日本人ならクロード・モネ(モネ)の名を知らない人は、あまりいないのではないだろうか。その絵は世界の名だたる美術館で展示されている。絵画に詳しくなくともモネの絵が海外オークションで数十億円で取引されていることを知っている人も多い。
自宅に絵画が眠っている、という人もいるだろう。使っていないものと一緒に蔵に入れて忘れてしまっていたり、遺品の整理をして見つかったりすることもあるかもしれない。その中にモネの作品が眠っていたら、とても大きな金額をつかむチャンスだ。
睡蓮シリーズや積みわらシリーズに代表される有名な作品の他にも、モネは絵画やデッサンを多数残している。今回は、モネの絵画、作品の価値と買取相場、売買での注意点などをわかりやすくご紹介したい。
本記事のポイント
- モネの作品は価格差がある
- 高額なものだと数十億円の可能性もある
- モネほど高い作品はどうやって売る?

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クロード・モネとは
クロード・モネ(1840年11月14日〜1926年12月5日)は、印象派を代表する19世紀フランスの画家だ。幼い頃から絵がうまく、人物のカリカチュアを描いて売るほどだったと言われている。1865年25歳でサロン・ド・パリ(サロン)に初入選したが、その後1869〜70年は落選が続く。
1874年に仲間たちとサロンとは独立した展覧会を開催して「印象・日の出」などを出展し、これが印象派と言われる由来となった。モネは「自然に対して自分が認識した感覚を表現する」という基本的な印象派の哲学を貫いている。印象シリーズや睡蓮シリーズに代表される、太陽光の変化、時間や季節とともに変化する風景をとらえるために、時間帯や視点を変えて何度も同じ風景を描く方法を確立させた。
1883年にジヴェルニーに家や土地を購入し、生涯ここで暮らす。1898年頃から自宅の睡蓮の池を集中的に描くようになり、睡蓮シリーズと言われる日本で人気の高い作品群を作り上げた。最初は日本風の太鼓橋を中心に置いた垂直的視点で描かれたものだった。19世紀中頃、日本の浮世絵版画が大量にフランスなどに流出しジャポニズムと言われる日本趣味が流行。モネの構図も、日本の浮世絵から影響を受けたと言われている。
モネの主な代表作
モネの作品は、フランス出身の国際的な画商ダニエル・ウィルデンシュタインが全5巻(4巻および補遺から成る)のカタログ・レゾネを刊行している。ここに油彩2000点、デッサン500点、パステル画100点ほどの作品が時系列順に収められ、このうち睡蓮シリーズは約300点にも及ぶ。
日本で人気の主な代表作に、下記などが挙げられる。
- ・印象、日の出:1874年の第一回印象派展に出典された、モネの最も有名な作品
- ・日本の太鼓橋:モネの、睡蓮シリーズの一作品
- ・ラ・グルヌイエール:セーヌ河畔の水上レストランのある水浴場が描かれた作品
- ・かさざき:フランスの避暑地エトルタの雪景色
- ・散歩、日傘の女:妻カミーユ・ドンシューと長男のジャンがモデル
- ・日没の積みわら、霜の日:積みわらシリーズの1つで、積みわらシリーズはモネが名声を得る重要な作品群
- ・サン・タドレスのテラス:サン・タドレスに住む一家を描いたもの
- ・ラ・ジャポネーズ:モネの日本趣味とモネ自身の西洋美術のアイデンティティが融合された作品
シリーズでは、印象シリーズ、睡蓮シリーズ、積みわらシリーズがある。
モネの作品の価値
モネの作品にはどのくらいの価値があるのか。驚きの落札価格を振り返ってみよう。
高額で落札されるオークション
1998年に「Bassin aux nympheas et sentier au bord de l’eau」という作品が1,980万ポンド(約48億7,000万円)で落札されている。これは、2008年のオークションで「睡蓮の池」4,100万ポンド(約87億円)に塗り替えられるまで、モネの作品の中で1番の落札価格であった。
