現代では踊っている金魚や着物を着ている猫など奇想の絵師として知られる歌川国芳。しかし、豊国の門弟として入門してから十数年は全く注目を浴びず作品数も少なかった。人気を獲得してからも奇想の絵師としてではなく武者絵の国芳として、無骨で力強い武者絵で江戸の住民から支持されていて、さまざまな国芳の姿が見えてくる。
国芳の作品のみならず浮世絵は日本だけでなく世界中で注目を集めており、オークションで取引されたり美術館に所蔵されている。歴史的価値の高い作品であれば数千万円の値がつくこともある。
今回は歌川国芳の経歴を紹介した上で、作品の価値や買取相場について記載していく。国芳の作品を今後コレクションしたい方やすでに所有していて売却を考えている方はこの記事を参考にしていただきたい。
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歌川国芳とは
歌川国芳は、初代歌川豊国の門弟として知られ、歌川国貞(三代豊国)や歌川広重などとともに幕末期の浮世絵界を独占した。寛政9年(1797年)に江戸日本橋本銀町一丁目に生まれ、俗称、井草孫三郎(幼名は芳三郎)といった。文化8年(1811年)15歳のときに歌川豊国の門下となるまでは、北尾政美や北尾重政などの絵本を真似して描くなど早くから絵に興味を持っていた。
歌川派になってから錦絵は何点か作品は発表しているものの十数年は全く人気がなく、今ではライバルのように語られている歌川国貞と比べることもできないほどだった。また、金銭的にも余裕がなく、当初は兄弟子である歌川国直の家に住まわせてもらい仕事を手伝いながら生活していた。
このままでは無名のまま生涯を終えるところだったが、梅屋鶴寿と号した尾張家御用商人である遠州屋佐吉と出会い、力強いサポートを受けたことで文政10年ごろから水滸伝(すいこでん)を題材にした武者絵の連作を製作しだした。
このシリーズが爆発的な人気を得たことで歌川国芳は一気に人気浮世絵師の仲間入りを果たし、兄弟子である歌川国貞などと肩を並べ、幕末期の浮世絵界隈を支えていくこととなった。これ以降不遇の時代を忘れ去るかのように非常に多くの作品を製作し、美人画や風景画、風刺画などジャンルにこだわらず描いた。
歌川国芳の生い立ち
寛政9年(1797年)に江戸日本橋本銀町一丁目にて、染物屋を営む家に生まれ、俗称、井草孫三郎(幼名は芳三郎)といった。幼少の頃から絵に関心を示しており、北尾政美や北尾重政の絵本を真似て描いていた。
初めは勝川春亭に学んでいたとされるが文化5年(1808年)、12歳のときに描いた鍾馗提剣図(しょうきていけんず)を歌川豊国が目を留め、文化8年(1811年)15歳のとき、豊国の門下となった。兄弟子として歌川国貞がすでにおり、若手の絵師として人気を博していた。
国芳の名は文化10年(1813年)頃から見られ、文化11年(1814年)に刊行された御無事忠臣蔵の表紙と挿絵が初作品と考えられる。入門したばかりの頃、国芳は金銭面で余裕がなく、兄弟子である歌川国直の家で仕事を手伝いながら居候しており、そのことから初期の作風は豊国よりも国直の作風に近いものとなっている。
兄弟子である国貞などはすでに有名となっていたのに対し、国芳は十数年の間全く注目されなかった。文化12年(1815年)に三世中村歌右衛門の春藤次郎左衛門、翌12年(1816年)に浅尾勇次郎・五代目岩井半四郎・七代目市川団十郎などの錦絵を描いているがあまり人気が出なく、また作品数も少なかった。
転機となったのは文政10年(1827年)頃より、通俗水滸伝 豪傑百八人という水滸伝を題材にした武者絵の連作を描き、一気に人気絵師の仲間入りを果たした。武者絵の国芳として同時代の人気作家である国貞と並び評価されるようになり、加えて現在でも良く知られる風景画や奇想絵など多くのジャンルの絵を描いた。享年65歳であった。
歌川国芳の作品
ここでは国芳を一躍有名にした水滸伝シリーズである通俗水滸伝 豪傑百八人之壹人 浪裡白跳張順(ろうりはくちょうちょうじゅん)を紹介する。豊国の門人となってから全く人気が出ない時代を十数年耐えて過ごした国芳の出世作である水滸伝の連作。
のちに武者絵の国芳と呼ばれるほど国芳を有名にしたシリーズの中でもひときわ目立つ作品である通俗水滸伝 豪傑百八人一個 浪裡白跳張順。水滸伝シリーズは細かく描かれた刺青が目を引き、当時の江戸に住む人々の間で刺青ブームが起こるほどだったという。
この作品は中国の小説・水滸伝に出てくる登場人物である張順がメインで、杭州城を攻撃するため、張順の背後に見える水門(黒い鉄格子)を破ったシーンが描かれている。水泳の達人で単独城門前まで忍び込んだが、待ち伏せしていた敵兵によって集中攻撃を受け戦死した。鋭いにらみを利かしながら刀を口にくわえており、筋骨隆々な肉体で分厚い鉄格子を破ってきたことがわかる。
青紫の刺青を基調にしつつ、所々に赤い模様が彫られていて目立つ。四方八方に弓矢が飛んでいる様子から、すでに多数の敵と対峙しているが、一切ひるむことなく最後まで戦う意思がその姿、形相から読み取れる。今では風景画や金魚を人のように描いている奇想画などのイメージが強い国芳だが、当時は力強い無骨な武者絵によって人気を獲得していた。
歌川国芳作品の買取相場
国芳作品の買取相場を確認するには、オークションやオンラインストアなどで販売されている価格を参考にするのがおすすめだ。高いもので350,000円から安いもので5,000円と価格の幅が広い。
