徳岡神泉は、神泉様式と呼ばれる特徴的な画風やきめ細かな地塗りで、多くの脚光を浴びた日本画家である。数々の魅力的な作品を生み出し、戦後の画壇に多大な影響を与えたとして1966年には文化勲章を授かっている。独自路線を切り開いた開祖という一面も持ち合わせており、徳岡神泉の作品を求めるファンやコレクターは多い。
この記事では、そんな徳岡神泉による作品の買取相場や日本画作品を買取依頼する際のテクニックなどについて紹介していく。
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徳岡神泉とは
徳岡神泉は、1896年に京都市内で生まれた日本画家である。本名は、時次郎という。徳岡神泉は早い段階から美術に興味を示し、1909年に土田麦僊の紹介で竹内栖鳳の画塾竹杖会に入会、以降も京都市立美術工芸学校絵画科や京都市立絵画専門学校を経て確かな技術を身に付けた。学生の時期は輝かしい成績を修め、卒業制作が学校買い上げにもなった徳岡神泉だったが、京都画壇への登竜門とも言える官展への入選が上手くいかず、学業終了後はその苦悩に襲われる。
1918年は同期が入選していった影響で、寺などを転々としながら芸術について思案する日々を過ごした。そんな徳岡神泉の転機となったのは1920年の結婚だった。伴侶を得た影響もあり、この時期から新しく絵を学びなおそうと考え、再び竹杖会に入塾する。
1947年は独自に確立した神泉様式をもって描かれた『赤松』を発表。大胆に省かれた画面には、一部で疑問の声も上がったが、地塗りの美しさや神泉様式ならではの奥深さが話題を呼び、人気を確かなものにしていく。1966年には文化勲章を受賞し、体調不良で画業をおこなえなくなった晩年まで魅力溢れる作品を世に送り出し続けた。
徳岡神泉の代表作
徳岡神泉の代表作を2点紹介していく。
菖蒲（しょうぶ）
周囲の風景、生物が省かれ、浮き彫りになった菖蒲が印象的に映る一作である。モチーフの菖蒲以外の要素がないため、菖蒲の魅力を存分に画面内へ収めることに成功しており、周囲も想像の余地を与える空気感で溢れている。
蕪（かぶ）
中央に蕪が配置された大胆な作品だが、繊細な地塗りによる効果で独特の奥深さを表現している。周囲を表す描写が何もないため、蕪が存在するのが地面や水中なのか、それとも空中や宇宙なのか見る側に考えを委ねている大変ユニークな作品だ。
神泉様式について
徳岡神泉を語る上で欠かせないのが、氏の確立した画風とも言える神泉様式だ。神泉様式は、説明的な表現や画面構成に思い悩む徳岡神泉が考案した、モチーフ以外の事象や物を省いた作風のことで、基本的に描写対象の造形だけが画面に描かれている。日本画は引き算の美と称されるように最小限の要素で美しさを楽しむ美学が根底にあるので、神泉様式を古き良き日本画精神を体言するスタイル、と考える見方も多い。
ただし、「赤松」などの作品発表がされた当時は、斬新ぶりに戸惑いを感じた人が多く、「これが日本画の部類に入るのか」という声が多数上がった。
徳岡神泉の買取相場
日本画を含む美術品の買取相場は、取り扱う業者や作品のコンディションによって大きく異なる。過去には、徳岡神泉の掛け軸作品「秋」が8万円の値で取引された。「秋」は神泉様式確立後のもので、鮮やかに描写された草花と花の上に止まっている蟷螂に風情を感じる一品である。全体的に状態は良く、真作証明の確認ができて付属品もそろっていた。
贋作と複製画について
絵画作品には作者本人によって制作されていない、贋作や複製画が存在する。日本画作品にも贋作や複製画が流通している可能性があるので、購入や所持をする際は注意しなければいけない。贋作と複製画はそれぞれどのような特徴を持つのか、その違いを以下にまとめた。
日本画の贋作とは
贋作とは、本物そっくりに描写した偽物作品のことを指す。贋作の作成方法は多岐に渡り、切り貼りやデジタル処理、写しなどをおこなうのが一般的である。日本画の場合は、作家のファンや弟子が贋作を作成した例もあるので、作品の売り買いをする際は充分に気をつけないといけない。