2007年には、ロンドンのサザビーズのオークションでモネの睡蓮シリーズの1つ「睡蓮」が1,850万ポンド(約45億5,000万円)という驚きの高価格で落札された。モネの作品としては当時で史上2番目に高い落札価格となった。2021年にはサザビーズで「睡蓮」がオークションにかけられ、今度は7,035万ドル(約77億円)で落札されたことが報じられた。

同オークションでもう一つ注目された作品は、モネの「ウォータールー橋(Waterloo Bridge)」の落札価格で、1,790万ポンド(約44億円)と予想価格の3倍近くに跳ね上がったと言われている。また、モネの別の作品でベルジニーの自宅にある睡蓮の池とあずまやを描いた「Les arceaux de roses, Giverny」 が、900万ポンド(約22億1,500万円)近い値がついた。
全てが高評価とは限らない
しかし、巨匠モネといえどもすべてが傑作ばかりではなく、「積みわら」を描く3年前の1888年、モネは南フランスのリゾート地を旅行をして30点ほどの絵を描いた。この時描いた「ジュアン湾」はオークションであまり高値がつかず、手数料を含めた金額で133万ドル(約1億6,000万円)だった。
2008年にロンドンのクリスティーズに出品された1m×2mの「睡蓮の池」は4,100万ポンド(約87億円)で落札されており、同じ作者でも価格に大きな差が出ている。モネは1926年に86歳で亡くなるまで絵を描き続けた。しかし、晩年は白内障に悩まされていたと言われ、白内障のせいで色の見え方が変化し、奇妙な色の絵も描いている。
失明の危機もあったが1923年に手術を受け、その後2m×6mの大作「睡蓮」の大装飾画を何枚も完成させている。いつの時代に描かれていて、どういったテーマの作品か、人気のシリーズかどうかで価格、評価がわかれるところなのかもしれない。
有名画家の作品は偽物があるため注意
モネのような超高額で取引される画家の作品には、偽物が数多く存在する。偽物とは、本物の絵画を複写、模倣しているにも関わらず本物と偽って展示したり、販売したりしているもののことだ。偽物は違法行為にあたり、買取はしてもらえないはずだ。コピー機でコピーしただけの粗末なものから、高度な技術を使い線の描写までそっくりに真似て描かれ、サインも本物の画家に似せて書いてあり判別が難しい悪質なものまである。
一方で、複製画とは既存の画家の絵画を模写して、別の画家が描いたものである。本物ではないことを明確に示し合法的に展示、販売されている。複製画や関連の商品は多数販売されているが、偽物と本物の区別は専門家でもとても難しく時間を要する。サイン、落款を本物と比べたり、画風や筆のタッチが本物の画家が描いたものか検証したりしても、近年偽物の技術が非常に高くなり、よく似せて描かれたものは専門家でも悩むことがあるからだ。
化学的に絵の具やキャンバスの年代を分析し、時代考証して作家の活動履歴を追って描かれた時期から検証したり、入手経路から検証したりと、はあらゆる角度から見て判別しないとわからないこともある。素人が独断で判断せず、鑑定は専門家を必ず頼ろう。
モネの絵画・作品の買取相場
モネの絵画を売るとしたらどこか。国内ネットオークション、画廊や絵画買取専門業者で比較したため、参考にしてほしい。
国内のオークションサイト
国内のネットオークションでは、複製画の出品は多い。しかし、2019年4月20日現在モネのような高値がつく画家の作品は本物の出品はなかった。万が一出品があれば、そしてそれが有名な絵画であれば、世間でも話題になるだろう。
国内ネットオークションやネットフリマでの出品はやめたほうがいい。本物との鑑別が難しいからだ。価格が高騰して高値がつけばつくほど、トラブルになれば代償は大きくなる。
鑑定書がついていたとしても、まずはその鑑定書がきちんとした信頼できるものなのかどうかを調べる必要がある。本物かどうかきちんと鑑定してくれるところを選ぶのが賢明だ。
画廊・絵画買取専門業者