国芳作品の買取金額も同様のものと考えて良く、代表作であったり作品の保存状態が良いものであれば数十万円の価格がつくだろう。ここでは国芳作品の専門の販売店などで取引されているものを参考に買取相場を見ていく。多くの浮世絵、版画作品などを販売している山田書店のオンラインストアにて歌川国芳の作品が販売されていた。
四季遊観 夏 橋間のすずみ
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:350,000円
神我志姫
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1815-1842年
- ・価格:180,000円
戯画 朝比奈義秀
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:23.4 x 34.4(cm)
- ・制作年:弘化頃
- ・価格:150,000円
通俗水滸傳豪傑百八人之一個 打虎将季忠
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1828-1833年
- ・価格:150,000円
宮戸川岸の賑ひ
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1855年
- ・価格:150,000円
黒旋風李逵
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:150,000円
美人
- ・技法:木版
- ・枚数:2枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:120,000円
本朝水滸伝豪傑八百人一個 里美八犬子の内 犬塚信乃戌孝
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1830年
- ・価格:120,000円
役者絵
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1847-1852年
- ・価格:90,000円
詞花紅成盛
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1849年
- ・価格:80,000円
當盛見立人形之内 粂の仙人
- ・技法:木版
- ・枚数:2枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1856年
- ・価格:80,000円
七小町 関寺
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1855年
- ・価格:75,000円
山海愛度図会 チトお酒をはやらしたい 松前 おっとせい
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1852年
- ・価格:50,000円
伊賀越敵討の図
- ・技法:木版
- ・枚数:3枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1847-1852年
- ・価格:50,000円
妙でん老十六利勘 十一 煩悩損者
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:37.4 x 25.4(cm)
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:45,000円
妙でん老十六利勘 一 欲連損者
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:37.1 x 25.3(cm)
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:45,000円
程芳流行大津絵 清水冠者義高
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:36.4 x 25.1(cm)
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:40,000円
程芳流行大津絵 宮本無三四
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:36.5 x 24.9(cm)
- ・制作年:1843-1847年
- ・価格:40,000円
絵兄弟見立武者合 楠公ノ夜打
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1815-1842年
- ・価格:18,000円
当秋八幡祭
- ・技法:木版
- ・枚数:2枚続
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1834年
- ・価格:15,000円
芝居絵
- ・技法:木版
- ・枚数:2枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1847-1852年
- ・価格:15,000円
