ。
現代の文人・榊莫山と詩書画
12年に渡って慕っていた師の死を含めたさまざまな出来事を経て故郷の伊賀に戻った榊莫山は、自宅のまわりにある野山を歩き、自然からアイデアを得た素朴な絵画に詩文を添えた、オリジナリティ溢れる詩書画の世界を確立した。
商業ロゴとキャラクターデザイン
宝酒造の「よかいち」などの書画ラベルの制作を経て自身もCMに出演した榊莫山は、バクザン先生という愛称で世間に広く知られるようになった。また彼らしい美しい書が社会に認められると、「甘辛しゃん」や「春よ、来い」といったNHK連続テレビ小説や和菓子メーカーの包装紙や看板などの制作依頼も入るようになったようだ。こうした形で幅広いシーンで活躍を見せた50代以降の榊莫山は、書画家からデザイナーやマルチアーティストの域にシフトしていったと捉えて良いだろう。
榊莫山の掛け軸やアート作品おける買取相場
波乱万丈とも言える書画家人生を歩んだ榊莫山の作品は、日本だけでなく海外のコレクターからも高い注目を集めている。ここからは、ヤフオクやライブオークションといった古物市場における落札相場や買取相場を少しご紹介していきたい。
観音経
榊莫山によって描かれた「観音経」の掛け軸には、86,000円もの高額落札に至った実績がある。2017年2月のオークションとなったこの作品は、現在写真データがなくなっている。しかし出品者側の「状態は良いです」というコメントや、外箱付きといった付属品の情報を確認すると、それなりにコンディションの良い榊莫山の掛け軸なら確実に高額落札が狙えると捉えて良さそうだ。
元永定正と榊莫山のコラボ作品
日本の前衛美術集団・具体美術協会が世界で注目される近頃では、そのメンバーだった元永定正と榊莫山のコラボレーション作品についても高く評価され始めている。故郷の伊賀市にアトリエを持っていた元永と榊は、同郷ということで意気投合する部分も多かったようだ。
そんな彼らによって描かれた書画には、美術品オークションで150,000円~1,800,000円もの落札額が入っている。こうした形で作品によって落札額に10倍もの開きが出る元永定正と榊莫山のアート作品は、それぞれが単独で描いた書画よりも遥かに高い価値があると捉えて良いだろう。
棗
ヤフオクには、榊莫山らしい書が描かれた棗や飾り皿なども出品されている。裏面に莫山の銘と印の入った棗には、センスの良い文字で「花アルトキハ花ニ酔ヒ」と書かれている。この棗については42件の入札数・80,000円でオークション終了となっているため、榊莫山の作品であれば掛け軸や書画以外でも高値がつくと言えるだろう。また棗などの茶道具は近頃人気の高いカテゴリとなっているため、もし不要と感じている作品があるなら、この売り時を逃さないようにして欲しい。
榊莫山の掛け軸を高価買取に繋げる査定ポイント まとめ
最後に、当ページのまとめとして、榊莫山の掛け軸やアート作品を高値で売るコツをまとめておこう。
掛け軸はコンディションが下がりやすい
湿気の吸収をしやすい掛け軸は、美術品の中でも経年劣化の進みやすい品目だ。日光によるヤケやシミなどによってコンディションの下がった掛け軸は、人気作家・榊莫山の作品であっても減額査定となってしまう。また市場によっては数百万円もの価額の付く榊莫山については、少しのコンディション低下で数万円の査定ダウンになることもあるため、正しい方法で掛け軸を保管する心掛けを忘れないようにして欲しい。
ヤフオクと買取業者、どちらがおすすめ?
榊莫山作品の売却で高価買取を狙うなら、断然、買取専門店の利用がおすすめとなる。買取業者のオンライン査定などを使えば、掛け軸の真贋もはっきりする。また榊莫山を中心とした書画や元永定正などの前衛アートに力を入れる業者であれば、依頼主を納得させられる価額も提示できるため、少しでも多くの現金を手にしたい皆さんこそ買取専門店を活用して欲しい。
買取店の問い合わせ前に準備すべきこと
買取業者に査定依頼をするなら、必ず写真と作品情報を準備してから連絡を入れるようにして欲しい。写真を用意する際には、作品全体だけでなく、銘や印の入った部分や絹本や紙本のコンディションがわかる構図で撮影を行うと良い。また軸装や共箱といった付属品も査定基準を左右するため、写真を用意する時には必ず掛け軸本体と一緒に撮影をしてみて欲しい。
複数社への問い合わせもおすすめ
初めての買取依頼で業者の比較検討が上手くできない場合は、いくつかの専門店に問い合わせをする方法もおすすめだ。この手段で複数社に写真や作品情報を送信すると、同じ条件で簡単に相見積もりをとることができる。また何人かの査定士とコミュニケーションを図っているうちに自分の作品の価値や市場動向などもわかるようになると言えそうだ。
詳しい査定額は現物を見せないと算出できない
榊莫山の掛け軸における正式な買取額は、現物を査定士が確認した後に算出される形となる。そのため、オンライン査定やメール、電話で教えてもらえるのは、仮査定の金額と捉えた方が良いだろう。こうした形で買取までにいくつかのステップを要する買取業者の利用時は、出張買取や宅配買取を使って少しでも早く査定士に作品を見せる心掛けが、スピーディーな成約に繋がると捉えるようにして欲しい。