モノをリサイクルする際、リサイクル法に関する知識は必要不可欠である。しかし、リサイクルに関する法律は多くが存在し、整理して処理するものに適した方法でおこなう必要がある。
環境に関する法律や条約や法律から始め、各種リサイクル法や関連の法律まで知識を集積するとなると実に多くの情報にアクセスする必要があるだろう。そこで、各種リサイクル法や廃棄物処理法を中心に改めて整理をおこないたい。
CONTENTS
このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
環境に関する条約や法律
廃棄物の処理やリサイクルに関しては、まず大枠として憲法、国際条約、環境基本法、循環型社会形成推進基本法がある。それらの目的を達成するために廃棄物処理法、資源有効利用促進法、グリーン購入法、リサイクル法(容器包装・家電・食品・建設・自動車・小型家電)がある。
民法などとは違い、環境法にはもともと法律が存在しなかったため、新たに作り出した法、新しい権利でもある。違反した場合の処罰は厳しい一方で、さまざまな個別法や自治体の内規等が絡み合い複雑である。法体系を一度図表等で整理したい場合には、環境省が作成している循環型社会を形成するための法体系を参考にすると良いだろう。この資料は以下のリンクから確認することができる。
<循環型社会を形成するための法体系>
憲法
人間と環境は不可分一体であり、人には健康的な肉体的・精神的状態のもとで生活する基本的人権がある。環境を保全することは憲法が当然に保障している。憲法25条第1項の生存権に関係する。
<環境法に関する参考資料例>
- ・北村喜宣(2019) 『環境法 [第二版]』有斐閣
国際条約等
有害な化学物質及び廃棄物を規制する目的で締結された、以下の3つの条約がある。また、現在世界規模で取り組みが進んでいる持続可能な開発目標(SDGs)もある。
バーゼル条約
有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約。1980年代、先進国から輸出された廃棄物が、途上国で環境汚染の原因になるという問題が明らかになり、この対処のためにバーゼル条約が採択された。
2018年7月現在、締約国数は186か国。2019年海洋プラスチックごみに関するパートナーシップ設立が決定した。今後、日本国内でもプラスチックごみに関する法・規則改正がある可能性が高い。
<バーセル条約に関する参考文献例>
環境省.“バーゼル条約第14回締約国会議の結果について”.環境省.2019-05.
環境白書.“プラスチックを取り巻く状況と資源循環体制の構築に向けて”環境省.2019-06.
ストックホルム条約
残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs)。PCB、DDT、ダイオキシン等のPOPs(Persistent Organic Pollutants、残留性有機汚染物質)を国際的に協調して廃絶する国際条約である。
<ストックホルム条約に関する参考文献例>
環境省.“ストックホルム条約 | POPs”.環境省.2019-03-19.
ロッテルダム条約
国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)。先進国で規制された有害な化学物質や駆除剤の、開発途上国への輸出を規制する条約。
<ロッテルダム条約に関する参考文献例>
環境省.“ロッテルダム条約(PIC条約)の概要”.2017-08-26.
持続可能な開発目標(SDGs)
持続可能な世界を作るための2016年から2030年までの国際目標。新アジェンダの中の「都市発展」の中に「廃棄物の削減と再生利用」がある。
<持続可能な開発目標に関する参考文献例>
環境省.“地球環境の限界と持続可能な開発目標(SDGs)”.2018.
外務省.“我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ”.2015-09-25.
環境基本法
平成6年8月施行。個別法全体を指揮する法律。廃棄物処理法やリサイクル関連法の基本法である。6年に1度、政府が環境基本計画を策定する。 2018年の第5次環境基本計画では、排出事業者責任の徹底が掲げられた。
<環境基本法に関する参考文献例>
循環型社会形成推進基本法
平成13年1月施行。リサイクルに関する個別法全体を指揮する基本となる法律。処理の優先順位を初めて法定化
- 1.発生抑制
- 2.再使用
- 3.再生利用
- 4.熱回収
- 5.適正処分
と優先順位を定めた。排出者責任の徹底と生産者が最後まで責任をもつ拡大生産者責任を定めた。環境汚染等の場合は、原因事業者に環境保全のための原状回復等の費用を負担させる措置もこの法律で定めた。
<循環型社会形成推進基本法に関する参考資料>
環境省.“循環型社会形成推進基本法の概要”.2017-11-28.
環境省.“循環型社会形成推進基本計画”.2017-07-05.
グリーン購入法
国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律。平成12年5月に循環社会形成水準基本法の個別法の1つとして制定、循環型社会形成のために再生品などの供給面の取り組みに加えて、需要面からの取り組みが重要であるという観点からおこなわれた。国などの各機関の取り組みに関することのほかに、地方公共団体や事業、国民の責務も定めている。
<グリーン購入法に関する参考文献例>
グリーン購入法.net.“グリーン購入法について”環境省.2018-12.23.
資源有効利用促進法
平成13年4月施行。リサイクルだけでなく、事業者による製品回収や再利用強化、製品の省資源化・長寿命化等廃棄物発生抑制(リデュース)、回収した製品からの部品等使用(リユース)をおこなうことを法律で決めた。
<資源有効利用推進法に関する参考資料>
経済産業省.“早わかり 資源有効利用促進法例”.経済産業省.2017-05-06.
