SMWS(ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ)はその名の通りモルトウイスキーの愛好家団体だが、少数ながらグレーンウイスキーも販売している。ジャパニーズウイスキーではこれまでニッカウヰスキーのニッカカフェグレーンとサントリーの知多が選ばれている。グレーンウイスキーは連続式蒸溜機で作られる。
ニッカカフェグレーンは効率よりも品質を重視して伝統的なカフェ式を用いている。だからこそSMWSの眼鏡にもかなったのだろう。今回はグレーンウイスキーの一般的特徴も解説しながら、SMWS G11.1 ニッカカフェグレーン14年の買取相場を見ていくことにする。
CONTENTS
このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
グレーンウイスキーとは?
モルトウイスキーとグレーンウイスキーには製造工程でさまざまな違いがあるが、1番大きいのは原料と蒸留法の違いだ。モルトウイスキーは大麦麦芽のみを原料とし単式蒸留器で蒸留される。一方、グレーンウイスキーは大麦以外の穀物(トウモロコシ、小麦、ライ麦など)を原料とし連続式蒸溜機で蒸留される。
単式蒸留器と連続式蒸溜機
日本語では単式のほうは蒸留器、連続式は蒸溜機と書かれる。2つはかなり違った働き方をしているからだ。モルトウイスキーの場合、発酵もろみを単式蒸留器にかけ、出てきた蒸留液をまた単式蒸留器にかけなおすという工程が繰り返される(全部で2~3回)。
その過程で複雑な香りや味わいの元が作り出される。一方グレーンウイスキーでは、発酵もろみが装置に入ると連続的に蒸留が繰り返され、1回で蒸留が完了し、すっきりした蒸留液ができあがる。大量生産にも向いている。
グレーンウイスキーの用途
オーク樽で貯蔵される間にウイスキーにはさらに複雑な変化が起こるが、モルトウイスキーに比べてグレーンウイスキーは癖のない(あるいは個性のない)酒に仕上がる。そのため、ブレンデッド・ウイスキーに使われるのが普通だ。
ブレンデッド・ウイスキーには複数のモルトとグレーンが使われる。風味のキープレイヤーになるはモルトだが、グレーンはやわらかな包容力を持ち、まとめ役として優れた働きをする。
カフェ式連続式蒸溜機
グレーンウイスキーのこのような性格のため、時代が下るにつれ連続式蒸溜機は効率重視の改良が加えられていった。だがニッカウヰスキーでは品質を重視して1963年に伝統的なカフェ式を導入した。
カフェといってもコーヒーや喫茶店とは関係がない。最初期の連続式蒸溜機を改良し初めて特許を取得したエニアス・カフェ(カフィ)の名から取られている。ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝(NHK朝ドラ『マッサン』主人公のモデル)はスコットランドへの留学時にこのカフェ式に目をとめ、いつかこれを使ってウイスキーを作りたいという夢を抱いた。
そして晩年、ヨーロッパ視察中に旧式と見なされていたカフェ式蒸留器を自ら選んで購入した。カフェ式蒸溜機は当初ニッカの西宮工場に設置されたが、1999年に宮城峡蒸留所に移されている。
ニッカカフェグレーン
カフェ式蒸溜機で作られたグレーンウイスキーには原料本来の甘さがしっかり残っており、ニッカのブレンデッド・ウイスキーにまろやかな余韻を与えている。第一弾のブラックニッカを初め、さまざまな銘柄に使われてきた。
しかし、ブレンドのベースにしておくだけではもったいないということで、厳選された樽をもとにシングルグレーンのウイスキーとしてニッカカフェグレーンが誕生した。原料は主にトウモロコシだ。
2012年に日本に先行して欧州で発売され好評を得た。2016年にはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)で金賞に輝いている。ボトルやパッケージのデザインも高く評価され、ワールド・ウイスキー・デザイン・アワード2013を受賞した。
