歌川豊国(読み方:うたがわとよくに)は歌川派の開祖である歌川豊春の門人であった。歌川豊広と並んで歌川派初期の代表する絵師であり、浮世絵というものを全国的に普及させた絵師として重要な人物である。現在でも浮世絵は非常に人気が高く、オークションで多くの作品が売買されており、有名な作家の作品であれば数千万円や億にまでのぼる。
今回は歌川豊国という絵師の経歴を紹介した上で、作品の価値や買取相場について記載していく。歌川豊国の作品をすでに持っていて売りたい方や、これから集めていきたいと思っている方は、ぜひこの記事を参考にしていただきたい。

本記事のポイント
- 歌川豊国は世絵を広く普及させた立役者として知られる
- 東洲斎写楽との関係性や比較
- 豊国と豊広の合作も存在

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歌川豊国の略歴・プロフィール
歌川豊国は、歌川派の祖である歌川豊春の門人で、歌川派の隆盛の要となった。若い頃から美人絵において知られていて非凡な才能を見せていたが、その後広く豊国の名が知られるようになったのは寛政6年(1794)に描かれた役者舞台之姿絵シリーズの成功のおかげだ。
役者舞台之姿絵シリーズは役者の顔や姿を描いたシリーズで、東洲斎写楽の代表作「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛」と共に、同時期に役者絵として人気を博した。寛政6年というと豊国はまだ25歳という若さでありながらスター作家の仲間入りを果たし、その後役者絵を中心に描いていくことになる。役者絵で人気を得だすと、豊国の初期の作品や同時期の写楽の作品と比べて芸術的に劣っていると評価されることはあるが、浮世絵を広く普及させた立役者として、とても重要な作家だ。


また、大衆の求めるものを見極める才能を持っており、そこに惹かれて豊国の門人を志望する人が後を絶たず、ピーク時には40人を超える弟子を抱えていた。有名な弟子として、豊国最初の門人であったとされる歌川国政や、のちの三代目歌川豊国となる歌川国貞がいる。当時は「歌川にあらずんば、浮世絵師にあらず」とまで評されている。このことから歌川派がどれほどの人気だったかがわかるが、その基礎となるものを作ったのが歌川豊国である。

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歌川豊国の生い立ち
歌川豊国は1769年に、江戸の芝神明前に住んでいた人形師の五郎兵衛の息子として生まれ、姓は倉橋、名を熊吉(のちに熊右衛門)といった。父、五郎兵衛と知り合いだった歌川豊春に弟子入りし、一陽斎と称して、1786年に江戸時代中期に流行した草双紙という一種の絵本の押絵を描いたり、美人画や役者絵を描たりしていた。
寛政6年に役者舞台之姿絵シリーズを描いたことで一気に人気になり、寛政8年までの間に40点以上も描いた。次第に様式化していくが、大衆の好みを見極める才覚と時代の要求に合わせて描く技量から、美人画においても歌川派独特の様式で描き人気を博した。その後多くの弟子を抱え、次の世代へ歌川派をつなげていった初代と言える。

役者舞台之姿絵
歌川豊国を一躍スターにした作品として有名なのが役者舞台之姿絵シリーズだ。この作品は全部で50点以上あるとされ、豊国は二枚続や三枚続といったように、多くは一枚だけで鑑賞するものではなく、組んだ上で鑑賞するように描かれたものである。