ちなみに、作品の真偽は証明する付属品や本人の銘、サインによって見分けることが可能だ。ただし近年の贋作は、細かい部分まで偽造が施されているものが多いため、鑑定する作品や作家に詳しい専門家でなければ責任のある鑑定はできない。
日本画の複製画とは
複製画とは、真作をデジタル処理やコピー印刷によって複製・量産したものである。贋作と異なるのは、幅広い層が楽しめるように安価で販売されているという点だ。一応、複製画といえども印刷された数が少ない場合や印刷方法が特殊な場合は、条件次第で希少価値が付く可能性もある。
買取価格を上げるテクニック
日本画の買取価格は作家や作品の評価はもちろん、作品の保存状態によっても変化する。そのため、作品を所持する際は価値が出やすいポイントをしっかり把握して取り扱うと良い。どのような点が買取価格を下げる結果を招くのか、ポイントを解説していくので参考にしてほしい。
色の変化や劣化
絵画作品の命は、計算されたカラーリングの妙です。特に日本画の場合、色調やバランスが作品の雰囲気、空気感の構築に関係するので、色の劣化は大きく作品の魅力、及び価値を下げてしまう。また、作品によっては作者が色にこめた意味合いも存在するため、わずかな変色も状況によっては致命的なものとなる。
作品の色の変化や劣化は、さまざまな影響によって起こるが、特に影響を受けやすいのは日光や蛍光灯の光に混在する紫外線である。日本画を保管する際は極力、陽の光や蛍光灯による光が長期間作品にあたり続けることを避けなければいけない。なお、現在は紫外線を防止する入れ物や額が販売されているので、日本画作品を購入、または所持する場合は紫外線防止アイテムを使用することを考えてみてほしい。
作品の破損
部分的な破損は、日本画作品の価値を下げる要因の一つである。絵画作品全般に言えることだが、基本的に画面全体の要素をもって一つの作品であるため一部分が欠けるとその時点で作品として成り立たない。破損だけではなく傷みについても同様だ。作品に負担が掛からない方法で保管し、破損や傷みが生まれるリスクを減らすよう心がけよう。
徳岡神泉の作品の品質を保持のコツ
徳岡神泉の作品の価値を下げないようにするには、保管の仕方に気を使うことが大切だ。適切な保管方法は使用画材によって異なるが、どの作品にも共通することをこれから紹介していく。
腐食やカビが発生しない湿度で保管する
作品に発生する腐食やカビも買取査定時に、大きく価値を下げる原因である。腐食やカビの症状は時間が経つにつれて範囲が拡大していくので、できる限り気をつけなければいけない。保管している間は定期的に腐食やカビが繁殖していないかチェックしよう。
過度な乾燥にも注意する
湿気が全くない乾燥している部屋が保管に適しているのかというと、乾燥している部屋も作品にとって好ましくない。乾燥している場所はカビが生えにくいが、作品が朽ちる可能性や色合いへの影響も考えられる。湿度は40%に抑えて、気温は20度前後、風が多少通るような室内で作品を保管するのが理想だ。
作品保管時は負担をかけない置き方をする
作品の置き方も保管する上では大事なことである。粗雑に積み重ねたりするよりも、縦置きして作品に負荷をかけないようにしてほしい。収納する入れ物があれば、中に作品をしまっておこう。
査定前に日本画の手入れをおこないたい場合の対処法
軽いゴミやホコリを落とす程度のケアならばおこなっても構わない。ただし、水拭きは水分が作品に影響を与える可能性がある他、拭き跡が目立ちやすくなってしまうリスクを持つため控えよう。
また、作品自体に対する修正や手入れは絶対にしてはいけない。ほんのわずかな修正でも適切な方法でないと目立つので、勝手に修正や手入れをした場合は価値を下げる原因と判断されてしまう。作品の汚れやシミが気になる方は、修復専門業者の手を借りてケアするようにしてほしい。
買取業者を選ぶポイント