江都錦今様国尽 淡路(源兼昌) 阿波(おゆ美)
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:35 x 24(cm)
- ・制作年:1852年
- ・価格:10,000円
太平記英雄傳 小綾川左衛門佐高兼
- ・技法:木版
- ・枚数:1枚
- ・サイズ:大判
- ・制作年:1847-1852年
- ・価格:5,000円
歌川国芳作品の売り方
歌川国芳の作品の買取相場を紹介してきたが、すでに国芳の作品を所有していてこれから売却を考えている方もいると思う。ここからは国芳の作品を売る際のポイントを紹介する。
作品の保存状態
どの時期に制作された国芳の作品なのか、また歴史的に価値の認められた代表的な作品なのかなど価値を決める際に重要なポイントになってくるが、それと同等に重要なのが作品の保存状態だ。歌川国芳の作品だと制作された時代が数百年前と古く、作品の劣化が激しいことがある。
国芳が手がけた浮世絵だけでなく、日本画や油絵など絵具を用いたものや版画などの紙に刷った作品すべてにいえることだが、作品の価値や価格を決めるのに保存状態は非常に重要だ。作品をぶつけたりしたことでできる擦り傷や穴、折れ、また日焼けやカビなどによって作品の価格は大きく変動する。
美術専門の修復師に頼めば作品の復元も可能だが、別途高額な費用がかかってしまうため、事前に作品の保護をするようにしてほしい。さらに作品の移動や保存する際には木箱など専用の保管道具を使うようにしていただきたい。持っている作品や購入した作品を自宅で飾って眺めたい人もいると思う。
そういった場合は直射日光があたる場所を避けて展示してほしい。長時間日にあたることで作品が茶色く日焼けし、元の状態には二度と戻らなくなってしまう。美術作品は手に入れてからも非常に気を使わなければならない。作品をすでに持っている方もこれから購入する方も作品の保護を徹底していただきたい。
複数の業者で価格の比較をする
作品の売却を考えている方は近くの骨董屋などに売るのではなく、ギャラリーや老舗の画廊、オークションなどで価格の比較をするようにしていただきたい。売る場所によっては数万円単位で価格が変わってくることもあるので吟味しよう。
歌川国芳作品をどこで売るか
歌川国芳の浮世絵作品をはじめ、日本画や油彩画などに詳しくなく、美術作品を売却したい場合、どこで売るのが最も良いのかわからないかと思う。ここでは代表的な作品の売り方について紹介するので参考にしていただきたい。
オークション
最近では自宅で簡単に個人出品ができるネットオークションが普及してきているが、従来のオークション会社が運営する会場で開催するものもある。会場で取引をする場合は、事前にオークションに参加するギャラリーなどに一度連絡を取り予約してから出品するケースもあるので、情報を集めた上でオークションに参加してほしい。
買取業者
美術作品専門の買取業者に依頼することで熟練の専門査定員が、作者、制作年、歴史的価値など詳細な情報を総合的に判断した上で価格を設定してくれる。世界中で取引されている美術作品の最新情報を持っているため、美術に詳しくなくても安心して任せられる。自宅に呼んで査定をしてくれるサービスもあるため、簡単に運び出せない作品や時間があまりない方でも、自分の都合に合わせて予定が組める。
買取業者の紹介:八光堂
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
国芳作品を売却する際、多くの買取業者の中から選ぶのは迷うだろう。今回おすすめするのは40年以上の買取実績と多数のメディア出演を果たしている八光堂だ。その実績は確かで著名な作家の作品からあまり知られていないものまで幅広く買取をおこなってきた。
ホームページを見ると鑑定士1人1人を紹介しているため、買取依頼をする側も安心して査定に出せるだろう。査定方法としては全国出張や店頭での買取はもちろん、メールやスマホアプリのLINEを介して作品の写真を送り査定してもらうことも可能だ。査定は無料で店頭買取時などの場合は即現金買取ができ、自分の目の前で取引ができるため安心だ。
まとめ
歌川国芳は幼き頃から絵に関心を持ち北尾重政や北尾政美などの絵本を真似て描き技術が自然と磨かれていた。歌川豊国の目にとまり若くして入門したがそこから数十年、名声としても金銭面としても苦しい生活を強いられることとなった。そして、転機となった水滸伝シリーズのおかげで一気にスターダムを駆け上がり、兄弟子である国貞などと同時代の人気浮世絵師として肩を並べることとなった。
現代では動物を人のように描いたりするなどコミカルな画風で知られるが、在世当時は、武者絵の国芳と呼ばれ、力強さあふれる豪傑の姿を描く絵師として人気だった。国貞と比べると作品数においては劣るが役者絵、美人画、風景画、風刺画、奇想画など多くのジャンルを描いた多彩な作家といえる。
美術作品は日々価格が変動していて一定ではなく、価格が高騰することもあれば、下がることもある。作品を購入したい場合は、そのときに販売店やオークション等で価格帯を確認し、欲しいときに購入するのが良いだろう。
すでに所有している作品を売却したい場合でも、心からその作品を欲しい人に売ることで作品がこれから先の未来も残っていき、文化の保存という観点からも重要なので、売る相手やタイミングを見て売っていただきたい。