寛政6年に初めて描かれたこの作品シリーズは、同時期に活躍した東洲斎写楽と比較されやすく、役者絵においては豊国は写楽に倣って描いたものだとよく言われるが、実際は豊国は写楽よりも先行して役者舞台之姿絵シリーズを描いていた。豊国と写楽に接点があったかは定かではないが、しばしば同じ芝居の役者や同じ役柄を描いていた。
写楽は見栄を切り、懐から胸の前に力強く広げられた両手が描かれていることで有名な「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」などから豊国よりも知られているが、その写楽が出現する前からすでに豊国は自身の様式を確立していた。また、当時非常に高価だった雲母地を使って描くことは珍しく、先に雲母地の絵を描いたのは豊国だった。
このように豊国は写楽よりも早く様式を確立し役者絵を描いていた。その後写楽も寛政6年5月に都座で行われた花菖蒲文禄曽我にて11枚の大首絵を描きデビュー。この芝居では豊国も3人の役者姿を薄ねずみ雲母地に3枚続として描いた。豊国と写楽の絵柄はとても似ており、先に描いていた豊国の作風を写楽が見て学んでいたと考えられている。
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歌川豊国の代表作品
ここでは歌川豊国作品の代表作である役者舞台之姿絵シリーズの作品について紹介していく。写楽と比べて落ち着いた色味で少し美化された役者たちを描いたことで、安定して大衆に支持され続けた。
役者舞台之姿絵 高らいや 三代目市川高麗蔵の千崎弥五郎/やまとや 初代坂東蓑助の早野勘平
「役者舞台之姿絵 高らいや 三代目市川高麗蔵の千崎弥五郎」と「やまとや 初代坂東蓑助の早野勘平」という2つの作品は寛政7年に、初代尾上菊五郎十三回忌追善「仮名手本忠臣蔵」を取材して描かれたものである。2枚続で描かれた錦絵で、1枚に鉄砲を持って簑を着ている猟人姿の三代目市川高麗蔵が演じる千崎弥五郎、もう1枚に提灯を口にくわえ、刀を抜こうと構える初代坂東蓑助が演じる早野勘平を描き出会う場面となっている。千崎弥五郎の図は早野勘平に銃を渡そうとしており、体がくの字に曲がっている。
背景は黒とグレーと落ち着いた色が使われ、体が曲がって丸くなっていることで動きがない単調な絵になってしまいそうだが、着ている簑の鋭利な先端が上下左右に向かっているおかげで画面に変化を与えている。くの字に曲がっている千崎弥五郎の図に対して、早野勘平の図は直線に伸びた体を描いており、そこに2本の刀がそれぞれ縦と横に構えられていることで画面全体を保たせている。
千崎弥五郎の図と同様に背景は黒とグレーと暗めだが、着ている着物が赤系で統一されていることで背景と色の差が出て、人物に目がいくように仕向けられている。2枚の絵を組んで並べることで、千崎弥五郎と早野勘平がお互いから目を離さず、怪しいものかどうかを見極めようとする緊張の場面を感じることができるだろう。
役者舞台之姿絵 たち花や
寛政6年に三世市川八百蔵が演じる奴初平を描いた作品の「役者舞台之姿絵 たち花や」は、都座でおこなわれた「初曙観曽我」に取材している。足を肩幅ほどに開きまっすぐな立ち姿に加えて、少し眉間にしわを寄せた整った顔立ちは、個性よりもなるべく美化して描くことを目指した豊国らしい絵柄だ。単純な立ち姿だが、右腕を懐の状態にしていることから体に自然な動きが生まれ、また刀を横にさしていることでバランスが保たれ、何もない背景にも関わらず絵に動きがある。
このように豊国は安定した美しさを求め、写楽のような激しい構図や色味、顔の動きを描かなかった。普遍的な美しい役者姿の絵に大衆は喜び、結果的に写楽ではなく豊国が長い間支持されることとなった。
歌川豊国作品(版画や肉筆画)の買取価格相場
歌川豊国の作品に限らず浮世絵は現在でも非常に人気があり世界中で取引されている。版画における最大の取引額では、2016年にパリでおこなわれたオークションで、喜多川歌麿の浮世絵が約8800万円で落札されるなど価格の幅がとても広い。歴史的に有名で重要な人物であるほど、今後も値段は上がっていくと見ていいだろう。