数ある買取業者の中からどのように選べば良いのか悩む方は多いだろう。絵画、及び日本画の買取業者は、日本全国に多数存在するが、鑑定能力はそれぞれ異なる。提示金額もバラつきがあるため、業者選びをするときは一番高額で買取してくれる業者を選ぶことが大切だ。
買取業者は日本画、及び日本美術に関する知識を持っているところを選んでほしい。専門知識が無ければ文化背景を加味した査定はおこなえない。戦前戦後の作品といえど、技法や宗派の源流は江戸時代や鎌倉時代であることが多々あり、発表当時、美術界にどれほどの影響を与えたのか、ということも作品の価値に大きく関係する。
現在は取引実績を公開している業者が多いので、過去の実績を参考にして選ぶと良い。各サイトに寄せられた口コミ評価や意見も、場合によっては業者選びの判断材料になる。
日本画や美術品の専門業者に買取を依頼する
日本画作品は、リサイクルショップや中古ショップなどでも買取がおこなわれている。ただし、前述したように専門知識を持たない業者では、適切な金額提示や正しい査定が期待できないため、日本画作品の買取を専門外の業者に依頼するのは避けた方が良い。まれに贋作や複製画と誤認されて安く買い叩かれるケースもあるので、買取依頼をする業者は美術品を専門的に扱っているところを選ぼう。
相見積もりで買取価格を比較する
高額で買取してほしい人は、相見積もりをおこなうと良い。相見積もりとは、いくつかの業者へ同時に買取査定を申し込み、それぞれの提示金額から一番金額の高いものを選ぶ方法である。相見積もりなら安い買取金額で取引されるリスクも減らせる。相見積もりをしても納得のいかない提示金額ならば、査定依頼する業者を増やして納得がいくまで見積もりをしてもらおう。
徳岡神泉の作品のおすすめ買取業者
徳岡神泉の作品の買取をおこなっている買取業者を紹介していく。自宅や倉庫に徳岡神泉の作品が眠っている方は、参考にしてほしい。
なんぼや
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
50名以上の鑑定士が在籍するなんぼやは、トップクラスの規模と人気を誇る美術品買取業者である。査定料や送料が無料なのはもちろん、現金支払いをおこなってくれるのも魅力的な部分だ。公式ホームページには、取り扱い実績や鑑定士のプロフィールなど依頼者の安心感に繋がる要素が充実している。
八光堂
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
八光堂は、40年以上も美術品の買取をおこなっている老舗中の老舗。LINE査定、メール査定にも対応しているので査定依頼のしやすさは抜群だ。買取金額に至った理由についても鑑定士の方から丁寧な説明がおこなわれるため、安心感のある取引が期待できる。
こたろう
買取価格
スピード
手数料
許可番号
ポリシー
ウイルス
対策
日本画や日本美術品の買取実績を多く持つこたろうは、おすすめの買取業者のひとつだ。他業者で買取できないと判断されたものでも、こたろうでは価値が付くことがある。価値が気になる品物をお持ちの方は、こたろうに相談してみてはどうだろうか。
まとめ
徳岡神泉は、必要な要素以外を画面から省いた作風、神泉様式で知られる日本画家である。学生時代に優れた成績を残し注目を浴びた徳岡神泉だが、卒業後は官展への入選が上手くいかず、美術という概念に悩み続ける日々を送った。徳岡神泉が悩みに悩んだ末、確立したのが神泉様式と呼ばれる作風である。神泉様式で描かれた徳岡神泉の作品群は、今日まで高く評価され根強いファンを獲得してる。
もし徳岡神泉作品を所持していて買取を希望するなら、価値に影響する付属品の有無や作品のコンディションに注意して作品を保管すると良い。適切な価格での取引をおこないたい場合は、日本画の専門知識を持った買取業者を選ぶことが大切である。
店頭で販売されている商品などとは違い、美術品は相場が決まっておらず業者毎で提示される金額にもバラつきがある。徳岡神泉の作品を買取してもらうときは相見積もりをして、複数の業者からの提示金額を見比べた上で、取引業者を選ぶようにしよう。