絵画専門に買取している業者や画廊は多く、売りに出すということは珍しくない。経験と知識が豊富な鑑定士が相談に乗ってくれる。モネの作品の買取実績、価格をネット公開している業者はなかったため、電話でいくつかの業者にだいたいの価格を問い合わせた。しかし、価格を明確に示すことができる業者、画廊はなかった。

モネのような超有名な世界でトップクラスの値がつく画家の作品は、まず一緒についている鑑定書が正しいかどうかの調査をする。その後、絵画を検証したら競売大手クリスティーズやサザビーズなどの海外オークションでの価格を参考に、いくらの値がつくか検討される。
作品の種類や状態、価格によって、海外オークションへ出したほうがいいのか、買取の方がいいのか、どうしたら一番高値がつくのか検討するため、この作品はこれという価格設定がない。絵の大きさ、描かれた年代によっても査定額に影響するとのことだった。
もし相場というものがあるとしたら、数千万円ほどで取引される作品もあるし、数百億円の値がつくも作品もあると教えてくれた画廊もあった。いずれにせよ、モネの絵画は本物なら巨額のお金が動く。
またモネのように価値が高いものは、来歴(所蔵歴)も重要で、前の持ち主がどんな人物だったかも価格に反映されることもある。信頼できる相手で著名人などであったら、それで価格が少し上がることもあるようだ。
鑑定には鑑定料がかかる
買取業者に無料鑑定を依頼して出してもらえるのは、鑑定書でなく査定書だ。モネのような超有名画家の絵画の鑑定には、時間がかかる場合がある。きちんと本物であるという鑑定をして鑑定書を出してもらう場合に、有料になることがほとんどだ。
鑑定料の相場は、だいたい30,000〜60,000円で、鑑定書作成料には別途かかることもあるため、鑑定に出す際に必ず確認しよう。偽物の場合に安くなる設定となっていることもある。

LINE査定に対応している買取業者
ここでいくつかおすすめの買取業者を紹介したい。査定依頼したいものがある人は、ぜひ参考にしてほしい。
本郷美術骨董館
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
鑑定士が27人在籍するさまざまなジャンルの美術品、絵画などに対応してくれる買取業者。電話鑑定、写真鑑定、来店鑑定、宅配鑑定、出張鑑定と、5種類の鑑定方法から選ぶことができる。また「無料お宝鑑定会」として全国で鑑定会を開催。鑑定歴40年を誇り、メディアへの出演回数も多い。
八光堂
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
古美術買取業者の中では大手に位置付けられる八光堂は、 創業40年以上の買取業者。テレビメディア出演のほか、日本能率協会総合研究所調べで査定額満足度1位を獲得したようだ。メールやLINE査定に対応しており、店頭・出張で買取をおこなっている。
出張買取に対応している買取業者
美術品・絵画買取センター
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
査定額に自信持ち、査定後にしつこく電話やアポイントなしの訪問をするような悪質な営業を一切しない顧客に優しい買取業者だ。高額な買取価格を提示した後に再査定により、査定額が減額されることもない。信頼されることをモットーとした買取業者である。
宅配買取、訪問買取、店頭に持ち込む来店での買取に対応。買取実績が豊富で、アンディ・ウォーホルの作品で2億円をこえる買取実績もある。
ギャラリーホープ
買取価格
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許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
独自の絵画、美術品データベースを持ち、国内外の最新オークションデータを元に査定価格を算出。全国の数多くの優良顧客から信頼を得ているため、相場より高い買取が可能だ。
高額の絵画や美術品もすぐに現金での買取に対応し、1,000万円をこえる絵画や美術品も現金で買取してくれる。出張買取、店頭買取、宅配買取のいずれかを選ぶことができる。