歌川豊国の作品は、歌川豊春の弟子で同門である歌川豊広との合作作品なども残っており、価格に差がある。また、歌川豊国の代表作である役者舞台之姿絵シリーズにおいては美術館や博物館に所蔵されていることも多い。この記事では浮世絵の販売店やオークションなどで歌川豊国の作品が売買されているのを参考に買取相場を見ていく。
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絵画は作品によっても買取価格が異なる他、買取業者の方針などによっても価格差が生まれやすいモノである。したがって、買取業者が買取価格を伏せているどころか、販売額を伏せていることは少なくない。歌川豊国についても、買取価格相場を提示している買取業者はほとんどおらず、販売例を見た方が相場を掴みやすいだろう。浮世絵や版画、美術書などを扱っている山田書店のオンラインストアでいくつかの歌川豊国の作品が販売されている。実際に売るとなると、販売価格より低い査定になるはずだ。江戸春御摂曽我は、以下の通りである。
- ・技法:木版 2枚続
- ・状態:摺良 虫穴 中折レ 少汚レ 少シミ 少傷
- ・サイズ:大判
- ・制作年:文化7年(1810)
- ・備考解説:2枚続の内の1枚 ゐづつや伝兵へ/沢村源之助
- ・価格:8,000円(税込)
染替蝶桔梗は、以下の通りである。
- ・技法:木版 2枚続
- ・状態:摺良 虫穴補修 少シワ 角折レ
- ・サイズ:大判
- ・制作年:文化13年(1816)
- ・備考解説:2枚続の内の1枚
- ・価格:10,000円(税込)
絵本時世粧は、以下の通りである。
- ・技法:木版
- ・状態:摺良 少汚レ 少傷
- ・サイズ:21.5×15cm
- ・制作年:享和2年(1802)
- ・備考解説:上巻のみ(二巻二冊の内の一冊)
- ・価格:250,000円(税込)
役者絵は、以下の通りである。
- ・技法:木版 3枚続
- ・状態:摺良 トリミング 裏打 少虫穴 擦レ 少傷
- ・サイズ:大判
- ・制作年:文化~天保期
- ・価格:150,000円(税込)
三十六ばんつゞき 役者十二つき 正月二丁まち年礼の図は、以下の通りである。
- ・技法:木版 3枚続
- ・状態:摺良 トリミング 裏打 汚レ 少擦レ 傷
- ・サイズ:大判
- ・制作年:文化6年(1809)
- ・価格:80,000円(税込)
第29回(2018年)浮世絵オークション
毎年1回開催されているオークションで歌川豊国の作品が出されている。オークション参加には事前に予約が必要のため注意していただきたい。初詣図は、以下の通りである。
- ・技法:3枚続
- ・制作年:享和頃
- ・備考解説:豊国、豊広の合作
- ・価格:800,000円(税込)
舟遊びは、以下の通りである。
- ・技法:3枚続
- ・制作年:寛政頃
- ・価格:150,000円(税込)
松本幸四郎は、以下の通りである。
- ・技法:2枚続
- ・制作年:文化頃
- ・価格:100,000円(税込)
役者図は、以下の通りである。
- ・サイズ:間判
- ・制作年:享和頃
- ・価格:200,000円(税込)
芦屋道満大内鑑は、以下の通りである。
- ・制作年:文化頃
- ・価格:80,000円(税込)
風流やつし女忠臣蔵五段目は、以下の通りである。
- ・サイズ:間判
- ・制作年:文化頃
- ・価格:50,000円(税込)
岩井粂三郎は、以下の通りである。
- ・制作年:文化頃
- ・価格:50,000円(税込)
四代目澤村宗十郎は、以下の通りである。
- ・制作年:文化頃
- ・価格:50,000円(税込)
小萩澤むら田之助は、以下の通りである。
- ・制作年:文化8年
- ・価格:50,000円(税込)
役者扇合は、以下の通りである。
- ・制作年:文化8年
- ・価格:50,000円(税込)
豊国と豊広の合作の初詣図ともなると80万円と非常に高価だが、安いものとなると数千円~数万円と価格の幅が広いことがわかる。歌川豊国という名前で何代も引き継いでいるため、何代の作品かも重要だろう。
また、基本的に何枚もすられた版画よりも、肉筆画の方が高額になる。しかし、没後立っているケースでは、状態により思うような価格にならないこともあるだろう。