リサイクル各法(容器包装・家電・食品・建設・自動車・小型家電)
平成12年から平成14年の間、個別の特性に応じたリサイクル法が施行された。
容器包装リサイクル法
平成9年4月施行。
- ・消費者の役割:分別排出
- ・市町村の役割:分別収集
- ・事業者の役割:リサイクル
と役割分担を明確化した。
<容器包装リサイクル法に関する参考文献例>
リサイクル法.“容器包装リサイクル法の概要”.環境省.2017-10-20.
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)
家庭用エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機について製造業者等にリサイクルを義務化した。
<家電リサイクル法に関する参考文献例>
環境省.“家電リサイクル法の概要”.環境省.2017-05-21.
自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)
フロン類・エアバッグ・シュレッダーダストをリサイクルをおこなう。
<自動車リサイクル法に関する参考文献例>
環境省.“自動リサイクル関連”.環境省.2017-08-06.
食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)
食品 製造業、食品小売業、食品卸売業、外食産業が業種別に目標を設定し、食品を飼料・肥料・エタノール・メタンなどでリサイクルするように義務付けた法律。
<食品リサイクル法に関する参考文献例>
環境省.“食品リサイクル関連 | 食品リサイクル法について”.環境省.2017-05-21.
建築リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)
建築工事における分別解体等とリサイクルを義務付けた法律。
<建築リサイクル法に関する参考文献例>
環境省.“建設リサイクル法の概要”.環境省.2018-12-02.
小物家電リサイクル法(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)
デジタルカメラやゲーム機器などの使用済みコファタ電子機器の再資源化の促進を目的として定めた法律。
<小型家電リサイクル法に関する参考文献例>
環境省.“小型リサイクル法関連”.環境省.2018-12-29.
廃棄物処理法
平成29年改正により、廃棄物不正処理に対する一層の規制強化が掲げられた。廃棄物処理法には3要素あり、物の区別・業の許可制度・排出者の3つがあるため、押さえておくと良い。
物の区分
廃棄物処理法に基づくと、大きく分けて有価物と廃棄物(一般廃棄物・産業廃棄物)がある。人がお金を出して欲しいと思うものについては有価物、代金を払ってでも処理してもらわなければならないものは廃棄物として扱われる。
最近では、0円で取引されるものについて、有価物と廃棄物の判断が難しくなっているため、物そのものを見て総合的に判断するという考え方が浸透しているようだ。判断基準は、物の性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無、占有者の意志などとなる。また、中には特別管理という細心の注意を払う必要のあるものもある。
業の許可制度
業の許可に関しては、どのようなことができるかという行為の区分が存在する。ものの区分と合わせて、業許可は次の6つに定められている。
- ・一般廃棄物の収集運搬業
- ・一般廃棄物の処分業
- ・普通の産業廃棄物の収集運搬業
- ・普通の産業廃棄物の処分業
- ・特別管理産業廃棄物の収集運搬業
- ・特別管理産業廃棄物の処分業
これらの許可外のものをおこなうと無許可とみなされ、5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金、またはその併科に科せられる。
排出者
排出者に関して、産業廃棄物法では定義がされていない。現在は、一括、一回の仕事を支配、管理できる存在という定説が浸透しているようだ。法律の条項によって、生産者や販売者などの意図で使われているため、文中の糸を読み取り、適切に排出者を指し示しているものを判断していくしかないだろう。
<廃棄物処理法に関する参考資料例>
環境省.“廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律の概要”.2017.
廃棄物とは何か?
廃棄物の定義に該当した場合、廃棄物を出す法人・個人に大きな責任が発生する。廃棄物に該当するかどうかは以下のように決められている。
- ・廃棄物の定義…廃棄物とは「固形・液体の不要物全般」と定義されている。
- ・不要物とは…占有者が、自分で利用できなくなり、または他人に売却(有償譲渡)できなくなったために不要になったもの。
廃棄物に該当しないもの
廃棄物に該当しないものとしては、次のものがあげられる。
- ・気体
- ・原子炉等規制法・放射線障害防止法・放射性物質汚染対処特別法で処理される放射能汚染物質
- ・港湾・河川から出た土砂類
- ・漁業活動の現場ででた水産動植物
- ・動物霊園事業において取り扱われる愛玩動物の遺骸
- ・宗教行為の一部として除去した古い墓など
- ・特定チタン廃棄物
などのもの。
有償で取引されるものは全て廃棄物にならないのか?
以前は、不用物ではない、有償取引が可能であるリサイクル可能物を廃棄物から除外していたが、それにより環境汚染が引き起こされてしまった。現在は、持ち主(占有者)の意思とは関係なく、有償取引が可能であるか関係なく、中古品や副産物も含めて廃棄物等として扱い、環境保全のための法規制の対象になっている。
<廃棄物の定義に関する参考文献例>
まとめ
リサイクルに関する知識を押さえるとなると、さまざまな法律が関与してくる。わからないことが生じた際に、すぐに該当の法律にアクセスできるようにしておくのが望ましいだろう。
また、廃棄物処理法は処理する人、全員に責任の生じる法律であるが、排出者の明確な定義がないなどの課題がある。また、有価物や廃棄物の定義も曖昧であるように感じる。法律に関連する専門用語を押さえた上で、適切に法律の意図を汲み取っていく必要があると思われる。
この記事を監修した専門家