SMWS G11.1 ニッカカフェグレーン14年
ニッカウヰスキーのグレーン樽のなかからSMWSが選び出した1樽がSMWS G11.1 ニッカカフェグレーン14年だ。グレーンだけのウイスキーというのは少ないが、シングルカスクのグレーンウイスキーとなるとSMWS以外ではまずお目にかかれないだろう。
SMWSとは
SMWSは蒸留所から原酒を1樽分買い取ってそのままボトリングして会員に販売している組織だ。1983年スコットランドのエディンバラで設立され、今では世界各地に事務所を持ち3万人の会員を擁する。日本にも支部があり、インターネットサイトで入会と購入が可能だ。
樽を選ぶにあたっては鑑定団が厳しく吟味する。本物の品質にこだわり続けた竹鶴政孝の思いはSMWSの舌に届き、ニッカウヰスキーからは余市、宮城峡、ニッカ・カフェグレーン、ニッカ・カフェモルトの4銘柄がSMWSに選ばれている。
G11.1は「舌を刺す強さ!」
SMWS G11.1 ニッカカフェグレーン14年の正式名称はG11.1だ。SMWSでは商品をブランド名や蒸留所名ではなく、樽ごとのコードナンバーで呼ぶ。それに加えてタイトルと呼ばれる愛称のようなものがつけられる。
ちょっと凝った、ポエム的な表現である場合が多いのだが、SMWS G11.1のタイトルは舌を刺す強さ。よほどのことらしい。公式のテイスティングノートにはいろいろの甘い香りを連想させる言葉が並ぶが、それでいて、舌を刺す途方もない強さがあるとされる。SMWSが選ぶだけあって一筋縄ではいかない。
SMWS G11.1 ニッカカフェグレーン14年の買取相場
いよいよ買取相場を見ていくがウェブ上の情報は非常に限られる。ヤフオクでは過去2年間に取引例がない。そこで海外のオークションサイトをのぞいてみた。ヤフオクなどで売る場合に参考になるだろう。以下は2019年3月16日現在での情報である。
業者の買取価格
ウェブ上で買取価格を確認できたのは大黒屋1軒のみだ。買取上限価格は37,000円となっている。SMWSで発売されたのは2015年3月、価格は20,000円だったから、4年で2倍近くになっている。
高値で売るためには商品の状態や付属品の有無だけでなく業者を比較しておくことも大事だ。多くの業者が無料査定を受け付けているし、1回の依頼で複数の業者に査定依頼が可能な一括査定というシステムもある。持ち込み、出張買取、宅配買取といった方法ごとに査定価格が異なることもある。送料や返送料、振込手数料などもチェックしておきたい。
海外のオークションサイト
Whisky Auctioneerというサイトでは2015年10月から2018年6月まで8件の落札例があり、落札価格は155~380ポンド。3月16日の為替相場(1ポンド約148円)で計算すると、22,940~56,240円。
最安値は2015年10月(つまり発売間もなく)、最高額は2017年10月のもので、おおむね順調に値を上げている。ヤフオクやメルカリなどでも同程度の価格で売れる可能性は十分にある。
まとめ
2019年3月時点で依然としてウイスキーブームが続いており、製造現場では原酒の品薄がなかなか解消できないでいる。ウイスキーは何年も貯蔵してやっとできあがるものだから、自在に生産量を増やすことはできないし、10年20年後にブームが続いているとは限らないからどれだけ仕込むかの見極めも難しい。
そんな状況の中、中古市場も盛り上がっている。SMWS G11.1 ニッカカフェグレーン14年も例外ではなく、相場は発売価格の数倍程度まで上がっている。もはや発売されることのない酒だから、トキを経るごとに希少価値が高まっていく。
しかし、ブームというのは不意に陰るものだから、今のうちに売ってしまうのも合理的な選択といえるだろう。相場情報と高く売るポイントをおさえた上で売却計画や交渉にあたっていただきたい。