歌川豊国作品の売り方
歌川豊国作品の買取相場を紹介したが、すでに豊国の作品を持っていて売りたい場合のポイントを紹介する。豊国のいつの時代の作品なのかなども重要だが、それと同等に重要なのが作品の状態だ。初代歌川豊国の作品となると数百年前のものになるため、作品の劣化も激しい場合がある。少しの傷や日焼けなどによって価格が大きく変わってくるため、注意して取り扱っていただきたい。また、売る際には家の近くの骨董屋などだけではなく、画廊やオークションなどで売ることも考えてほしい。場所によっては数万円単位で変わることも珍しくないため見極めることが大切だ。
作品の保存状態
どの作品にも言えることだが、作品の保存状態は非常に重要で、ホコリを被っていたり、穴や切り傷、日焼けによって色が変化している場合には作品の価値が大きく下がってしまう。修復師による復元も可能な場合はあるが別途費用がかかってしまうのため、前もって作品の保護をするようにしよう。
浮世絵などは紙に擦られているため、ちょっとした衝撃で簡単に損傷してしまうため、保管には木箱にしまうなど工夫が必要だ。また、作品にカビが生えてしまうことも珍しくなく、簡単に除去できなくなるため湿度管理にも注意を払いたい。温度20℃前後、湿度55%前後が望ましい。また、年に2回ほど虫干しも実施しよう。とはいったが、家の中に飾っておきたい人もいるだろう。その場合は日が差す場所に作品を置くのは避けるようにしてほしい。また、紫外線が出るLEDも避けたいところだ。すぐには変化しないが徐々に日焼けによって色が茶色く変色していき、元の作品の状態には二度と戻らなくなってしまう。
その他、注意したい点は排気口などガスが発生する場所や喫煙者の場合に喫煙する場所は避けることだ。ガス・ヤニにより、色味などに影響を及ぼしてしまう。浮世絵に限らず、日本画や洋画も同様に保存状態に気をつけなければ、簡単に変色、カビ、ホコリなどに汚染されてしまう。新たに作品を購入したい人もこれから作品を売りたい人も、注意して作品の保護にあたってほしい。
歌川豊国作品をどこで売るか
浮世絵や日本画などの作品を売却する場合どこで売れば良いか初めはわからないかと思う。ここでは、代表的な作品の売り方について紹介するので参考にしてほしい。
オークション
オークションは出品している作品を競売にかけ、その作品を欲しい人がいるほど価格が上がるため、自分の想定する金額を超える場合が多々ある。作品に歴史的価値があり、重要な作品ほど欲しがる人がいるだろう。また、その逆で作品を求める人がいなければ落札されない場合もあるため気をつけてほしい。ヤフオクなどよりは、美術オークションの方が安心感がある。
浮世絵のオークションが年に1回ほど開催されているので、そこで作品を出品すれば思いもしない価格で売れることもある。しかし、オークションに出品する場合は個人ではなく、オークションに参加する画廊に一度連絡を取った上で参加することがあるため、事前によく確認した上で検討していただきたい。
買取業者
買取業者は専門の査定員が作品の歴史的価値、描いた人物、作品の状態など全てを考慮した上で判断してくれるため安心感がある。プロの査定員たちは浮世絵の最新の取引されている価格帯などを熟知しているため、適切な値段で取引できる。家の奥底に眠っていた作品で浮世絵や日本画に詳しくない場合でも、安心して専門家に任せて売却できるのは嬉しいだろう。
出張買取に対応している買取業者
【ヒカカクおすすめ店】総合美術買取センター
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対策
総合美術買取センターは美術品専門の買取店。各分野でそれぞれ20年以上の経験を持つ業界トップの鑑定士が在籍し、特に、著名作家の買取価格に自信をもつ。出張買取もおこなっている。
いわの美術
買取価格
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対策
いわの美術は全国で無料出張買取を行っている。浮世絵の買取もおこなっており、特に歌川豊国についは作家の紹介や作風などをホームページに記載しており、買取に力をいれていることがわかる。
LINE査定に対応している買取業者
栄楽堂
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対策
骨董品・古美術品を中心とする買取専門店である栄楽堂。創業から買取専門の美術商としてスタートし、長年、幅広くいろいろな骨董・古美術品を買取しており、LINE買取にも対応。歌川豊国の作品の買取りも行っており、実際に美人画などの浮世絵や書道具の買取実績(33,000円)もある。
本郷美術骨董館
LINE査定を行っている本郷美術骨董館は、買取ナンバーワンの実績を持つ買取業者。テレビ出演も少なくないため、まずはLINE査定から依頼してみてはいかがだろうか。
まとめ
歌川豊国は、歌川豊春の弟子として歌川豊広とともに歌川派を有名にした人物だ。若い頃から才覚を発揮し、代表作役者舞台之姿絵シリーズを描き、25歳にして一躍役者絵界のスターとなった。門人に歌川国政や歌川国貞(のちの三代目歌川豊国)など著名な絵師がおり、後進の育成もおこなっていた。
同時期の役者絵を描いた写楽と比較すると、個性を出さず役者の姿を美化することで、芸術的には写楽に劣っていると言われることもあるが、広く一般的に大衆に受け入れられ、浮世絵の様式を確立した側面が強い。全国的に浮世絵を普及していき、「歌川にあらずんば、浮世絵師にあらず」とまで歌川派は評されるようになった。
歌川豊国の作品はいまだに人気があり、同門の歌川豊広との合作である「初詣図」は80万円になるほどの価値がついている。現在でもオークションなどで活発に取引されており、豊国の作風が今も受け入れられていることがわかる。また、豊国の作品の購入を考えている人は、すぐに買わずに、美術館で所蔵されている作品を一度、見てみるのをおすすめする。
芸術作品は日々作品の価値が変動しているため価格が一定ではない。作品を買いたいならばそのときにオークションや販売店などで価格を確認し、欲しいときに買うのがいいだろう。すでに持っている作品を手放したい場合でも、心からその作品を欲しい人に売ることで、作品がこれからも長く時空を超えて残っていき、文化の保存という観点からも重要なので、しっかりと売る相手やタイミングを見て売ってほしい。