絵画を高く売るときのコツと注意
モネの作品に限らず、絵画を査定に出すときに注意すべき点と高く売るためのコツをご紹介しよう。これを参考に納得のいく高値を目指していただきたい。
絵画の詳細情報を調べる
その絵画が描かれたのはいつの時代か、どういった作品なのか情報をできるだけ集めよう。絵画を購入した時に判明していれば良いが、作品の詳細情報を知らずに鑑定に出すのは危険だ。作品についているサインを確認したり、ネットでモネの絵画の一覧や画像検索して似た作品があるかどうか調べたりと、少しでも情報はあった方がいい。
付属品、鑑定書、保証書があるか確認する
絵画の購入時に保証書、または本物であるという鑑定書がついていたらそれも一緒に査定に出すのが基本だ。どこでどのように鑑定されたものなのかも重要となる。鑑定書がついているとひとまずは安心だ。ない場合は鑑定機関で鑑定してもらう必要があるケースも存在する。
しかし、絵画についていた鑑定書自体も偽物である可能性が考えられる。鑑定書が安心できるところのものなら良いが、いつ購入したかわからないものや海外業者から購入したものなど、ついている鑑定書が信用できるか不明の場合もある。その際もあるものは全て一緒に査定に出すことをおすすめする。
購入時についていた額縁や、入っていた箱もあれば一緒に査定に出した方が良い。付属品がそろっていると査定額に反映する場合がある。
見た目をきれいにしてから売る
長年の保存で、ホコリをかぶってはいないだろうか。簡単に落ちるホコリは、落として見た目をきれいにしよう。ただし、くれぐれも無理に取ろうとしてこすったり、水拭きしたりしないようにお願いしたい。
年代物の絵画は、キャンパスがもろくなってちょっとの衝撃に弱くなっている可能性がある。シミやカビは、専門の業者でないときれいにすることは難しい。きれいな状態で査定に出したいところだが、落ちない汚れやホコリなどは、下手にいじらずそのまま査定に出そう。多少劣化してしまったとしても、本物のモネの作品なら買取してもらえるはずだ。諦めずに買取業者に相談してほしい。
複数の業者、画廊、古美術商へ査定の依頼をする
画廊や古美術商、絵画買取専門業者には経験豊富な鑑定士がおり、確かな目で査定をしてもらえる。絵画は日本画、洋画、さまざまなジャンルがあり、あらゆるジャンルの絵画に対応している専門の業者なら、各々の専門分野に明るい鑑定士が在籍している。ほとんどの業者で査定を無料でおこなっているが、査定後のキャンセルにキャンセル料が発生する場合があるため、査定依頼をするとき必ず確認した方が良い。
鑑定士の経験や知識、業者の資金力によって査定額に差が生じることはよくあることだ。複数の業者に鑑定と査定を依頼すると、納得のいく価格に近づくのではないだろうか。
配送時にも注意を
絵画などの高額な美術品を宅配買取として発送する場合、配送保険をつけるのがおすすめだ。ヤマト運輸や佐川急便などで利用でき、50円〜1,000円ほどで配送保険をつけることができる。また配送時に作品を傷めないような工夫が必要となる。配送中に万が一作品が傷んでしまったら、査定額に大きく反映する場合がある。作品をクッション材のような緩衝材でしっかりと包み衝撃を避けること、箱の中で振動を与えないよう隙間にも緩衝材を入れて隙間を埋め、動きを止めるきっちりとした梱包を意識すると良い。
まとめ
絵画は、作品を気に入り思い入れがあるとなかなか手放しづらい。自宅で大切に飾ることで空間が彩られ、眺めることで心の豊かさが生まれる。だが、飾らずに眠らせてしまっているのであれば出して状態を確認し、誰のどんな作品か見てみてほしい。
それが「光の画家」と呼ばれ日本でも人気の高いモネの作品なら、油彩画ではなくラフなデッサン画でもかなりの高値がつくことが予想される。モネは、生涯で残した作品が多い画家である。全てが高評価で数十億から数百億の値がつくわけではないが、本物ならかなりの高値になるだろう。
絵画は鑑賞されてこそ価値がある。飾る予定のないものは、一度整理してみてはどうだろう。人生に豊かな輝きをもたらしてくれるかもしれない。