白隠禅師(白隠慧鶴)の描いた禅画や墨蹟は、掛け軸における買取市場の中でも大変注目度の高い存在だ。今から250年前に亡くなった白隠の作品は、希少性だけでなく歴史的価値が非常に高いことでも知られている。また茶道具の買取市場が活況を迎える近頃では、茶室を彩る存在として禅僧による掛け軸に高価買取実績が増えているため、自宅に眠る白隠禅師作品の売却を考えている皆さんにとっても、より良い売り時が訪れつつあると捉えて良いだろう。
今回は、たくさんの掛け軸を世に残した禅僧・白隠禅師の経歴や魅力に触れながら、買取市場における相場や査定ポイントを紹介していきたい。
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白隠禅師とは?
白隠慧鶴という本名を持つ白隠禅師は、江戸時代中期に活躍した臨済宗中興の祖と呼ばれる禅僧だ。仏法の悟りを開くためにストイックに禅修行に臨んでいた白隠は、彼自身の禅病を治すために考案した治療法により、多くの修行僧を救ったことでも知られている。また白隠禅師によって見出された治療は、気功で例える気海丹田式となるため、現代においても多くの人が彼の健康法を実践していると捉えて良いだろう。
白隠禅師と禅画
民衆への普及活動を広く行っていた白隠禅師は、禅の教えを人々に教えるために1万点以上の絵画を描いていたと言われている。独学で絵の制作を行っていた白隠は、現存する絵画の中で最も製作年の早い「達磨図」の中でも巧みでユーモラスな画技を見せている。また技巧を拒んだ白隠禅師らしい表現は、縦2メートル20cm以上の大作「達磨図」を描いた1751年頃から多く見受けられるようになったようだ。
白隠禅師と墨蹟
白隠禅師の技巧にこだわらない反則技と言える作風は、墨蹟の中でも多く表現されている。またさまざまな書道史を研究する石川九楊は、書法の失調により書ならざる書と白隠禅師の作品を評しているようだ。こうした形で一般の書のイメージを特殊なスタイルで超越した白隠の精神は、掛け軸作品の高い価値として現代人の心にも強いインパクトを与えていると捉えて良いだろう。
白隠禅師のコレクターと所蔵美術館
白隠禅師には、山本発次郎と細川擁立という2人の代表的コレクターが存在する。大阪の実業家だった山本発次郎のコレクションは、大阪近代美術館に寄贈されている。これに対して日本の文化財保護に尽力した細川擁立のコレクションについては、細川家伝来の古文書や美術品の保管目的で設立された永青文庫にあるようだ。こうした形で有名コレクターによる収集や美術館への寄贈が行われた白隠禅師の作品は、買取市場における流通量が少ないと言えそうだ。
死没から250年
白隠禅師の死没から250年後となる2017年には、彼が住職だった松蔭寺で記念行事が開かれたばかりだ。また沼津市教育委員会では、松蔭寺に所有されている白隠禅師の坐像を市の文化財に指定しているため、こうした死没250年という節目ならではとも言える多くのニュースによって彼の存在が注目されつつあると考えて良いだろう。
白隠禅師の掛け軸における買取相場
白隠禅師によって描かれた作品の買取実績を調べてみると、一般の掛け軸と比べて遥かに高い買取相場で取引が行われている実態が見えてくる。
相撲画賛
愛らしい力士が真ん中に描かれた「相撲画賛」は、ヤフオクにて100,000円の価格で落札された掛け軸だ。紙本のヨレやシミによってコンディションが良いとは言えないこの作品には、トータル98件もの入札が入っている。またヤフオクにはこの他にも100,000円〜130,000円ほどでオークション終了となった作品がいくつかあるため、50,000円〜70,000円ほどの落札額になることの多い一般の掛け軸と比べて白隠禅師は人気の高い存在と捉えて良いだろう。
人麻呂図
右側に柿本人麻呂が詠んだ句の描かれたこの作品には、人気テレビ番組・開運なんでも鑑定団で1,500,000円もの鑑定額が付いた実績がある。多くの人に禅の教えを教えようと考えていた白隠禅師は、掛け軸の中に詩と絵の両方を描いていたことで知られている。またこうした白隠ならではとも言えるユーモアな作品の数々には、彼のコレクターの間で非常に高い人気があるようだ。
龍杖払子
76歳の白隠禅師が描いたと推測される「龍杖払子」には、開運なんでも鑑定団にて3,000,000円もの鑑定結果がでている。この価格は、古美術商における査定額とは少し異なる位置づけとなる。しかし白隠禅師の作品には晩年になればなるほど価値が高まるため、この事例についても、その傾向が顕著にでていると言えそうだ。
巻物
白隠禅師の作品の中には、古い時代の墨蹟におけるスタンダードだった横書きの巻物も存在している。掛け軸がメインとなる白隠の中で、巻物はやはり希少性の高い存在となる。またなんでも鑑定団では、掛け軸としては非常に珍しい4,000,000円もの鑑定結果がでているため、同じ禅僧に描かれたものであっても横書き・縦書きによってその価格にかなり大きな開きが出ると捉えて良いだろう。
白隠禅師の掛け軸を高価買取に繋げる査定ポイント
掛け軸市場の中で大変人気の高い白隠禅師の作品は、下記4つの査定ポイントを徹底することで高価買取に繋げやすくなる。
白隠禅師の掛け軸には贋作も多い
白隠禅師だけでなく、禅僧によって描かれた禅画や書の掛け軸には、贋作が非常に多いという難点がある。こうした実態を知らずに自身の掛け軸に対して本物と断定していると、後々売却する時に買取を断られることもあるため、注意が必要だ。こうしたトラブルを防ぐためには、素人ならではとも言える勝手な信じ込みをやめて、信頼できる買取業者で早めに真贋をはっきりさせるのが理想となるだろう。
掛け軸のコンディションを保つ扱い方
死没から250年も経っている白隠禅師の掛け軸は、どんなに丁寧に保管されていたものでも、多くの紫外線焼けや紙本のヨレ、軸装の傷みなどが見受けられる。また遺産相続などによって次に引き継ぐ人によっては、更に経年劣化が進む可能性もあるため注意が必要だ。大変デリケートな掛け軸の保管には、温度変化と湿気の少ない場所が適している。また茶室などに掛けた場合についても、最大2週間が理想と言われているため、その扱いがわからない時には早めに古美術商に問い合わせをした方が良いだろう。
白隠禅師の掛け軸は今が売り時
死没250年記念行事や沼津市の文化財指定によって注目度の高まる白隠禅師は、話題性の高いうちに売却するのがおすすめとなる。また報道による話題性は、禅画コレクターの心を良い意味で刺激することも多いため、こういったニュースによって白隠禅師の買取市場に若干の活況が生まれている今がより良い売り時のひとつになると言えるだろう。
白隠禅師の掛け軸はどんな買取業者で歓迎される?
白隠禅師の掛け軸は、禅画、書画、書などに詳しい業者に査定依頼するのが理想となる。また掛け軸市場においても高値で取引される白隠の作品は、資金力や販売ルートの豊富な専門店に持ち込むことで、数十〜数百万円もの高価買取に繋げやすくなる。また禅画に詳しい業者では、制作年代や作品のテーマに応じた買値を付けてくれるため、こだわりの掛け軸を売る側にとっては納得の査定が行いやすいと言えるだろう。
もし自分の所有する作品に適した買取店が見つからない場合は、禅画や掛け軸の買取実績のある業者に問い合わせをして相見積もりにチャレンジすることをおすすめする。